ハンス・リッパヘイ(Hans Lipperhey;1570-1619)はオランダのレンズ職人(眼鏡職人)で望遠鏡の発明者とされる。リッペルハイ(リッペルヘイ)またはリッペルスハイ(リッペルスヘイ)とも記される。ドイツのヴェセルに生まれ、オランダのミデルブルフに移住し1594年に結婚、終生ミデルブルフに暮らした。
同じオランダのレンズ職人のヤコブ・メチウス(Jacob Metius)かザハリアス・ヤンセン(Zacharias Janssen)がリッパヘイよりも先に望遠鏡を発明したとの説もあるが、1608年にリッパヘイはメチウスよりも数週間早く、特許の申請をした記録が残されている。リッパヘイは特許を得ることはできなかったが、オランダ政府から報酬を得た。「オランダ式遠近鏡(Dutch perspective glass)」と呼ばれたリッパヘイのオリジナルのものは、凸の対物レンズと凹の接眼レンズで構成されており、倍率は3倍程度であった。このタイプは後にガリレオ式と呼ばれるようになる。また「望遠鏡」という名称は、1611年にジョヴァンニ・デミジアーニ(Giovanni Demisiani)によって、ガリレオのアカデミア入りを祝う宴の席で初めて使われたとされる。
参考:
https://tenkyo.net/kaiho/pdf/2019_01/04rensai-1akiyama.pdf
https://tenkyo.net/kaiho/pdf/2019_05/02rensai-1akiyama.pdf
https://tenkyo.net/kaiho/pdf/2019_07/03rensai-01akiyama.pdf
アルゴルパラドックスとは、連星系の星々が恒星の進化の理論と矛盾しているように見える状況を指す。アルゴルは変光星の名前、パラドックスとは矛盾を意味する英語である。
通常、恒星の進化速度は質量が大きいほど進化が速くなる。しかし、アルゴルや他の連星の場合、質量の小さい星が既に(準)巨星に進化しているのに対し、質量の大きい星はまだ主系列にとどまっている。連星系はほぼ同時に形成されたと考えられているため、これは逆説的である。現在この問題は、重い星が先に進化して膨張・質量放出し、その質量の大部分が軽い星に移動することで解決されると考えられている。
中心天体の周りを公転する天体が摂動を受ける系において、当該天体の近点引数と離心率と軌道傾斜角が連動して振動する現象。典型的には円制限三体系に於いて被摂動天体の軌道傾斜角が大きな場合に発現するが、それ以外の場合にも程度の差こそあれ発生する。この振動の結果として被摂動天体の離心率や軌道傾斜角が大きな値を取ることがあり、それは当該天体の力学進化に対して影響を及ぼし得る。この現象は19世紀末から20世紀初頭にかけてスウェーデンのフォンツァイペル(Hugo von Zeipel)が彗星運動の理解のため作り上げた理論体系の中に記述された。しかし、フォンツァイペルのこの業績は広く知られることなく歴史の狭間に埋もれ続け、1960年代になりソビエト連邦のリドフ(Mikhail Lvovich Lidov)および日本の古在由秀が同一の理論を再び見出すに至った。
以下では太陽(中心天体)の周りを小惑星や彗星などの小天体が周回し、その天体がその外側または内側にある大きな天体(惑星など)から重力的な摂動を受ける場合を例として考える。惑星の軌道が円ならばこの系はいわゆる円制限三体系を構成する。小天体(被摂動天体)が惑星(摂動天体)の内側を周回する場合を内側問題と呼び、被摂動天体が摂動天体の外側を周回する場合を外側問題と呼ぶ。内側問題でも外側問題でも、被摂動天体の角運動量の鉛直成分の絶対値が小さいとその近点引数が平衡値の周囲を振動(秤動)し得る。この平衡値は $\frac{\pi}{2}$ または $\frac{3\pi}{2}$ であることが多いが、他の共鳴との相互作用などがあればこれ以外の値を取ることもある。近点引数が秤動せずに回転する場合でも、被摂動天体の離心率 $e$と軌道傾斜角 $I$ は近点引数 $\omega$ と連動して振動する。これがフォンツァイペル-リドフ-古在振動である。被摂動天体が持つ角運動量の鉛直成分は量 $\sqrt{1-e^2} \cos I$ に比例する。時間的に平均された円制限三体系に於いてこの量は保存量となるが、その絶対値が小さいとは、即ち摂動天体の軌道面に対する被摂動天体の軌道傾斜角が大きいことを意味する。被摂動天体の近点引数の秤動が発生する閾値となる軌道傾斜角$I$の下限値は被摂動天体の軌道半長径 $a$ と摂動天体の軌道半長径 $a^\prime$ の比 $(a/a^\prime)$ に依存する。
