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ウィルソン山天文台

 

よみ方

うぃるそんさんてんもんだい

英 語

Mount Wilson Observatory

説 明

アメリカのカリフォルニア州のパサデナ郊外にある標高約1700 mのウィルソン山頂にある天文台。

ヘール(G.E. Hale)は1902年に、実業家アンドリュー・カーネギーが分野を問わず自然科学研究を支援するワシントン・カーネギー協会(Carnegie Institution of Washington;現在の名称はカーネギー研究所 Carnegie Institution for Science)を設立したことを知り、その支援によってウィルソン山に天文台を作りたいと考えた。彼とその仲間は、ヤーキス天文台から太陽観測用の望遠鏡を移設して観測と気象条件の調査を始めた。1904年にカーネギー協会は天文台建設計画を承認し、ヘールが初代台長となってウィルソン山天文台が開設された。当初はウィルソン山太陽天文台であったが、「太陽」の文字は後に100インチ望遠鏡が完成した時に削除された。

ヘールは父親が彼のために残してくれた60インチ(1.5 m)の反射望遠鏡用ガラス材をヤーキス天文台からパサデナに運び、望遠鏡の製作と建設を進めたが、その途上でシカゴの実業家フッカーから100インチ(2.5 m)望遠鏡の反射鏡用ガラス材を作る費用の寄付を得た。こうして1908年に60インチ望遠鏡が、そして1917年に100インチのフッカー望遠鏡が相次いで完成した。現在ではこれらに加えて、3台の太陽望遠鏡とCHARAと呼ばれる干渉計などがある。

フッカー望遠鏡は、1948年にパロマー天文台に200インチのヘール望遠鏡ができるまで世界最大の望遠鏡であり、バーデ(W. Baade)による星の種族の発見、ハッブル(E. Hubble)によるアンドロメダ銀河中のセファイドの発見および宇宙膨張の発見など、多くの天文学の重要発見がこの望遠鏡でなされたことで有名である。1986年以来天文台の運用は、カーネギー研究所によって行われており、先端的な天文学研究のほかパブリックアウトリーチ活動にも力を注いでいる。

2009年9月に山火事が迫り消失の危機に遭遇したが、消防隊の活躍で難を逃れた。2020年9月に再度山火事の危機があったが、過去の経験により貯水槽設置を含む環境整備とヘリコプターからの消火剤散布を含む消防活動のおかげで火災を免れた。なおパサデナからは二つのつの太陽塔がよく見えるが、夜間観測用のドームの方は見えない。つまり夜間観測用の望遠鏡はパサデナやロサンジェルスの街明かりを直接は見ないように設置されている。
ホームページ:http://www.mtwilson.edu/

2024年02月11日更新

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    ウィルソン山天文台。中央上部のドームに100インチフッカー望遠鏡がある。手前のドームは60インチ望遠鏡。二つの塔は太陽望遠鏡。
    http://wikimapia.org/427463/Mount-Wilson-Observatory
    特別製自動車とラバによってウィルソン山天文台に運ばれる60インチ望遠鏡の鏡筒。後にハッブルの共同研究者となるミルトン・ハマソンはこの頃ラバ使いをしていた。
    出典 https://www.mtwilson.edu/building-the-60-inch-telescope/
    ウィルソン山天文台の100インチ(2.5m)望遠鏡(左)とそのニュートン焦点で観測するハッブル(右)。ハッブルが座っている観測台(右図)はドーム開口部に取り付けられて上下に動くので、望遠鏡の動きに合わせて楽な姿勢でガイド(星の精密追尾)ができる。
    出典 縣秀彦著、岡村定矩監修『ビジュアル天文学史』(緑書房)
    原図出典:The Huntington Digital Library