天文学辞典 :ASJ glossary of astronomy | 天文、宇宙、天体に関する用語を3300語以上収録。随時追加・更新中!専門家がわかりやすく解説します。(すべて無料)

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アイリスフォトメータ

イラジエーションの効果で天体写真の星像の大きさが大きくなることを利用して写真乾板上の星像の大きさ(と濃度)を測定して星の等級を測定する装置。カメラの絞りのように円形開口の直径を連続的に変えられるアイリス絞りを使うのでこの名前がある。アイリスとは眼球の虹彩(ひとみ)の事である。
原理を図1に示す。光源ランプの光を測定光(右側)と比較光(左側)に分ける。測定光はレンズL1を通りアイリス絞りを一様に照明している。照らされたアイリス絞りの像はレンズL2で縮小されて乾板上に結像する。乾板は載物台に載っていて自由に動かせる。乾板を動かして測定したい星の像をアイリス絞りの中心に置く。チョッパーはアイリス絞りを透過した光と比較光を交互に光電子増倍管に導く。光電子増倍管の出力を参照して自動制御機構が、透過光と比較光が同じなるようにアイリス絞りを動かす。比較光は一定なので、明るい星(星像が大きい)の場合にはアイリス絞りは大きく広がり、暗い星では小さくなる。このアイリス絞りの直径(アイリス値)を星の明るさ(等級)の指標に用いる。中心濃度が飽和濃度(特性曲線を参照)に達しても、明るい星になるほど星像が大きくなるので、測定のダイナミックレンジは比較的広い。同じ乾板に光電測光などで等級が分かっている星(測光標準星)があればアイリス値と等級の校正曲線を作ることができる。

白黒写真の濃度(黒み)が入射された光の露光量に対してどのように変化するかを示す曲線。写真の入出力関係を表す曲線である。19世紀末ころにイギリスでこの研究をしたハーター(Ferdinand Hurter)とドリフィールド(Vero C. Driffield)の名前からH-D曲線などとも呼ばれる。
写真濃度Dは現像された写真乾板(やフィルム)の透過率(=透過光強度/入射光強度)をTとして
D = -log10T
で定義される。透過光を図1の a のように数度以内の受光角(実際は立体角)で測定したときの濃度を平行光濃度、cのように立体角360度で測定した時の濃度を拡散光濃度と呼ぶ。天体写真測光では多くの場合(準)平行光濃度が用いられた。濃度は対数なので、D=1はT=0.1, D=3でT=0.001なので、D=4以上の測定は透過光が弱く簡単ではない。
一方、露光量 E は乳剤に照射した光の照度 I と露光時間 t の積として
E = I × t
で定義される。特性曲線は縦軸をD、横軸をlog10Eで表す。
典型的な特性曲線は図2に示す形をしており、いくつかの量でその振る舞いが記述される。図のA点より左では濃度は一定で、露光されていない状態の濃度に対応し「カブリ濃度(fog)」と呼ばれる。露光量が増すにつれてゆっくり濃度が上がるA点からB点にかけては特性曲線の「足(toe)」と呼ばれる。B点とC点の間は「直線部」と呼ばれ、濃度は露光量に対数に比例する。この部分の傾き
γ = d D/d (log10E
は「ガンマ」と呼ばれ階調の度合を決める重要な量である。ガンマが大きいほど高調、小さいほど軟調と表現される。ガンマは写真乳剤や現像液の種類、現像時間や現像温度などなどで変化する。直線部(D~0.5ー2)が写真乾板のダイナミックレンジと考えて良い。次第に濃度の増加が鈍ってくるC点からD点の間は「肩(shoulder)と呼ばれる。D点はその乾板の最高濃度(Dmax;飽和濃度ともいう)で、これ以降は露光量が増えても濃度は増えない。さらに露光量が極端に増えると濃度が低下するソラリゼーションという現象が起きる(図には描かれていない)。「感度」は、横軸に対して特性曲線がどの位置にあるかで決まる。左にあるほど感度が高く、右にあるほど感度が高い。例えば図のように、カブリ濃度から一定量ΔDだけ高い濃度を与える露光量E0の逆数を取るなどすれば感度を数値化することができる。
特性曲線は、ある写真乳剤に固有のものではない。乳剤が違えば当然特性曲線は違うが、そのほかにも、
(1) 現像液の組成と濃度、
(2) 現像時間、現像液温度、攪拌の程度
(3) 露光した光のエネルギー分布や偏光性
(4) 露光の仕方(相反則不軌を参照)
(5) 測定機の構造
などに影響される。従って、特性曲線、すなわち写真の入力ー出力関係は厳密には写真乾板1枚毎に異なる。天体写真測光で注意しなければならない点はこのことに起因するものが多い。
隣接効果エバーハート効果も参照。

