天文学辞典 :ASJ glossary of astronomy | 天文、宇宙、天体に関する用語を3300語以上収録。随時追加・更新中!専門家がわかりやすく解説します。(すべて無料)

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プラズマドリフト

磁場中のプラズマ粒子は、ローレンツ力を向心力として磁力線の周りを回転する。この運動はラーモア運動あるいはラーモア回転と呼ばれる。
物理学の用語としてのプラズマドリフトとは、ラーモア回転するプラズマ粒子の旋回中心が磁力線方向に対して垂直な方向に移動していくことを指す。その原因としては電場や重力場などの外場によるものや、非一様な磁場の勾配によるものなど多種ある。
天文学においては、ほぼ中性だがわずかに電離している分子雲などから磁力線が抜け出ることをプラズマドリフトと呼ぶ場合もあるが、こちらは慣用的には両極性拡散と呼ぶ場合が多い。

カナリー大型望遠鏡を参照。

平衡状態にあるプラズマ中で、その平衡状態に対して微小変動を与えると平衡状態からくずれていく性質をプラズマ不安定と呼んでいる。プラズマ中では電磁流体不安定に加えて、ブラソフ方程式の枠組みで記述されるような速度分布関数の変形を伴う運動論的不安定も存在する。電磁流体不安定をマクロ不安定、運動論的不安定をミクロ不安定と呼ぶこともある。

年周視差が1角度秒(1'')となる距離。記号はpcである。年周視差がp''の場合、距離は1/p pcとなる。天文学で用いられる最も基本的な距離の単位である。年周視差はその天体から1天文単位(au)を見込む角度なので、それが1"=1/(2.0626x105) ラジアンになるのは
1 pc = 1  x  2.0626x105 au = 3.09 x 1013 km = 3.26 光年
である。天体の絶対等級はその天体を10 pcの距離においたときの見かけの等級として定義されている。103 pc は kpc、106 pc は Mpc と表記される。角度表示も参照。

アメリカ国立電波天文台が西バージニア州のグリーンバンクで運用している電波望遠鏡で愛称はロバートビアド望遠鏡。GBTと略称されることも多い。オフセットカセグレン(軸外し光学系としたカセグレン式望遠鏡のこと)の光学系を採用しているため、主鏡は100 m x 110 m の楕円形であるが開口面としては口径100 m相当である。可動式の単一開口電波望遠鏡としては世界最大であり、観測周波数は0.3 GHzから100 GHzまでである。超長基線電波干渉計(VLBI)にも使用されている。

この場所には1962年に建設された口径90mの電波望遠鏡があったが、1988年に架台の部品事故により突然崩壊した。その後継として建設されたGBTは2001年から観測を開始した。GBTは国が指定する電波規制地域内にあり、望遠鏡から半径16 km以内では、携帯電話も含めた電波の発信のほか、テレビのリモコンや電子レンジなどの家電製品の使用も禁止あるいは制限されている。

2016年10月よりアメリカ国立電波天文台から独立したグリ-ンバンク天文台が運用に当たっている。

ホームページ:https://greenbankobservatory.org/

巨大メートル波電波望遠鏡を参照。

無衝突プラズマ系におけるローレンツ力を受けて運動している荷電粒子の位相空間での粒子密度(速度分布関数)f に対する次の偏微分方程式をブラソフ方程式という。

ft+vf+em(E+vc×B)fv=0

ここで、v は粒子の速度、EB は電場と磁場の強さ、e電気素量(素電荷)、m は粒子の質量である。プラズマ中の電磁場は粒子の軌道によるので、電磁場と個々の粒子の運動は独立ではない。この式は、クーロン衝突による近接相互作用が無視できるときに成り立つ。重力相互作用する多体系の位相空間内の分布関数についても、衝突項の効かない場合は、ブラソフ方程式で記述されることがある。

周波数帯域幅のこと。

宇宙速度を参照。

巨大マゼラン望遠鏡を参照。

ヨーロッパ南天天文台(ESO)がチリのアルマゾネス山に建設を構想している口径39 mの光赤外線望遠鏡。計画当初はEuropean Extremely Large Telescopeの頭文字からとったE-ELTと称していたが、現在はEuropeanのEを付けずにELTとなっている。主鏡は1.4 m径の六角セグメント鏡798枚からなり、2028年頃の完成を目指している。2枚の非球面鏡からなる通常のリッチー-クレチアン光学系ではなく、3枚の非球面鏡と、可変形鏡、ティップ--ティルト鏡を含む5枚の鏡からなり、望遠鏡本体に補償光学の機能を持たせる斬新な望遠鏡計画である。
ホームページ:https://www.eso.org/sci/facilities/eelt/
https://elt.eso.org/

