ボーデ(Johonn Elert Bode;1747-1826)はドイツの天文学者。惑星の距離をあらわすボーデの式を紹介した。
1747年、ハンブルク生まれ。1772年にベルリンの天文台に入り、ベルリン天文年鑑の発行を担当、50年以上に渡り編集に携わった。年鑑には天文ニュースや解説、論文が掲載され、ヨーロッパ天文界に貢献する重要な雑誌であった。1784年に王室天文官、1786年にベルリン天文台台長に就任、1825年にエンケ(J. F. Encke)に引き継ぐまでその職にあった。1789年、王立協会フェロー選出。
1772年に、科学著作家のチチウス(J. D. Titius)の本にあった惑星の距離を表す法則を紹介したことで知られ、今ではチチウス-ボーデの法則と呼ばれている。その級数は理論に基づいたものではなかったが、当時は重要な発見として受け取られていた。芸術的な星座絵で有名な『ウラノグラフィア』(Uranographia)など星図、星表を出版し、天文学の普及に貢献した。また「天王星」(Uranus)の命名者でもある。
その核種に特有のある寿命で自発的に放射線を放出して別の核種に変化する元素。この変化を放射性崩壊あるいは壊変といい、もとの元素を親元素、壊変後の元素を娘元素という。親元素が放射性崩壊して存在量が半分になるまでの時間を半減期と呼ぶ。半減期は核種ごとに異なる。陽子の数が同じ(原子番号が同じ、したがって同じ元素)で質量数が異なる(中性子の数が異なる)元素は同位体(アイソトープ)あるいは同位元素と呼ばれるが、その中で放射性元素を特に放射性同位体(ラジオアイソトープ)あるいは放射性同位元素という。
いくつかの放射性元素は放射年代測定に用いられる。対象とする親元素がある系に固定されて移動しなくなった出発時点(たとえば生物が死んだり、鉱物が結晶化したとき)から、親元素の娘元素に対する比は系の中で減少し続ける。推定したい時間の長さに適した半減期を持つ元素を利用して、出発点から現在までの経過時間を推定することができる。炭素(14C)から窒素(14N)への崩壊(半減期約5730年)やカリウム(40K)からアルゴン(40Ar)への崩壊(半減期約12.8億年)などがよく用いられる。
アメリカの天文学者ドレイク(F. Drake)によって1960年に、ウェストバージニア州グリーンバンクにあるアメリカ国立電波天文台で始められた世界初の地球外知的生命探査(SETI)プロジェクト。ドレイクは口径26 mの電波望遠鏡を二つの恒星の方向に向け、知的文明から周波数1420 MHz の電波が来ていないかを調べた。この周波数は、宇宙に最も豊富にある中性水素原子が出す波長21 cmの輝線の周波数で、恒星間の通信を行おうとする知的生命が選びそうなものであった。4か月間で150時間の観測を行ったが、知的生命からと思われる信号は検出されなかった。その後も電波による同種の地球外知的生命探査がいくつか試みられたが、1984年にSETI研究所が設立されてからは、定常的な研究活動として継続されている。
1999年に始まったセチ・アット・ホーム(SETI@home)プロジェクトは、初期の代表的な公開の分散コンピューティングプロジェクトで、家庭にあるパソコンでSETIのデータ解析に協力するものであった。このプロジェクトは2020年に終了したが、20年間で170万人以上の参加者が自分のコンピュータの空き時間を提供した。
成層圏中に微量に存在するオゾン(酸素原子3個からなる分子で分子式はO3)の層のこと。濃度が最大となるのは高度約20 kmあたりである。太陽から届く紫外線の大部分はオゾン層で吸収されるので、人体や他の生命に有害な紫外線はほとんど地表まで届かない。誕生直後の原始地球大気にはオゾンはなかったが、大気中の酸素が増えるにつれて、太陽からの紫外線と酸素が反応してオゾンができた。オゾン層ができたことによって、地球上で生命の誕生と進化が可能になった。
