最も光度の高いグループに属する恒星(英語名称の最後の star は省略されることが多い)。光度階級ではⅠに相当する。質量が太陽の約10倍以上の大質量星は、中心部での水素が枯渇したのち、HR図上で光度の高い領域に、高温から低温にわたって分布するようになる。一般には赤色巨星の場合と同じく恒星の膨張の結果温度が下がって赤色超巨星となるが、大質量星では表面からの激しい質量放出の結果、外層を失って高い表面温度を示す青色超巨星も現れる。
屈折率 $n_1$ の媒質から入射角 $\theta_1$ で入射した光線が屈折率 $n_2$ の媒質中に屈折角 $\theta_2$ で出ていくとき、これらの間には
$$n_1\sin\theta_1=n_2\sin\theta_2$$
の関係があり、これをスネルの法則または屈折の法則と呼ぶ。名前はこの法則を発見したオランダの天文学者・数学者であるスネル(W.Snell:1580-1626)に由来する。
屈折現象は古くはイスラム科学者のイブン=サフル(Ibn Sahl:940–1000) とアルハゼン(Alhazen:965頃-1040頃)、また近代ではフランスのデカルト(R.Descartes:1596-1650)、オランダのホイヘンス(C. Huygens:1629-1695)らが研究している。ホイヘンスの原理も参照。
主焦点を参照。
炭素が酸素より多いことにより、スペクトル中に炭素に関連した分子の吸収帯が顕著に見られる恒星。太陽組成に見られるように、酸素は炭素よりも一般に多く、低温度星ではTiO分子や水分子などの吸収帯が強くなる。これに対し、漸近巨星分枝においては内部で炭素が合成されることにより、表面においても炭素組成が酸素組成を上回る星が現れる。これらの星では C2 や C2H2 などの分子の吸収帯が強くなり、スペクトル型としてはN型星に分類される。漸近巨星分枝段階でのs過程によってつくられる重元素の過剰を示す星も確認されている。
一方、比較的温度の高い赤色巨星にも炭素過剰を示す天体があり、R型星と分類されている。R型星はs過程元素の過剰も見られず、CH星に見られるような連星系での漸近巨星分枝質量移動の効果も認められないため、まったく異なる炭素の供給メカニズムが存在すると考えられるが、その詳細は明らかになっていない。このほか、炭素星には金属量の低いCH星や炭素同位体異常星(J型)なども含まれる。
日周運動によって、東から上って南の空を通過して西に沈む天体が、真南の方角を通過すること。正確に言えば、天体が天頂(地平座標系を参照)より南側で子午線を通過すること。南中時の高度を南中高度という。太陽が南中する時刻がその地点の正午である。
地球の自転軸(地軸)は公転面に垂直な方向から約23.4°傾いているので、太陽の南中高度は季節によって変化する。北半球の北緯φ°の地点の南中高度は、春分と秋分では(90-φ)°、夏至では(90-φ+23.4)°、冬至では(90-φ-23.4)°である。東京付近(φ=35)での南中高度は、冬至で約32°、春分で約55°、夏至で約78°、秋分で約55°と変化する。この、季節による太陽の南中高度の変化が季節の変化の最も大きな原因である(二至二分も参照)。
天体が子午線を通過することは、天頂より北側か南側かを問わず一般に「子午線通過(meridian transit)」と呼ばれる。周極星の場合は、上側と下側でそれぞれ「上方子午線通過」および「下方子午線通過」と呼ばれる。天頂より南側での子午線通過に「南中」という特別な語を用いる国は日本以外ではあまりないようである。
「地軸の傾きと南中高度の違い」を説明するムービー(製作「CGムービー人理科」)
https://youtu.be/jOveW6_kAI4
高温度の星の総称。スペクトル型ではO, B型などで、低温度の星の総称である晩期型星との境界は明確に定義されてはいない。高温の星を早期型、低温の星を晩期型と呼ぶのは、星はO型で誕生し、だんだんと冷えてM型になると考えていた昔の名残である(鈴木敬信著「天文学」地人書館 1982年)。
X線望遠鏡を参照。
フレア星を参照。
原始星やTタウリ型星のこと。
星が生まれた後、主系列星に向かって進化している段階にある星のことを指す。林トラックも参照。
電波天文学で用いられる、天体のアンテナ温度の代表的な強度校正法の一つ。「吸収体を用いた電波強度校正法」または「R-sky(アール・スカイ)法」ともいわれる。利得が十分な精度で安定しない受信機を天体からの微弱な信号強度の測定に用いる場合、入力が0でも受信機自身が発生する雑音があるため、出力は0とならない。このため、2つ以上の強度が既知の雑音源を測定して随時校正する必要があるが、その場合でも大気の吸収と放射の効果を補正する必要がある。しかしながら、等温の大気をモデルを考え、それと同じ温度の熱雑音を放つ電波吸収体を校正源として、ON-OFF観測を行うと、大気の吸収を補正した大気外でのアンテナ温度 $T_{\rm A}^\ast$ を次式で得ることができる。