 

宇宙が有限の年齢を持つとする宇宙モデルにおいて、宇宙が膨張を始めた時点のこと。ガモフ(G. Gamow)たちが提唱した有限年齢の宇宙モデルに対して、定常宇宙論の提唱者の一人であるホイル(F. Hoyle)がラジオの番組で揶揄していった言葉であり、それがそのまま学術用語として定着した。
膨張宇宙においては、昔に遡ると宇宙に高温高密度の時代が現れる。ガモフたちは、この時期にどのような元素が形作られるかを計算したり、また、宇宙マイクロ波背景放射の存在を予言したりしたが、当初はあまり注目されなかった。1964年にペンジアス(A. Penzias)とウィルソン(R. Wilson)によって宇宙マイクロ波背景放射が実際に発見されると、急速に定常宇宙論の支持者は減っていき、ビッグバン宇宙モデルが標準的なモデルとなっていった。一般相対性理論に基づいて膨張宇宙の時間を遡ると、初期に特異点が存在することがかなり一般的な条件の下で示される。これを特異点定理という。この特異点をビッグバンと考えることができる。だが、宇宙初期には古典的な一般相対性理論は成り立っていないとも考えられ、本当のビッグバンの時点がどのようなものなのか、まだ理論的には解明されていない。
また、インフレーション理論によると宇宙初期に現在の通常の膨張よりもずっと急激な加速膨張をした時期があったとされるが、インフレーション自体どのような機構で起きたのかも定まっておらず、さらにインフレーション理論そのものは宇宙の真の始まりについては何も答えない。宇宙の真のはじまりについては、重力の量子論によって記述されるとの考え方もあるが、重力の量子化はこれまでのところ物理学上の大難問として未解決である。このため、ビッグバンがなぜ起きたのかという根本的な原因は深い謎に包まれている。ビッグバン宇宙論も参照。

カンガルーガンマ線望遠鏡を参照。

ガモフ(G. Gamow)らにより提唱された宇宙進化のモデルで、宇宙はビッグバンという大爆発により誕生し、高温高密度の「火の玉」状態から膨張とともに冷却し、その過程で恒星銀河などの構造を作りながら、現在に至ったという理論。宇宙膨張を意味するハッブル-ルメートルの法則宇宙マイクロ波背景放射の存在、ビッグバン元素合成における軽元素存在量の理論と観測の一致、の三大観測結果を整合的に説明する宇宙モデルである。その一方、単純に考えるとビッグバンの瞬間は初期特異点になってしまうので、ガモフの考えたビッグバン宇宙論を宇宙の全進化史を記述する理論としてそのまま受け入れることはできない。

現在では宇宙の誕生は一般には以下のように考えられている。量子的論的な「ゆらぎ」によって莫大な数の小さな(ミクロな)時空(10-35 m程度)が誕生した。その中でインフラトンと呼ばれるスカラー場のエネルギーによって時空が指数関数的な膨張をして、量子力学の対象とはならない程度の大きな(マクロな)宇宙になったものがある。この指数関数的な激しい膨張をインフレーションという。インフラトンが素粒子の統一理論の中でどのような位置を占めているのかは明らかにはなっておらず、現在のところ具体的なインフラトンのモデルに定説はない。このインフラトンのエネルギーが放射に転化してインフレーションが終わり、宇宙は高温・高密度の放射で満たされる。この時点のマクロな宇宙をガモフの考えたビッグバンの瞬間(火の玉)とする。このように、現在ではインフレーション理論と組み合わせた形のビッグバン宇宙論が宇宙を記述する標準宇宙モデルとなっている。

