一様な明るさの面光源を作り出す装置。球体の内側に散乱性の高い白い塗料(硫酸バリウム(BaSO4)やフッ素系樹脂など)を塗布した構造をしており、球体に開けた小さな穴の一つが光源の入射ポート(窓)、もう一つが観測装置への出射ポートになっている。入射ポートから積分球内に入った光は散乱性の高いバッフルで散乱され、積分球の内面で多重散乱(乱反射)を繰り返し、出射ポートでは一様な明るさの散乱光が観測される(図1)。天文学では観測装置に使う検出器感度の一様性を補正するための参照データを得るためや、波長ごとの感度(分光感度)の測定などに用いる。
天文観測装置は天体の明るさなどを精密に測定するので、その検出器の感度は良く校正されなければならない。CCD などの2次元検出器にわずかでも検出器面上の場所による「感度むら」があると、天体の写る場所によって測定値が異なってしまう。そこで、検出器の感度むらを測定してこれを補正するために、明るさが一様な面光源が必要となる。この用途として、夕方や朝の薄暮時の空や望遠鏡ドームの内側に反射板を設置して用いることが多いが、積分球を用いることもある。
分光感度の測定では、積分球を単色光源を作り出すモノクロメーターと組み合わせる。モノクロメーターで得られた単色光を積分球の入射ポートに入れ、測定したい検出器(CCD)を実際の観測時と同じように冷却した状態で出射ポートに取り付ける。入射光の強度は別途積分球内に設置したフォトセンサで測定し、CCDの出力と比較して感度を求める(図2, 図3)。
円盤銀河において中性水素原子ガスや星の分布が円盤外縁部で銀河面から大きく外れてたわんでいること。英語ではwarpというので、日本語でもそのままウォープまたはワープと呼ぶ場合もある。われわれの天の川銀河(銀河系)を含めて、渦巻銀河のおよそ半数に見られる。
銀河系の場合は、銀河中心に対し点対称的で、円盤を横から見ると積分記号 $\int$ のような形をしている。銀河系と同様の形のたわみを持つ円盤銀河が多い。
数個の明るい銀河が天球面上で近接しているもの。たとえば3個が近接している場合は、全体を3重銀河という。多重銀河は、構成する銀河が物理的に結びついた1つの銀河群であることが多いが、たまたま天球面上で近接しているだけで物理的には無関係である場合もある。
ダークレーンを参照。
子午線を参照。
ダストが銀河円盤内に集積して濃くなっているところ。暗黒帯あるいはダストレーンと呼ぶこともある。そこだけ背景の星などからの光が強く吸収を受けるため黒い帯のように観測されるのでこの名前がある。円盤銀河では円盤の赤道面にダストが集積しているため、円盤を真横からみた銀河に、しばしばこのような黒い筋がくっきりと見られる。楕円銀河でもたまに見られる。
銀河系(天の川銀河)外の天体(通常は銀河)で一定の条件を満たすものをくまなく分光観測してその赤方偏移を測るサーベイ観測。赤方偏移(後退速度)からは距離が求められるので、赤経、赤緯(赤道座標系)の情報と合わせて天体の3次元座標が得られるほか、見かけの等級と組み合わせると絶対等級がわかる。分光対象を選ぶための最も単純な条件は、見かけ等級がある一定値より明るいというものだが、色や表面輝度などの条件も追加して対象天体をさらに絞り込むこともある。赤方偏移サーベイは、銀河の形態ごとの平均的な性質や光度関数など、大きなサンプルに対して絶対等級が必要な銀河研究に不可欠である。また赤方偏移サーベイから得られる宇宙の大規模構造(銀河の空間分布)とその進化は、観測的宇宙論の基礎データである。
