天文学辞典 :ASJ glossary of astronomy | 天文、宇宙、天体に関する用語を3300語以上収録。随時追加・更新中!専門家がわかりやすく解説します。(すべて無料)

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アプラナート

球面収差コマ収差について補正がなされている光学系のこと。放物面主鏡と双曲面副鏡からなる古典的カセグレン望遠鏡ではコマ収差が残るが、主鏡と副鏡を双曲面にして、主鏡と副鏡の非球面係数を調節したリッチー-クレチアン望遠鏡の光学系が代表例であり、すばる望遠鏡などで採用されている。太陽望遠鏡では副鏡を楕円鏡にしたグレゴリアン望遠鏡がアプラナート光学系として使用される。

物質1モル(mol)に含まれる構成要素(原子、分子など)の数。12 g (グラム)の炭素12Cに含まれる原子の総数として定義されている。一般に記号 $N_{\rm A}$ で表される。イタリアの化学者アボガドロ(A. Avogadro)にちなんで名付けられた。古い呼び名であるアボガドロ数(Avogadro's number)もまだ広く使われている。
2019年5月20日より施行された新しい定義に基づく国際単位系(SI)では、アボガドロ定数はその基礎となる4つの定義定数の1つとして

$$N_{\rm A}=6.02214076\times10^{23}\,\,\,{\rm mol}^{-1}$$

と定義された。他の3つは、プランク定数

$$h=6.62607015\times10^{-34}\,\,\,{\rm J}\,{\rm s}\,{\rm (=kg}\,{\rm m}^2\,{\rm s}^{-1})$$

電気素量

$$e=1.602176634\times10^{-19}\,\,\,{\rm C}\,{\rm (=A}\,{\rm s)}$$

ボルツマン定数

$$k=1.380649\times10^{-23}\,\,\,{\rm J}\,{\rm K}^{-1}\,{\rm (=kg}\,{\rm m}^2\,{\rm s}^{-2}\,{\rm K}^{-1})$$

である。ちなみに真空中の光速度は以下である。

$$c=2.99792458\times10^8\,\,\, {\rm m}\,{\rm s}^{-1}$$

ここでそれそれの単位記号は、${\rm J}$(ジュール)、${\rm s}$(秒)、${\rm kg}$(キログラム)、${\rm m}$(メートル)、${\rm C}$(クーロン)、 ${\rm K}$(ケルビン)、${\rm A}$(アンペア)、${\rm mol}$(モル)である。
これら定義定数の「定義値」は今後変わることがないが、それは決してそれらの物理定数を今後より高い精度で測定する努力を否定するものではない。物理量の高精度の測定は科学の進歩の基礎である。

アメリカ航空宇宙局(NASA)による、月への有人宇宙探査計画である。1966年から1972年にわたり実施され、1969年のアポロ11号にはじまり、計6回の有人月面着陸と帰還に成功した。12名の宇宙飛行士が月面に降り立っている。この計画により地球に持ち帰られた月の岩石やレゴリス試料は計400 kgにのぼり、月の起源と進化に関わる多くの情報が得られている。月面に地震計、熱流量計、レーザー反射板が設置され、長期間の観測から、月の内部構造に関して貴重なデータが得られている。

月のない暗い晩に肉眼で見ると、夜空を大きく横切るように見える淡く輝く帯状の天体で、その正体は天の川銀河銀河系)の円盤部にある無数の恒星の集団である。我々(太陽系)が中心から離れた円盤部に位置しているので、内部から見た円盤部の恒星が天球に投映されて天の川として見えている。日本からは観測不可能な範囲まで含めた全天を見渡すと、天の川の帯は地球を一周取り巻いていることがわかる。その様子を写真などでみると、いて座からさそり座にかけて明るさも幅も大きくなる。これは天の川銀河の中心がこの方向にあるためである。暗黒星雲によって生じる暗い影もあちらこちらに見られ、全体の分布を見ると、天の川の中央に集中している(ダークレーンを参照)。暗黒星雲に代表される星間ダストによる星間減光の影響で、太陽系から可視光で見える範囲は、望遠鏡を用いても数キロパーセク(数 kpc=数千光年)の範囲に限られる。これに対して天の川銀河全体は直径約30キロパーセク(30 kpc=10万光年)にも及ぶので、可視光で見られる天の川は、そのごく一部だということができる。天文学的には天の川が見える領域は銀河面と呼ばれることが多く、ここに沿った帯状の領域は、天の川銀河の構造やそこに含まれる天体の研究を目的として、電波からガンマ線に至るさまざまな波長での観測が行われている。
なお、日常語としては天の川と同義で銀河という語を用いることもあるが、天文学では両者は明確に区別されており、一部の複合語を除き、銀河という単語で天の川を意味することはない。