1929年に宇宙が膨張していることが観測的に確立(ハッブル-ルメートルの法則)した後、宇宙に関する二つの見方が生まれた。一つは1946-48年にかけてガモフが提唱した上述のビッグバン宇宙論で、もう一つは1948年にホイル(F. Hoyle)らにより提唱された定常宇宙論である。当時はハッブル定数が現在よりも5倍以上大きく見積もられていて、ビッグバン宇宙論に基づいて推定した宇宙年齢は20億年程度であった。放射線年代測定法で決められた地球の岩石の中に、20億年より古いものが発見されたこともあり、両者のどちらが正しいのかなかなか決着がつかなかった。

1960年代にプリンストン大学のディッケやピーブルスらは、ビッグバン宇宙論が正しいとすれば、誕生初期に宇宙を満たしていた高温の放射(黒体放射)の名残が観測されるはずだと考え、それを検出する観測を計画していた。プリンストン大学に近いアメリカニュージャージー州のベル研究所で、高性能電波アンテナの開発研究をしていたアーノ・ペンジアス(A. Penzias)とロバート・ウィルソン(R. Wilson)が、空のあらゆる方向からやってくる正体不明の電波を偶然に検出した。プリンストン大学の研究者がそのような電波があるという話をしていると聞いて、二人はプリンストン大学を訪ねた。議論を重ねた結果、彼らはそれがビッグバン宇宙論の予言する宇宙初期の黒体放射の名残であると結論し、その結果を二つの論文にして1965年に発表した。これによって定常宇宙論が廃れてビッグバン宇宙論が確立した。定常宇宙論では宇宙は始まりも終わりもなく常に同じ姿をしているので、宇宙初期という概念はなく、宇宙を満たす黒体放射もないからである。

ペンジアスとウィルソンが発見した放射は現在では宇宙マイクロ波背景放射(CMBと略称されることも多い)と呼ばれている。CMBを発見したペンジアスとウィルソンは1978年にノーベル物理学賞を受賞した。またディッケらとともにこの放射の温度を推定したピーブルスは、その後ビッグバン宇宙論を物理学に基づいて体系化した功績により2019年のノーベル物理学賞を受賞した。

