銀河内部から外部に向けてガスが大規模に噴き出す現象。銀河内でスターバーストが起こり、短時間に多数の超新星が爆発すると、そのエネルギーで銀河内のガスが熱せられ、重力を振り切って外へ噴き出す。これを銀河から噴き出す風になぞらえて銀河風という。強力な銀河風はスーパーウィンドと呼ばれることもある(スーパーウィンド銀河を参照)。
周波数が時間的に変化するような波の形。特に重力波天文学においては、中性子星あるいはブラックホールからなる連星が衝突して合体する際に、振幅と周波数が徐々に大きくなっていき、合体直前に急上昇するような重力波が発生されることが理論的に予想されるが、この波形をチャープ波形と呼んでいる。重力波検出器も参照。
天体の運動を扱う天文学の一分野。動力学的天文学(dynamical astronomy)と呼ぶこともある。軌道運動の解析についてはケプラーの法則に始まり、ニュートン(I. Newton)の万有引力の法則と運動方程式によって本格化した。二体問題は厳密に解けるが三体問題以上では摂動法やコンピュータによる数値解析が必要となる。重力場が与える影響についてはアインシュタインの一般相対性理論も考慮しなければならない。自転運動についてはオイラーの運動方程式が基礎となっている。オイラー運動も参照。
渦巻銀河の円盤部の中央面。特に、天の川銀河(銀河系)に対して用いられることが多い。太陽系は厳密には天の川銀河の円盤部の中央面から40パーセク(40 pc=130光年)外れたところに位置するが、通常、このずれを無視して、太陽系を通る平面として定義される。このため、太陽系から見ると銀河面は天球上で大円を描く。天球上での大円を指す場合には、銀河面を銀河赤道と呼ぶことがある。実用的な定義としては、銀河座標系での銀緯0°の線がなす、地球を通る平面を銀河面と呼ぶ。銀河座標系の定義により、1950年分点の赤経12h49m、赤緯+27.4°方向と直交する面であり、1950年分点の赤道に対して62.6°傾斜している。黄道面に対しても約60.2°の傾斜を持つ。観測分野では、銀緯0°付近の比較的狭い帯状の天域を銀河面と呼ぶことがある。
銀極や銀河座標系も参照。また、銀河面と黄道面(黄道を参照)の関係は図のようになっている。
多数の星と星間物質(ガス、ダスト(塵))、およびダークマターなどで構成された天体で、互いの重力でまとまっている自己重力系である。日常語としては銀河を天の川と同義で用いることもあるが、天文学では両者は明確に区別されており、銀河座標系など一部の複合語を除き、銀河という単語で天の川を意味することはない。天の川銀河(銀河系)についてはそれぞれの項目を参照されたい。
銀河には、1000億個以上の星を含む明るいものから100万個程度以下の星からなる暗いものまで、明るさと質量には何桁もの幅がある。含む恒星数が少なく暗い銀河は球状星団よりも小規模なものもある。この場合、質量の大部分が暗黒物質(ダークマター)であるものを銀河、暗黒物質を持たないものを球状星団と呼ぶとされるが、その違いは明確とは言えない。一般にUBV測光のBバンドでの絶対等級が-18等程度より暗いものは矮小銀河と呼ばれる。以前は、矮小銀河ではない明るい銀河を矮小銀河と区別するために、巨大銀河あるいは通常銀河と呼ぶこともあったが、現在ではそのような使い方はほぼしなくなった。
銀河は、さまざまな観点に基づいて分類される。
よく知られているのは、見かけの形状(形態)に基づく形態分類である。楕円銀河や渦巻銀河などが形態に基づく分類名である。さまざまな分類法が複数の天文学者によって提唱されてきた。その中で今日でも広く用いられているのがハッブル(E.Hubble 1889 -1953)が1920-30年代に提案したハッブル分類である。当時は矮小銀河が見つかっていなかったので、矮小銀河はハッブル分類の対象外であるとされる。
