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ビッグバン元素合成

 

よみ方

びっぐばんげんそこうせい

英 語

big bang nucleosynthesis

説 明

宇宙誕生直後の高温高密度期では、陽子中性子電子ニュートリノを交換しながら平衡状態(ベータ平衡)を保って存在しているが、平均エネルギーが0.1 MeV(温度にして10億度)くらいになると、陽子と中性子が反応し元素の合成が始まる。この時期の元素合成を星の内部での元素合成と区別してビックバン元素合成という。
ビッグバン後約10分までの間にもともとあった水素(1H)を含む、重水素(D=2H)、三重水素(トリチウム:T=3H)、ヘリウム(3H, 4He)と、微量のリチウム(7Li)とベリリウム(7Be)が作られる(元素記号の左上の数字は質量数)。ビックバン元素合成では、星の内部での元素合成と異なり、宇宙膨張にともない物質の密度と温度が下がるので三体反応が起こらず、これ以上重い元素の合成は起きない。ただし、放射性元素(不安定元素)であるT(半減期12.3年)と7Be(半減期53日)はそれぞれ、3Heと7Liに放射性崩壊する。ビッグバン元素合成で作られる元素をまとめて軽元素ということがある。
従って、ビッグバン元素合成の後に残る安定元素(の原子核)は、H、D、3He、 4He、7Li (原子番号1から3までの元素)である。これらの元素の存在量が観測された値とほぼ一致していることが、ビックバン宇宙論の重要な根拠の一つとなっている。

2022年01月23日更新

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    * ビッグバン元素合成
    「http://astrog.phys.kyushu-u.ac.jp/index.php/標準・非標準ビッグバンモデル」にある図を元に作成。
    * ビッグバン元素合成の理論から計算された軽元素の存在量の時間変化。
    望月優子、佐藤勝彦「ビッグバン元素合成」、シリーズ現代の天文学第1巻、
    岡村・池内・海部・佐藤・永原編『人類の住む宇宙』第2版 3章 図3.11(日本評論社)
    * ビッグバン元素合成の理論値(幅のある曲線; 幅が理論の不定性)と観測値(水平な横帯; 観測の不定性が帯の幅)の比較。プランク衛星によりバリオン数・光子数比は6.1×10^{-10}と求められている。上段のY_pは水素と4Heの質量比、中段はDと3Heの水素原子に対する個数比、下段は7Liの水素原子に対する個数比。7Liの観測と理論の不一致は未解明であるが、それ以外の軽元素の存在量が理論予測とぴったり一致していることはビックバン宇宙論の重要な根拠の一つである。
    望月優子、佐藤勝彦「ビッグバン元素合成」、シリーズ現代の天文学第1巻、
    岡村・池内・海部・佐藤・永原編『人類の住む宇宙』第2版 3章 図3.12(日本評論社)