宇宙の暗黒時代宇宙の夜明け宇宙の再電離も参照。

閉じた事象の地平線に囲まれた時空の領域のこと。いったんこの領域に入るとどんなものも再び外に出ることはできない。
ニュートン力学においても脱出速度光速度になる天体として18世紀にイギリスのミッチェル(J. Michell)やフランスのラプラス(P.-S Laplace)によって考えられていたが、ニュートン力学では光速度は特別の意味を持たないので単に真っ黒な星というだけであった。一般相対性理論では局所慣性系で特殊相対性理論が成り立ち、そこで光速度は情報の伝達速度の最大速度となる。事象の地平線のすぐ内側では局所慣性系自体が光速度以上の速度で落下するため、いったん事象の地平線の中に入った情報は外から観測することができない。外の世界は後述するホーキング放射以外、ブラックホールからの情報をまったく受けることができない。
ブラックホールの内部には、時空の曲率が発散する特異点が存在するが、内部構造の詳細は考えるブラックホールによって違う。アインシュタイン-マクスウェル方程式系の解としてのブラックホールは、質量、電荷、角運動量の3つのパラメータだけで記述できるという「無毛定理」があり、質量だけを持つシュバルツシルトブラックホール、質量と電荷をもつライスナー-ノルドストロームブラックホール、質量と角運動量を持つカーブラックホールなどがある。シュバルツシルトブラックホールは事象の地平線が一つであるのに対し、ライスナー-ノルドストロームブラックホールやカーブラックホールでは外部事象の地平線のほかに内部事象の地平線が存在し、内部地平線を通り抜けて特異点を避け、ホワイトホールから別の宇宙に出ていくことが数学的には可能である。しかし天体の重力崩壊超新星爆発)によってできたブラックホールでは、どの場合にも内部事象の地平線はできず、ブラックホールに入った物質はすべて特異点に向かうと考えられている。
ブラックホールにはその質量に反比例した温度の黒体放射(ホーキング放射)を放出し、表面積(事象の地平線の面積)に比例した莫大なエントロピーをもっていることが知られており、熱力学的対象として扱うことができる。
ブラックホールは当初は理論研究の対象でしかなかったが、1971-72年に観測的にその存在が実証された。X線源であるはくちょう座X-1(Cyg X-1)の観測から、これがX線連星系であり、その一方の高密度星が太陽質量の約20倍の質量をもつブラックホールであることがわかった。
現在、観測的にはブラックホールは質量によって次の3種類に分類されている。太陽質量の10倍程度以下の恒星質量ブラックホール、1000ないし1万倍の中間質量ブラックホール、100万ないし数10億倍の(超)大質量ブラックホールである。一つの銀河内に散在する恒星質量のものは大質量星の超新星爆発でできる。一つの銀河内に時折見られる中間質量のものと、多くの銀河の中心核にある(超)大質量のものの成因についてはまだよくわかっていない。銀河系天の川銀河)中には候補を含めると30個以上の恒星質量ブラックホールが見つかっている。
2015年9月14日、アメリカの重力波検出器であるLIGOによって、400メガパーセク(400 Mpc=13億光年)の彼方で太陽質量の約36倍と29倍のブラックホール連星が合体して太陽質量の62倍のブラックホールができた時の重力波が初めて直接検出された。その後2017年8月までにブラックホール連星の合体に伴う重力波が3回観測された。これらの重力波の発生源は、検出の年月日をつけてGW150914、GW151226、GW170104、GW170814と呼ばれている(その後、将来の検出数が増えることを想定して、年月日の後に観測時刻を協定世界時の時分秒で表した数字をつけるように命名法が変わった)。この4回の重力波の発生源となった連星系をなすブラックホールの質量は太陽質量の20倍を超えるものが多く、また合体後のブラックホールの質量はどれも太陽質量の20倍以上である。さらに、2019年4月26日にはそれまでの記録を大幅に超える事象(GW190426_190642)が観測された。GW190426_190642では、太陽質量の107倍と77倍のブラックホールが合体して175倍のブラックホールが生成され、太陽質量の約9倍に相当するエネルギーが重力波として放出された。従来電磁波(X線)で観測されている天の川銀河銀河系)内のブラックホールは太陽質量の10倍程度以下のものがほとんどなので、このような恒星質量ブラックホールでありながら、従来より質量がかなり大きいブラックホールの形成過程についても謎が生じている。
2019年4月10日にイベントホライズンテレスコープ(EHT)が、おとめ座銀河団にある巨大楕円銀河であるM87の中心にある超大質量ブラックホール(太陽質量の65億倍)のシャドウを観測したと発表した。銀河系の中心には太陽質量の400万倍の質量を持つブラックホールいて座A*(Sgr A*)が存在することが知られており、EHTはこの観測データも同じ時期に取得していたが、解析に時間を要し2022年5月にその結果を公表した。
2023年9月には、東アジアVLBIネットワーク(EAVN)などの電波干渉計の観測網によって過去20年以上にわたって得られたM87のブラックホールの170枚もの電波画像(波長7 mm帯)を分析した結果、ジェットの噴出方向が約11年周期で変化していることが明らかになった。コンピュータシミュレーションによりこの現象は、周囲の時空を引きずりながら自転しているブラックホールの自転軸と降着円盤の回転軸がずれているために起きる一般相対性理論の効果による歳差運動で説明できることが示された。ブラックホールの自転を観測的に証明した初めての例と考えられる。
ミニブラックホール超大光度X線源も参照。

検出された重力波イベントのカタログ(LIGO-Virgo-KAGRA Collaboration)
https://www.ligo.org/detections.php
2020年3月までに重力波で検出されたブラックホールのカタログ
https://www.ligo.org/detections/O3bcatalog.php
M87中心のブラックホールの画像に関する国立天文台の発表
https://www.nao.ac.jp/news/science/2019/20190410-eht.html
https://www.nao.ac.jp/news/science/2022/20220630-m87.html
https://www.nao.ac.jp/news/science/2023/20230427-gmva.html
いて座A*(Sgr A*)の画像に関する国立天文台の発表
https://www.nao.ac.jp/news/science/2022/20220512-eht.html
M87中心のブラックホールの自転の証拠に関する国立天文台の発表
https://www.nao.ac.jp/news/science/2023/20230928-eavn.html
M87中心のブラックホールの自転の証拠に関する日本EHTグループの発表
https://www.miz.nao.ac.jp/eht-j/c/pr/pr20230928


