天体の光度を表す際によく使われる単位。太陽の光度であり、記号 $L_{\odot}$ で表す。
$$1\,L_{\odot} = 3.842\times10^{26}\,\,\,\,[{\rm W}]$$
である。
たとえば、高いところにある物体は下に落ちることで何か仕事をすることができる。また、同じ符号の電荷を近づけておくと、離れるときに何か仕事をすることができる。このように、その場所にいることで持つ、仕事をする能力のことをポテンシャルと呼ぶ。とくに前者は重力ポテンシャル、後者は静電ポテンシャルと呼ばれる。数学的にはポテンシャルは場所の関数で定義される。
ポテンシャル ${\it \Phi}(\boldsymbol{r})$ が定義できるのは力 $\boldsymbol{F}$ が位置 $\boldsymbol{r}$ の関数として $\boldsymbol{F}=-\nabla {\it \Phi}$ のように書ける場合のみであり、この力 $\boldsymbol{F}$ を保存力という。保存力を経路に沿って積分するとポテンシャルを求めることができるが、ある位置におけるポテンシャルの値は積分経路によらず同じ値をとる。
文脈によってはポテンシャルエネルギー(位置エネルギー)のことをポテンシャルということもある。
太陽の黒点や活動領域の出現、こうした領域で発生するフレアなどの磁気的な活動現象の頻度は約11年の周期で増減する。これを太陽周期活動という。活動が最も活発な時期を極大期、最も静かな時期を極小期という。ある周期と次の周期では、先行黒点と後行黒点の磁場極性や極磁場の極性の反転があり(ヘール-ニコルソンの法則)、この効果も考えると周期は22年となる。ダイナモ機構が太陽周期活動を駆動していると考えられている。
木星の南半球にある巨大な大気渦。東西に26,000 km、南北に14,000 kmの広がりを持ち、地球をすっぽり呑み込む大きさである。南半球にあって反時計回りの回転を示すこと、赤外線での観測によると周囲より温度が低いことなどから、周囲より高い高度にある高気圧渦であると考えられる。1665年にカッシーニ(G.D. Cassini)が観測したという記録があり、300年以上にわたって安定に存在している可能性がある。より詳細な観測が行われるようになって以降、大赤斑の経度は変化しているが緯度はほとんど変化していない。その構造や赤っぽい色の成因については、まだよくわかっていない。
天体があたかも太陽を従えるかのように、日の出直前に東の空に上ってくること。エジプト文明やマヤ文明では、シリウスのヘリアカルライジングを1年の暦の区切りとした。英語読みのヒライアカルライジングと表記されることもある。
土星の最大の衛星で、直径5150 km、質量1.345×1023 kg、密度 1880 kg m-3 であり、太陽系において地球以外で唯一現在でも地表に液体(メタン)をたたえる天体である。タイタンの地表温度は絶対温度93 Kで液体の水は存在できない。タイタン表面の液体メタンは、地球上の水と似た役割を果たしている。すなわち、太陽エネルギーを駆動力として、地球の水循環と同様に、メタンの蒸発、雲の形成、降雨、そしてまた蒸発というメタン循環がタイタンで起きている。
タイタンには窒素を主成分とする厚い(表面で1.5気圧)大気が存在する。大気には3%のメタンが含まれる。タイタンの大気では、光化学反応により窒素とメタンから有機分子が生成され、さらに高分子化が進むと考えられる。生成された有機物をソリンと呼んでいる。これはタイタン大気中にスモッグとして分布して大気を不透明にしている。タイタンには、地球と似た気象現象と地形が存在する。大気中にはメタンの雲があり、メタンの雨が降って河川や湖を形成する。以前は、メタンとエタンからなる面積の広い海が存在したと考えられていたが、カッシーニ探査機の観測では現在は液体メタンは極域に湖として存在する。