赤方偏移サーベイから、宇宙大規模構造のヒントをはじめて見つけたのはステファン・グレゴリー(Stephen Gregory)とレアード・トンプソン(Laird Thompson)で1978年のことである。彼らが分析したのはかみのけ座銀河団方向の238平方度の天域にある銀河の分布である。従来からここにある多くの銀河の赤方偏移は知られていたが、サンプルに完全性がないために奥行きを含めた三次元構造(空間分布)は議論できなかった。彼らはこの天域にある15等級より明るい銀河238個の「全ての」赤方偏移を知るために、あらたに44個を観測した。サンプルが「完全」になったために、描き出された結果から空間分布の議論ができたのである。その空間分布を示す図(図1)には、二つの銀河団とそれをつなぐフィラメント状構造からなる超銀河団、および銀河のないボイドらしい構造が見えていた。一方ボイドの存在は、1981-87年に、ロバート・カーシュナー(Robert Kirshner)らによるへびつかい座の天域の赤方偏移サーベイで観測的に実証された(図2)。
赤方偏移サーベイの完全性を重視してハーバードスミソニアン天体物理研究所(Harvard Smithsonian Center for Astrophysics: CfA)の研究者が中心となって大規模な赤方偏移サーベイ(CfAサーベイ)が行われた。第一次サーベイ(CfA-I)は14.5等より明るい全天の2401個を対象とし、1981年に完成した。その結果、広い天域で宇宙の大規模構造の片鱗が見えてきた。そこで、限界等級を15.5等と1等級暗くした第二次サーベイ(CfA-II)が行われた(1985-1999)。観測開始直後に発表された結果から、超銀河団、フィラメント、ボイドが織りなす宇宙大規模構造がくっきりと見えてきた(図3)。これに刺激されて1980-90年代にはさまざまな赤方偏移サーベイが行われた(図4)。CfAサーベイでは対象銀河は写真サーベイのカタログから取られたが、これらのサーベイではより暗い銀河を目指して、CCDなどによるサーベイ観測から対象銀河が選ばれるようになってきた。
かつての分光器は1回の観測で1天体しか分光できなかったが、視野内に多数のスリットを配置できるマルチスリット型や、多数の光ファイバーを用いたファイバー型の多天体分光器が発明されると、1980年代頃から赤方偏移サーベイ(分光サーベイ)の効率は飛躍的に向上した(図5)。
多天体分光器によるCCD時代の大規模な赤方偏移サーベイへの道を開いたのは、3.9mアングロオーストラリア望遠鏡による2dF銀河赤方偏移サーベイ(2dF Galaxy Redshift Survey: 2dFGRS)とスローンデジタルスカイサーベイ(SDSS)である。前者は過渡的なやり方で、写真サーベイのデジタル処理から作られたカタログから銀河を選んで2001年までに22万個の赤方偏移を測定した。後者はCCDにより撮像サーベイと分光サーベイを同じ望遠鏡で並行して行うという新しい時代の銀河サーベイの嚆矢となり、当初計画で予定した93万個の銀河の赤方偏移測定を2008年に完了した(図6)。
2021年から始まったキットピーク国立天文台の口径4 mメイヨール望遠鏡と5000チャンネルの多天体分光器を用いたダークエネルギー分光装置(DESI)による分光サーベイは、望遠鏡口径と分光器のチャンネル数でSDSSを凌駕し、2025年現在観測を続けている。すばる望遠鏡超広視野多天体分光器(PFS)による分光サーベイは2025年より観測を開始した。
衝突ないしは近傍を通過することにより、重力を及ぼしあって形態に特徴的なパターンを示す複数の銀河。強い潮汐力によって昆虫の触角(アンテナ)のように伸びた細い紐状の構造、くっきりとした渦巻腕、車輪のような形、シェル構造などが作られ、特異銀河として分類されているものが多い。ただし、子持ち銀河 M51 のようにほとんど変形を受けていないものもあり、相互作用による形態への影響の程度はまちまちである。このような相互作用は銀河の潮汐相互作用(tidal interaction)と呼ばれることが多い。