矮小銀河の詳細な観測は長い間困難であったので、その形態分類の研究は半世紀ほど遅れて1980年代から始まった。観測の感度向上により、矮小銀河の中でも著しく表面輝度の低い銀河が複数発見され、これを低表面輝度銀河と呼ぶ。
形態の起源は長らく研究者の関心を集めており、銀河の形成期および成長期の違いを反映していると予想されているが、未だに完全には解明されていない。例えば、巨大な楕円銀河は銀河団の中心付近でのみ観測され、銀河団の周辺部ほど渦巻銀河の割合が高くなること(形態-密度関係)が、解明のヒントになると考える人も多い。
形態分類には限界もあり、多数の銀河を観測すると類型が見られない形態の銀河も相当数ある。これらを特異銀河、他を通常銀河と呼ぶことがある。特異銀河のうち、2つ以上の銀河が互いに重力を及ぼした結果、形態が著しく変わったと考えられる銀河を相互作用銀河と呼ぶ。また、多数派の銀河に比べて銀河全面にわたって星形成が異常に活発な銀河もあり、これを爆発的星生成銀河(スターバースト銀河)と呼ぶ。爆発的星形成銀河には相互作用銀河も多く、両者には密接な関係がある。
他の観点による分類としては、単に恒星や星雲の集団としてだけでは説明が困難な特性の有無に基づく分類もある。こうした特性は銀河の活動性と呼ばれ、それを示す銀河を活動銀河と呼ぶ。これには、異常に強い電波を放射する電波銀河、中心核が分コンパクトで異常に明るい銀河などがある。後者はさらに他の観測的特性に基づいてセイファート銀河やクェーサー、コア卓越型電波銀河(ブレーザー)などに細分される。銀河の活動性は銀河中心に存在する巨大ブラックホールに起因しており、細分される特徴は、ブラックホール周囲にあるガス円盤を見る方向によって説明できる(活動銀河核統一モデル)。
銀河本体の性質以外に、見かけの形態が地球から見た向きの互いによる分類もある。円盤銀河では、銀河の見かけの形状によって地球から見た銀河円盤の傾きを推定できるため、これによって銀河を分類することができる。これに基づく分類として、銀河円盤をほぼ真横から(円盤の垂線に垂直で円盤が最も薄く見える方向から)見る場合を横向き(エッジオン:edge-on)、それにほぼ垂直で銀河円盤を正面から見る場合を正面向き(フェイスオン:face-on)と呼ぶ。このように見えている銀河をそれぞれ横向き銀河(エッジオン銀河)、正面向き銀河(フェイスオン銀河)と呼ぶことがある。ただし、傾き角の数値による厳格な規定はない。
銀河は宇宙空間に宇宙空間に一様に分布しているのではなく、銀河群や銀河団、あるいは宇宙の大規模構造のようなさまざまな規模の集団を成している。
130億光年より遠方(宇宙年齢にして8億歳以下)の若い時代の宇宙にも銀河が見つかっていることから、銀河の年齢は非常に古いことが示唆される。銀河の進化は、階層的集団化モデルを基礎とした銀河進化モデルで記述される。
銀河の中で渦巻銀河とレンズ状銀河に見られる円盤状の構造。ディスクと呼ばれることも多い。また、銀河を構成する基本成分の観点からは、楕円体成分に対して円盤成分という。
銀河円盤の星の表面輝度プロファイルは、スケール長をパラメータとする指数法則で近似できる。渦巻銀河の円盤には冷たいガスが豊富にあり、継続的に星が生まれている。ただしガスの総質量は星より一桁ほど小さい。多くの渦巻銀河の円盤には渦巻腕と呼ばれる巻き付いた腕のような構造が見られる。円盤内の星やガスは銀河中心の周りを同じ方向に回転している。中心付近を除けば回転速度は半径によらずほぼ一定である。そのため、より内側にある星やガスのほうが早く一周する(差動回転)。回転速度を半径の関数として描いたものを回転曲線という。銀河円盤の星の表面輝度は指数法則に従って外側ほど低下するため、もし回転運動が円盤の星の重力だけで決まっているとすると、回転速度も外側ほど遅くなるはずである。現実の回転曲線がほぼ一定(平坦な回転曲線)なのは、ダークマターでできたハロー成分(ダークマターハロー)があるためである。なお、詳しい観測によると、銀河円盤は一様な構造ではなく、比較的新しい星からなる薄い円盤と比較的古い星からなる厚い円盤の重ね合わせである。冷たいガスや渦巻腕は薄い円盤に属する。