大気中のオゾン濃度は、太陽の紫外線による生成と破壊がつり合ってバランスを保ってきた。しかし近年、南極上空でオゾン層が大量に破壊されて「オゾンホール」ができてきた。これは、人間の使うフロンやハロンが成層圏に達して太陽の紫外線で分解され、塩素ラジカルとなってオゾンを破壊する触媒となることによる可能性が大きい。オゾン層の破壊は、日焼けや皮膚がんの増加につながると考えられている。これらのオゾン層を破壊する物質の削減と使用禁止への道筋が、1987年に採択されたモントリオール議定書で決められた。この議定書は2009年にEUを含む世界197か国すべてが批准した。
放射性同位体ともいう。放射性元素を参照。
ある核種(原子番号と質量数で区別される原子核の種類)が、自発的に放射線を放出(または核外の電子を吸収)して、別の核種に転換したり、エネルギー準位が変化すること。壊変ともいう。元の元素(核種)を親元素、崩壊後の元素を娘元素と呼ぶことがある。放出する放射線の種類によりアルファ崩壊、ベータ崩壊、ガンマ崩壊などと呼ばれる。放射性元素も参照。
日常生活に用いられる1年は365日あるいは366日であるが、年によって変わるのは不便である。そこで天文計算の上では365.25日を単位として1年を数えることが多い。これをユリウス年という。同様に、36525日=100ユリウス年をユリウス世紀と呼ぶ。ベッセル年も参照。
ユリウス年は J2000.0 のように頭に J をつけて表現する。J2000.0 とは2000年1月1日12時(太陽系力学時)である。他のユリウス年も、たとえば、 J2001.5 = J2000.0 + 1.5 (= J2000.0 から365.25 × 1.5日後)のようにして定まる。
J2000.0 を基点とし、ユリウス世紀単位で測った時間をユリウス世紀数 T と呼ぶ。ユリウス世紀数は歳差や章動などさまざまな要素の時間因数としてよく用いられている。ユリウス日( JD )に対応するユリウス世紀数は、 T = ( JD-2451545) / 36525 で与えられる。元期も参照。
日本の宇宙物理学者(1923-2001)。札幌市出身、大阪帝国大学物理学科を卒業後、同大学助手、大阪市立大学助教授、1956年に東京大学原子核研究所に移る。実験物理学からスタートして電波天文学に転向、1953年マサチューセッツ工科大学留学を機に宇宙線天文学、X線天文学を専門とするようになった。X線天体のロケット観測で精密位置測定を可能にしたすだれコリメータを考案・開発し(1965年)、1966年にはX線星Sco X-1の光学同定を岡山天体物理観測所で寿岳潤らと行っている。これらX線天文学への功績で1975年に日本学士院恩賜賞を受賞。1979年のX線天文衛星「はくちょう」を皮切りに「てんま」、「ぎんが」、「あすか」など一連のX線天文衛星を打ち上げ、日本のX線天文学を開花させた。宇宙科学研究所長、理化学研究所理事長を歴任、1964年仁科記念賞、1970年東レ科学技術賞、1986年文化功労者、1993年文化勲章に加えて、1987年フォンカルマン賞、1996年COSPAR賞なども受章。英国、ヨーロッパ、インド、バチカンアカデミーの各会員ともなった。
「天文月報」追悼記事
http://www.asj.or.jp/geppou/archive_open/2001/pdf/20010601c.pdf
http://www.asj.or.jp/geppou/archive_open/2001/pdf/20010703c.pdf
紀元前4713年1月1日正午を0.0とし、それから経過した日数をユリウス日という。ユリウス通日ということもある。とくにユリウス日から2400000.5を引いたものは修正ユリウス日と呼ばれる。修正ユリウス日(MJDと省略することが多い)は、変光星などの天体の光度曲線を描くときの時間として広く用いられている。
紀元前4713年1月1日というのは、1583年にフランスのスカリゲル(J. Scaliger)が提案したユリウス周期にもとづくものである。これをイギリスのジョン・ハーシェルが応用し、長期にわたる日数を数える概念として紹介したことで広まった。
Y 年 M 月 D 日のユリウス日 JD は以下のようにして求められる。
ただし、$K \equiv [(14-M)/12]$ などで使われている $[~~ ]$ はガウス記号、すなわち小数点以下を切り捨てる操作である。
