天文学辞典 :ASJ glossary of astronomy | 天文、宇宙、天体に関する用語を3300語以上収録。随時追加・更新中!専門家がわかりやすく解説します。(すべて無料)

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サイモンズ天文台

宇宙の起源と初期進化に関わる基本的な物理プロセスの解明に向けて、国際的な宇宙論研究プロジェクトがチリ北部のアタカマ砂漠、標高5200 mの高地に建設中の電波望遠鏡を擁する天文台。宇宙マイクロ波背景放射(CMB)を観測して三世代ニュートリノの質量の和(あるいは上限値)の決定、軽い素粒子の探査、ダークエネルギーの性質、銀河間物質銀河団の理解の進展、銀河形成におけるフィードバックの役割などの研究を目指す。

プロジェクトの中核となるのはアメリカのサイモンズ財団とアメリカ国立科学財団(NSF)、ペンシルバニア大学、プリンストン大学、カリフォルニア大学サンディエゴ校、カリフォルニア大学バークレー校、ローレンスバークレー国立研究所の6機関及び英国と日本の研究グループ。全体ではこれらを含む世界の50以上の研究機関から集まった350人以上の研究者と技術者からなる。設置場所を提供するチリもさまざまな支援をしている。

サイモンズ天文台は、予備的な装置として建設された既存のアタカマ宇宙論望遠鏡(Atacama Cosmology Telescope: ACT)とサイモンズアレイ(The Simons Array)の経験を踏まえて、CMBを観測する新しい電波望遠鏡、すなわち3台の小口径望遠鏡(Small Aperture Telescopes: SAT)と口径6 mの大口径望遠鏡(Large Aperture Telescope: LAT)からなる。LATは2025年3月にファーストライトに成功した。近い将来さらに2台のSATが英国と日本の参加グループにより加わる予定である。これらにより、CMBの温度ゆらぎ偏光の異方性を27, 39, 93, 145, 225, 280 GHzを中心とする6つのバンドで測定する。SATは、全天の10%の天域にわたり原始重力波がCMBに残す痕跡を探査する。LATは1分角程度の分解能で全天の半分を観測する。

このLATとSAT3台の4つの望遠鏡を合わせると、既存の他のすべての宇宙マイクロ波背景放射観測装置を合わせたよりも多い60,000個の超伝導検出器が空に向けられることになる。検出器は0.1 Kという低温で動作しノイズが低く精度と分解能が高い。プランク衛星の10倍の感度と5倍の空間分解能を有しているので、既存の他の宇宙マイクロ波背景放射探査観測の1桁以上サーベイ効率が高い。試験観測は2022年の終わりに開始され、2025年に本観測に移行し10年間程度継続する予定である。
ホームページ
サイモンズ天文台:https://simonsobservatory.org/
サイモンズアレイ:https://cosmology.ucsd.edu/simonsarray.php
アタカマ宇宙論望遠鏡:https://act.princeton.edu/

 

太陽系恒星銀河などの観測データを基に、夜空の見え方、宇宙空間の旅などをシミュレーションできる無料のソフトウェア(4次元デジタル宇宙ビューワー)である。名前は開発場所の国立天文台がある東京都三鷹市に由来する。
空間3次元と時間1次元の4次元宇宙の姿を可視化するコンテンツを制作する目的で2001年に発足した国立天文台の「4次元デジタル宇宙(4D2U:フォー・ディー・トゥー・ユー)プロジェクト」の中で、Mitakaは加藤恒彦(現:国立天文台特任専門員)によって開発された。世界各地の任意の時刻における夜空の見え方はもちろん、地球から宇宙の大規模構造までを自由に移動して、様々な天体、宇宙の階層構造、観測データ、さらには理論モデルなどを見ることができる。
Mitakaは2003年6月に国立天文台構内に作られた、3枚の平面スクリーンで構成される4D2Uシアターで上映と一般公開が始まった。2007年からは、新たに完成した立体ドームシアター(4D2Uドームシアタ-)での上映に使用され、2015年4月からは、リニューアルした新システムのドームシアターで使用されている。基本的には立体視シアターの上映用ソフトウェアであるが、パソコンにダウンロードして一般の人も容易に利用できるように作られており、2005年にベータ版が、2007年には正式版が公開された。それ以降も加藤による開発は継続されておりMitakaは進化を続けている。現在の最新バージョンは「Mitaka バージョン1.7.3(2022/07/06 Release)」である。Mitakaのダウンロード数は2020年に累計100万件を超えた。
4D2UプロジェクトではMitakaに加えて、2020年現在で約30タイトルの立体視映像を制作しており、すべてウェブサイトにて無料で公開している。最新の宇宙像の理解に役立つこれらのコンテンツは、科学館、プラネタリウム、学校など教育機関のみならず、アートやエンターテインメントの場など、社会で幅広く活用されている。加藤恒彦を含む4D2Uプロジェクトのメンバー4名は、2020年度科学技術分野の文部科学大臣表彰の科学技術賞(理解増進部門)を受賞した。
Mitakaのホームページ
https://4d2u.nao.ac.jp/html/program/mitaka/
Mitaka バージョン1.4(2017年7月)への更新の解説
https://www.nao.ac.jp/news/topics/2017/20170901-4d2u.html
4D2Uプロジェクトのホームページ
https://4d2u.nao.ac.jp/t/index.html
4D2Uドームシアターのホームページ
https://prc.nao.ac.jp/4d2u/


