地平座標系を参照。
大質量星や中質量の近接連星が起こす大爆発により突然明るく輝きだす天体。夜空でそれまで星の見えなかった所に突然明るく輝く星は新星と呼ばれているが、新星のなかで特別に明るいものが「超新星」と分類されるようになった。その後の研究で超新星は恒星全体が爆発する現象であることがわかった。爆発後に残される星雲は超新星残骸と呼ばれる。超新星の発生頻度は、1銀河あたり50年に1個程度という稀な現象であるが、21世紀に入ると自動観測や大望遠鏡でのサーベイ観測などで発見数は年間500程度に達する。「超新星」という語は、超新星そのものと超新星の爆発現象の両方に用いられることが多い。厳密に区別したい場合には後者に「爆発」をつけて「超新星爆発」と呼ぶ。
超新星は分光観測により分類が行われる。まず、最も明るくなる極大期に水素線が現れないものがⅠ型、水素の吸収線が現れるものがⅡ型と分類された。典型的なI型超新星ではケイ素の吸収線が顕著であるが、これの弱いものも相次いで見つかるようになり、ケイ素が強いものはⅠa型、そうでないもののうちヘリウムの吸収線が見えるものはⅠb型、それも見えないものはⅠc型と分類されるようになった。このうち、Ⅰa型超新星は近接連星系に属する白色矮星が伴星からの質量降着をうけて爆発したものであり、それ以外のⅡ, Ⅰb, Ⅰc型は大質量星の重力崩壊に伴って爆発したものであると考えられている。Ⅰb, Ⅰc型は、星風などによってそれぞれ水素外層、ヘリウム層を失った大質量星が起こす爆発とみられている。Ⅰa型超新星は爆発後約20日で光度が極大に達し、絶対等級で-19等ほどになる。その後の減光も含め、超新星ごとの個性は小さい。
一方、大質量星の爆発であるⅠb, Ⅰc, Ⅱ型超新星の極大絶対等級は-17等程度であるが、明るさは天体によって大きく異なる。Ⅱ型超新星には、極大後100日程度一定の光度を保つⅡ-P型や等級が直線的に落ちるⅡ-L型がある。この違いは水素外層の多少によると考えられる。超新星の熱源は、爆発時に合成された放射性元素 56Ni が 56Co、さらに 56Feに壊変する際に放出されるガンマ線であり、超新星の明るさは合成されて放出される鉄の量を反映する。
Ⅰa型超新星爆発のメカニズムには二つのシナリオがある。第一のシナリオでは、連星系を構成している白色矮星に相手の星から質量が降着し、白色矮星の質量がチャンドラセカール限界質量近くにまで増加すると爆発する。第二のシナリオでは、連星系の二つの星が白色矮星となり、重力波を放出しつつ公転移動を狭め合体する。合体した白色矮星の質量がチャンドラセカール限界質量を超えると、第一のシナリオと同様に爆発する。中心で起こる炭素フラッシュの後、爆発的な燃焼波面は爆燃波として外側に伝播する。その過程で鉄族元素が大量に合成される。
大質量星が起こす重力崩壊型の超新星の爆発機構は十分に解明されていないが、理論的には光分解型超新星と電子捕獲型超新星が存在すると考えられている。前者は太陽質量の10倍以上の星が起こすもので、高温になった鉄の中心核で高エネルギーのガンマ線によって鉄が分解され、爆縮の後に中性子星やブラックホールが形成される。後者は太陽質量の8-10倍の星が起こすもので、酸素、ネオン、およびマグネシウムからなる中心核において電子捕獲が起こり、圧力が低下して収縮し、最後に中性子星が生まれる。中性子星生成の際に生じた衝撃波が外部コアと外層を吹き飛ばすという爆発機構が考えられるが、詳細なシミュレーションでは衝撃波の伝播は不十分であり、ニュートリノ加熱や星の自転の効果などをとり入れた研究が行われている。また、140太陽質量を超える星では電子-陽電子対生成による重力崩壊の際に核燃焼の暴走により爆発(電子対生成型超新星)が起こると考えられている。
超新星爆発からは、大質量星内部や爆発時に合成されたさまざまな元素が放出され、宇宙の化学進化に大きな影響を与える。また、Ia型超新星はその明るさがほぼ等しく、極大後の減光率の違いをもとにした補正を加えるとその極大時の絶対等級を精度よく見積もることができるため、距離測定に用いることができる。遠方のⅠa型超新星の観測は、宇宙の加速膨張に対する観測的証拠を与えている。