相互作用銀河の理解はコンピュターシミュレーションの発展とともに深まった。衝突する二つの銀河の質量比や衝突パラメータの違いなどにより、潮汐相互作用によってどのような形のパターンが発生するかをはじめてコンピューターシミュレーションで示したのはトゥームレ兄弟(Alar/Juri Toomre)で、1972年のことであった。この論文では、銀河を質点として扱い、一方の銀河(質点)の周りに、銀河円盤(ディスク)を模した平面上に120個のテスト粒子(質量が質点=銀河に比べて無視できる)をおいて、そのテスト粒子が作るパターンを調べた。現在は、星とガスとダークマターを組み込んだ、より現実の銀河に近い潮汐相互作用のシミュレーションが多数行われているが、トゥームレ兄弟の論文と基本的に同じ結果が得られている。
銀河同士の相互作用はありふれた現象であり、銀河進化に大きな影響を与えている。相互作用の結果、最終的には二つの銀河が合体(銀河合体)して1つの銀河になるものもある。宇宙初期における銀河形成の初期段階では、小さな銀河が頻繁に合体を繰り返して成長してきたと考えられている(ボトムアップシナリオ)。相互作用や銀河合体によってしばしばスターバースト(爆発的星生成)が誘発される。銀河相互作用と活動銀河核との関連も指摘されている。
ハッブル宇宙望遠鏡で撮影した相互作用銀河:
https://hubblesite.org/contents/news-releases/2008/news-2008-16.html?news=true#section-id-2
合体に至る二つの渦巻銀河の衝突のコンピュータシミュレーション。ハイデルベルグ大学のVolker Springelによる。色の違いはガスの温度の違いを表している。
https://youtu.be/3-6WqGnufZg
X線バーストは数秒から数十秒の間、X線で爆発的に輝く天体現象である。X線バーストを発生させる天体をX線バースターという。典型的なバーストの間隔は数時間から1日の範囲にある。バーストのスペクトルは黒体放射のスペクトルによく合う。黒体の温度はバーストのピーク時で(2-3)x107 Kに達し、X線強度が弱くなるにつれ温度も下がる。1回のバーストで放出されるエネルギーは、1032 J(ジュール)にも及ぶ。その起源は中性子星の表面に降り積もった水素やヘリウムを主体とするガスの爆発的な核融合反応である。このような爆発を起こすには質量降着率が低いことと中性子星の磁場が弱いことが必要条件である。したがってX線バースターは比較的X線が暗く、年老いた中性子星と小質量星からなる連星系である。アウトバーストも参照。
矮小不規則銀河の一種。BCDと省略されることもある。大きさは数キロパーセク(数kpc=1万光年)程度と小さいが、矮小銀河としては例外的に表面輝度が高い。ガスを豊富に持ち、活発な星生成活動をしている。重元素量は通常の不規則銀河よりも低い。これらの性質は、この銀河が比較的若い進化段階にあることを示唆する。矮小銀河も参照。
銀河の渦巻腕を維持、増強する機構の一つ。局所的で線形近似した密度波理論では扱えないが、数値シミュレーションではしばしば目にする現象として知られる。銀河回転に対して先行する渦巻型(中心から外側へ行くほど回転方向に対して先行していく形で、リーディング状渦巻型と呼ぶ)の密度波が、差動回転で巻き込まれて後行する渦巻型(トレーリング状渦巻型と呼ぶ)に変わる際に、密度波の強さが増幅される現象を指す。銀河円盤に対応する重力ポテンシャルの下では、天体は完全な円運動からわずかに外れた動きをするが、その運動は、円運動する点を中心とする小さな楕円運動として記述できる。これを周転円近似といい、該当する楕円運動を周転円運動という。この場合、周転円運動の回転方向は銀河回転とは逆向きとなる。渦巻型の密度波がリーディング状からトレーリング状に移行する際には渦巻型ポテンシャルのパターン回転速度が、この周転円運動の回転角速度に近くなる。このため、それ以外の時期に比べて天体がポテンシャルから影響を受ける時間が長くなり、より強い影響を受ける。その結果、重力ポテンシャルへの天体の集中がより強く起こり、密度波が増幅されると考えられている。スウィング増幅機構とは、この機構のことである。