Mitakaを用いて製作された「宇宙の大きさを体感できる動画」

https://www.youtube.com/embed/jM02C3uSBXY


「宇宙を体験する 黒田有彩×Mitaka」 国立天文台制作

https://www.youtube.com/embed/qwxUBNbev7I

高速電波バーストを参照。

 

電波(110 MHzから8 GHz)で観測される、継続時間が数ミリ秒ないしそれ以下の強力な(約10 mJy-100 Jyの)電磁波パルス。英語(Fast Radio Burst)の頭文字を取ってFRBと呼ばれることも多い。個々のバーストはFRB YYMMDD、最近ではFRB YYYYMMDDXのように、FRBの後に年月日とアルファベットをつけて識別される。
最初の現象は2007年に電波パルサーを探査していたローリマー(D. R. Lorimer)達によって発見されたが(ロ-リマーバースト: FRB 010724)その正体は不明だった。パークス天文台の電波望遠鏡で高時間分解能電波サーベイを行っていたソーントン(D. Thornton)達が、2013年にローリマーバーストと同じ種類のバーストを4個発見し、全天で頻繁に観測される高エネルギー天体現象であることを示唆して Fast Radio Burst と名付けた。これをきっかけに世界の多くの電波望遠鏡を使ったサーベイが行われ、2021年時点で700個以上の高速電波バーストが見つかっている。このうち約20個はバーストを繰り返すことが知られている。また、約10個ほどの母銀河が同定された。
高速電波バーストのパルスは、発生源から地球に届くまでの間にある銀河間物質星間物質中の電離ガスの影響で、周波数が低いほど遅れて到着する。その量は分散量度として測定される。したがって、高速電波バーストの分散量度は、発生源の距離を推定する手段でもあり、銀河間物質や星間物質の性質を調べる宇宙論の手段ともなる。これまでに見つかった高速電波バーストはほとんどが銀河系天の川銀河)の外から来たものと考えられている。
2020年に銀河系で起こったマグネターのバーストから高速電波バーストが検出され、発生源の一つはマグネターであることが確定した。ただし、銀河系外の高速電波バーストの正体はまだ分かっていない。

気候変動に関する政府間パネルを参照。

アポロ計画最後の有人ミッションであるアポロ17号の乗組員によって、1972年12月7日に地球からおよそ45000 kmの距離から撮影された地球の写真。英語の意味は「青いビー玉」である。
同様の写真が以前に人工衛星から撮影されたことはあるが、これは地球が太陽の光に照らされてみえる人類が撮影した最初の鮮明なカラー画像である。宇宙から見た地球の陸地には国境線はなく、広大な宇宙空間のなかで青く美しく輝いている。宇宙から地球を見ると、その環境やそこでおきることに関して、「グローバルな(国境を越えた全地球的な)視点」を越えて「ユニバーサルな(宇宙の中に地球を位置付ける)視点」を持つことができる。
この写真は1968年にアポロ8号ミッション中に撮影された「地球の出(Earthrise)」とともに、最も世界に広まった写真の一つである。地球環境の保護や平和を訴える材料としても広く用いられている。その後、人工衛星による写真を使ったより鮮明な何種類かの Blue Marble とよばれる写真が公開されている。ペイルブルードットも参照。

