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コロナ(太陽の)

小

よみ方

ころな(たいようの)

英 語

solar corona

説 明

電磁波で直接観測が可能な恒星の大気のうち、コロナは100万度を越える高温の外層大気である。太陽の場合、皆既日食時に明るい光球や彩層が月に隠されることで淡いコロナの様子を肉眼で見ることができる。太陽大気の温度は、太陽中心核から光球の温度最低層まで減少を続け、彩層で上昇に転じ、短い距離の遷移層を経て約6000度である光球表面の約2000 km上空で100万度以上の温度をもつ。この領域がコロナである。その高温のため、コロナ中の原子のほとんどは電離したプラズマ状態にあり、そこにあるイオンからプラズマの温度に特有の輝線が放射される。このようにコロナが高温であるのは、下層から伝達されたエネルギーがコロナで解放されて大気が加熱されているからである。その加熱機構として諸説提案されてはいるが、現在までのところ完全な理解には至っていない(コロナ加熱を参照)。 皆既日食の際に可視光で見られるコロナのうち、比較的太陽表面に近いところは光球からの光がコロナ中の電子に散乱されて観測者に届く連続光成分(Kコロナ)である。この可視光コロナの分光スペクトルを見ると、ある狭い波長に局在した輝線成分(Eコロナ)がイオンからの放射として観測でき、このうち可視光域で最も明るいのが5302.8Åにある13階電離した鉄イオンからの輝線放射である。太陽半径の数倍の高さになると、黄道面に浮遊するダストによる太陽光の散乱光が最も明るい成分となる。これは高温のコロナではないが、コロナ域からの放射でスペクトル中にフラウンホーファー線が観測されることから慣習でFコロナと呼ばれる。

2018年08月30日更新

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    関連画像

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    皆既日食の際に見られるコロナのようす。
    (クレジット:国立天文台)
    https://www.nao.ac.jp/contents/astro/gallery/SolSys/Sun/e60329zs.jpg