内部リンドブラッド共鳴がない力学構造を持った銀河円盤では、内側に伝わるトレーリング状渦巻が中心を通り越すとリーディング状渦巻になるため、スウィング増幅機構が働き、それによって銀河全体の渦巻構造が維持されている可能性がある。
星間偏光の波長依存性を表す経験式。波長λmaxで偏光度が最大値Pmaxをとるとき、波長λでの偏光度Pλは、Kを任意定数として、次式でほぼ与えられる。
Pλ/Pmax=exp [-K loge2(λmax/λ)]
この経験式が成り立つ理由は解明されていない。
粒子間の重力相互作用を計算する方法の一つ。粒子分布を立方体を再帰的に分割する8分木構造で表現し、ある粒子からみて遠くにある粒子グループからの力を対応する適当なサイズの立方体内の粒子の重心(あるいはその粒子群がつくるポテンシャルの多重極展開)に置き換える。遠くの粒子ほど大きな立方体にすることで、1粒子当りの計算量を減らすことができる。
2次元の例で説明する。粒子の分布する全空間を正方形で囲み、それを4つの小さな正方形に均等分割する。その正方形の中に粒子が指定した数(実装によるが最大で30個程度)以上ある場合はそれをさらに4分割する。これを、すべての正方形の中の粒子が指定した数より少なくなるまで繰り返す。こうして、大きな正方形が順次小さな正方形に枝分かれしていくツリー(木)構造を作る。ある正方形の中の粒子からある粒子への力は、正方形と粒子の距離が正方形のサイズより十分大きいなら正方形内の粒子の作るポテンシャルの多重極展開で置き換える。そうでなければ4つに分割した正方形 からの力の合計とする。この分割も、必要に応じて繰り返す。最小サイズの正方形まできても十分離れていない場合にはその中の粒子からの力を直接計算する。粒子分布全体からの力は上の手順で全粒子を含む正方形からの力として計算できる。
ツリー法では、粒子数 N の場合、1粒子当たりの計算量を N2 ではなく、N log N の桁に減らすことができる。現在の大規模な粒子系シミュレーションはほとんどすべて、このツリー法、その周期境界への拡張であるツリーPM法や、ツリー法に類似した高速多重極法で行われている。
ニュートリノと原子核の間の弱い相互作用の一種。電子ニュートリノの捕獲の例としてはデービス(R. Davis, 2002年ノーベル賞受賞)が太陽ニュートリノの検出に用いた $^{37}{\rm Cl}+\nu\rightarrow^{37}$${\rm Ar}+{\rm e}$ がある。この例では原子核中の中性子が陽子に変わり電子が放出されるので、原子核による電子捕獲の逆反応とも見なせる。
明るい銀河を数個含む銀河の集団。孤立銀河と銀河団の中間の階層に位置づけられるが、銀河群と銀河団の間には明確な境界はない。天の川銀河(銀河系)は局所銀河群という銀河群に属する。局所銀河群には少なくとも50-60個以上の銀河が見つかっているが、その大部分は矮小銀河である。その他の銀河群も典型的にはこの程度の数の銀河を含んでいると考えられるが、暗い矮小銀河まで詳細に観測された銀河群はごく限られている。銀河や銀河団と同様、銀河群もその質量の大部分はダークマターが担っており、多くはダークマターの重力ポテンシャルによって数千万度のプラズマガスを閉じ込めている。銀河群の大きさは1メガパーセク(1 Mpc=326万光年)程度、総質量は1012-1013$M_{\odot}$ 程度、内部の銀河の運動の速度分散は数百km s-1以下である。頻度は低いが、極めて狭い領域に銀河が密集したコンパクト銀河群と呼ばれる銀河群も存在する。
