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ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡

高

よみ方

じぇいむずうえっぶうちゅうぼうえんきょう

英 語

James Webb Space Telescope(JWST)

説 明

宇宙最初の星や銀河の形成、宇宙の再電離、太陽系外惑星の形成や生命の起源などの解明を目指すアメリカ航空宇宙局(NASA)の宇宙天文台。ハッブル宇宙望遠鏡の後継機。
対角が1.3 mの六角形をした軽量化ベリリウム製のセグメント鏡を18枚合わせて6.5 mの主鏡を構成する。打ち上げ時には主鏡が3つに折りたたまれており、打ち上げ後にサンシールド(日よけ)などとともに展開される。観測可能波長は0.6-28 μmで、NIRSPEC、 NIRCAM、MIRI、FGS/NIRISSの4台の観測装置を搭載し多様な観測が可能である。NASAの二代目長官ジェイムズ・ウェッブ(James E. Webb)にちなんで命名された。
JWSTは2021年12月25日にラグランジュ点 L2(地球からの距離150万km)を目指してギアナ宇宙センターからアリアン5型ロケットで打ち上げられた。2022年1月9日までに折り畳んだ状態で打ち上げられた主鏡やサンシールドなどの展開作業が完了した。
その後のコミッショニング作業は順調に進み、4月28日までに全ての装置の調整が完了し解像度が確認された。そして2022年7月12日(日本時間)にNASAはファーストライト画像を公開した。
○2022年7月12日(日本時間)に公開されたJWSTのファーストライト画像
https://www.nasa.gov/webbfirstimages
(Image credit: NASA, ESA, CSA, and STScI)
(1) カリーナ星雲(Carina Nebula、イータカリーナ星雲、りゅうこつ座)
カリーナ星雲(Carina Nebula、散光星雲)中にある星形成領域NGC3324の近赤外カメラ(NIRCAM)と中間赤外装置(MIRI)による合成画像。画面上方にはみ出ている大質量の若い高温の星々からの紫外光と恒星風によって、星間ガスの低密度領域が削られ、山脈と渓谷が入り交ざったような景観を呈する。宇宙の断崖(Cosmic Cliffs)として知られる。高温の星が作り出した泡状の空洞(画面上半分)が拡がると、周囲の星間ガスとダストが圧縮され、不安定な領域が重力崩壊して星が生まれる。距離はおよそ7,600光年。
(2) ステファンの五つ子(Stephan’s Quintet、多重銀河、ペガスス座)
ステファンの五つ子の近赤外カメラ(NIRCAM)と中間赤外装置(MIRI)による合成画像。見かけ上五つの銀河からなる多重銀河であるが、物理的に相互作用しているのは四つの銀河(NGC7317、NGC7318A、NGC7318B、NGC7319)であり、ヒクソンコンパクト銀河群92(HGC92)とも呼ばれる。距離は2億9000万光年。もっとも左側にあるNGC7320は前景の銀河。視野の大きさは満月の約1/5、1億5000万ピクセルからなる。およそ1,000枚の画像を合成したもの。ステファンの五つ子では銀河の相互作用や合体の詳細を見て取ることができ、銀河進化の理解を深めると期待される。ステファンの五つ子はペガスス座にあり、1877年にフランスの天文学者エドアルド・ステファン(Edouard Stephan)によって発見された。
(3) 南のリング星雲(Southern Ring Nebula、NGC3132、惑星状星雲、ほ座)
惑星状星雲NGC3132の近赤外カメラ(NIRCAM)と中間赤外装置(MIRI)による合成画像。通称、南のリング星雲(ほ座)。惑星状星雲は死につつある星から吐き出されたガスとダストの雲。どのような分子が存在し、星雲内のどこに集中して分布するかが明らかにされると期待される。距離はおよそ2,500光年。中心にあるのは白色矮星恒星の連星。
(4) WASP-96 b(太陽系外惑星、ほうおう座)のスペクトル
太陽系外惑星WASP-96 bの近赤外撮像・スリットレス分光器(NIRISS)によるスペクトル(ほうおう座)。水(H2O)の存在が確認できる。WASP-96 bは銀河系で確認されている5,000個以上の太陽系外惑星の一つ。質量は木星の約半分、直径は約1.2倍、表面温度は540℃以上と推定される、太陽系には見られない灼熱の巨大ガス惑星である。太陽とよく似た主系列星の周りを、太陽系で言えば水星軌道の約1/9の位置にある軌道上を公転している。公転周期は3.5地球日。距離はおよそ1150光年。
(5) SMACS J0723.3-7327(略称SMACS0723、遠方銀河団赤方偏移z=0.39、とびうお座)。
とびうお座にある遠方銀河団SMACS J0723.3-7327(SMACS0723と略称;赤方偏移z=0.39, 約42億年昔の姿)の6バンド合成カラー画像(1辺は約2.4分角)。赤外線カメラNIRCamによって計12.5時間露光された。重力レンズ効果を受けて弧状にゆがんだ遠方銀河の画像がたくさん見える。画像中の明るい星に見られる線条は回折スパイクである。ウェッブ・ディープ・フィールドの最初のものとされている。この画像は、ホワイトハウスでバイデン大統領立ち会いの下公開された。
○ JWSTの観測装置
近赤外カメラ:Near Infrared Camera (NIRCAM)
https://webb.nasa.gov/content/observatory/instruments/nircam.html
近赤外分光装置:Near Infrared Spectrograph (NIRSPEC)
https://jwst.nasa.gov/content/observatory/instruments/nirspec.html
中間赤外装置:Mid-Infrared Instrument (MIRI)
https://webb.nasa.gov/content/observatory/instruments/miri.html
精密ガイド装置と近赤外撮像・スリットレス分光装置
Fine Guidance Sensor/Near-Infrared Imager and Slitless Spectrograph
(FGS/NIRISS)
https://jwst.nasa.gov/content/observatory/instruments/fgs.html
宇宙望遠鏡も参照。
ホームページ:https://www.jwst.nasa.gov/


ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡が展開していくCG映像  週間科学ニュース

https://www.youtube.com/embed/Sf_nPpK1-6Q


Wall Street JournalによるJWSTの紹介ビデオ(Illustration: Adele Morgan/WSJ)

https://www.youtube.com/embed/rI4alFk5agQ


JWSTの調整作業の進捗と研究課題を紹介する動画(解説は英語)

https://www.youtube.com/embed/roj4oi-ND2s


ラグランジュ点L2の回りのJWSTの軌道を示すアニメーション

https://www.youtube.com/embed/6cUe4oMk69E

2023年09月24日更新

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    関連画像

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    JWSTを搭載してギアナ宇宙センターから飛び立つ「アリアン5」ロケット(Credit: ESA/CNES/Arianespace)
    https://sorae.info/space/20211226-jwst.html より転載
    L2点で観測するJWSTの想像図。(クレジット:NASA)。
    http://www.jwst.nasa.gov/images/jwst_new1.jpg
    各装置の調整作業完了後に解像度を確認した画像。
    STScI Newsletter, 2022, Volume 39, Issue 01より(Credit: NASA)
    https://www.stsci.edu/contents/newsletters/2022-volume-39-issue-01.newsletter-detail.html
    (1) カリーナ星雲(Carina Nebula、イータカリーナ星雲)
    https://www.nasa.gov/webbfirstimages
    Image credit: NASA, ESA, CSA, and STScI
    (2) ステファンの五つ子(Stephan’s Quintet、多重銀河、ペガスス座)
    https://www.nasa.gov/webbfirstimages
    Image credit: NASA, ESA, CSA, and STScI
    (3) 南のリング星雲(Southern Ring Nebula、NGC3132、惑星状星雲、ほ座)
    https://www.nasa.gov/webbfirstimages
    Image credit: NASA, ESA, CSA, and STScI
    (4) WASP-96 b(太陽系外惑星、ほうおう座)のスペクトル
    https://www.nasa.gov/webbfirstimages
    Image credit: NASA, ESA, CSA, and STScI
    (5) SMACS J0723.3-7327(略称SMACS0723、遠方銀河団、赤方偏移z=0.39、とびうお座)。
    https://www.nasa.gov/webbfirstimages
    Image credit: NASA, ESA, CSA, and STScI
    SMACS0723の画像比較。ハッブル宇宙望遠鏡のRELICサーベイで撮影されたSMACS0723の画像(左)とJWSTによるウェッブ・ディープ・フィールドの画像(右)。
    クレジット:NASA
    出典 The Robot Report
    https://www.therobotreport.com/nasa-releases-first-science-image-from-james-webb-space-telescope/
    JWSTのNIRCam と MIRIのデータを合成した「創造の柱」の画像
    Credit: NASA/ESA/CSA/STScI/Joseph DePasquale/Alyssa Pagan/Anton M. Koekemoer
    https://www.cnet.com/science/space/nasa-webb-telescope-unveils-soul-haunting-new-pillars-of-creation-view/