互いの重力によりまとまった構造を持つ星の集団。 星の数の空間密度が低く、まばらな集団となったものは散開星団(open cluster)と呼ばれ、年齢が数十億年程度以下の若い星が多い。 大きな分子雲から星団が形成されると考えられるため、巨大分子雲の分布と同様に天の川銀河(銀河系)の円盤部に多く存在している。
これに対して、 星の数が数十万個にも達し、その空間密度が高く重力的に強く束縛され、ほぼ球対称構造を持つ星団は球状星団(globular cluster)と呼ばれる。銀河系内の球状星団には星の寿命が100億年を越すものも多いため、それらは銀河形成の初期段階で生まれたものだろうと考えられている。OBアソシエーションも参照。
オリオン大星雲の中での(散開)星団形成の高精度シミュレーション [クレジット] シミュレーション:藤井通子 可視化:武田隆顕 国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト
https://www.youtube.com/embed/bvKDx8tneUM?si=vGtU0A-LHUauGdra"
銀河と銀河の間に広がる空間に存在している物質の総称。宇宙にあるガスの大半が希薄な状態で銀河間空間に存在していると考えられている。
数十から数百個の星が比較的ゆるく集合した星団。密度は球状星団ほど高くない。銀河円盤の渦巻腕中にあり、種族Iの星からなる。生まれて間もない星の集団であるので、青白い高温のO型星, B型星が目立つ。分子雲の中で誕生したばかりのものも多く、O, B型星から出る強力な紫外線が母体となった分子雲を照射して、HⅡ領域、暗黒星雲, 分子雲の柱などが織りなすさまざまな景観をつくる。
散開星団は英語で galactic/Galactic cluster(銀河星団)と表記されることもある。これは、銀河系(天の川銀河)内にあるガス星雲と銀河の区別ができておらず、両者ともに星雲(nebula)と呼ばれていた頃に、天球上で銀河面近くに多く見られるものを galactic nebula、銀河面を避けるように分布するものを non-galactic nebula と呼んでいた名残である。現在では open cluster が広く用いられている。
天体観測を実施する際に、地球大気から観測装置に至るまで、天体からの電磁波信号が通過する経路全体を観測システムと考え、これが、大気圏外の理想的環境下における信号強度に対し実効的に付加する雑音のことを、システム雑音と呼ぶ。その定義から、信号に付加される成分に加え、信号自体の強度を減衰する効果も含めて換算される。
開口合成型電波干渉計で得られる画像の1つで、最終的な画像とする前に得られる。天体画像の空間周波数成分に当たるビジビリティのうち、実際に測定した空間周波数成分のみを用い、他を0として、それをフーリエ変換することで得られた画像。(u, v) 面上での限られたビジビリティのみを使用すると、真の画像に対してサイドローブが無視できないほど強い観測ビームで観測した画像となることが多く、一般に「汚い」画像となることから、この名で呼ばれる。
数学的には、真の画像のビジビリティに対して、標本関数として測定点だけで1、他で0となる分布を乗じたものをフーリエ変換することになるので、ダーティーマップは、真の画像に標本関数をフーリエ変換して得られる観測ビームをたたみ込んだ画像となる。点像は全てのフーリエ成分が等しい画像であることを考えると、標本関数から得られる観測ビームは点像分布関数になる。ダーティーマップから真の画像にできるだけ近いと考えられる天体画像を得る手法として、クリーンや最大エントロピー法、スパースモデリングなどが開発され、よく使われている。
天体の空間運動速度の視線方向成分。ドップラー効果によるスペクトル線のずれから測定できる。観測者から遠ざかる向きを正(赤方偏移)、近づく向きを負(青方偏移)と定義する。
天の川銀河(銀河系)内の恒星に対しては地球の公転運動の補正を行う。銀河の視線速度に対しては、銀河系の回転と局所銀河群中での銀河系の運動の補正を行う。銀河の赤方偏移から求められる視線速度は、大部分が宇宙膨張に起因する見かけ上の速度(後退速度)で、それに比べると、銀河の空間運動(特異運動)の速度に起因する成分は、銀河系のごく近傍の銀河以外では無視できるくらい小さい。
観測者(自分)を中心として天体がそこに貼り付いているかのように見える仮想的な球面のこと。天体の位置を表す観点から天球面と言うことも多い。