アメリカ合衆国政府が国際協力で実現を目指す大規模な有人宇宙飛行計画。将来の有人火星探査を視野に、月面に再び人類を送りこみ、資源探査活動などでの南極に長期滞在することを目指している。2017年に当時のトランプ大統領がこの計画を含む政策を承認し署名した。実現すれば1972年のアポロ17号(アポロ計画を参照)で最後に人類が月面に立って以来のこととなる。日本、カナダ、オーストラリア、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)などが参加している。アルテミスはギリシア神話に登場する月の女神(アポロの双子とされる)の名前である。アルテミス計画では、人類が月面に長い期間滞在するのに必要な環境を整えることで、持続的な探査と将来の火星有人探査への道筋をつけることが期待されている。

直近の目標は、2024年までに月面に女性を含む宇宙飛行士を着陸させること。それ以降順次、月を周回する軌道に基地となる宇宙ステーション、ゲートウェイを建設し、長期滞在・月面有人着陸・資源探査と資源収集などの活動を行う。

太陽系外惑星原始惑星系円盤の直接観測における観測・解析手法のひとつ。単に差分撮像ということもある。大別して、分光差分撮像法、偏光差分撮像法、角度差分撮像法がある。
分光差分撮像法は、天体からの光をプリズムなどの分散素子分散、分岐させ、それぞれ異なる波長のフィルターを透過した光を検出器で結像させる。その結果、検出器には「同時」に取得された波長の異なる天体画像が写るため、大気乱れの時間変化の影響を受けずに画像の差し引きが可能となる。例えば、低温の惑星にのみメタンの吸収がある場合、画像の差し引きで中心の恒星の光は消え、惑星の光は残る。つまり、惑星検出とその大気中のメタン分子の検出が同時に実現できることになる。
偏光差分撮像法は、天体からの光を偏光プリズム(ウォラストンプリズムなど)で分散、分岐させ、それぞれ異なる方向の偏光(正常光と異常光)を検出器で結像させる。その結果、検出器には「同時」に取得された2偏光の天体画像が写るため、大気乱れの時間変化の影響を受けずに画像の差し引きが可能となる。例えば、原始惑星系円盤では、円盤からの光は中心星の光を散乱して偏光しているため、画像の差し引きで恒星の光は消え、惑星の光は残る。つまり、円盤検出とその円盤の偏光観測が同時に実現できることになる。
角度差分撮像法は、上記の2方法とは少し異なる手法であり、直接観測におけるノイズを低減する手法として広く用いられている。通常の撮像観測では、検出器上で天球上の位置が変わらないように観測するが、この手法では検出器面での面が固定されるように画像を取得する。そうすると、光学系の誤差に由来する時間変化しないノイズと大気揺らぎによる時間変化するノイズが区別でき、前者を抑制することができる。