JAXAの月探査機「かぐや」HDTVによる満地球の出(2008年9月30日)

https://www.youtube.com/embed/kcpjWCIQHEE

ミリ波電波天文学研究所が運用している開口合成型のミリ波干渉計。フランス南部、グルノーブル近郊の標高2550 mのビュール高原にある。口径15 mのアンテナ12基で構成され、波長1~3 mm帯をカバーする。最大の基線長は760 mで、角分解能は1秒角を切る。1990年代半ば以降、原始惑星系円盤や遠方銀河の分子ガス輝線に対する高感度かつ高解像度観測で目覚ましい成果を挙げている。NOEMA (NOrthern Extended Millimeter Array)と略記されることも多い。以前は、ビュール高原電波干渉計(PdBI)と呼ばれ、3基のアンテナから順次拡張されて、6基を拡張して機能向上したのを機会に呼称も更新された。
ホームページ:https://www.iram-institute.org/EN/
https://www.iram-institute.org/EN/noema-project.php?ContentID=9&rub=9&srub=0&ssrub=0&sssrub=0

 

19世紀前半に発明された写真は19世紀終わり頃から、可視光天文学の中心的な光検出器として100年以上にわたって広く用いられた。写真が用いられる以前の眼視による観測では、瞳を通過してきた光を視覚で捉える瞬間的認知だったが、写真では一定時間に入射した光を蓄積して記録できるようになった。このために天文観測の感度と精度が飛躍的に向上した。ガラスを用いた写真乾板を利用することにより、記録された天体の位置の測定精度も向上した。写真乾板に塗布された写真乳剤も当初は青色波長域にしか感度がなかったが、次第に長波長にも感度を持つものが開発された。さらに感度は低いが高い信号対雑音比(S/N)を持つ微粒子乾板が開発された(図1)。微粒子乾板は感度が低いため、増感や超増感処理が施されることが多かった。また映像増倍管(Image Intensifier: 通称IIーアイアイ)と組み合わせることで高い性能を発揮した。ルービン達による渦巻銀河平坦な回転曲線の観測がその良い例である。
1970年代初め頃から、写真に代わる高精度の光検出器を求めてビジコンなどさまざまな撮像管の応用が試みられたが、70年代終わりに固体撮像素子のCCDが登場すると、次第にそれが普及し、2000年までにはほぼ完全に写真乾板に取って代わることになった。
100年以上に渡って可視光天文学の中心であった「写真乾板から天体に関する情報を引き出す分野」をここでは「天体写真測光」として、その特徴をまとめ、本辞典の関連項目の理解の助けとする。直接撮像写真であろうがスペクトル写真であろうが、写真乾板に記録された黒み(写真濃度)から入射した天体の光の強度(正確には露光量=強度×露光時間)を測るという意味で、ここでは「写真測光」という言葉を用いている。つまり、ここでいう天体写真測光の「測光」は、測光観測分光観測などという場合の観測モードの「測光」とは関わりない。
天体写真測光の特徴は以下である。
1 露光量と写真の「濃度(黒み)」の関係を表す特性曲線は写真乾板毎に決める必要がある。
2 写真濃度を天体の等級に対応させるには、(特性曲線を作ることに加えて)視野中に測光標準星などの等級既知の天体が写し込まれていることが必要である。
3 天体写真には、露光や現像過程で発生するさまざまな(写真の)隣接効果がある。
4 カメラや望遠鏡に起因するゴーストが暗い天体の測定を困難にする場合がある。
5 写真の感度はCCDの1/100以下であり、ダイナミックレンジ(特性曲線の直線部に対応)もCCDの1/100以下である。
CCDなどの電子的光検出器と比較した場合、写真乾板は「使い捨て」検出器である所に本質的な違いがある。すなわち、一度露光して現像した写真乾板を再び新たな観測には使えない。このために検出器としての校正(calibration)の精度を多数のデータを蓄積して向上させることができない。
例えば銀河の写真から表面測光によって銀河の表面輝度分布を求める場合を、図2を例として考える。銀河にはバックグラウンド(実際には前景だが)として空の明るさが重なって記録されており、これを差し引く必要がある。ほとんどの銀河は空の上での広がりはごくわずかなので、その範囲では空の明るさは一定と仮定して問題ないが、実際に記録された銀河周辺(領域D)の写真濃度分布(右下図の等高線)は一様ではなく、銀河の写っている部分(領域C)でも一様ではないことが推定される。しかしこれは領域Dからの内挿によって推測するしかない。CCDのように何度も使える検出器なら、フラット補正によって十分な精度が得られるが、写真乾板ではこれができない。写真乾板が使い捨て検出器であることと、感度の低さ及びダイナミックレンジの狭さが相俟って、天体写真測光は一声で言えば±0.1等(約10%)の精度が一般的であった(図3)。
この辞典の項目で天体写真測光に関わりの深いものを挙げておく。
写真乾板 写真乳剤 特性曲線 隣接効果
アイリスフォトメータ アンシャープマスキング イラジエーション
エバーハート効果 乾板測定機 光学くさび ゴースト
サブビームプリズム(光学くさび参照) シュミット望遠鏡
相反則不軌 測微濃度計(マイクロデンシトメータ)
チューブセンシトメータ(光学くさび参照) 超増感
ハレーション ブリンクコンパレータ ベーキング