渦巻銀河やレンズ状銀河の中心に対して円盤部(銀河円盤)が示す回転運動。軸対称を仮定すると、銀河回転は銀河中心からの距離の関数として示すことができる。これを銀河の回転曲線と呼び、渦巻銀河の運動学的特徴を表す重要な観測量の一つである。天の川銀河(銀河系)場合、太陽系周囲の典型的な恒星は、概ね、銀経90°、銀緯0°の方向に220 km s-1 で回転している(局所静止基準の運動)とされ、これが1つの基準となる。この数値が正しければ太陽系が天の川銀河の中心周りを1周するのに要する時間は約2.4億年となるが、新たな観測により1割程度短いという研究結果も増えてきている。また、天の川銀河では円盤部の天体も非円運動をしているとする観測結果も多く、「回転」という単純な言葉から受ける印象と現実は異なっている可能性がある。
内側ほど速く差動回転する銀河の渦巻模様は(ほどけ型でなく)巻き込み型なので、天球面上でS字型の渦巻銀河は天球面上で反時計回りし、Z字(逆S字)型の渦巻銀河は時計回りしている。このことから渦巻の向きがS字型かZ字型かを見るだけで自転角運動量ベクトルの視線方向成分の正負が判定できる。
2つ以上の銀河が重力によって合体して1つの銀河になること。銀河合体はどの時代の宇宙においても観測されるありふれた現象であるとともに、銀河進化において本質的役割を担う過程でもある。なぜなら、標準的な構造形成モデルである階層的集団化モデルは、軽い銀河が合体を繰り返して重い銀河に成長すると予想するからである。重い銀河同士による激しい銀河合体は、銀河群のような銀河集団でよく見られる。ガスの豊富な渦巻銀河同士が合体すると、(合体のしかたにもよるが)ガスが圧縮されて爆発的星生成を起こし、最終的には楕円銀河になるという予測がある。銀河間相互作用や銀河合体は銀河中心核の活動現象(活動銀河)の引き金になることもある。
なお、銀河団内部のような銀河の相対速度が高い場所では、銀河はいったん衝突しても再び離れてしまって合体できないこともある。平穏に見える銀河でも合体は起きている。たとえば天の川銀河(銀河系)には周囲から矮小銀河が絶えず落下してきていることがわかっている。銀河系は、このような穏やかな銀河合体を繰り返して成長してきたと考えられている。形態をはじめとした銀河の性質は、その銀河が経験してきた合体の内容に強く影響される。合体直後でその痕跡が見える銀河をマージャー(合体銀河)と呼ぶ。
相互作用銀河も参照。
[IFSV2017] 天の川銀河とアンドロメダ銀河の衝突シミュレーション
https://youtu.be/q99XejmflVU
銀河の大局構造としての磁場のこと。渦巻銀河を電波連続波で偏波観測することで磁場の方向と強度を調べることができる。また、天の川銀河(銀河系)を初めとする横向き銀河では、偏光電波源の観測から求めた回転量度によって視線に沿った磁場の向きと強度を知ることができる。これらの情報から、銀河磁場は銀河面上を渦巻腕に沿った構造をしていることがわかっている。特に、天の川銀河では、主要な渦巻腕ごとに磁場の向きが交互に反転していることが知られている。このことから、天の川銀河全体の磁場構造は、銀河面を垂直に貫く平行な磁場が巻き込まれた構造をしているとの予想が有力視されている。銀河磁場は銀河の差動回転のために次第に巻き込んでいくが、銀河面に垂直な方向に磁場が逃げていくことで一定の強度に保たれていると考えられている。ただし、他の渦巻銀河ではこれとは異なる銀河磁場構造をしているとする観測もあり、銀河磁場の起源は完全には解明されていない。