空の一定の天域あるいは全天を覆い尽くす観測モードのこと。単にサーベイということもある。古くは掃天観測と呼ばれた。特定の天体を同定しカタログ化することを目的とすることが多い。多くの場合専用の望遠鏡と観測装置が用いられる。観測モードだけでなく観測プロジェクトの名称にもサーベイという語が用いられる。サーベイ観測によるカタログや画像は多くの場合公開される。
天文観測には大別して2つの観測モードがある。一つは、既に知られている天体に望遠鏡を向けてその天体を詳細に調べる観測で、もう一つは、特定の性質を持つ天体を探す、あるいはそれらの天体すべての性質を定量的に測定するために、特定の天域あるいは全天を望遠鏡で覆い尽くす観測である。前者をポインティング観測、後者をサーベイ観測という。サーベイ観測のうちで、撮像観測によるものを撮像サーベイ、分光観測によるものを分光サーベイと呼ぶ。また、サーベイ観測はその対象によって区分されることもある。たとえば、Tタウリ型星サーベイ、球状星団サーベイ、銀河サーベイ、銀河団サーベイ、などなどである。多数の銀河の赤方偏移を決めることを主目的にした分光サーベイは、銀河の赤方偏移サーベイと呼ばれることもある。
眼視観測時代の広がった天体(銀河、星雲、星団など)のサーベイからは、有名なメシエカタログやNGCカタログ、ICカタログなどが作られた。サーベイ観測は写真観測時代に大きく発展した。写真によるサーベイ観測を効率的に行うためには望遠鏡の視野が広いことが重要である。伝統的な可視光観測においては、パロマー天文台スカイサーベイを契機として、広視野のシュミット望遠鏡で写真乾板を用いて撮像サーベイをして天体のカタログを作り、その中の興味ある天体を大望遠鏡で詳細に分光観測するという役割分担が行われていた。口径1mクラスのシュミット望遠鏡による写真撮像観測の限界等級が、4mクラス望遠鏡の分光観測の限界等級にほぼ等しかったこともあり、1970年代から90年代にかけては、大型シュミット望遠鏡によるサーベイとそれからの天体カタログの作成が活発に行われた。
当初はサーベイの写真乾板をルーペなどで見る眼視検査から天体のカタログが作られた。銀河サーベイではこの方法で作られるカタログに含まれる銀河の数は3万個程度が限界だった。しかし、コンピュータの進歩により、写真乾板を測定機でデジタル化したデータをコンピュータ処理してカタログを作るようになると、1000万個以上の天体が扱えるようになった。8mクラスの望遠鏡が登場すると、シュミット望遠鏡の写真観測の限界より暗いものまで分光観測できるため、感度の高いCCD(電荷結合素子)を用いた新しい撮像サーベイとそれに基づく分光サーベイが必要となってきた。
2000年から観測をはじめた口径2.5 mの専用望遠鏡と640チャンネルの多天体分光器によるスローンデジタルスカイサーベイ(SDSS)は、撮像と分光を並行して行うCCD時代のサーベイ観測の嚆矢となった。すばる望遠鏡のハイパーシュプリームカムによる撮像サーベイは2022年に完了した。2021年から始まった、キットピーク国立天文台の口径4 mメイヨール望遠鏡と5000チャンネルの多天体分光器を用いたダークエネルギー分光装置(DESI)による分光サーベイは、望遠鏡口径と分光器のチャンネル数でSDSSを凌駕し、2025年現在観測を続けている。すばる望遠鏡超広視野多天体分光器(PFS)による分光サーベイは2025年より観測を開始した。目的を特化した可視光のサーベイには、ヒッパルコス衛星やガイア衛星による位置天文学を主目的とする全天サーベイ、ケプラー衛星やTESS衛星による太陽系外惑星探査などがある。