$$JD= [(-K+Y+4800)\times 1461/4] \\
+ [(K\times 12+M-2)\times 367/12] \\$$
$$- [[(-K+ Y+ 4900)/100]\times 3/4] \\
+ D-32075.5 $$
脈動型変光星の一種で、種族 IIの天体。タイプIIセファイドともいう。HR図上では主系列から赤色巨星に向かう赤色巨星分枝にあたり、セファイドよりも主系列に近い。セファイドと同じように周期-光度関係を持つが、同じ変光周期のセファイドの1/4の明るさしかない。このため、M31で発見した、おとめ座W星型変光星をセファイドと見なしていたハッブル(E. Hubble)は、M31の距離を実際の半分程度しかないと見積もっていた。しかし、後にバーデ(W. Baade)が星には2つの種族があることを発見し、M31の距離が2倍程度遠い値に修正されたことで、多くの観測的矛盾が解消された。
中小質量星が進化の結果赤色巨星となりその最終段階で噴き出した外層が、高温の中心星からの紫外線で電離されて光って見えるもの。この名前の由来は、小さな望遠鏡を使って肉眼で観測していた頃に惑星のように見えていたことの名残であり、惑星とは何の関係もない。外層の噴出は千変万化で間欠的に起こるものもあり、ハッブル宇宙望遠鏡による高分解能写真ではその多様な姿がよくわかる。スペクトルには連続光はほとんど見られず輝線のみである。最終的には中心星は白色矮星となり、冷えてゆく過程でガスも光らなくなり惑星状星雲は見えなくなる。
惑星状星雲の最も明るいものの光度はほぼ一定であることが知られているので、銀河に含まれる多数の惑星状星雲の光度関数から銀河の距離を推定することができる。
ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡で観測した環状星雲M57
(credit: Roger Wesson, Cardiff University)
https://www.youtube.com/embed/78sjkGypk20?si=cS9nFMwOkS4kkdgI
物体が流体(通常は気体やプラズマ)中を運動するときに、その物体が流体との衝突によって受ける圧力。その強さ $P$ は流体の密度 $\rho$ と速度 $v$ を用いて$P=\frac{1}{2}\rho{v}^2$ で表される。
銀河が銀河団内を運動する際、銀河団を満たす高温の銀河団ガスと衝突することで、この圧力を受けて銀河内のガスやダストが剥ぎ取られる。これをラム圧によるガスのはぎ取り(銀河の)という。銀河の星生成活動が抑制されたり、銀河の形態が変わったりする原因となる。
流体力学でいう動圧は流体の流れそのものが持つ運動エネルギー密度に対応する圧力で、ラム圧は流体が物体にぶつかったときに動圧を受けて物体が感じる力と言える。前者はエネルギー的視点で見た流体の圧力で、後者は流体との衝突による力という視点で見た圧力である。実際には両者は同義語として使われる場合もある。
ちなみに、ラムとは衝角のことで、大砲が主要な兵器となる以前の時代の軍船の先頭喫水線下に取り付けられた固定武装で、軍船ごと体当たりして敵船に穴を開けるためものである。
おとめ座の方向に見える銀河団。太陽系からの距離は約18メガパーセク(18 Mpc=5900万光年)であるが、10-25メガパーセクの範囲にほぼ視線に沿って細長い領域に銀河が分布している。銀河団としては最も近いため、12等級より明るい銀河が40個あまり見られる。最も明るいのは巨大楕円銀河のM87である。暗いものまで含めると3000個以上の銀河があるが、大部分は矮小銀河である。
おとめ座銀河団を中心として、いくつもの銀河群が分布しており、それら全体が局所超銀河団と呼ばれる1つの超銀河団を構成している。局所超銀河団に属する銀河は、いずれもおとめ座銀河団に向かって動いている(おとめ座銀河団への落ち込み運動)ことが知られている。
2019年4月10日にイベントホライズンテレスコープ(EHT)が、M87の中心にあるブラックホール(太陽質量の65億倍)のシャドウを観測したと発表した。