内側問題に於いて $a/a^\prime \ll 1$ ならばそれは$I \sim 39^\circ$ であり、外側問題に於いて $a'/a \ll 1$ ならば $I \sim 63^\circ$ である (いずれも被摂動天体の離心率 $e$ が0の時の値)。なお、被摂動天体の軌道傾斜角 $I$ に関するこれらの条件は必要条件に過ぎず、十分条件ではないことにも留意しなければならない。軌道傾斜角$I$ が上記の値より大きくても近点引数の初期値によってはそれが秤動せず、回転する場合もある。
フォンツァイペル-リドフ-古在振動に起因する被摂動天体の離心率と軌道傾斜角の振幅は時に大きく、それが天体運動の安定性や軌道進化に甚大な影響を及ぼすこともある。この振動が見られるのは彗星や小惑星の運動に限らない。惑星を周回する衛星(含む人工衛星)、太陽系の最外縁にあるオールトの雲(銀河系による潮汐力が摂動として働く)、太陽系外にある多様な惑星たち、そして三体系としての近似が有効である恒星系での天体運動など、様々な局面でフォンツァイペル-リドフ-古在振動は発現し、系の力学進化に関与する。1990年代に太陽系外縁天体や太陽系外惑星が発見されてから、フォンツァイペル-リドフ-古在振動の研究は急激にその活発さを増した。この振動と平均運動共鳴との相互作用(例えば冥王星の運動はその状態にある)、摂動天体が複数のある場合の効果、そして摂動天体の軌道が円ではないことに起因する積分不可能性もしくはカオス性(「離心フォンツァイペル-リドフ-古在振動」)等々に関する議論が盛んであり、それらは現代の天体力学に於ける中核の一つを構成する。
この振動に関するフォンツァイペルの理論が現代に於いて本格的な日の目を見たのは、彼の著作群の出版から一世紀以上を経過した2019年であった。それまで、我が国に於いてこの現象は「古在機構」「古在振動」「古在共鳴」等と称されていた。現在ではフォンツァイペル-リドフ-古在振動(または機構)という名称が国際的に浸透している。
空中望遠鏡を参照。
屈折望遠鏡の一種。対物レンズを空中高く吊し、それを地上の観察者が手元に置いた接眼レンズでみる構造になったもの。接眼レンズ、および、光軸に対して横からの迷光を遮断するための遮光板も対物レンズと同じ支柱からぶら下げているが、鏡筒がないのが標準的な構造である。
初期の望遠鏡のレンズには単レンズが用いられており、焦点距離が短いと色収差が顕著に表れるという問題があった。これを解決するために口径に比べて極端に長焦点のレンズを用いることが考えられ、それを実現したのが空中望遠鏡である。歴史的にはヘベリウスが作った望遠鏡が有名。
2つの異なる屈折率のガラスを組み合わせることで色収差を軽減する色消しレンズが18世紀に発明されると、取扱の不便さから利用されなくなった。
なお、空気望遠鏡と呼ぶこともあるが、これは英語でのaerial telescopeに対する誤訳と考えられる。
輻射流束密度の単位で、Jyで表す。$1\ \rm{Jy}=10^{-26}\ \rm{W\ m^{-2}\ Hz^{-1}}$。輻射流束密度とは、電磁波の強度を表す物理的概念であり、単位時間に、光線に垂直な単位断面積当たりに運んでくるエネルギー量のことである。1960年頃までに行われていた電波天文学で観測されていた周波数や天体からの電磁波強度が1~100程度になるように決められた単位で、その名称は太陽系外から来る電波を発見したカール・ジャンスキーにちなむ。厳密には国際単位系SIには含まれないが、SI同様に1/1000や1/100万を意味するmやμが付されたmJyやμJyも使われている。
チリ共和国・アタカマ地方にある標高5640 mのチャナントール山の山頂におかれる口径6.5 mの大型光学赤外線望遠鏡(TAO望遠鏡)と、山麓のサンペドロ・デ・アタカマ市にある山麓研究施設を中心とする天文台。東京大学大学院理学系研究科附属天文学教育研究センターが運用している。2024年4月30日にTAO望遠鏡サイトの完成記念式典が行われた。2025年からの本格運用を予定している。TAO望遠鏡サイトは、世界一標高の高い天文台として2011年にギネスに認定された(2009年から同サイトで口径1 mの望遠鏡miniTAOが運用されている)。