カッシーニ探査機から分離されたホイヘンス探査機の着陸地点は10-20 cmほどの氷塊が散らばっているが、土壌には液体のメタンが含まれていた。表面に衝突クレーターは少なく、表面年代は若い。カッシーニ探査機のレーダーにより、砂丘地形が発見されている。カッシーニ探査機によるタイタンの自転運動の観測から、エウロパのような地下海の存在が示唆されている。一方、カッシーニ探査機のフライバイ観測で得られたタイタンの慣性能率は0.34で、ガニメデの0.31より高い。そのため、タイタン内部では氷と岩石が完全に分離していないのではないかと、考えられている。
参考:3Dモデル https://science.nasa.gov/saturn/moons/titan/
特異点定理を参照。
圧力 P が密度 ρ の関数として、P= Kρ (1+1/n) のように変化する場合の球対称自己重力構造のこと(Kは定数)。この関数はポリトロープ関係、n はポリトロープ指数と呼ばれる。この関係を仮定するとレーン-エムデン方程式の解が得られる。n が大きいほど、質量の中心集中度が高い場合に対応する。n = 1.5 のポリトロープは対流平衡にある恒星や非相対論的に縮退したガスのつくる白色矮星の構造を表している。放射平衡にある恒星は n=3-3.5 のポリトロープに似た構造をもつ。
量子力学では、エネルギー準位間の遷移には選択律があり、遷移前後での量子数の変化に一定の規則がある。電気双極子放射で多電子系のスピン-軌道相互作用が厳密にL-S結合に従っていれば、合成スピン量子数は ΔS=0 と変化しないことが要請されるが、現実の多電子原子はL-S結合に厳密には従っていないため、本来禁止されている ΔS=±1 の変化を伴う遷移によるスペクトル線も、密度の低い星間ガスなどから放射される。これを半禁制線と呼ぶ。選択律に従う遷移によって放射される許容線、磁気双極子放射や電気四重極子放射による遷移によって放射される禁制線との中間的な遷移確率(102-103 s-1)で起こるため、このように呼ばれる。電気双極子放射も参照。
夕方の薄明から日が暮れて暗くなってしばらくの間、西の空に明るく輝く金星の俗称。
図の内惑星を金星とすると、東方最大離角近くの位置にあるときに宵の明星となる。明けの明星も参照。
黄道光を参照。
気体定数をアボガドロ定数で割った値で、一般に k あるいは kB で表される。この定数と温度の積 kT は、ボルツマン因子 (=exp(-E/kT)) など、統計物理学の基本法則によく現れる。
2019年5月20日より施行された新しい定義に基づく国際単位系(SI)では、ボルツマン定数はその基礎となる4つの定義定数の1つとして
k=1.380649× 10 -23 [J K -1 (=kg m2 s-2 K-1)] と定義された。他の3つは、
プランク定数 h=6.62607015× 10 -34 [J s (=kg m2 s-1)]
電気素量 e=1.602176634× 10 -19 [C (=A s)]
アボガドロ定数 NA= 6.02214076× 10 23 [mol-1]
である。ちなみに真空中の光速度は以下である。
c=2.99792458× 10 8 m s-1
ここでそれそれの単位記号は、J(ジュール)、s(秒)、kg(キログラム)、m(メートル)、C(クーロン)、K(ケルビン)、A(アンペア)、mol(モル)である。
これら定義定数の「定義値」は今後変わることがないが、それは決してそれらの物理定数を今後より高い精度で測定する努力を否定するものではない。物理量の高精度の測定は科学の進歩の基礎である。
ボルツマン分布、フェルミ統計、ボース統計も参照。
熱平衡にある古典的な粒子の確率統計。エネルギーが Ei の状態にある分子の数が exp (-Ei/kBT) に比例することを表している。ここで kB とT はボルツマン定数と系の温度を表す。量子性を考慮するとフェルミ統計あるいはボース統計になるので、量子性が無視できる場合のこれらの近似とみなせる。しかし希薄なガスでは良い近似になっている。また古典的な理想気体の分子に適用した場合を、マクスウェル-ボルツマン分布という。