天体写真測光において、写真から天文学に必要な定量的な情報を引き出すために使われたさまざまな測定機の総称。研究用の天体写真はガラスを用いた写真乾板で撮影されたのでこのように呼ばれる。
コンパレータ(comparator)は最も古くから使われた単純な測定機で、撮像写真では星や天体の位置、分光写真ではスペクトル線の位置(波長)の精密測定に用いられた。初期のものは写真乾板をのせる載物台と照明装置、精密目盛尺、顕微鏡からなっていたが、後には現在「投影機」と呼ばれている(顕微鏡のない)拡大投影光学系を持つものに変わっていった。
他には、変光星や移動天体の探査に用いられたブリンクコンパレータ(blink comparator)、星の明るさ(等級)の測定に用いられたアイリスフォトメータ(iris diaphragm photometer)、銀河やガス星雲のように広がった天体の等輝度線/等濃度線を描けるアイソフォトメータ/アイソデンシトメータなどが使われた。
天体写真測光で最も基本的な測定機は、写真乾板の微小な面積の写真濃度を測定する測微濃度計(マイクロデンシトメータ)である。載物台を動かすことで、乾板内の一定の面積の濃度分布を記録することができる。1980年代になると、光源や駆動装置を改良して乾板を高速スキャンし、濃度データをデジタル化して、大型コンピュータによる画像処理から天体の情報を引き出す「写真乾板のデジタル処理」が天体写真測光の主流となった。しかし、1980年代の中頃から、可視光の天体観測の検出器は写真からCCDに代わり、2000年頃までに乾板測定機が活躍する時代は終わりを告げた。

同じ露光量を与えた微小領域の写真濃度が、隣接効果によってその領域の面積によって変化する現象。このために、チューブセンシトメーター(光学くさび参照)のスポットサイズ(図参照)はあまり小さくしてはいけない。ドイツの写真家エバーハート(Gustav Eberhard)によって20世紀初めに指摘されたのでこの名前がある。

現像プロセスに起因して、写真画像の境界で濃度差が露光量の差と異なる現象。縁効果(edge effect)ともいう。
露光量が多かった場所(左下図のA点の右側)は、現像が進むにつれて現像能力を低下させる反応生成物が多量にでき現像が抑えられる。露光量の少なかった場所(左下図のB点の左側)では、反応生成物が少なく新鮮な現像液が拡散してくるので現像が進む。このため、二つの場所の境では図に示すように、A点付近は濃度がより高く、B点付近はより低くなる。
隣接効果はその現れる状況によって、エバーハート効果、コスチンスキー効果(二重星や隣接するスペクトル線の間隔が実際より広がって見える)などの名前で呼ばれる。隣接効果は現像中に現像液を攪拌することで軽減できる。