月、惑星、太陽、恒星、銀河などの天体までの距離は非常に遠いため、夜空を見上げてもそれらの距離を実感することはできない。それらの天体は自分を中心とする丸天井に貼り付いているかのように見える。この丸天井(球面)が天球である。天球は実在するものではないが、天体の位置や動きを表すのに便利である。地球の自転に伴って、天体の貼り付いた天球が、天の北極と南極(天の極を参照)を結ぶ軸の周りに自転と逆向きに(東から西へ)、1日にほぼ1回転するように見える。より正確には約23時間56分で1回転する。これを天体の日周運動と呼ぶ。球面である天球の半分は地平面の下にあるので、一度に見ることができるのは地平線より上にある半球面だけである。
天球は仮想的なものであるので、さまざまな形で天球のモデルを作ることができる。プラネタリウムの天井は、明かりが消えるとまさに夜空と同じように見える天球のモデルの一つである。学校教材として広く使われる透明半球も天球のモデルである。天球のモデルは状況に合わせて大きさを自由に変えられる。
地上から見る天体の位置は、日周運動により時々刻々と変化する。ある時刻における天体の位置は、地平面からの高度と方位角で表すことができる(地平座標系を参照)。北半球で見える北極星はほぼ真北の方位にあり、その高度は観測者のいる地点の緯度にほぼ等しい。天球面上で観測者の真上の点を天頂といい、天頂を通って南北を結ぶ線を子午線という。これに対して、天球上での天体の位置は天球座標系で表されるが、その座標は角度である。それに対応して、天球上での天体の見かけの大きさおよび二点間の距離(角距離)も角度で表す(角度表示を参照)。
宇宙マイクロ波背景放射など全天にわたる天文観測データを表示する場合には球面を二次元の平面上に表すのが便利である。球面を平面に表す投影法はさまざまなものが考案されている。地球の表面を平面上に示す世界地図も投影法に従ってさまざまな形のものがある。天文学でよく用いられる投影法は球面を長半径と短半径が2:1の楕円形で表すモルワイデ図法、エイトフ図法、ハンメル図法である。モルワイデ図法は等緯度線が赤道に平行な直線であるが、エイトフ図法とハンメル図法ではそうなっていない。
数10万個の星がほぼ球状に密集する星団。中心に行くほど急速に星の密度が高くなる。銀河を取り巻くハローの中に分布し、種族Ⅱに典型的な色-等級図を示す(両者の色-等級図の比較については散開星団を参照)。銀河全体の重力に捕らえられており、その周囲を公転運動している。銀河形成の初期段階にできたと考えられているが、最近の観測から、銀河同士の衝突合体などに伴ってもできることがわかった。また、銀河の周囲を公転しているうちに、潮汐によって破壊されることもある。天の川銀河(銀河系)では約170個の球状星団が知られている。
アメリカの天文学者シャプレー(H. Shapley)は1918年に、球状星団の分布の研究から、太陽は銀河系(当時は宇宙そのもの)の中心ではなく端にあることや、銀河系の大きさを明らかにした。近年、距離の分かっている銀河系内の球状星団で、ガイア衛星により精密な固有運動の測定が行われたものについては、接線速度が求められ視線速度のデータと合わせて、ハロー内での運動の様子が描かれ始めている。
一つの銀河に属する球状星団の個数や色の分布などは、銀河形成過程の情報を含んでいるため、近年は銀河系外銀河の球状星団の研究も盛んである。また、銀河に属する球状星団の光度関数は、銀河の距離決定の手段としても使える。こと座RR型変光星も参照。
画像処理の際に用いられるフィルタリング処理の一種で、1画素の情報をある特定のパターン(カーネル)に従って周囲の画素に割り振っていくもの。コンボリューションともいう。異なる状況で取得された画像を比較する際、星像サイズを合わせるためにガウス分布(正規分布)をカーネルとしてぼかし処理をするなどの際に用いられる。一般の画像処理ソフトで可能なぼかし処理も、大抵の場合たたみ込みを行っている。逆に、与えられたカーネルに対し、たたみ込み前の状態を逆算で求める処理は逆たたみ込み(デコンボリューション)と呼ばれる。可視光や近赤外線の地上観測では、点像分布関数をカーネルとして逆たたみ込みすることで、同一視野内の狭い領域であれば大気によるゆらぎ(天然のたたみ込み)を補正することが可能である。また、多くの電波干渉計観測のように、そもそも点像分布関数に大きなサイドローブが存在する場合は、逆たたみ込みによる像合成が欠かせない。その具体的手法の詳細については、クリーン、最大エントロピー法を参照。たたみ込み定理も参照。