太陽系が属している銀河のこと。銀河系とも言う。その一部が地球からは天の川として見えるので、この名がある。同じものを指す「天の川銀河」と「銀河系」という二つの用語の歴史については銀河系の項で解説している。
天の川銀河は渦巻銀河の1つで、銀河円盤は外縁部まで含めると半径15-20 kpc、1/e スケール長3.5 kpcで、厚さは1/eスケール長で0.3 kpcと見積もられている(1/e スケール長とは、ある量(この場合、面輝度)が等比級数的に変化する場合、1/2.718ずつ減少するのに対応する長さのこと)。太陽系は、その中心から8-8.5 kpc離れた円盤部のほぼ中央面(銀河面)の上(厳密には40 pcほど離れたところ)に位置する。バルジは軸比10:5:3の棒状の3軸不等楕円体で長半径約2 kpc、太陽系から見て東側(銀経が0°-90°の側)が手前にある。このため形態分類では棒渦巻銀河に分類される。暗黒物質を除く全質量は太陽の1000億倍程度。ハローはこれら全体を取り巻く球形の領域で、半径25 kpc内には多数の球状星団が散在し、その外側は高温で希薄なガスがある。
銀河面には背後の光を遮る多数の暗黒星雲分子雲が密集しており、それらがダークレーンとして見える。可視光では望遠鏡を用いても銀河面方向では太陽系から1万光年程度の範囲しか観測することができない。このため、天の川銀河全体にわたる観測的研究を行うには赤外線電波X線ガンマ線など可視光以外の観測が必須である。アタカマ砂漠のチャナントール天文台にある電波望遠鏡アタカマ・パスファインダー実験機(APEX)は、波長0.87mmのサブミリ波で銀河面をサーベイし、光を吸収するダスト(塵)の分布を詳細に描き出した。2MASSガイア衛星も参照。


ヨーロッパ宇宙機関(ESA)が製作した天の川銀河(銀河系)の構造を示す解説動画

https://youtu.be/G5AdrupH788


欧州宇宙機関(ESA)のガイア衛星のデータに基づいて、私たちの住む銀河である天の川銀河(銀河系)を描いた新しいアニメーション。

https://www.youtube.com/embed/wEZBNsU4dMU?si=2mo4qSWYXw_udMNV"


太陽系から天の川銀河を飛び出しておとめ座銀河団まで行く仮想宇宙旅行の動画。天の川銀河と天の川の関係がよく分かる。(原作は、カリフォルニア大学サンディエゴ校マイケル・ノーマン(Michael Norman)教授による)

https://youtu.be/AXHPeX8hz8s

写真天頂筒を参照。

アメリカのワシントンDCにある海軍所属の天文台。1830年に設立された海図・装置本部(Depot of Charts and Instruments)を前身とし、1844年に天文台となった、アメリカで最も古い研究機関の一つである。US Naval Observatoryの頭文字からUSNOと略称される。当初は海軍用に海図の整備や正確な時刻の決定を行うことが主目的であったが、現在では、さまざまな政府機関や一般社会に対しても、天体の運動や精密位置、地球回転、正確な時刻などのデータを提供することを業務としている。アメリカ全土の時刻、およびGPSの時刻のもとはここで決められる。天体暦航海暦を出版するのに加え位置天文学の研究も盛んである。USNOが多くの出典からのデータを統合して作成した約10億個の位置標準星のカタログである「NOMAD」は広く利用されている。アリゾナ州のフラグスタッフにある観測所には、1934年に望遠鏡製作者リッチー(G.W. Ritchey)が生涯最後に設計した最大口径の1 mリッチー-クレチアン望遠鏡がある。
ホームページ https://www.usno.navy.mil/USNO
上記ホームページへは現在一般からつながらないので、参考までにWikipediaのURLを掲げる。
https://ja.wikipedia.org/wiki/アメリカ海軍天文台
NOMADカタログ
https://vizier.u-strasbg.fr/viz-bin/VizieR?-source=I/297