自己重力(自分自身の重力)のために天体が収縮すること。重力収縮を参照。

1. 最初のハッブルディープフィールド(HDF=HDF-N)
1995年12月18日から28日まで10日間連続して、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の広視野惑星カメラ2(WFPC2)を「おおぐま座」の一角に向けて、従来にない長時間露光を行い、深い(暗い天体まで写っている)画像を撮影した。差し渡し2.4分角のこの領域(満月の約1/150の面積)、および得られた画像を総称する呼び名がハッブルディープフィールド(The Hubble Deep Field: HDF)である。プロジェクトそのものもHDFと呼ばれることがある。観測は当時の宇宙望遠鏡研究所(STScI)の所長、ロバート・ウイリアムス(Robert Williams)の主導のもと、所長留め置き時間を使って行われた。
ターゲットとなった天域は、J2000.0分点で赤経12時36分49.4秒、赤緯+62度12分58秒の位置(おおぐま座)にあり、WFPC2の視野を反映して、一辺が約2.7分の少々不規則な形をしている(図1)。HSTの約150周回がこの領域の観測に当てられたが、地上からの観測の便宜を図るため、それを取り囲む隣接の8天域(flanking fields)の撮像にも10周回が当てられた(図2)。
HDFは4つのフィルター(バンドの中心波長 300,450,606,814 nm)で観測された。各バンドの露出時間と限界等級は以下に示されている.
=====================================
フィルター フレーム数 露光時間(s)  限界等級(AB mag;10σ)
------------------------------------------------------------------
F300W    77   153700    26.98
F450W    58   120600    27.86
F606W    103     109050    28.21
F814W    58   123600    27.6
-----------------------------------------------------------------
全フィルター 露光時間  506950(140.8時間)
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地上からの観測ではほとんど何も見えなかった領域に2500個を超す微光銀河の姿が映し出されて、大きなインパクトを与えた。ケック望遠鏡により微光銀河の赤方偏移が測定され、赤方偏移がz=4を超える銀河も見つかった(図3)。このプロジェクトにより、スペクトルライマン端より短波長の連続光の銀河間ガスによる吸収を検出するドロップアウト法が確立され、赤方偏移z=4を超える遠方宇宙の観測研究の道が開かれた。以下に述べるその後のHSTによる深宇宙観測撮像と区別するために、最初のハッブルディープフィールドはHDF-North(HDF-N)と略称されるようになった。

2. 引き続くハッブルディープフィールド
ハッブルディープフィールド(HDF-N)の大成功を受けて、その後1998年には南天の「きょしちょう座」の方向で、HDFと同じやり方でハッブルディープフィールドサウス(HDF-South: HDF-S)が撮影された。その結果は、「宇宙は大局的には一様である」とする宇宙原理と矛盾しないものだった。
さらに2003-2004年には2002年に搭載された新しい広視野カメラ(ACS)を用いて南天の「ろ座」の方向でハッブルウルトラディープフィールド(HUDF)が撮影された。その画像には赤方偏移z=6を超える銀河も映し出されていた。
2012年には、2002年6月から2012年3月までの約10年間に撮影されたHUDF領域の画像をすべて合わせ、総露光時間200万秒、約22.5日に上るハッブルエクストリームディープフィールド(Hubble eXtreme Deep Field: XDF)が公開された。これら1.と2.のハッブル宇宙望遠鏡による深探査天域をまとめてハッブルディープフィールド(The Hubble Deep Fields:複数形)と呼ぶ。

ハッブルディープフィールドの概要はヨーロッパ宇宙機関(ESA)による以下の記事が参考になる。
https://esahubble.org/science/deep_fields/

3. もう一つのディープフィールド
2013年から3年にわたり、840周回というハッブル宇宙望遠鏡の膨大な時間を投入したフロンティアフィールド(FF)のプロジェクトが行われた。これは6個の銀河団の深い画像を撮影し、重力レンズの効果を受けて明るくなった遠方の暗い銀河の観測を目指すものであった。観測データは以下で参照できる。
https://archive.stsci.edu/prepds/frontier/

ブラックホールで観測可能な量は、質量、電荷、角運動量の3つの物理量だけである」ことを述べたもの。この3つ以外のあらゆる情報は、ブラックホールの事象の地平面に落ち込むと消失し、外部からは観測されない。これを、さまざまな性質(ふさふさの毛)を持っている通常の物体に比べて、ブラックホールは毛がないことに例えた。
1971年にルフィーニ(Remo Ruffini)とホイーラー(John Wheeler)が共著でPhysics Today誌にかいた解説記事にはじめて登場した言葉。主にホイーラーによって広められたと考えられている。

