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アンドロメダ銀河

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よみ方

あんどろめだぎんが

英 語

Andromeda galaxy

説 明

矮小銀河を別にすれば、大小マゼラン雲に次いで天の川銀河銀河系)に近い銀河。カタログ番号では、M 31(メシエカタログ)あるいはNGC 224(NGCカタログ)とも呼ばれる。アンドロメダ座にあり、距離は約770キロパーセク(770 kpc=250万光年)。人工光のない場所なら暗夜にかすかな光斑として肉眼でも見ることができる。長時間露光した画像では、天球上で4度(満月の直径の8倍)以上にも広がって見える。大小マゼラン雲が小規模な不規則銀河であるのに対して、M 31は銀河系とよく似た巨大な渦巻銀河であり、銀河系の中で起こる星生成活動などの比較研究の対象として重要な天体である。
銀河系とは異なり、外縁部を除くと円盤部も比較的古い星が多く、星間分子ガスも外縁部以外にはわずかしかない。金属量の銀河内位置による違いが少ないことや、ハローに分布する星が不規則な構造を示していることなどから、アンドロメダ銀河は多数の矮小銀河が合体してできたことが示唆される。また、銀河系での高速度雲に対応すると考えられる中性水素原子ガスの構造も見つかっており、G型矮星問題と合わせて、銀河外からの物質の降着が今も進行中であることをうかがわせる。
アンドロメダ銀河の周りには、M 32、NGC 205、NGC 185、NGC 147という矮小楕円銀河と、それより暗く表面輝度の低い矮小楕円体銀河がいくつも存在する。アンドロメダ銀河と銀河系の周辺にある数十個の銀河(ほとんどが矮小銀河)は、局所銀河群と呼ばれる集団を形作っている。
1924年の論文でハッブル(E. Hubble)が、アンドロメダ銀河中のセファイドの距離を測定して、アンドロメダ銀河が銀河系の中にある「ガスからできた星雲」ではなく、銀河系の外にあって、銀河系と同規模の巨大な恒星系(銀河)であることを発見し、「銀河からなる宇宙」という新しい宇宙観が確立するきっかけとなった。
アンドロメダ銀河はそのスペクトル線がわずかに青方偏移を示し、銀河系に近づいてきていることはハッブルの発見以前から知られていたが、近年アンドロメダ銀河中の星の固有運動ハッブル宇宙望遠鏡によって測定され、視線速度と合わせてその空間速度が明らかになった。その結果、アンドロメダ銀河は今から約40億年後に銀河系とほぼ正面衝突して最初の合体が始まり、3回目の合体の後、約60億年後に一つの楕円銀河になると考えられている。この合体には、M33を含む局所銀河群の多くの矮小銀河が巻き込まれ、約1000億年後には局所銀河群全体が一つの楕円銀河となる。


アンドロメダ銀河と銀河系(天の川銀河)の衝突のシミュレーション(簡略版)

https://www.youtube.com/embed/4disyKG7XtU


アンドロメダ銀河と銀河系(天の川銀河)の衝突のシミュレーション(詳細版、英語の解説ありー「字幕」を「オン」にする)

https://www.youtube.com/embed/qnYCpQyRp-4

2022年10月23日更新

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    関連画像

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    左の写真は東京大学木曽観測所の105 cmシュミット望遠鏡で撮影したもの。右の写真はその一部をすばる望遠鏡の主焦点カメラSuprime-Camで撮影したもの。M 31の星々が一つずつ分解されていることがわかる。
    すばる望遠鏡のハイパーシュプリームカム(HSC)で撮影したアンドロメダ銀河
    https://www.nao.ac.jp/news/topics/2013/20130731-subaru-hsc.html
    (左)ハッブルが1923年10月6日にM 31でセファイドを発見した写真乾板。
    右は左の写真乾板に写っているM 31の領域を示す図。
    (中村 士、岡村定矩著『宇宙観5000年史』東京大学出版会)