アメリカ合衆国の宇宙開発に関わる活動と研究を行うために1958年に設立された政府組織。アポロ計画、スカイラブ計画、スペースシャトル、国際宇宙ステーションなど宇宙開発の巨大プロジェクトとともに、ハッブル宇宙望遠鏡など人工衛星を用いた宇宙探査、ボイジャー探査機など無人探査機を用いた太陽系惑星探査など基礎科学研究も行っている。ジェット推進研究所、ゴダード宇宙飛行センターなど付属する多くの研究施設と実験・発射施設を有する。
ホームページ:http://www.nasa.gov/
NASAの大型衛星ミッション:https://science.nasa.gov/mission/

アメリカ国立科学財団(NSF)の支援で全米天文学大学連合(AURA)が運営する米国の光学赤外線国立天文台。本部はアリゾナ州ツーソンにあり、メイヨール 4 m望遠鏡、WIYN 3.5 m望遠鏡などを持つキットピーク国立天文台(KPNO)、ブランコ4m望遠鏡を持つチリのセロトロロ汎米天文台(CTIO)、ハワイとチリの 8.1 m双子望遠鏡ジェミニを持つジェミニ科学センター(NGSC)を運営してきた。2019年にアメリカ国立光学赤外線天文学研究所に発展改組された。
ホームページ:https://noirlab.edu/public/
NOIRLabに至る歴史
https://noirlab.edu/public/about/history-of-noao/

アメリカコロラド州ボールダーに本部を持つ太陽観測を中心とするアメリカの国立天文台。恒星としての太陽と地球上の生命に大きな影響を与える太陽の理解を進めることを目的として、アメリカ国立科学財団(NSF)により設立された。もともとアメリカ国立光学天文台の一部門であったが、現在では独立した研究所となって、全米天文学大学連合(AURA)のもとのセンターとして運用されている。
アリゾナ州キットピーク国立天文台のマクマス・ピアス望遠鏡、ニューメキシコ州サクラメントピークにあるダン太陽望遠鏡(DST)、ハワイのマウイ島ハレアカラ天文台にある世界最大の太陽望遠鏡(口径4.1 m )ダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡(Daniel K. Inouye Solar Telescope: DKIST)などの望遠鏡に加えて、世界の6箇所に置かれた望遠鏡で24時間体制で太陽観測を行うネットワークGONG(Global Oscillation Network Group)を運用している。

ホームページ:https://www.nso.edu/

 

1956年に設立された米国の国立電波天文台で、世界の電波天文学を主導する天文台の一つ。英名の頭文字を採ってNRAOと表記することも多い。本部はバージニア州のシャーロッツビルにあり、各地に大きな電波望遠鏡を有する。特に大型の観測装置としては、ニューメキシコ州のソコロ近郊にあるVLA、アメリカ本土とハワイとプエルトリコに25 mアンテナを10台配置したVLBA、ウェストバージニア州のグリーンバンクにあるグリーンバンク100-m電波望遠鏡(GBT100-m電波望遠鏡)が挙げられる。また、南米チリ北部のアタカマ砂漠にあるアルマ望遠鏡の北アメリカ連合の主担当機関でもある。
ホームページ:https://public.nrao.edu/

アリスタルコス(Aristarchus; c.BC310 - BC230)はサモス島に生まれた古代ギリシアの数学および天文学者。太陽中心説(地動説)の先駆者とされ、世界で最初に月、太陽の大きさと距離を求めようとした。
アリスタルコスの太陽中心説は、アルキメデスやプルタルコスによって断片的に紹介されている。「天球の中心に太陽があり、それは不動で、地球が太陽をめぐっており、恒星の天球までの距離はとてつもなく遠い」という説を述べた書物を出版した、とアルキメデスは紹介し、それは単に数学的な話だとした。またプルタルコスは、恒星の日周運動は地球自転によると信じていたヘラクレイデスの影響をアリスタルコスが受けているという。地動説を唱えた最初の人と考えられているが、当時その説はほとんど支持されなかった。
アリスタルコスの著作として残っている月および太陽の大きさと距離の決定では、太陽中心説は採用されていないが、たいへん巧妙な手法を用いており、その原理は明快である。すなわち、月がちょうど真半分に見えるとき、月・太陽間の離角は約87度となるので、直角三角形の幾何学から月・太陽の距離の比は約20倍となると結論した。現在の値からのずれが大きいのは測定技術が稚拙であったためで、原理はまったく正しい。また彼は、月と太陽は見かけの大きさがほぼ等しいことから、両者の実際の直径は各々の地球からの距離に比例するはずだと指摘、その距離の比から太陽は月よりも20倍大きいという結論も論理的に導いている。

