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大論争

 

よみ方

だいろんそう

英 語

The Great Debate

説 明

1920年4月26日にアメリカの現スミソニアン自然史博物館の建物で行われたアメリカ国立科学院の年会で, シャプレーカーチスが宇宙の大きさに関して当時の二つの考え方を代表して行った公開討論会。 後にその記録が両者が書いた論文として出版されている。

議論の主要ポイントは「宇宙の大きさ」と「渦巻星雲の正体」であったが、両者の主張はかみ合わず問題は決着を見なかった。両者の主張はともに一部正しく、一部は間違っていた。シャプレーは、それ自体が宇宙全体と当時考えられていた銀河系天の川銀河)の大きさは正しく推定したが、渦巻星雲(現在の呼称では渦巻銀河)の本質を正しく推定できず、宇宙の真の姿に到達できなかった。当時、ファン・マーネンが渦巻星雲 M101の回転によると見なせる固有運動を測定しており、それは渦巻き星雲が近距離にあることを意味していた。これは渦巻星雲を銀河系中のガス星雲と考える説にとって強力な証拠と考えられた。一方、カーチスは、カプタインのモデルに従って銀河系の大きさを小さく見積もりすぎたが、渦巻星雲が銀河系の外にある莫大な数の星の集団(当時は島宇宙でと呼ばれていた)であると正しく認識した。

後にハッブルが1924年にアンドロメダ星雲M31)中のセファイドを発見し、リービットが発見したその周期-光度関係を利用して距離を求めた。その距離は、シャプレーとカーチスのどちらの説を採用したとしても銀河系の大きさを遥かに超えており、アンドロメダ星雲は銀河系の外にある天体であることを紛れもなく示していた。しかし、セファイドの周期-光度関係の目盛りに関しては研究者の議論が続いており、さらにファン・マーネンのM101以降の測定を含めた数個の渦巻星雲の固有運動の検出は近距離説の強力な証拠とされていた。このためこの大論争の最終結着は、ファン・マーネンが、「系統誤差に影響を避けるのはとても難しいので、(自分の測定したものも含む)固有運動の測定結果をあまり確かなものと見ない方が良い」という主旨の論文を公表する1935年まで持ち越された。

2025年01月26日更新

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    * シャプレーとカーチスによる大論争(作成 岡村定矩)
    大論争の内容をシャプレーとカーチス自身が書いた論文
    http://philosophyofscienceportal.blogspot.com/2009/09/shapley-and-curtis-documents-on.html
    * シャプレーとカーチスの宇宙像の模式図
    中村 士、岡村定矩著『宇宙観5000年史』図11.6(東大出版会)
    * 渦巻星雲M101(左)とその回転運動(右)。右図には星雲中の点(星とは見なしていない)の1年あたりの位置のずれ(固有運動)が矢印線で表されている。その長さを示す右下の「SCALE」は0.1秒角。平均の回転成分(ずれ)は約0.022秒角/年というわずかなものだった。位置測定の基準としてのは○で囲まれた星である。
    出典:縣秀彦著 岡村定矩監修『ビジュアル天文学史』(緑書房)
    (右側原図は van Maanen A 1916,ApJ, 44, 210)