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大気の窓

高

よみ方

たいきのまど

英 語

atmospheric window

説 明

電磁波に対して、大気吸収の小さい波長帯・周波数帯のこと。特に、可視光(波長0.35-1μm)と電波(波長1mm-30m、周波数10MHz-300GHz)は連続して大気吸収が小さいため、単に大気の窓と言えば、これらを指すことが多い。可視光側を可視光の窓、電波側を電波の窓と呼ぶこともある。大気の窓になっていない波長帯での観測を行うには、基本的には地上を離れて大気圏外から観測する必要がある。

大気の窓が生じるのは地球大気中に大量に含まれる物質の電磁波の透過・吸収・散乱に対する特性が波長によって異なることが原因である。このため、特に、上記の2つの窓の間は連続して大気吸収が大きいわけではなく、比較的狭い波長帯で大気吸収が大きく変動することに注意。波長/周波数域ごとの主な原因物質は以下の通り。

10MHzより低周波数、すなわち、30mより長波長は、大気上層部にある電離層が原因である。ここにある自由電子が低周波数の電磁波を効率的に反射・吸収してしまうため、この波長帯の電波は宇宙から地上まで届くことがなく、天体観測が未着手な波長帯であるといえる。オーストラリア南東部のタスマニア上空は他よりも電離層中の自由電子密度が低く、大気の窓が低周波数側まで伸びているとされ、20MHz帯の観測は主にここからなされている。

電波の窓と可視光の窓の間の波長域は地球大気中の分子による吸収・散乱によって生じる。酸素分子や水蒸気、二酸化炭素によるものが顕著。水蒸気は地表にある水分が気化することで供給されるため、海抜や気温、地表の気候条件に大きく影響される。このため、この波長帯での観測を行うには海抜が高く、乾燥地あるいは寒冷地であるために上空の水蒸気が少ない場所での観測が望ましい。それでも不十分な場合は航空機や大気球ないしは人工衛星に搭載した望遠鏡による観測が必要になる。

可視光の窓より短波長側は100nm程度までは、地球大気の分子、特に窒素分子と酸素分子、および、酸素分子が紫外線を吸収することで発生するオゾンによる吸収で生じる。さらに短波長であるX線領域まででは、大気中の分子が乖離したり、それを構成する原子が電離したりすることで大気吸収が大きくなり、ガンマ線領域になると大気を構成する原子核などと衝突し散乱されるため、やはり地上での直接観測は不可能となる。ただし、ガンマ線領域では、大気上層部での衝突によって大気の原子・分子が影響されて発生する可視光を地上で観測することが可能であり、これによって大気の窓とは関係なく、間接的に観測することはできる(大気チェレンコフ望遠鏡)。

電波の窓の短波長側では、22GHz付近は水蒸気、60GHzや120GHz付近は酸素分子による大気吸収が極めて大きく、この辺りはどんな望遠鏡を使っても地上から観測することはできない。

逆に、可視光の窓の長波長側は、波長1-20μm にかけて不連続にいくつかの大気の窓が存在する。この波長帯は近赤外線と呼ばれる。近赤外線での大気の窓は、短波長側から z, J, H, K, L, M, N, Q バンドと呼ばれる。このため、ほとんどの場合、これらの大気の窓に対応して測光システムが定義されており、両者のバンドの名は同一のものを用いる。なお、Kバンドについては、定義の当初用いられていた波長帯では大気吸収の影響が大きいことが指摘され、その長波長側の端を除いたバンドとして新たにKsバンドが定義され、近年ではKバンドに代わって用いられている。

より長波長の領域は遠赤外線と呼ばれ、電波の窓の波長範囲までは大気透過率が極めて低く、地上からの観測はほぼ不可能である。

なお、大気吸収量の値が大きくとも、周囲の波長帯に比べて吸収が少ない波長範囲が存在する場合、そこを指して大気の窓と呼ぶ場合もまれにある。

2021年10月10日更新

関連画像

* 大気の窓。横軸は波長で縦軸は地上高度。さまざまな波長の電磁波は大気による吸収のため、緑で示す領域の上端高度より下(地表に近いところ)には届かない。
(原図は芝井広氏による)
*マウナケア山頂における大気透過率のモデル計算結果。可降水量=1mmと仮定。大気吸収のバンドにはおもな吸収を起こすガスが示してある。
山下卓也「天体からの光・赤外放射」、シリーズ現代の天文学第15巻、家・岩室・舞原・水本・吉田編『宇宙の観測I』第2版 2章 図2.6(日本評論社)