軸受けの受け側と軸側との間に液体を挟むことで、受け側と軸側とが直接触れ合わないようにした軸受けを指す。液体としては粘性の低いオイルが用いられる。オイルは、静圧軸受けの受け側(パッド)に常に一定の圧力で供給され、パッド周囲に常時流れ出ている。このときに形成される油膜で、駆動軸あるいは駆動レールなどがパッドから浮く。静圧軸受けは、摩擦抵抗が非常に小さく、超低速から高速まで極めて滑らかに動く。またコンパクトかつ非常に堅牢である。このため、重量物を精密かつ滑らかに駆動する必要のある大型望遠鏡の軸受けとして一般的に用いられている。
ある高さの壁の向こう側にボールを渡すためには、その壁の高さ以上にボールを投げ上げることが必要である。この事実は、ボールはその全エネルギーが壁の高さに対応する位置エネルギーよりも大きい領域内でのみ運動可能である、と言い換えることができる。これは古典力学においてはまったく自明であるが、微視的なスケールを記述する量子力学では必ずしも成り立たない。ある確率で、粒子は古典的には乗り越えることができないはずのポテンシャルの壁をすり抜けて、反対側の領域に侵入することができる。これをトンネル効果と呼び、量子力学が古典力学と異なる端的な例である。現在の電子技術の多くはこのトンネル効果と深く関わっている。また、恒星内部の核融合反応はこのトンネル効果によって反応率が格段に上昇している。宇宙の誕生においてもこのトンネル効果が本質的な役割をしたとする考えも提案されている。
矮小楕円銀河でない明るい楕円銀河を指すことば。多くの銀河団の中心に存在する特に巨大な楕円銀河はcD銀河と呼ばれる。銀河も参照。
一般には、本来、独立な運動をする2つの系の回転角速度が一致することを指す。連星系周囲の力学を論じる際には、共通重心の周りに星の公転運動とともに回転する座標系を想定すると便利なことが多く、これを共回転座標系と呼ぶ。また、回転する非軸対称ポテンシャルを持つ銀河での恒星や星間物質の運動を論じる際には、ポテンシャルの回転角速度(パターン速度)と一致する運動をしている天体を共回転になっている天体と呼び、その半径位置を共回転半径と呼ぶ。
共回転している天体はポテンシャルからの摂動を常時同じ方向に受け続けるため、力学的にほかの場所とは大きく異なった影響を受ける。このため、特徴的な現象が発生することが多い。たとえば、渦巻銀河の場合だと、恒星がなす円盤の縁や、星形成の活発度を半径方向に調べた際に特異的に変化している半径、あるいは、棒状バルジの端点に当たるなどとする場合があるが、いずれも確実な論拠に基づくとは限らない。また、共回転半径を境に、その内外ではポテンシャルと天体の相対運動が逆転するため、時系列と回転方向の空間的な配置とが共回転半径を境に逆転することになり、共回転半径を知る観測的な手がかりを与えるものと考えられている。
楕円銀河の速度分散、平均表面輝度、有効半径の間に見られる強い相関関係で、銀河のスケーリング則の1つ。この相関関係を対数で表すと平面の式になること、および相関関係の分散が観測誤差と区別できないほど小さいことから名づけられた。ジョルゴフスキー(S.G. Djorgovski)らによると、有効半径は速度分散の1.39乗に比例し、平均表面輝度の-0.90乗に比例する。有効半径の代わりに光度が使われることもある。基本平面を光度と速度分散の2次元平面に射影したものがフェイバー-ジャクソン関係である。基本平面の存在は、楕円銀河が2つの独立な物理量だけで性質が決まる極めて一様な系であることを意味する。渦巻銀河にはこれほど分散の小さい相関関係は存在しない。基準平面ともいう。
電波の中で最も短い波長(0.1-1 mm程度)をもつものの名称。
ミリ波やサブミリ波では低温度の星間物質(分子雲や星間ダスト)中にある分子の輝線が多く観測される他、ダストの熱放射もこの波長域に強度ピークを持つ。サブミリ波は地球大気中の水蒸気により吸収されるので、乾燥した高地でないと観測が難しい。サブミリ波で多くの成果を挙げているアルマ望遠鏡は、チリのアタカマ砂漠の高地(標高5000 m)に設置されている。アタカマ砂漠の年間降水量は100 mm 以下で、世界で最も乾燥した場所の一つと言われている。電磁波も参照。