光学くさびを参照。

写真乾板や写真フィルムなどの写真乳剤の表面に入射した光が乳剤層中で散乱され、周辺の粒子を感光させて、あたかも写真濃度(黒み)がしみ出したかのように見える現象。天体写真では、暗い星ではあまり目立たないが、明るい星で中心が最高濃度(飽和濃度:Dmax)に達したものは、明るくなるにつれイラジーションの効果で星像の大きさが大きくなる。このことを利用して写真乾板上の星像の大きさ(と濃度)を測定して星の等級を測定する装置がアイリスフォトメータである。
CCDカメラのようなデジタルカメラでは、ピークとなるピクセル値が飽和レベルを大きく超えない限り、恒星のプロファイルの半値全幅(FWHM)は星の明るさによらず一定である。ピーク値が飽和レベルを大きく超えるときには画素から電荷があふれ出して(ブルーミングと呼ぶ)画像中に直線パターンを作る。特性曲線も参照。

イラジエーションの効果で天体写真の星像の大きさが大きくなることを利用して写真乾板上の星像の大きさ(と濃度)を測定して星の等級を測定する装置。カメラの絞りのように円形開口の直径を連続的に変えられるアイリス絞りを使うのでこの名前がある。アイリスとは眼球の虹彩(ひとみ)の事である。
原理を図1に示す。光源ランプの光を測定光(右側)と比較光(左側)に分ける。測定光はレンズL1を通りアイリス絞りを一様に照明している。照らされたアイリス絞りの像はレンズL2で縮小されて乾板上に結像する。乾板は載物台に載っていて自由に動かせる。乾板を動かして測定したい星の像をアイリス絞りの中心に置く。チョッパーはアイリス絞りを透過した光と比較光を交互に光電子増倍管に導く。光電子増倍管の出力を参照して自動制御機構が、透過光と比較光が同じなるようにアイリス絞りを動かす。比較光は一定なので、明るい星(星像が大きい)の場合にはアイリス絞りは大きく広がり、暗い星では小さくなる。このアイリス絞りの直径(アイリス値)を星の明るさ(等級)の指標に用いる。中心濃度が飽和濃度(特性曲線を参照)に達しても、明るい星になるほど星像が大きくなるので、測定のダイナミックレンジは比較的広い。同じ乾板に光電測光などで等級が分かっている星(測光標準星)があればアイリス値と等級の校正曲線を作ることができる。

白黒写真の濃度(黒み)が入射された光の露光量に対してどのように変化するかを示す曲線。写真の入出力関係を表す曲線である。19世紀末ころにイギリスでこの研究をしたハーター(Ferdinand Hurter)とドリフィールド(Vero C. Driffield)の名前からH-D曲線などとも呼ばれる。
写真濃度Dは現像された写真乾板(やフィルム)の透過率(=透過光強度/入射光強度)をTとして
D = -log10T
で定義される。透過光を図1の a のように数度以内の受光角(実際は立体角)で測定したときの濃度を平行光濃度、cのように立体角360度で測定した時の濃度を拡散光濃度と呼ぶ。天体写真測光では多くの場合(準)平行光濃度が用いられた。濃度は対数なので、D=1はT=0.1, D=3でT=0.001なので、D=4以上の測定は透過光が弱く簡単ではない。
一方、露光量 E は乳剤に照射した光の照度 I と露光時間 t の積として
E = I × t
で定義される。特性曲線は縦軸をD、横軸をlog10Eで表す。
典型的な特性曲線は図2に示す形をしており、いくつかの量でその振る舞いが記述される。図のA点より左では濃度は一定で、露光されていない状態の濃度に対応し「カブリ濃度(fog)」と呼ばれる。露光量が増すにつれてゆっくり濃度が上がるA点からB点にかけては特性曲線の「足(toe)」と呼ばれる。B点とC点の間は「直線部」と呼ばれ、濃度は露光量に対数に比例する。この部分の傾き
γ = d D/d (log10E
は「ガンマ」と呼ばれ階調の度合を決める重要な量である。ガンマが大きいほど高調、小さいほど軟調と表現される。ガンマは写真乳剤や現像液の種類、現像時間や現像温度などなどで変化する。直線部(D~0.5ー2)が写真乾板のダイナミックレンジと考えて良い。次第に濃度の増加が鈍ってくるC点からD点の間は「肩(shoulder)と呼ばれる。D点はその乾板の最高濃度(Dmax;飽和濃度ともいう)で、これ以降は露光量が増えても濃度は増えない。さらに露光量が極端に増えると濃度が低下するソラリゼーションという現象が起きる(図には描かれていない)。「感度」は、横軸に対して特性曲線がどの位置にあるかで決まる。左にあるほど感度が高く、右にあるほど感度が高い。例えば図のように、カブリ濃度から一定量ΔDだけ高い濃度を与える露光量E0の逆数を取るなどすれば感度を数値化することができる。
特性曲線は、ある写真乳剤に固有のものではない。乳剤が違えば当然特性曲線は違うが、そのほかにも、
(1) 現像液の組成と濃度、
(2) 現像時間、現像液温度、攪拌の程度
(3) 露光した光のエネルギー分布や偏光性
(4) 露光の仕方(相反則不軌を参照)
(5) 測定機の構造
などに影響される。従って、特性曲線、すなわち写真の入力ー出力関係は厳密には写真乾板1枚毎に異なる。天体写真測光で注意しなければならない点はこのことに起因するものが多い。
隣接効果エバーハート効果も参照。