平坦波面長を参照。
ピアッツィ(Giuseppe Piazzi;1746-1826)はイタリアの天文学者、神学者。しばしばピアッジ、ピアッチとも記される。最初の小惑星、ケレス(Ceres)の発見者。イタリア北部のポンテ・イン・ヴァルテッリーナに生まれ、ミラノ、ローマで学び、数学と天文学に傾倒し、これらの分野で博士号を取得した。1780年、シチリアのパレルモ・アカデミーの数学教授に就任しシシリー島に天文台を建設、パレルモ天文台長になった。ラムスデン製の新しい子午環で星表作りのため観測中の1801年1月1日に移動する恒星状天体を発見し、その観測報告がドイツに伝えられて、順行、逆行の様子から火星と木星の間にある新しい惑星であることがわかった。一度見失うが、その次の秋の回帰には、ガウス(C.F. Gauss)が最小二乗法を考案して軌道を計算し、無事再発見された。その後ケレスと同様な天体は続々発見され、ハーシェルの提案に従って、小惑星(asteroid)と呼ばれるようになった。ケレスはその中で最大のものである。
Tタウリ型星が林トラックを経て、主系列星となる前にたどる進化経路のこと。
ほぼ完全に対流状態にあるTタウリ型星はHR図上で林トラックを上から下に縦に移動するが、星の中心部分が高温になり放射による熱輸送が卓越するようになると、このヘニエイトラックを右下から左上の向きに進化する。
前主系列収縮も参照。
大小マゼラン銀河(マゼラン雲)と天の川銀河(銀河系)を結ぶように存在する中性水素ガスがなす帯状の天体のこと。高速度雲の一種である。大小マゼラン銀河から幅 5 ~ 10°、長さ 100° にわたり天球上を直線状にペガスス座まで延びていて、一部は北半球からでも観測できる。3次元的には天の川銀河を取り巻くように続いていると考えられている。大小マゼラン銀河は、天の川銀河の周囲を移動しているので、天の川銀河による潮汐力の影響を強く受ける。このため、大小マゼラン銀河から引き出された星間ガスが作った構造だとされている。
水素原子で電子が主量子数 n=2 のエネルギー準位とそれよりも上の準位の間で遷移することによる一連の輝線あるいは吸収線の総称である。個別の線はバルマー線と呼び主なものには名前が付けられている。可視光から波長364.6 nm(バルマー不連続)より長波長の紫外線領域で放射される。n=3,4,5, ... から遷移するときに放射されるバルマー線はそれぞれHα(アルファ)(波長656.28 nm)、Hβ(486.13 nm)、Hγ(434.07 nm), ... と書かれる。ライマン系列、パッシェン系列、ブラケット系列、再結合線、Hα線も参照。
恒星の構造と進化を記述する連立非線形偏微分方程式の数値解法。この方法では星を球対称と近似し、時刻 t と中心からの累積質量 Mr (半径r の球に入る質量)を独立変数とするラグランジュ法で記述した流体力学方程式により、自己重力によるつり合いと熱の拡散を記述する。次にこの微分方程式を累積質量 Mr について差分化し、連立非線形方程式を得る。この連立非線形方程式を線形化し、反復解法(ニュートン法)により解を得る。ヘニエイ法では係数行列が帯対角行列となるため、連立線形方程式が少ない計算量で解ける。このため1970年代以降、恒星の進化を求めるための標準的な方法として利用されている。
水素原子のバルマー系列の吸収が束縛-束縛遷移による離散的な吸収から束縛-自由遷移による連続吸収へと変化する波長(3646Å)で見られる連続スペクトルの段差のこと。バルマージャンプあるいはバルマーブレイクともいう。またこの波長をバルマー端(Balmer limit)ということもある。B型星からA型星で顕著に見られる。また、同波長域において、星雲などの励起されたガス中での自由-束縛放射による連続スペクトルの段差をバルマー不連続と呼ぶこともある(上記の吸収による不連続とは逆に、短波長側の放射による不連続となる)。ライマン端も参照。