$$T_{\rm A}^\ast=\frac{y_{\rm on}-y_{\rm off}}{y_{\rm R}-y_{\rm off}}$$
ここで、変数 $y_{\rm on}、y_{\rm off}、y_{\rm R}$ はそれぞれ天体とそれに隣接した大気放射および電波吸収体を入力した際の受信機出力を示す。
校正用の電波吸収体は常温で放置したものを用いることが多い。入力を素速く切り替えられるように、電波吸収体は受信機への入力光路の途中に出し入れ可能に設置したり、可動式の反射鏡で入力を切り替えたりする。チョッパーホイール法は簡便な方法であるにもかかわらず、電波吸収体と大気の温度差が小さい場合は精度良くアンテナ温度を決定できるので、多くの電波望遠鏡で利用されている。ウーリック(B. Ulich)とハース(R. Haas)によって考案された。
月の黄経に見られる周期的な変化の一つ。デンマークの天文学者であるティコ・ブラーエ(T. Brahe)によって1590年頃発見された。朔望月の半分の周期である約14.8日の周期で、2370''の振幅がある。これは太陽の摂動による。
連星のうちで、2つの星が互いに影響を及ぼすくらいに接近した系を近接連星というが、その中でも距離が極めて近く、お互いの表面が接触しているもののこと。ロッシュモデルも参照。
ある観測システムで恒星などの点光源を観測したときに得られる像の形状。英語名に由来するPSFという略称が用いられることが多い。望遠鏡や観測装置の収差や回折および散乱光の影響のほか、地上からの観測の場合には大気ゆらぎや大気分散による像の広がりの影響がこれに含まれる。光学伝達関数も参照。
地球は自転しながら太陽の周りを公転している。地球の赤道面が天球と交わる線が天の赤道である。太陽の周りを回る地球の軌道面を黄道面といい、それが天球と交わる線が黄道である。地球の自転軸(地軸)は黄道面に垂直な方向に対して約23.4度傾いているので、天球上で黄道と天の赤道は約23.4度傾いている(図1)。
黄道上で太陽の黄経(黄道座標系を参照)が0度になる、すなわち太陽が春分点にある時刻が春分であり、この時刻を含む日が春分の日である。一般には春分の日を単に春分ということも多い。太陽の黄経が90度、180度、270度になる時刻がそれぞれ、夏至、秋分、冬至である。春分を起点とすれば、夏至、秋分、冬至を経て1年で太陽は黄道を一周する。日本ではこれは春夏秋冬の季節の変化に対応する。
季節の変化は、地表面に入射する太陽エネルギーの変化による地表温度の変化が主な原因である(図2)。北緯約35度(東京付近の緯度)の地点において、南中時の太陽光の入射角度は、冬至で約31度、春分と秋分で約55度、夏至で約78度である。太陽光の入射角が小さい程、単位面積あたりに地表面に入射する太陽エネルギーは小さい。このため、冬至の頃には地面や海面が最も温まりにくく、夏至の頃には最も温まりやすい。このために、気温は冬に最も低く夏には最も高くなり、春と秋はその中間となる。ただし、昼間の長さが冬至の頃は最も短かく夏至の頃最も長いことも気温の変化に影響している。
季節の変化の最大の原因は太陽の南中高度の変化であるので、季節変化は地球の高緯度地域で最も顕著に見られ、中緯度帯ではほどよい変化となり、赤道付近ではそれほど顕著ではない。また北半球と南半球では季節が逆転する。東京(北半球の中緯度)が夏の時にシドニー(南半球の中緯度)は冬である。北極圏や南極圏では夏には真夜中でも太陽が沈まない白夜となり、冬には逆に正午でも太陽が沈んでいる状態の極夜となる。
中学校理科で学ぶ「季節の変化」の主要因について以下の二つの誤解が広く見られる。第一は、太陽と地球の距離の違いが原因であるという誤解である。太陽の周りの地球の公転軌道は太陽を一つの焦点とする楕円軌道であり、地球と太陽の間の距離は年間を通じて僅かに変わる。気温が夏に高く冬に低くなるのは、夏は冬に比べて地球-太陽間の距離が近いためと誤解されることがあるが、実際にはその逆である(図3)。地球-太陽間の平均距離(1天文単位)は約1億5000万kmで、近日点距離と遠日点距離の差は僅か500万km程度なので、年間を通じた地球-太陽間の距離の変化は±2%未満である。距離の違いによる入射エネルギーの違いは、南中高度の変化による違いと比べると極めて小さい。