アメリカ合衆国政府が国際協力で実現を目指す大規模な有人宇宙飛行計画。将来の有人火星探査を視野に、月面に再び人類を送りこみ、資源探査活動などでの南極に長期滞在することを目指している。2017年に当時のトランプ大統領がこの計画を含む政策を承認し署名した。実現すれば1972年のアポロ17号(アポロ計画を参照)で最後に人類が月面に立って以来のこととなる。日本、カナダ、オーストラリア、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)などが参加している。アルテミスはギリシア神話に登場する月の女神(アポロの双子とされる)の名前である。アルテミス計画では、人類が月面に長い期間滞在するのに必要な環境を整えることで、持続的な探査と将来の火星有人探査への道筋をつけることが期待されている。

直近の目標は、2024年までに月面に女性を含む宇宙飛行士を着陸させること。それ以降順次、月を周回する軌道に基地となる宇宙ステーション、ゲートウェイを建設し、長期滞在・月面有人着陸・資源探査と資源収集などの活動を行う。

太陽系外惑星原始惑星系円盤の直接観測における観測・解析手法のひとつ。単に差分撮像ということもある。大別して、分光差分撮像法、偏光差分撮像法、角度差分撮像法がある。
分光差分撮像法は、天体からの光をプリズムなどの分散素子分散、分岐させ、それぞれ異なる波長のフィルターを透過した光を検出器で結像させる。その結果、検出器には「同時」に取得された波長の異なる天体画像が写るため、大気乱れの時間変化の影響を受けずに画像の差し引きが可能となる。例えば、低温の惑星にのみメタンの吸収がある場合、画像の差し引きで中心の恒星の光は消え、惑星の光は残る。つまり、惑星検出とその大気中のメタン分子の検出が同時に実現できることになる。
偏光差分撮像法は、天体からの光を偏光プリズム(ウォラストンプリズムなど)で分散、分岐させ、それぞれ異なる方向の偏光(正常光と異常光)を検出器で結像させる。その結果、検出器には「同時」に取得された2偏光の天体画像が写るため、大気乱れの時間変化の影響を受けずに画像の差し引きが可能となる。例えば、原始惑星系円盤では、円盤からの光は中心星の光を散乱して偏光しているため、画像の差し引きで恒星の光は消え、惑星の光は残る。つまり、円盤検出とその円盤の偏光観測が同時に実現できることになる。
角度差分撮像法は、上記の2方法とは少し異なる手法であり、直接観測におけるノイズを低減する手法として広く用いられている。通常の撮像観測では、検出器上で天球上の位置が変わらないように観測するが、この手法では検出器面での面が固定されるように画像を取得する。そうすると、光学系の誤差に由来する時間変化しないノイズと大気揺らぎによる時間変化するノイズが区別でき、前者を抑制することができる。

