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三重アルファ反応

 

よみ方

さんじゅうアルファはんのう

英 語

triple alpha reaction

説 明

3つのヘリウム原子(4He、α(アルファ)粒子ともいう)から炭素(12C)が合成される原子核反応(右図および燃焼を参照)。 トリプルアルファ反応とも言う。この反応は、(1)2つの4Heから8Beが合成される過程と、(2)8Beと4Heから励起状態にある12C*が合成される過程、および(3)励起された12C*が光子γ(あるいは電子-陽電子対)を放射して基底状態の12Cに変換される過程の3段に分けられる(12C*の*は励起状態にあることを示す。陽子数と中性子数は同じだが、原子核としての構造は基底状態の12Cと異なる)。
8Beが合成される第1段と第2段はそれぞれ91.78 keVと0.29 MeVの吸熱反応であるが、全体としては発熱反応である。合成された8Beは不安定で、極めて短い寿命で2つの4Heに戻る。しかし108 Kの高温になると、熱平衡状態でごく微量の8Beができる。この微量の8Beが第2段の反応を起こし、さらにその中の微量が12C*となる。第2段の反応で合成された12C*も多くは逆反応によりもとに戻る。第2段の反応は、運動エネルギーを含めた8Beと4Heの全エネルギーがちょうど12C*の静止エネルギーと等しいときにだけ起こるので、共鳴反応と呼ばれる。ヘリウムから炭素が合成される反応なので、ヘリウム燃焼とも呼ばれる。 この反応が起こることは1953年フレッド・ホイル(F. Hoyle)によって理論的考察から提唱された。ただし近年、2×108 Kより低温では、直接3つの4Heから12Cが形成される可能性が指摘されている。

2023年05月14日更新

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    三重アルファ反応の図
    *三重アルファ反応のエネルギー準位図。図のエネルギースケールはそれぞれ異なって描かれている。
    岡村・家・犬塚・小山・千葉・富阪編『天文学辞典』、シリーズ現代の天文学別巻(日本評論社)p. 151