通常より爆発エネルギーがはるかに大きい超新星(supernova)をいう。ハイパーノバ(hypernova)ともいう。
大質量星の進化の最終段階として、恒星質量ブラックホールが誕生するときに生じる現象と考えられる。Ic型超新星爆発の一つとも考えられる。ある種のガンマ線バーストは極超新星爆発にともなう現象であることがわかっている。通常より大質量になりうる星として、重元素を含まない宇宙初期の初代星(種族III)が考えられ、ガンマ線バーストはこのような宇宙初期に最初にできた大質量星の爆発によるという説もある。
おうし座領域にある中心集中型の形状をした超新星残骸。名前の由来はかに座とは関係なく、その見た目からである。中国の記録『宋史』『天文志』や日本の藤原定家の日記『明月記』に記録があるため、1054年に出現した超新星(SN 1054)の残骸と考えられる。メシエカタログ1番(M1)、電波源の3Cカタログ(ケンブリッジ第3カタログ)144番(3C144)、NGC 1952、Sharpless 244など、多数のカタログに登録されている。
距離約2キロパーセク(2 kpc=6500光年)にあり、半径は1.7パーセク(1.7 pc=6光年)程度、膨張速度は1500 km s-1 程度である。電波から高エネルギーガンマ線にわたってほぼ全ての波長帯の電磁波で観測される天体で、特に高エネルギーの非熱的放射は、中心にある「かにパルサー」によって駆動されたパルサー星雲によるものである。高エネルギー天体としては最も有名な天体の一つで、初めて観測された孤立した電波天体の一つであり、X線以上の高エネルギー放射の天体観測においては標準光源の一つとなっている。
星計数法を参照。
青色はぐれ星を参照。
合を参照。
赤道座標系を参照。
フレア活動を示す恒星のこと。閃光星ともいう。古典的なフレア星の一つはくじら座のUV星に代表される、UV Cet型星と呼ばれる変光星のクラスに属する晩期型の主系列星である。自転が速いので、深い対流層中で恒星ダイナモ作用が働いていると考えられる。りょうけん座RS星を代表とする、RS CVn型星も古典的なフレア星である。公転周期が短い、分離型の近接連星系(連星をなしている恒星と恒星の距離が近いが、まだ接触はしていない系)であって、潮汐力によって自転が高速に保たれているのが、活発な恒星ダイナモ作用の原因であると考えられている。
低温度の星の総称。スペクトル型ではG、K、M型など。スペクトル分類(星の)を参照。高温の星を早期型、低温の星を晩期型と呼ぶのは、星はO型で誕生し、だんだんと冷えてM型になると考えていた昔の名残である(鈴木敬信著「天文学」地人書館 1982年)。
バリウムの強い吸収線を示す赤色巨星。連星系に属することが確認されており、CH星と同様に、連星系において漸近巨星分枝(AGB)星で合成されたs過程元素を多く含む物質が表面に降着することによって特異な組成になったと考えられる。ただし、バリウム星は金属量の高い(種族Ⅰの)天体であり、CH分子吸収帯はCH星ほど顕著ではない。化学特異星も参照。
撮像観測において少しずつ撮像視野(写野)を変えながら撮像するテクニック。主に2つの目的に利用される。
一つは検出器の感度むらや光学系のけられを補正するフラット補正のための補正データ(フラットフィールド)を取得するためである。目的とする天体のサイズより大きく視野を動かしつつ、複数枚の画像を得れば、ある画像において天体が写っていた場所に、別の画像では天体のない空(スカイ)が写っているようにすることができる。このような複数枚の画像を合成すると、画像中の各画素において、天体像を避けてスカイのみを残すことができる。スカイは一般に撮像視野内で一様と考えられるので、この合成画素をフラットフィールドとすることができるのである。