太陽系から銀河系を飛び出しておとめ座銀河団まで行く仮想宇宙旅行の動画。M87に到達して終了する。(原作は、カリフォルニア大学サンディエゴ校マイケル・ノーマン(Michael Norman)教授による)
https://youtu.be/AXHPeX8hz8s
軸外し光学系を参照。
広く使われる標準的な測光システムに対して定義された等級。歴史的には観測データが得やすい北極星を含む周極星の明るさに基づいていたが、1953年にジョンソン(Johnson, H. L.)とモルガン(Morgan, W.W.)が出版した論文で、北極系列と呼ばれる6個の星の明るさからVバンドの等級の原点を決め、別の6個の明るいA0型の主系列星(スペクトル型(星の):A0V)の平均の明るさで、U-B=B-V=0となるように色指数の原点を決めた。この基準となった6個のA0V型星になじみの深いベガが含まれていた。ベガの等級はU=0.02、B=0.03、V=0.03等であり、ゼロ等級(等級の原点)に極めて近い。
ゼロ等級がどれだけの放射流束に対応するかは、星のスペクトルエネルギー分布(SED)を測って決める。現在最も高い精度でSEDが測定され、それを表す精密な大気モデルのある星がベガであり、等級と放射流束の対応はベガで定められている。このような背景からベガ等級という言葉が広く使われている。
ベガ等級の基準となる0等の放射流束は、基準となったA0V型のスペクトルに従って波長により変化するため、Jy(ジャンスキー)などの単位で表すときには注意が必要である。AB等級も参照。
水素原子で電子が主量子数 n = 4 のエネルギー準位とそれよりも上の準位の間で遷移することによる一連の輝線あるいは吸収線の総称である。主に近赤外線で放射され、1922年にアメリカのブラケット(F.S. Brackett)によって発見された。n=5,6,7,…,∞ から遷移するときに放射されるスペクトル線はそれぞれ Brα(波長4.051 μm), Brβ(2.625 μm), Brγ(2.165 μm),…, Br∞(1.458 μm)と書かれる。再結合線、ライマン系列、バルマー系列、パッシェン系列も参照。
混合器のこと。ミキサともいう。ミクサは誤読。
フランスのグルノーブルに本部をもつ電波天文学のための国際研究所。フランス語での名称Institut de Radioastronomie Millimetriqueの頭文字をとってIRAM(イラーム)と呼ばれることが多い。1979年に、フランス国立科学研究センター(フランス)、マックスプランク研究所(ドイツ)、スペイン国立地理研究所(スペイン)により設立された。ただし、スペイン国立地理研究所は当初は準メンバーで、1990年よりフルメンバーとなった。スペインのグラナダ近郊に位置するピコベレタにあるIRAM 30 m望遠鏡と、グルノーブル近郊の山頂にある北天拡張ミリ波干渉計(NOEMA)を運用している。また、アルマ計画共同体にも主要パートナーとして参加している。
ホームページ: http://www.iram-institute.org/
水中で荷電粒子が放出するチェレンコフ光を光電子増倍管などの光センサーでとらえる粒子検出器。水の屈折率は波長400 nmの光に対し1.34であるため、水中をほぼ光速で走る荷電粒子からは半頂角 cos-1(1/1.34)=42 度の円錐状にチェレンコフ光が放出される。カミオカンデ、スーパーカミオカンデ、ピエールオージェ実験も参照。
衝撃波面の直前と直後の密度、速度、および圧力の間に成り立つ関係式。一般の衝撃波について成立する条件であるが、波面が静止して見える座標系で記述する場合に簡潔に書ける。具体的には質量流束(密度と速度の積)、運動量流束、およびエンタルピー流束が、衝撃波面が静止して見える座標系では、波面の前後で連続となる。衝撃波の前後で密度、圧力、および波面に垂直な速度は不連続なので、これらの微分が取り扱えない。このため、衝撃波前後の流れの変化を求めるために、この関係式がよく用いられる。磁気流体力学や相対論的流体力学でも、同様の関係式が求められる。衝撃波面が移動する場合も、ガリレイ変換(あるいはローレンツ変換)により類似した関係式が求められる。
