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四つの力

高

よみ方

よっつのちから

英 語

four forces

説 明

自然界で働く力を作用毎に整理して、素粒子(基本粒子)に働く力として最終的にまとめられた強い力弱い力電磁気力および重力の四つの力のこと。強い力と弱い力は、電磁気力よりも強い、あるいは弱いという理由でこの名前がついた。強い力と弱い力はそれぞれ、強い相互作用、弱い相互作用と呼ばれることもある。このうちで、日常生活において私たちに感じられる力は電磁気力と重力のみで、強い力と弱い力は原子核の大きさ程度以下でしかその働きは見えない。

強い力はクォーク同士をくっつけて陽子中性子を作ったり、陽子と中性子をくっつけて原子核を作ったりする時に使われる。弱い力は素粒子の種類を変える力である。電磁気力は電気の力と磁気の力を総称したものであり、重力は質量を持つ全てのものの間に働く引き合う力で、「万有引力」とも呼ばれる。

これらの力の大きさは大きく異なっている。電磁気力の大きさを1とすると、強い力は100、弱い力は1/1000、重力は桁違いに弱く10-38である。電磁気力に比べて重力がとても大きな力と私たちに感じられるのは、電磁気力では引き合う力と反発し合う力が打ち消し合う場合が多いが、重力は引き合う力のみであり、さらに、その力が質量が大きいほど大きくなるため、地球表面では大質量の地球の大きな重力が全てのものを引っ張っているからである。また、プラス/マイナスの電荷を持った二つのクォークが陽子/中性子の中に、あるいはプラスの電荷を持った複数の陽子が原子核の中に留まっていられるのは、電磁気力に比べて強い力の方が大きいためである。

強い力は8種のグルーオン、弱い力は3種のウィークボソン(正負の電荷を持つWボソンと電荷を持たないZボソン)、電磁気力は光子、そして重力は重力子(未発見)という、それぞれゲージ対称性(ゲージ理論を参照)をもつボース粒子によって媒介される(粒子をキャッチボールのように交換しあうことで力が作用する)。

素粒子の統一理論では、四つの力はプランクエネルギーと呼ばれる 10 19 GeV(GeV=109 eV;eVは電子ボルト)程度以上という超高エネルギーではもともと一つの力だったと想定されている。この力が宇宙の進化につれてまず重力と大統一力に分かれ、次に 10 16 GeV程度で大統一力が電弱力と強い力に分かれ、100GeV程度で最終的に電弱力が弱い力と電磁気力に分かれて現在の宇宙にみられる四つの力となる。最初の力の分化についてはわかっていないが、大統一理論によると、強い力と電弱力の分化と弱い力と電磁気力の分化は、それぞれ違う種類のヒッグス粒子が真空に凝縮して真空の相転移を起こすことが原因と考えられている。電弱力を分化するヒッグス粒子は2012年に発見された。

2024年06月01日更新

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    四つの力の大きさと、それぞれの力を伝える素粒子。
    高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所編『宇宙と物質の起源』(講談社ブルーバックス)より転載
    * 標準模型に含まれる素粒子の一覧
    https://en.wikipedia.org/wiki/File:Standard_Model_of_Elementary_Particles.svg
    を参考にして制作。
    *力の進化図。現在の宇宙に存在する四つの力は、元々一つの力であったものが、宇宙の温度が下がる過程で別々にわかれたものと考えられている。
    佐藤勝彦「宇宙の誕生とその歴史」、シリーズ現代の天文学第1巻、岡村・池内・海部・佐藤・永原編『人類の住む宇宙』第2版 2.1節 図2.5(日本評論社)
    *重力以外の3つの力を媒介するゲージボソンとWボソンとZボソンに質量を与えるヒッグス粒子。この表の作成時にはヒッグス粒子は見つかっていなかったが、2012年に欧州原子核研究機構(CERN)は質量126 GeVの新たな粒子を発見したと報じた。現在ではこれが電弱力を電磁気力と弱い力に分けるヒッグス粒子であると考えられている。
    二間瀬敏史「宇宙の物質史」、シリーズ現代の天文学第2巻、佐藤・二間瀬編『宇宙論I』第2版 1.3節 表1.2(日本評論社)