TAO望遠鏡は世界一の標高にあるため、大気中の水蒸気量が少なく赤外線の波長域でも大気の透明度が極めて高い(大気の窓を参照)。このため、従来は地上からの観測が難しかった中間赤外線での観測が可能となる。この特長を活かしてTAOは、宇宙初期に生まれた銀河(原始銀河)の観測を進めて銀河の形成・進化をさぐることと、原始惑星系円盤と惑星の形成およびその材料となるダスト(固体微粒子)の形成と破壊過程などをさぐることの二つを主要な目標に掲げている。
TAO望遠鏡の観測装置には、中間赤外観測装置 MIMIZUKU (Mid-Infrared Multi-field Imager for gaZing at the UnKnown Universe) と近赤外線 2 色同時多天体分光撮像装置 SWIMS (Simultaneous-color Wide-field Infrared Multi-object Spectrograph)の二つがある。 MIMIZUKU は、中間赤外波長の 2-38μm という広い波長範囲をカバーし、30 μm 帯で 1 秒角と言う世界最高の角分解能(解像度)を有する。また、Field Stacker という 2 視野を同時に観測できるシステムを世界で初めて実用化し、赤外線の時間変動も高精度で検出できる。
SWIMS は、0.9~2.5 μm の近赤外線波長域において撮像機能と冷却スリットマスクによる多天体分光機能を備えた近赤外線観測装置である。 0.126秒角/pixel という高い空間分解能で直径9.6分角の広視野をカバーし、近赤外線の 2 波長域(blue: 0.9~1.4 μm/ red: 1.4~2.5 μm)の同時撮像・ 同時多天体分光を行うことができる。TAO 望遠鏡サイトの特長である連続的な大気の窓を活かし、波長0.9~2.5 μm のスペクトルを切れ目なく取得することができる。このほか、初期観測装置として近赤外線エシェル分光装置NICE(Near-Infrared Cross dispersed Echelle spectrograph)を有しており、第二期観測装置の開発も進めている。
TAO計画では、最先端のプロジェクト研究を行うのみならず、観測時間の一部を共同利用として国内からの提案を募り、大学による次世代研究者育成も大きな目標としている。
紫金山-アトラス彗星(C/2023A3)はオールトの雲起源の非周期彗星。2023年1月9日に中国の紫金山天文台で発見され、同年2月22日に南アフリカのATLAS望遠鏡(Asteroid Terrestrial-impact Last Alert System:地球衝突小惑星の発見を目的とした自動観測プロジェクト)で独立に検出されたため、両方の観測所の名前から名づけられた
近日点通過は2024年9月27日で、距離は0.391天文単位。地球に最接近するのは、2024年10月12日(0.47天文単位)。その前後に肉眼で見えるぐらいに明るくなるのではないかと期待されている。
東京大学アタカマ天文台(TAO)山頂施設で撮影された紫金山-アトラス彗星。2024年10月1日5時00分-6時20分(チリ時間)の80分間に得られた静止画803カットからタイムラプス処理をおこなって作成した動画。
撮影 : 東京大学TAOプロジェクト/中西昭雄
https://www.youtube.com/embed/PXNK62SQcd0?si=G9OPTdpLKXGBmbtm"
パーカー・ソーラー・プローブは、アメリカ航空宇宙局(NASA)の太陽観測探査機で、2018年8月に「デルタ IV ヘビー」で打ち上げられた。
金星の重力を利用して計7回の減速スイングバイを行って軌道の近日点を太陽へ接近させ、最終的に太陽表面から約616万km(太陽半径の8.86倍)まで接近する予定。太陽からの熱や放射に耐えられるよう、厚さ11cmの炭素複合材で出来た太陽シールドを持ち、連結式の太陽電池パネルは水冷システムで低温に保たれ、太陽に接近する際には保護のために折りたたんでの収納が可能である。
打ち上げから3年後の2021年、8回目の近日点通過において、太陽表面から約1000万kmの距離まで接近し、コロナへの突入に史上初めて成功した。
この探査機は計画段階からソーラー・プローブ・プラス(Solar Probe Plus)と呼ばれていたが、宇宙物理学者ユージン・パーカーを称えて2017年5月に現在の名前に改称された。