おとめ座銀河団の巨大楕円銀河M87の中心核のブラックホールまでの仮想の旅。イベントホライズンテレスコープによる。

https://www.youtube.com/embed/v_Bk2997YMA


M87のブラックホール周辺の科学的シミュレーションCGとイベントホライズンテレスコープによる観測結果の比較

https://youtu.be/zHjWSiSZRmo


合体するブラックホールとその周りの空間のゆがみ。
クレジット: SXS (Simulating eXtreme Spacetimes) プロジェクト
https://www.black-holes.org/

https://www.youtube.com/embed/1agm33iEAuo

 

自転するブラックホールの周りで歳差運動する降着円盤とジェットのCGアニメーション。ブラックホールの自転軸は画面右下に示されているZ軸の方向に固定されている。時間の0:21-0:25の間に、見る向きを変更するためにZ軸方向が変化する。
クレジット:Cui et al. (2023), Intouchable Lab@Openverse, Zhejiang Lab
https://www.nao.ac.jp/news/science/2023/20230928-eavn.html

地球大気中の分子による光の吸収。可視光では大気吸収はほとんどないが、紫外線は窒素分子や酸素分子により大部分が吸収され、赤外線は水蒸気や二酸化炭素、メタン、オゾンなどにより特定の波長で吸収される。大気吸収の小さい波長帯は大気の窓と呼ばれる。大気減光も参照。

経緯台反射望遠鏡において、高度軸上に結像される焦点のこと。望遠鏡の不動点(方位軸と高度軸の交わる点)に、副鏡からやってきた光を高度軸方向に反射する鏡(第三鏡)を置くことで実現する。イギリスの技術者ナスミス(J. Nasmyth)が実用化した焦点のため、その名がつけられている。ナスミス焦点は高度軸上にあるため、望遠鏡の高度方向の動きには影響を受けない。方位軸周りには望遠鏡と一緒に動くことになるが、水平面上の動きであるため重力の影響を受けない。このため、安定した焦点であり、精度を要求する大型の装置を設置することができる。合成口径比(F比)は、カセグレン焦点とほぼ等しく、F/8からF/15程度である。焦点(望遠鏡の)も参照。

バイアスとは、もともと「偏り」という意味を持ち、さまざまな分野で広く使われる言葉である。天文学では、次の2つの意味で使われる。
1. 観測手法や測定方法に内在する系統的な誤差の原因。系統誤差を参照。
2. 電子回路に与える偏った電圧を指し、バイアス電圧ともいう。天文学でよく用いられるCCDなどの光検出器では、検出器からのアナログ信号をデジタル信号に変換(アナログ-デジタル変換)するときに、変換器の線形性が保証されている領域に入力電圧を調整する(かさ上げする)ためにある一定の電圧を印加する。これをバイアス電圧と呼ぶ。CCDに光を当てないで読み出したときに得られる画像は、このバイアス電圧がA/D変換されたものである。これをバイアスフレームと呼ぶ。CCDデータ処理では、バイアスフレームの事を単にバイアスと呼ぶことも多い。一方、フォトダイオード光伝導素子などの光検出器の素子そのものにかける電圧もバイアスと呼ぶ。

地球大気中の分子による大気吸収と、ダストなどの微粒子による散乱の効果を足し合わせた、大気による減光量。可視光では大気吸収はほとんどないが、大気中の分子やエアロゾルと呼ばれる大気中に浮遊する微粒子により散乱を受け、エアマス(空気関数)に比例した大気減光が発生する。散乱の効果は短波長の青い光ほど大きくなるため、昼間の空は青く、夕日は赤く見える(散乱がなければ、昼間でも空は黒く星が見え、夕日の色も白色のままとなる)。大気の透明度は1から大気減光量を引いた値として定義され、これを大気透過率と呼ぶ。

大気の屈折率は、1気圧で1.00028程度で真空中の1とは異なるため、天体からの光は地球大気により屈折する。その結果、天頂方向にある天体以外は見かけの方向と実際の方向が異なり、地平線に近い天体ほど実際の方向よりも天頂方向にずれた方向に浮き上って見える。このずれを大気差と呼ぶ。天頂からの角度(天頂距離)を z として、大気が平行平面板状とみなせる z<60°の範囲では大気差は tan z にほぼ比例し、1気圧の地表では z=45° で約1分角であるが、z = 90°(視高度0°)では34'24″にもなる。高地では気圧に比例して大気差は小さくなる。大気分散も参照。