1990年2月14日に約60億キロメートルのかなたからボイジャー探査機(ボイジャー1号)によって撮影された地球の写真。当初計画にはなかったが、カール・セーガン(Carl Sagan)の強い希望でこの撮影が実現した。青、緑、紫のフィルターによる3枚の画像(露光時間はそれぞれ、0.72、 0.48、0.72 秒)から図に示す写真が合成された。この画像では地球のサイズは1画素にも満たない。地球が「淡く青い点(a pale blue dot)」であったのでこの写真がペイルブルードットと呼ばれるようになった。
セーガンは1994年の著書「Pale Blue Dot」の中で次のように述べている。
『天文学を学ぶことで謙虚で高い人間性が育つと言われている。我々の小さな世界を遠くから見たこの画像以上に、人間のうぬぼれた自尊心の愚かさを示すものはおそらくないであろう。この画像は、他者をより親切に扱い、我々が知る唯一の故郷である淡く青い点を保護し慈しむ責任が我々にあることを強く訴えているように私には思われる。』
最初の画像が撮影されて30周年記念となる2020年に、アメリカ航空宇宙局(NASA)は最新の画像処理技術を使って、もとの画像からより高品質の「ペイルブルードット」を作成し公開した。
ブルーマーブルも参照。
 

JAXAの月探査機「かぐや」HDTVによる満地球の出(2008年9月30日)

https://www.youtube.com/embed/kcpjWCIQHEE

天体から来る光の偏光(電波では偏波という)を検出する観測。偏光・偏波からそこで起きている物理現象を調べることができる。天体で偏光を引き起こす大きな原因の一つは磁場である。偏光観測から分子雲中の星間磁場の向きを推定することは広く行われている。ストークスパラメータの4つの成分を全て観測すれば、そこから偏光・偏波に影響する物理現象を詳しく推定することができる。

コンピュータによる数値シミュレーションによって天文学のさまざまな問題を扱う分野。宇宙で起きる天体現象のほとんどは実験によって直接実験室で確かめることができない。そこで、コンピュータの中に天体や宇宙を記述するモデルを作り、そのモデルの振る舞いを観測データと比較することが現象の理解にとって極めて重要である。
近年スーパーコンピュータが飛躍的に進歩したので、従来のコンピュータでは難しかった複雑な現象の数値シミュレーションも実行できるようになった。このため、シミュレーション天文学は観測天文学、理論天文学と並ぶ第三の天文学と位置付けられ、スーパーコンピュータは時に「理論の望遠鏡」と呼ばれることがある。
数値シミュレーションの対象としては、例えば宇宙の大規模構造の形成や銀河の衝突といった多体の力学問題、物質の運動と電磁波の放射が複雑に絡み合う天体物理学の問題、あるいはビッグバンや宇宙の進化などの宇宙論的問題、ブラックホール重力波の発生など一般相対性理論の問題などがある。

装置や機器がどれくらい短い時間間隔で信号を測定できるかを示す能力。たとえば、1秒間に100回あるいは1万回測定できる場合の時間分解能はそれぞれ、0.01秒(10ミリ秒)あるいは0.0001秒(0.1ミリ秒、100マイクロ秒)となる。分解能も参照。

中心天体への降着に伴う流れのこと。

欧州原子核研究機構のこと。

中心にある重い天体(原始星恒星白色矮星中性子星ブラックホールなど)の重力に引き寄せられて周囲から物質(主にガスやダスト)が落下してくること。質量降着(mass accretion)という場合もある。
落下する物質は中心天体の周囲を公転しながら円盤状の構造(降着円盤)を作る。恒星の周りの降着円盤は一般に星周円盤と呼ばれるが、星形成に伴ってできる星周円盤は原始惑星系円盤とも呼ばれる。円盤内ではガスの粘性により角運動量が内部から外部に輸送され、次第に中心部からガスが中心天体に落ち込む。降着する物質の重力エネルギーの解放や粘性摩擦などにより伴い円盤は高温になって電磁波を放射する。原始惑星系円盤や若い星の回りの星周円盤からは主に赤外線が、中性子星やブラックホールの周りの降着円盤からは主にX線が放射される。