超高光度赤外線銀河を参照。

アルゲランダー(Friedrich Wilhelm August Argelander;1799-1875)はドイツの位置天文学者で「ボン掃天星表」の制作者。ケーニヒスベルグ大学でベッセル(F.W. Bessel)の指導のもと天文学を修め、卒業後同大学天文台の助手に採用される。1823年にフィンランドのオーボ天文台台長、その後ヘルシンキ天文台台長 を経て1837年ボン大学天文台の初代台長となる。1830年代には星の固有運動の精密測定に精力をそそぎ、ウィリアム・ハーシェル(W. Herschel)による太陽運動検出の正しさを確認した。変光星の光度測定法も案出した。1863年出版の9等星までを含む「ボン掃天星表」(星数およそ324,000)は近代星図のさきがけとなった。ドイツ天文協会の創設者でもある。

連星の食現象に起因する変光星(食連星)の分類型の一つ。食以外のときは一定の光度を示し、食の出入りの位相がよく決まる。2つの星が比較的離れている連星系である。アルゴル(ペルセウス座ベータ星)は有名な明るい食連星系で、68.8時間ごとに2.15等から3.4等に明るさが落ちる。この周期的な明るさの変動は大昔から知られていた。アルゴルという名前はアラビア語で「悪魔」という意味である。光度曲線(変光星の)を参照。セファイド脈動変光星も参照。

ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡を参照。


くつろぐ音楽とともに見るジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による宇宙の画像(@Relaxicity)

https://www.youtube.com/embed/pinoqCfpjik?si=-iU6BqCP1BaMx3ja"

原子核のなかで12C, 16O, 20Neのように、 中性子数と陽子数が偶数で等しいもの。α粒子(4He)の集まりと見なせることから、この名前で呼ばれる。これらの元素は重い星の中心部で、ヘリウム燃焼および、それに続く炭素、酸素の燃焼により大質量星で作られる。

降着円盤の現象論において、角運動量輸送率をガス圧に比例すると仮定した理論モデルのこと。
星の周りに存在する回転ガス円盤中のガスは角運動量を失うことにより少しずつ中心星に落下し、それに伴って失った重力エネルギーは降着円盤や中心星を輝かせると考えられる。実際には、落下するガスが失う角運動量は何らかの角運動量輸送メカニズムによりガス円盤の外側に運ばれると考えられ、その輸送率をモデル化するために考えられたのが、アルファ粘性モデルである。実際の具体的な角運動量輸送メカニズムは磁気流体力学的乱流であると考えられている。その磁気乱流を駆動しているのは、磁力線に貫かれた差動回転するガス円盤に内在する磁気回転不安定性であると考えられる。乱流粘性も参照。

アルベーン(アルヴェーン/アルフベン)(Hannes Olof Gsta Alfvén;1908-1995)はスウェーデンの物理学者、天体物理学者。ウプサラ大学を卒業し、1934年に物理学で学位を得た。1940年にはスウェーデン王立技術研究所の教授職に就き、後にはメリーランド大学、旧ソ連邦、カリフォルニア大学などで教えた。宇宙空間プラズマの物理学に関して多くの先駆的業績をあげた。特に電磁流体力学(MHD)におけるアルベーン波と呼ばれる波動現象の発見、プラズマに磁力線が凍結するという概念(「アルベーンの磁力線凍結定理」)の提唱で有名である。1970年にはノーベル物理学賞を受賞した。

電磁流体波の一種で、磁場のあるプラズマ中で磁気張力を復元力として磁力線に沿って伝わる波。波の振動方向は進行方向に垂直となる横波である。アルベーンにより見出された。その位相速度 は磁束密度が$B$ 、質量密度が$\rho$、透磁率$\mu$のとき、位相速度が$B/\sqrt{\mu\rho}$となる。