明るく輝く高温プラズマ中にあるブラックホールを見ると、光子球の外側で表面輝度が高まるので、観測者にはブラックホールが光子リングに取り巻かれた影(暗い穴)となって見える。この影をブラックホールシャドウと呼ぶ。
イベントホライズンテレスコープ、M87も参照。
ブラックホールの事象の地平面の外側にある薄い球殻状の境界領域。この領域では重力が強いので、入射した光子はブラックホールの周りを周回する。周回した光子は最終的にブラックホールに吸い込まれるか、外側に飛び去っていく。光子球の内側から観測者に届く光子は少なくなるので、ブラックホールの中心付近は影となって見える。この影をブラックホールシャドウと呼ぶ。明るく輝く高温プラズマ中にブラックホールがあると、光子球の外側で表面輝度が高まるので、観測者にはブラックホールシャドウを取り巻く光子リングが見える。リング状に見えるのは、ブラックホールをどの方向から見ても同じである。
ブラックホールに突入するカメラが見る映像。銀河系中心にあるのとほぼ同じ、太陽質量の430万倍の回転していないブラックホールに落ち込んでゆく様子をアメリカ航空宇宙局(NASA)がスーパーコンピュータを5日間動かして制作した。タイムスタンプ1:36-2:23では、画面右下に光子リングと事象の地平面に対するカメラの位置が示されている(字幕は英語)。
https://www.youtube.com/embed/chhcwk4-esM?si=zRFqTArSXtEI9x5T"
インドの宇宙研究機関(Indian Space Research Organisation:ISRO)が行っている一連の月探査計画。チャンドラヤーンはサンスクリット語の「チャンドラ」(月)と「ヤーナ」(乗り物)による合成語で、直訳すると「月の乗り物」という意味になる。
チャンドラヤーン1号は2008年10月22日にインド国産ロケットPSLV-C11を使用し、サティシュ・ダワン宇宙センター(Satish Dhawan Space Centre)から打ち上げられ、11月12日に高度100キロの月周回極軌道に入った。搭載機器の月面鉱物マッピング装置「Moon Mineralogy Mapper(M3)」によって、月面における水の存在を確定的とする成果を挙げた。また、月面衝突装置「Moon Impact Probe」を探査機本体から切り離して、シャクルトン・クレーターに衝突させ、アメリカ、旧ソ連、日本、欧州宇宙機関に続いて5番目に人工物を月面へ到達させることに成功した。
続いて2019年7月22日にGSLV-IIIロケットでチャンドラヤーン2号が打ち上げられ、月面着陸を目指したが、着陸予定時刻直前に着陸機からの通信が途絶え、軟着陸は失敗した。
チャンドラヤーン3号は2023年7月14日にLVM3ロケットで打ち上げられた。8月23日に月の南極付近(南緯約69度・東経約32度)へ着陸し、インドはアメリカ、旧ソ連、中国に次ぐ4番目の月面着陸成功の国となった。その後、着陸船「ビクラム(Vikram)」から探査車「プラギャン(Pragyan)」を降ろすことにも成功している。月の夜を迎える9月4日には両者の受信機を有効にしたままスリープモードに入ったが、月が夜明けを迎える9月22日になっても通信は再開しなかった。
参考:https://www.isro.gov.in/Chandrayaan_1.html
https://www.isro.gov.in/Chandrayaan_2.html
https://www.isro.gov.in/Chandrayaan3_New.html
中国(中華人民共和国)が2020年7月23日に打ち上げに成功した火星探査機。2011年にロシアに打ち上げを委託した火星探査機(蛍火1号)の打ち上げが失敗したため、火星着陸に成功した中国初の火星探査機となった。これで中国は、火星軟着陸の成功においては、旧ソ連とアメリカについで3番目、ローバーによる探査においてはアメリカについで2番目の国となった。
天問1号は周回機(オービター)と着陸台(ランダー)および探査車(ローバー)から構成されている。2021年2月に火星周回軌道に投入され、2021年5月15日にランダーとローバーの「祝融」(Zhurong)が火星北部低地のユートピア平原への着陸に成功した。活動を開始した祝融は、ほぼ1年間で累計2000メートル近く走行し、大量の貴重な科学探査データを取得した。2022年5月に冬に入り、砂嵐に襲われたためにスリープモード(休眠状態)に入った。2023年1月時点では休眠状態からの復帰ができていない。