次世代のサーベイ観測と期待されているのは、ベラルービン天文台の時空間レガシーサーベイ(Legacy Survey of Space and Time: LSST) である。口径8.4 m(有効口径6.4 m)のシモニーサーベイ望遠鏡で全天のほぼ半分の20000平方度を、可視光と近赤外線の6つのバンド(u, g, r, i, z, y)で観測する。天文台から見える全天の1バンドでのサーベイを数夜で完了する。このサーベイを繰り返して10年間継続する。2025年6月に初期観測画像を公開した。
可視光以外のサーベイにもさまざまなものがある。赤外線では2ミクロン全天サーベイ(2MASS)、IRAS衛星、あかり衛星、WISE衛星による全天サーベイ、X線ではROSAT衛星による全天サーベイなどがある。
シャプレー(Harlow Shapley;1885-1972)は、球状星団の研究から、現代知られている天の川銀河(銀河系)の構造と規模を最初に明らかにしたアメリカの天文学者。ミズーリ州ナッシュビルに生まれ、ミズーリ大学を卒業後、プリンストン大学に入学、ラッセルのもとで恒星、変光星、星団の研究を行ない、1913年に学位を得た。1914年にウィルソン山天文台の台員となり、測光学、分光学の手法を基に多くの業績をあげた。特に、セファイド変光星の周期-光度関係に基づいて、多数の球状星団の距離を確定して、それらの空間分布を導いた。その結果、球状星団系が天の川銀河の構造の枠組みを示すものであり、太陽はその中心から5万光年離れたところに位置するとした。1920年4月に宇宙の大きさと渦巻星雲の正体をめぐってカーチス(H.D. Curtis)とアメリカ科学アカデミーでくりひろげた公開討論は後に「大論争」と呼ばれ有名である。1921年から1952年までハーバード大学天文台の教授、台長に就任、銀河の距離データを含む広範な『シャプレー‐エイムズ・カタログ』を1932年に発表した。ユネスコの設立に尽力するなど、第二次世界大戦中、後を通じて社会的な活動に力を注いだ。
参考:https://phys-astro.sonoma.edu/node/1473
一般に連続体内部で個々の部分が異なった運動をするとき、その速度の分布を場所の関数として表現したもの。たとえば、銀河内部では恒星や星間ガスがさまざまな運動をしている場合、これを場所の関数として表現すれば、銀河内部運動の速度場を示したことになる。速度は3次元ベクトルなので、本来はその分布が対象となるはずだが、実際には観測上あるいは計算上の都合から、銀河面上や天球上などの2次元成分のみ、あるいは視線速度のみの分布を示したものも速度場と呼ぶ。
超対称変換とはボース粒子とフェルミ粒子を入れ替える変換であり、この変換に対する対称性を取り入れた理論のこと。素粒子の標準理論には、なぜ電弱エネルギースケールが量子補正に対して安定であるか、という階層性問題が存在するが、ボーズ粒子とフェルミ粒子の量子補正のループは逆符号を持つため、これらの間に超対称性が成り立っていると、両者のループの寄与は完全に打ち消し合い、電弱統一理論のスケールを安定化できるのである。また、3つのゲージ結合定数の大きさが、超対称性を考慮すると高エネルギーで一致し、大統一理論の観点からもその存在が示唆されている。しかしながら、超対称性が現在でも破れていないとすると、クォークやレプトンの超対称パートナーが同じ質量で存在することになるが、それらは未発見であり超対称性は現在は破れている。
ツリー法と PM(Particle-Mesh)法を組み合わせ、重力相互作用の遠距離成分は高速フーリエ変換を使い、近距離成分はツリー法で求める方法である。基本的な考え方は P3M 法(Particle-Particle Particle-Mesh)法と同じで、Particle-Particleの部分をツリー法に切換えただけである。宇宙論的構造形成シミュレーションを P3M 法で行う場合には空間構造が発達すると急速に計算量が増大することが大きな問題であったが、近距離成分をツリー法で扱うことでこの問題をほぼ解決したため、近年ではツリーPM法が主流になっている。
