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季節の変化

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よみ方

きせつのへんか

英 語

seasonal variation

説 明

季節の変化は、地表面に入射する太陽エネルギーの変化による地表温度の変化が主な原因である(説明図1)。北緯約35度(東京付近の緯度)の地点において、南中時の太陽光の入射角度は、冬至で約32度、春分と秋分で約55度、夏至で約78度である。太陽光の入射角が小さい程、単位面積あたりに地表面に入射する太陽エネルギーは小さい。このため、冬至の頃には地面や海面が最も温まりにくく、夏至の頃には最も温まりやすい。このために、気温は冬に最も低く夏には最も高くなり、春と秋はその中間となる。ただし、昼間の長さが冬至の頃は最も短かく夏至の頃最も長いことも気温の変化に影響している。
季節の変化の最大の原因は太陽の南中時の高度(南中高度)の変化であるので、季節変化は地球の高緯度地域で最も顕著に見られ、中緯度帯ではほどよい変化となり、赤道付近ではそれほど顕著ではない。また北半球と南半球では季節が逆転する。東京(北半球の中緯度)が夏の時にシドニー(南半球の中緯度)は冬である。北極圏や南極圏では夏には真夜中でも太陽が沈まない白夜となり、冬には逆に正午でも太陽が沈んでいる状態の極夜となる。
中学校理科で学ぶ「季節の変化」の主要因について以下の二つの誤解が広く見られる。第一は、太陽と地球の距離の違いが原因であるという誤解である。太陽の周りの地球の公転軌道は太陽を一つの焦点とする楕円軌道であり、地球と太陽の間の距離は年間を通じて僅かに変わる。気温が夏に高く冬に低くなるのは、夏は冬に比べて地球-太陽間の距離が近いためと誤解されることがあるが、実際にはその逆である(説明図2)。地球-太陽間の平均距離(1天文単位)は約1億5000万kmで、近日点距離と遠日点距離の差は僅か500万km程度なので、年間を通じた地球-太陽間の距離の変化は±2%未満である。距離の違いによる入射エネルギーの違いは、南中高度の変化による違いと比べると極めて小さい。
第二は、日本と太陽の距離の違いが原因であるとする誤解である。説明図1の地球の拡大図を見て、赤道を基準にすると、夏至の頃は北半球の中緯度帯(日本)が太陽に近く、冬至の頃は遠くなるので、これが気温の変化の原因と誤解されることが多い。地球の赤道半径は約6400kmである。仮に冬至と夏至で、地球の半径分だけ日本と太陽の距離が変わったとしても、6400/150,000,000=0.00004 (=0.004%) なので、そのことによる入射エネルギーの違いは無視できるくらいに小さい。二至二分も参照。
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「地軸の傾きと南中高度の違い」を説明するムービー。季節による太陽の南中高度の違いがわかる。(製作「CGムービー人理科」)
https://youtu.be/jOveW6_kAI4

2023年12月16日更新

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    * 説明図1 季節変化の解説図。東京(北半球の中緯度)では、太陽の南中高度は冬至の頃に最も低く、夏至の頃に最も高くなる。
    * 説明図2 地球-太陽間の距離の年変化(2013年1月1日から12月27日まで10日おき)。単位は天文単位(au)。地球は夏至の頃に最も太陽から遠くなり、冬至の頃に最も近くなる。縦軸の原点が0でないことに注意。NASA/JPLの天体暦計算プログラムシステムHORIZONSによる。
    https://ssd.jpl.nasa.gov/horizons.cgi