自己重力(自分自身の重力)のために天体が収縮すること。重力収縮を参照。

1. 最初のハッブルディープフィールド(HDF=HDF-N)
1995年12月18日から28日まで10日間連続して、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の広視野惑星カメラ2(WFPC2)を「おおぐま座」の一角に向けて、従来にない長時間露光を行い、深い(暗い天体まで写っている)画像を撮影した。差し渡し2.4分角のこの領域(満月の約1/150の面積)、および得られた画像を総称する呼び名がハッブルディープフィールド(The Hubble Deep Field: HDF)である。プロジェクトそのものもHDFと呼ばれることがある。観測は当時の宇宙望遠鏡研究所(STScI)の所長、ロバート・ウイリアムス(Robert Williams)の主導のもと、所長留め置き時間を使って行われた。
ターゲットとなった天域は、J2000.0分点で赤経12時36分49.4秒、赤緯+62度12分58秒の位置(おおぐま座)にあり、WFPC2の視野を反映して、一辺が約2.7分の少々不規則な形をしている(図1)。HSTの約150周回がこの領域の観測に当てられたが、地上からの観測の便宜を図るため、それを取り囲む隣接の8天域(flanking fields)の撮像にも10周回が当てられた(図2)。
HDFは4つのフィルター(バンドの中心波長 300,450,606,814 nm)で観測された。各バンドの露出時間と限界等級は以下に示されている.
=====================================
フィルター フレーム数 露光時間(s)  限界等級(AB mag;10σ)
------------------------------------------------------------------
F300W    77   153700    26.98
F450W    58   120600    27.86
F606W    103     109050    28.21
F814W    58   123600    27.6
-----------------------------------------------------------------
全フィルター 露光時間  506950(140.8時間)
====================================
地上からの観測ではほとんど何も見えなかった領域に2500個を超す微光銀河の姿が映し出されて、大きなインパクトを与えた。ケック望遠鏡により微光銀河の赤方偏移が測定され、赤方偏移がz=4を超える銀河も見つかった(図3)。このプロジェクトにより、スペクトルライマン端より短波長の連続光の銀河間ガスによる吸収を検出するドロップアウト法が確立され、赤方偏移z=4を超える遠方宇宙の観測研究の道が開かれた。以下に述べるその後のHSTによる深宇宙観測撮像と区別するために、最初のハッブルディープフィールドはHDF-North(HDF-N)と略称されるようになった。

2. 引き続くハッブルディープフィールド
ハッブルディープフィールド(HDF-N)の大成功を受けて、その後1998年には南天の「きょしちょう座」の方向で、HDFと同じやり方でハッブルディープフィールドサウス(HDF-South: HDF-S)が撮影された。その結果は、「宇宙は大局的には一様である」とする宇宙原理と矛盾しないものだった。
さらに2003-2004年には2002年に搭載された新しい広視野カメラ(ACS)を用いて南天の「ろ座」の方向でハッブルウルトラディープフィールド(HUDF)が撮影された。その画像には赤方偏移z=6を超える銀河も映し出されていた。
2012年には、2002年6月から2012年3月までの約10年間に撮影されたHUDF領域の画像をすべて合わせ、総露光時間200万秒、約22.5日に上るハッブルエクストリームディープフィールド(Hubble eXtreme Deep Field: XDF)が公開された。これら1.と2.のハッブル宇宙望遠鏡による深探査天域をまとめてハッブルディープフィールド(The Hubble Deep Fields:複数形)と呼ぶ。

ハッブルディープフィールドの概要はヨーロッパ宇宙機関(ESA)による以下の記事が参考になる。
https://esahubble.org/science/deep_fields/

3. もう一つのディープフィールド
2013年から3年にわたり、840周回というハッブル宇宙望遠鏡の膨大な時間を投入したフロンティアフィールド(FF)のプロジェクトが行われた。これは6個の銀河団の深い画像を撮影し、重力レンズの効果を受けて明るくなった遠方の暗い銀河の観測を目指すものであった。観測データは以下で参照できる。
https://archive.stsci.edu/prepds/frontier/

ブラックホールで観測可能な量は、質量、電荷、角運動量の3つの物理量だけである」ことを述べたもの。この3つ以外のあらゆる情報は、ブラックホールの事象の地平面に落ち込むと消失し、外部からは観測されない。これを、さまざまな性質(ふさふさの毛)を持っている通常の物体に比べて、ブラックホールは毛がないことに例えた。
1971年にルフィーニ(Remo Ruffini)とホイーラー(John Wheeler)が共著でPhysics Today誌にかいた解説記事にはじめて登場した言葉。主にホイーラーによって広められたと考えられている。