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特異点定理

 

よみ方

とくいてんていり

英 語

singularity theorem

説 明

一般相対性理論では重力崩壊や宇宙初期における超高密度の極限状態で、時空の曲率が無限に大きくなる状況が出現する。この状況を特異点、あるいは空間的に点とは限らずリング状の場合もあるので特異領域とも呼ばれる。
どのような状況で特異点が出現するかを証明したのが特異点定理である。1965年ロジャー・ペンローズ(Roger Penrose)によって、重力崩壊がある程度以上進行し、また物質のエネルギー密度と圧力が適当な条件を満たせば、ブラックホールの内部で必ず特異点が存在することが証明された。その後、スティーブン・ホーキング(Stephen Hawking)とペンローズがやはり物質が適当なエネルギー条件を満たす限りビッグバン宇宙論で初期特異点が存在することを証明した。
特異点定理において、特異点は時空の中に存在するのではなく、時空の果てとして表現される。また特異点の形状やそれがどこにできるかを指定するものでもない。
現在の物理学では特異点を扱える理論がないため物理法則が破綻する。このため事象の地平面に囲まれていない「裸の特異点」が存在すると、物理学の大前提である因果律も破綻しかねない。そのためペンローズは「すべての特異点は事象の地平面に囲まれている」という宇宙検閲官仮説を提唱した。現実的な状況でこの仮説が成り立つかどうかはまだ証明されていない。特異点定理は古典的な一般相対性理論に基づいており、重力の量子効果を考慮していない点で、実際に時空の曲率が無限大になるか、あるいは時空という概念を超えた物理的実体があるのかは明らかではない。

2020年04月15日更新

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