天体写真乾板の微小領域の写真濃度を測定する装置。マイクロデンシトメータあるいはマイクロフォトメータとも呼ぶ。写真乾板に光を当て、透過してくる光の量を光電子増倍管などで測定することによって写真濃度を測る。光源に安定化光源を用い、スリットを用いて写真乾板上の微小領域のみを透過する光を測定することによって、測定精度と分解能を上げる。天体写真測光の中核となる乾板測定機であった。
1960年頃にPhotometric Data Systems社(当時)が開発したPDSマイクロデンシトメータは、コンピュータ制御によって、乾板をスキャンしながら透過光量を自動的に記録するシステムのはしりで、広く写真乾板を用いた天体画像やスペクトルの解析に用いられた。その後これと高度な制御システムを組み合わせて高速化したもの、光源としてレーザーを使って精度を高め、かつ写真乾板は動かさずに測定光のビームを動かしてスキャン速度を高速化した装置も開発された。それらは乾板スキャナー(プレートスキャナー)とも呼ばれた。
1970-90年代前半は、主にシュミット望遠鏡によるサーベイ観測で撮影された広視野写真乾板を乾板スキャナーでデジタル化したデータに基づく「写真乾板のデジタルサーベイ」プロジェクトの全盛期で、乾板スキャナーとデータ処理計算機を合わせたシステムが各地で活躍した。宇宙望遠鏡研究所(STScI)のPDSマイクロデンシトメータに基づくシステムは、DSS(Digitized Sky Survey)のデータ生成とハッブル宇宙望遠鏡のガイド星カタログ(Guide Star Catalog: GSC)の構築に重要な役割を果たした。エジンバラ王立天文台(ROE)のCOSMOS(1994以降はsuperCOSMOS)、ケンブリッジ大学のAPM(Automated Plate Measuring Machine)、ミネソタ大学のMAPS (Minnesota Automated Plate Scanner)などが活躍した。日本では、東京大学木曽観測所で、PDS2020GMSを用いて近傍の明るい銀河791個の測光カタログが作られた。これらの装置は現在新たな写真乾板のデジタル化は行っていないが、データそのものはアーカイブとして活用されている。
STScIのDSSとGSC
https://archive.stsci.edu/missions-and-data/dss--gsc
superCOSMOS
http://www.roe.ac.uk/ifa/wfau/cosmos/scosmos.html
APM(Automated Plate Measuring Machine)
https://people.ast.cam.ac.uk/~mike/casu/apm/apm_intro.html
MAPS (Minnesota Automated Plate Scanner)
http://aps.umn.edu/about/
日本の5番目のX線天文衛星。伝説上の神鳥であり宇宙の守護神でもある朱雀が名前の由来である。 2005年7月10日に内之浦宇宙空間観測所よりM-Vロケット6号機により打ち上げられた。高度約570 km、軌道傾斜角31度のほぼ円軌道に載って、周期96分で地球を1日に約15周して観測を行った。
5台のX線望遠鏡と、その焦点面にX線マイクロカロリメータ(X線分光器)1台、4台のX線CCDカメラ、そして非結像の硬X線検出器を搭載した。X線マイクロカロリメータは打ち上げ後まもなく、冷媒が枯渇し機能が停止した。残りの検出器で観測し、銀河団の外縁部の観測に成功し、塵やガスに埋もれたブラックホールを発見するなど多くの成果を出した。2015年に約10年間の運用を終えた。
ホームページ:https://www.isas.jaxa.jp/missions/spacecraft/past/suzaku.html
天体の見かけの直径を天球上の角度で表現した値。天体の真の半径をa、天体までの距離をrとすると、視半径sは sin s = a/r であり、視直径はその2倍の 2sとなる。 たとえば、太陽は月の400倍の大きさを持っているが、距離も400倍遠いので視直径はほぼ同じ値になる。このため、わずかな距離差で皆既日食となったり金環日食となったりする。