1954年にヨーロッパの11ヵ国により、「Science for Peace(平和のための科学)」を掲げ設立された素粒子・原子核分野の世界最大規模の国際研究所。ヨーロッパ合同原子核研究機構などとも呼ばれるが、一般には、機構の開設を準備した組織のフランス語名称 Conseil Européen pour la Recherche Nucléaireの頭文字 をとったCERN(セルン)として広く知られている。
2021年現在では23ヵ国が加盟している。日本はオブザーバー国の一つである。スイスのジュネーブ郊外でフランスとの国境地帯にまたがって位置する。地下には全周 27 km の円形加速器である大型ハドロン衝突型加速器(LHC)が、スイス-フランス国境を横断して設置されている。LHCで2012年にヒッグス粒子が発見された。

レンズ状銀河のこと。S0は「エスゼロ」と発音する。銀河も参照。

既知の物理法則を破るような風変わりな性質を持つ仮説上の粒子や、既知の物理法則の範囲内にあるが例えば3つのクォークとその他の基本粒子からなる仮想上の複合粒子などを指す。クォークグルーオンプラズマのような、存在を確認されていない物質の状態を指すこともある。

ビッグバン宇宙論に基づいて宇宙の進化を記述する宇宙モデルのうち、 ダークエネルギーと冷たいダークマターを含む加速膨張する宇宙モデル。ダークエネルギーは宇宙項フリードマン方程式でΛで表される)に対応し、冷たいダークマターは英語でCold Dark MatterでCDMと略記されることから、ΛCDMあるいはΛ-CDMと表記される。CDMモデルに宇宙項を加えたモデルとも言える。

空間的には平坦で(曲率=0、密度は臨界密度に等しい)、現在は加速膨張している。現在のさまざまな観測事実ともっとも整合性がよく、現時点での標準宇宙モデルである。プランク衛星による宇宙マイクロ波背景放射(温度2.725 K)の観測、Ia型超新星セファイドなどを用いた宇宙の距離はしごによるハッブル定数の決定、銀河団超銀河団ボイドなどが織りなす宇宙の大規模構造などの観測から決められたΛCDMモデルのパラメータは以下のようになっている。
・宇宙の構成要素
$\hspace{0.5cm}$- ダークエネルギー:69%
$\hspace{0.5cm}$- ダークマター:26%
$\hspace{0.5cm}$- バリオン(普通の物質):5%
宇宙年齢 138億年
・ハッブル定数 約70 km/s/Mpc
宇宙の晴れ上がり ビッグバンから約38万年後
・加速膨張への転換期 今から約60億年前

XRISM衛星のこと。

2016年に姿勢制御系の不具合のため短期間で運用終了したX線天文衛星「ひとみ衛星(Astro-H)」の後継機。宇宙航空研究開発機構 (JAXA) 宇宙科学研究所 (ISAS) がアメリカ航空宇宙局 (NASA)、ヨーロッパ宇宙機関 (ESA) との国際協力で開発した。2023年9月7日に種子島宇宙センターからH-IIAロケット47号機により打ち上げられ予定の軌道(高度約550 kmの地球周回低軌道)に投入された(同機には日本初の月面着陸を目指す小型実証機「SLIM」も搭載されていた)。

XRISMは2台の軟X線反射鏡を有し、それぞれに、高いエネルギー分解能を持つX線マイクロカロリメータ分光撮像器(Resolve; エネルギー範囲 0.3-12 keV、視野2.9分角)と広い波長域で広視野画像を撮るX線CCDカメラ(Xtend; 0.4-12 keV、30分角)が取り付けられている。宇宙の高温ガスであるプラズマを観測して、それらが作る宇宙の大規模構造の成り立ちや、天体間を行き交う元素とエネルギーの流れを明らかにすることを目標としている。

2024年1月にファーストライトの結果を公表した。冷却剤の液体ヘリウムが蒸発する3年間が設計寿命だが、その後も機械式冷凍機により観測を継続する予定である。
ホームページ https://xrism.isas.jaxa.jp/