もう一つは、欠陥のある画素や宇宙線粒子の影響を受けた画像などがある場合に、検出器中の各画素の感度を平均化して、異常な感度を示す画素の影響を避けるために用いる。また分光観測においても、スリット上で天体像を動かしながら複数のデータを得ることで、夜天光による輝線の差し引きの精度を上げることができる。夜光輝線の影響が非常に大きい近赤外線の分光観測では、スリット上でのディザリングはよく用いられる手法である。
電波を発する物体の総称。電波天文学の世界では、電波を発する天体のほか、電波ホログラフィー法で用いられるような、電波望遠鏡で検出可能な人工電波信号を発する装置を指すのにも用いられる。
可視光で観測される、主系列星に到達する前の若い中質量星。質量は太陽質量の約2-10倍程度である。スペクトル型は輝線を伴うA型かB型であり、表面温度は8000-30000K である。ハービッグAe/Be 型星は、中質量星の前主系列収縮段階にあると考えられ、同じ進化段階にある小質量星のTタウリ型星に比べて観測される個数ははるかに少ない。すばる望遠鏡などの大型望遠鏡により星周円盤が撮像されているものもある。
天球上の天体の動きを、地球が宇宙の中心にあって、他のすべての天体はその周りを公転するとして説明するモデルのこと。学術上の名称は「地球中心説(geocentrism)」である。複雑な惑星の見かけの運動を、円運動を基本として表すために、周転円や離心円などの複雑な仕組みを必要とした。
紀元前の古代ギリシャで、エウドクソス(Eudoxos)、アリストテレス(Aristotle(Aristoteles))、アポロニウス(Apollonios)、ヒッパルコス(Hipparchus)らに端を発し、紀元2世紀にアレクサンドリアのプトレマイオス(Ptolemaeus)によって体系づけられた。
天動説は、単なる一つの宇宙モデルというだけではなく、哲学的世界観と密接に結びついて発展し、13世紀頃からはヨーロッパでキリスト教の世界観となり、宗教的権威を持つに至った。惑星は太陽の周りを公転するという地動説が広く受け入れられるようになる17世紀まで、中世西欧社会の標準的な宇宙観であった。人間のいる固定した大地の上に天上の世界があるとする世界観は、古代インドの須弥山説などにも見られるが、それらは一般的には天動説とは呼ばない。地動説も参照。
天体から来る電波強度のゆらぎのこと。クェーサーなどの強い電波源からの電波強度を記録して、太陽風中のプラズマの密度分布のゆらぎを電波シンチレーションとして検出する方法もある。
電磁波の強度が急激に増大する天体を指す。トランジェント天体ともいう。
激変星、新星、超新星、X線新星やガンマ線バーストがこの範疇に入る。
若い高温度星であるにもかかわらず、天の川銀河(銀河系)の円盤の回転運動に対して異常に速く運動しているもの。もともとは大質量星との連星を構成していたが、相手の星が超新星爆発を起こした結果、飛び出してきた星であると考えられている。
恒星のなかで相対的に表面温度の低い天体の総称。明確な基準はなく、晩期型星とも重なるが、ハーバード分類の温度系列ではK型、M型を指す場合が多い。主系列では太陽質量の半分程度以下の小質量星に対応するが、進化の進んだ赤色巨星や赤色超巨星も低温度星に該当する。進化の進んだ星では内部の元素合成の結果が表面に現れることにより炭素星やS型星となる。また、星の脈動も見られ、質量放出も一般に大きくなる。スペクトル型(星の)も参照。
楕円型の2階微分方程式、たとえば、
$$
\frac{\partial^2 \phi(x,y)}{\partial x^2} + \frac{\partial^2 \phi(x,y)}{\partial y^2}=\rho(x,y)$$
に対して、境界条件が、境界 $D$ での解の勾配を用いて、
$$\left.\frac{\partial \phi(x,y)}{\partial n}\right|_D=0$$
のように与えられている場合をいう。ここで、${\partial \phi(x,y)}/{\partial n}$ は境界に垂直な方向での微分を表す。ディリクレ問題も参照。
