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四つの力

高

よみ方

よっつのちから

英 語

four forces

説 明

素粒子(基本粒子)には物質の構成要素となるクォークレプトンと相互作用を通じて力を媒介するゲージ粒子、および質量の起源となるヒッグス粒子がある。素粒子間に働く力(相互作用)には強い力弱い力電磁気力および重力の4種類があり、これを四つの力という。
四つの力はそれぞれ、8種のグルーオン、3種のウィークボソン(正負の電荷を持つWボソンと電荷を持たないZボソン)、光子、および重力子という、それぞれのゲージ対称性(ゲージ理論を参照)をもつボース粒子によって媒介される(重力子は未発見である)。強い力と弱い力はそれぞれ、強い相互作用、弱い相互作用とも呼ばれる。また、電磁気力と重力をそれぞれ電磁相互作用、重力相互作用ということもある。
素粒子の統一理論では、これら四つの力はプランクエネルギーと呼ばれる 10 19 GeV程度以上という超高エネルギーではもともと一つの力だったと想定されている。この力が宇宙の進化につれてまず重力と大統一力に分かれ、次に 10 16 GeV程度で大統一力が電弱力と強い力に分かれ、100GeV程度で最終的に電弱力が弱い力と電磁気力に分かれて現在の宇宙にみられる四つの力となる。最初の力の分化についてはわかっていないが、大統一理論によると、強い力と電弱力の分化と弱い力と電磁気力の分化は、それぞれ違う種類のヒッグス粒子が真空に凝縮して真空の相転移を起こすことが原因と考えられている。電弱力を分化するヒッグス粒子は2012年に発見された。

2023年11月16日更新

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    * 標準模型に含まれる素粒子の一覧
    https://en.wikipedia.org/wiki/File:Standard_Model_of_Elementary_Particles.svg
    を参考にして制作。
    *力の進化図。現在の宇宙に存在する四つの力は、元々一つの力であったものが、宇宙の
    温度が下がる過程で別々にわかれたものと考えられている。
    佐藤勝彦「宇宙の誕生とその歴史」、シリーズ現代の天文学第1巻、岡村・池内・海部・佐藤・永原編『人類の住む宇宙』第2版 2.1節 図2.5(日本評論社)
    *重力以外の3つの力を媒介するゲージボソンとWボソンとZボソンに質量を与えるヒッグス粒子。この表の作成時にはヒッグス粒子は見つかっていなかったが、2012年に欧州原子核研究機構(CERN)は質量126 GeVの新たな粒子を発見したと報じた。現在ではこれが電弱力を電磁気力と弱い力に分けるヒッグス粒子であると考えられている。
    二間瀬敏史「宇宙の物質史」、シリーズ現代の天文学第2巻、佐藤・二間瀬編『宇宙論I』第2版 1.3節 表1.2(日本評論社)