一方、恒星ははるか遠くにあるため、直接その大きさを測ることは難しい。そこで、2つの望遠鏡からの光を干渉させ、その干渉パターンから直径を求める恒星干渉計がよく使われる。この場合の直径は角直径と呼ばれるが、両者をとくに区別せずに用いることもあるので注意が必要である。
星形成領域の周縁部に見つかる拡がった星雲状の天体。典型的なものでは先端に弧状衝撃波の構造が見られ、年程度の時間スケールでの時間変動が観測されている。星が生まれる際に2つの極方向に放出される光学ジェットが周りのガスと衝突して励起された発光現象が、ハービッグ-ハロー天体だと考えられている。この種の天体を初めて詳しく研究したアメリカの天文学者、ジョージ・ハービッグ(G. Herbig)とメキシコの天文学者のギイェルモ・ハロー(G. Haro)にちなんで名づけられている。HH天体と略称されることもある。原始星、Tタウリ型星も参照。
アメリカ航空宇宙局(NASA)の彗星探査機。1999年2月7日に打ち上げられ、ビルト第2彗星の探査とそのダスト(塵)の採取と地球への帰還を行った。まず、2002年11月2日に小惑星アンネフランクに近づき撮像を行い、2004年1月2日にビルト第2彗星から200kmの距離まで接近し、エアロジェルという低密度物質を用いて、彗星のコマに含まれるダストを採取した。ビルト第2彗星は木星との接近遭遇により最近太陽系の内側に入ってきた彗星であることがわかっている。
2006年1月15日にサンプルカプセルを地球大気に突入させて、無事回収された。エアロジェルにはミクロンサイズの微粒子が多数捕獲されていた。これらのビルト第2彗星のサンプルには、カンラン石や輝石などのケイ酸塩鉱物のほかに有機物が検出されている。一方で、マイクロコンドリュールと呼べる高温凝縮物も含まれており、原始太陽系円盤の中で内側から外側へのダストの輸送があったことを示唆している。
スターダスト探査機本体はサンプルカプセルを放出した後、2011年2月に、ディープインパクト探査機が衝突体を衝突させたテンペル第1彗星に接近して、その画像を撮影した。
実視等級を定義したバンド(測光システムを参照)における絶対等級。写真等級も参照。
おもに岩石や氷からなる破片やダストから構成される星周円盤。惑星形成時では微惑星同士の衝突、惑星形成後では惑星によって軌道を乱された小天体同士の高速衝突、あるいは彗星の蒸発などによってできると考えられている。惑星形成の初期段階にあった原始惑星系円盤の名残とは異なる。例として、こと座のベガ(織女星)はデブリ円盤を持つ。デブリ円盤には非一様な構造が観測されているものもあり、惑星からの重力作用が原因だと考えられている。
緑から黄色の波長域で感度が高い肉眼で見た明るさから決めた等級。写真等級を参照。
見かけの等級とは別の概念であることに注意。ただし近年は、測光システムのVバンドでの見かけの等級を表すときにも用いられることがある。
明るさが安定していて高い精度で測定されている星。ある測光システムにおいて測光標準星の大気減光補正後の等級をリストしたものを測光標準星カタログと呼び、測光観測の際にはこれらのカタログにある天体と目標天体を交互に観測して目標天体の明るさを決定する。近年、スローンデジタルスカイサーベイ(可視光)や2MASS(近赤外線)などの半導体検出器アレイを用いた広域観測から、非常に多くの天体に対して精度良い等級がカタログ化された。これにより、広い視野の観測で同一視野内に複数のカタログ天体が写る場合には、それらの天体を測光標準星の代わりに用いることも多い。
原始星になる前の主に水素分子でできた準静水圧平衡の天体のこと。
分子雲コアの中で進む星生成過程において、自己重力により収縮する中心領域では、密度が10-10 g cm-3 くらいになると圧力が十分大きくなり、重力収縮が止まって準静的な構造を持つ天体が発生する。この最初に形成される天体を第一のコアと呼ぶ。この天体の主成分は水素分子である。
その後も中心部分の密度と温度の増加はゆっくりと続き、温度が2千度程度になって水素分子が解離するようになると、吸熱反応である解離反応のために熱エネルギーが使われて圧力の上昇が不十分となり、再び急激な重力収縮を始める。この収縮のことを第二収縮と呼び、第一のコアを生んだ最初の収縮である第一収縮と区別する。第二収縮の後、最終的に形成される準静水圧平衡の天体が第二のコアであり、密度は太陽の平均密度である 1 g cm-3 程度である。観測的に通常議論される原始星コアに対応するのは第二のコアである。