天体のスペクトルにみられる輝線をその発生機構で分類した一種。ガス星雲に見られることが多いので星雲線と呼ばれることもある。一般に、原子内の電子が 下位のエネルギー準位に遷移すると、エネルギー差に相当する波長の輝線が発生する。 電気双極子放射による遷移が禁止されている場合でも、より高次の磁気双極子放射や電気四重極子放射による遷移(禁制遷移)が可能な場合がある。このような、電気双極子放射以外によって発生する輝線を 禁制線という。禁制線の自然遷移確率は1 秒当たり 10-4から10-2 程度であり、 許容線に比べてはるかに小さい。 許容線と区別するために、禁制線は [ ] で囲んで表記する。たとえば [OII]λ3727。 許容線と禁制線の中間的な遷移確率で放射される半禁制線と呼ばれる輝線もある。
連続スペクトル成分に比べて輝線が相対的に強い銀河。静止系で紫外から可視の波長域の輝線を主な対象とする呼び名。たとえばライマンα(アルファ)、[OII]、[OIII]、Hα などどれか1本の輝線が強ければ輝線銀河と見なされるが、たいていの銀河は複数の輝線が強い。輝線の強弱は放射エネルギー流束(フラックス)そのものではなく等価幅によって判断される。したがって、弱い輝線しか出していない銀河でも、連続スペクトルがずっと弱ければ等価幅が大きくなり、輝線銀河と見なされる。輝線銀河の正体は星生成の活発な銀河か活動銀河である。輝線銀河を効率的に見つける方法としては、注目する輝線を1つ選び、その輝線の観測波長だけに感度を持つ狭帯域フィルターを用いて撮像探査するというものがある。このような方法で見つかった銀河は、注目した輝線名を頭につけて、Hα銀河、[OII]銀河、ライマンα銀河などと呼ばれる。
銀河、ライマン系列も参照。
球対称な自己重力系の密度分布のモデルの一つ。圧力を与える速度分散が一定であるため「等温」、また密度分布が半径の逆2乗に比例し中心で発散するので「特異」という。質量が半径に比例して増大するので、それを半径で割った重力ポテンシャルは一定となり円盤銀河で観測される平坦な回転曲線を説明する。このため銀河を取り囲むダークマターハローの簡単な密度分布のモデルとしてよく用いられる。また中心部の発散を取り除いたコア入り等温球モデルもよく用いられる。
禁制線を参照。
あらゆる慣性系で測定しても光の速さは同じという観測事実(光速度不変の原理)に基づいて1905年にアインシュタイン(A. Einstein)によって提唱された物理理論である。お互いに等速直線運動をしている二人の慣性観測者の測る時間の進みと空間の尺度は、どちらが測っても光速度が同じになるように関係づけられている。この時間と空間の関係をローレンツ変換という。
4次元時空と呼ばれる4次元連続体上の座標系として時間軸と空間軸を設定すると、ローレンツ変換は4次元時空の座標変換とみなすことができ、光速度不変の原理は座標変換の不変量としての意味を持つ。この4次元時空をミンコフスキー時空という。物理量はミンコフスキー時空上で定義され、ローレンツ変換で形を変えないミンコフスキー時空上の方程式として重力以外の物理法則を表した理論が特殊相対性理論である。
ローレンツ変換に対してその形を変えないという要請は、運動の法則に対するガリレオの相対性原理を光速度不変の原理を含むように自然に拡張することである。またこの要請から自然界に存在するさまざまな「場」は、ローレンツ変換全体のつくる群(ローレンツ群)の表現でなければならないことが導かれる。ちなみにローレンツ変換の表現としてスピノル表現が存在することが、自然界にフェルミ粒子(フェルミオン)が存在する数学的理由である。