探査機の名称は戦国時代の詩人屈原が、宇宙創造伝説などへの疑問をつづった詩『天問』に由来し、探査車の名称は中国神話の火を司る神「祝融」に由来するとのことである。
アラブ首長国連邦(UAE)構成国の一つドバイ首長国が、UAEの建国50周年を記念し2021年の火星到達を目指して計画・開発した火星探査機。ミッション全体は、エミレーツ・マーズ・ミッション(Emirates Mars Mission)と呼ばれる。
2020年7月20日に日本の種子島宇宙センターからH-IIAロケット42号機で打ち上げられ、2021年2月9日に火星周回軌道に入った。探査機を火星周回軌道へ投入することに成功したのは、米国、ソ連(ロシア)、欧州、インドに次いで5番目である。火星の大気と気象の観測を行い、かつて表面に水を保持できた状態から現在に到った過程を研究することを目的としている。高解像度カメラと紫外線、赤外線用の二つの分光器を搭載している。
ホームページ: https://www.emiratesmarsmission.ae/
オサイリス・レックス(OSIRIS-REx;オシリス・レックスとも呼ばれる)は、アメリカ航空宇宙局のゴダード宇宙飛行センター (NASA/GSFC) が、アリゾナ大学の月惑星研究所などと共同開発した小惑星探査機。「アメリカ版はやぶさ」とも称され、小惑星ベンヌ(Bennu;べヌーとも呼ばれる)からのサンプルリターンを目的として2016年9月に打ち上げられた。2018年12月にベンヌとのランデブーに成功し、2020年10月にベンヌ表面から試料を採取、2023年9月にサンプル入りのカプセルを地球へ投下、推定250gの試料を採取することに成功した。
探査機本体は、再突入カプセルを分離後にミッション名をOSIRIS-APEXと改め、小惑星アポフィス(99942 Apophis)の周回探査(2029年到着予定)に移行している。
OSIRISは Origins, Spectral Interpretation, Resource Identification, Security の頭字語で、古代エジプトの神「オシリス」を表しているので日本語ではオシリスと発音されることが多いが、アメリカでは「オサイリス」に近い発音となる。ちなみにREx(レックス)はRegolith Explorerで「王」を意味するラテン語、APEX(エイペックス)はAPophis EXplorerの略である。
ホームページ:https://www.asteroidmission.org/
ベピコロンボ (BepiColombo) は、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) とヨーロッパ宇宙機関 (ESA) が協力して進めている国際水星探査計画。2018年10月にギアナ宇宙センターからアリアン5ロケットで打ち上げられ、合計9回の惑星スイングバイ(地球1回、金星2回、水星6回)を経て、2025年12月に水星周回軌道へ投入される予定。
JAXAが担当するのは水星磁気圏探査機「みお」(MMO: Mercury Magnetospheric Orbiter)で、水星の磁場を精密に観測する磁力計や、プラズマ・粒子観測装置など五つの計測機器を搭載している。ESAが担当する水星表面探査機(MPO: Mercury Planetary Orbiter)は、さまざまな波長を捉えるカメラで表面の様子や鉱物の組成などを詳しく調べる。2機の探査機を同時に水星周回軌道へ送り込み、総合的な観測を予定している。
水星の自転と公転の共鳴関係を発見し、スイングバイを惑星探査機の航行に利用した先駆者である、イタリアの数学者・天文学者のジュゼッペ・コロンボ(Giuseppe Colombo)の愛称に因んで命名された。
べピコロンボ(ESA)のホームページ:
https://www.esa.int/Science_Exploration/Space_Science/BepiColombo
「みお」(JAXA)のホームページ:https://mio.isas.jaxa.jp/
プラズマベータを参照。
ガス圧を磁気圧で割った比のこと。磁場エネルギーに対する、ガスの内部エネルギーの目安でもある。プラズマベータが低いときは磁場が優勢な状態であり、磁場エネルギーが散逸することで高温になる現象が発生したりする。
Five College Radio Astronomy Observatoryの略。五大学電波天文台のこと。