第二は、日本と太陽の距離の違いが原因であるとする誤解である。図2の地球の拡大図を見て、赤道を基準にすると、夏至の頃は北半球の中緯度帯(日本)が太陽に近く、冬至の頃は遠くなるので、これが気温の変化の原因と誤解されることが多い。地球の赤道半径は約6400kmである。仮に冬至と夏至で、地球の半径分だけ日本と太陽の距離が変わったとしても、6400/150,000,000=0.00004 (=0.004%) なので、そのことによる入射エネルギーの違いは無視できるくらいに小さい。
背景雑音を参照。
脈動変光星の一種。ケフェイドとも表記される。セファイド変光星(ケフェイド変光星)あるいはケフェウス座δ(デルタ)型変光星ともいう。名前は、1784年にグッドリック(John Goodricke)によりこのタイプの変光が観測されたケフェウス座δ星に由来する。ただし、セファイドの最初の観測例は、それに数週間先立つピゴット(Edward Pigott)によるわし座η(イータ)星とされている。
セファイドは、中質量星がヘリウム燃焼段階にセファイド不安定帯を横切る際に起こる外層の脈動により変光する。多くは星全体が膨張、収縮する基準振動をしているが、なかには半径方向のある位置に動かない節を持ち、その内側が膨張している時には外側が収縮するような倍振動を示すものもある。周期は1-200日程度で、光度曲線は可視光ではのこぎりの歯に似た非対称で特徴的な形を示す。可視光から近赤外線にかけて波長が長くなるにつれ、非対称性が薄れ振幅が小さくなる。
セファイドはリービットが発見したその周期-光度関係により、周期から絶対等級が推定できるため、宇宙における距離測定の標準光源として利用されている。ハッブルは、ウィルソン山天文台の100インチ望遠鏡を用いた観測から、アンドロメダ星雲(M31)中にセファイドを発見し、周期-光度関係を適用して距離を求め、渦巻星雲M31が銀河系(天の川銀河)の外にあり、それと同等の規模を持つ恒星の大集団であることを示した。このような集団は当初、カントの宇宙観に起源を持つ島宇宙、あるいは銀河系外星雲とよばれた時期もあったが、後に銀河(galaxy)という名称が広く使われるようになった(大論争を参照)。
標準光源としてのセファイドは、宇宙の距離はしごにおいて種族Ⅰの1次距離指標を構成する。ただし、周期-光度関係を利用するには星の金属量や星間減光(星間吸収)の影響を補正する必要がある。セファイドループも参照。
セファイド等の変光星の広汎な観測データはアメリカ変光星観測者協会のホームページから見ることができる。星の名前を入力すると観測データと共に光度曲線も見ることができる。
アメリカ変光星観測者協会(AAVSO)ホームページ: https://www.aavso.org/
Light Curve Generator 2 (LCG2): https://www.aavso.org/LCGv2/
光度、表面輝度、内部運動速度など銀河全体を表す物理量の間に見られる相関関係。たとえば2変数の場合は y ∝ x n(n は定数)という形をとる。楕円銀河のスケーリング則には、3つの物理量の間の極めて強い相関である基本平面や、それを2次元に射影したフェイバー-ジャクソン関係などがある。渦巻銀河ではタリー-フィッシャー関係が最も有名である。楕円銀河と渦巻銀河に共通して成り立つスケーリング則はない。分散の小さいスケーリング則は、距離指標関係式として銀河の距離の推定に用いられる。スケーリング則はビリアル定理が物理的基礎となっているが、ビリアル定理で許される物理空間よりもずっと狭い領域にしか現実の銀河は存在しない。スケーリング則をいかにして再現するかは銀河進化論の重要な課題である。
黄道上の黄経で15度毎に1太陽年を24等分した位置に太陽が来る日に、その季節にちなんだ名称を付けたもの。もともとは、太陰暦や太陰太陽暦では日付と季節がずれるので、季節との対応をつけるために考案されたもの。各月ごとに、太陽黄経が30度の倍数となる「中」とそれと15度違う「節」がある。現代でも重要な意味を持つのは、冬至(黄経270度)、夏至(90度)、春分(0度)、秋分(180度)のいわゆる二至二分である。二十四節気は2016年にユネスコ無形文化遺産に登録された。雑節も参照。
セファイドを参照。
自由電子が正電荷イオンの近くを通過する際に,二つの電荷の運動が時間変化する電気双極子となり、電磁波を放射する現象。電子から見るとイオンのクーロン力により制動加速度を受けて出す連続放射であり、制動放射とも呼ばれる。高エネルギー電子が金属標的中で減速した際に発見された。ある温度で熱運動している電子からの制動放射は特に熱制動放射と呼ばれ、その強度は、低い振動数(周波数)ではほぼ一定で、高い振動数では振動数の増加と共に急激に減少する。
