2つの検出器の信号出力パルスのタイミングを比較して、片方のパルスが存在し、もう一方に同時にパルスが存在しないときのみ信号処理を行う方法。主検出器を副検出器で囲み、外部から主検出器に侵入した粒子を排除し、内部で発生した粒子のみ検出したい場合などに用いられる。たとえばガンマ線観測衛星では雑音となる荷電宇宙線を排除するために用いる。同時計数法も参照。
小惑星の族一つの名称。木星の軌道の外側にあり、他の巨大惑星である土星、天王星、海王星のどれかと軌道交差する氷天体(小惑星)のグループをケンタウルス族と呼ぶ。ケンタウルス族は太陽系外縁天体が摂動を受けて軌道が内側に移動したものであると考えられている。巨大惑星と軌道交差しているために軌道は安定ではなく、数百万年から数千万年の間に軌道不安定となり、一部は短周期彗星となると考えられている。最終的には太陽や惑星に衝突、あるいは惑星からの重力散乱により太陽系外へ放出されると考えられる。ケンタウルス族に属する天体の中には彗星活動を示すものがあり、キロンがその一つである。
固体内部では電子の持つことが可能なエネルギーに制限があるが、結晶内部では構成原子の周期構造から複数の連続的なエネルギー範囲(「許容帯」もしくは「バンド」)を取ることができる。そのバンドとバンドの間は、電子はその範囲のエネルギーを持つことができないバンドギャップ(禁制帯)となる。光検出器などの半導体の場合は、電子で満たされたバンド(価電子帯)と電子が空のバンド(伝導帯)の間のことを呼ぶことが多い。また、このギャップに相当するエネルギーの値(価電子帯の上端と伝導帯の下端の差)を指す場合もある。バンドギャップは価電子を伝導帯に遷移させるのに必要な最低エネルギーに対応し、光検出器の場合には感度を持つ光の最も長い波長のエネルギーに相当する。光伝導素子も参照。
星形成史と同じ。
可視度を参照。
星形成率を参照。
南アフリカ大型望遠鏡を参照。
木星型惑星は中心のコアの周りに、水素とヘリウムを成分とする層(エンベロープ)をまとっている。この層の起源として、微惑星の集積によって成長した固体の原始惑星が重力によって周囲の原始惑星系円盤のガスを捕獲したという考えを、コア集積モデルという。原始惑星系円盤ガスの中で成長した原始惑星の質量が月質量程度になると、重力により周囲のガスを引きつけて大気をまとうようになる。しかし原始惑星がさらに成長してある臨界質量以上になると、大気質量が大きすぎて圧力だけでは支えきれなくなり、エンベロープの収縮とさらなるガス捕獲が一気に進む暴走的ガス捕獲が起きる。臨界質量は微惑星集積率やエンベロープ中のダスト量などに依存するが、地球質量の十倍程度と見積もられている。この後、コアとエンベロープを合わせた惑星質量が十分大きくなって周りの円盤ガスを重力的に跳ね飛ばすか、原始惑星系円盤の消失によってガスの流入が止まると、ガス捕獲過程も終わる。木星は前者によって形成が終了し、土星、天王星、海王星は、後者のように円盤ガスの消失によってガス捕獲が止まったと考えられる。
プロミネンスを参照。
ビーム希釈を参照。
星間物質から星が作られる現象を総称して星形成あるいは星生成という。素過程としての星形成は、低温な星間物質中に含まれる分子雲コアが自己重力によって収縮し星に至る現象として理解できる。分子雲コアも星もガスからなる系という点では共通しているが、星は自己重力を圧力勾配で支えている系であることと、電磁波に対して不透明であるため短い時間スケールでは断熱的に振る舞うという点が、分子雲コアとは本質的に異なる。分子雲コアは、収縮によって発生する圧縮仕事を速やかに放射で外に逃がすため、広い密度範囲で等温的に振る舞う。このため星形成を起こす重力収縮は動的なもので、自由落下時間程度で進展する。
「星形成」と「星生成」は同じ意味で用いられる。「星形成率」「星生成率」などの複合語でも両方が併用されている。素過程に重点をおくことが多い天の川銀河(銀河系)内の星形成の研究分野では「星形成」が、一つの銀河全体の星生成率や宇宙全体の星生成率密度などの研究分野では「星生成」が用いられる傾向がある。
HR図ないしは色-等級図上で、主系列から赤色巨星分枝に移行する点。主系列星の中心核で水素が燃え尽き、ヘリウム中心核の周辺の殻で水素の殻燃焼が始まる段階に対応する。散開星団や球状星団の転向点から年齢が推定できる。
アンテナの光軸に対する受信感度 $P$ の角度依存性を表す。アンテナパターンともいう。通常は最大値で割り算した規格化パターン $P_n(\theta,\ \phi)$ で表す。ここで $\theta$ と $\phi$ は互いに直交する2方向を示し、通常は光軸を原点としたアンテナの仰角方向と方位角方向の角度である。ビームパターンを完全に表すには2次元で感度分布を表す図が必要で、観測的には点状電波源を2次元マッピングすることで測定できる。ただし、電波望遠鏡として設計されたアンテナでは、概ね軸対称ガウス分布(正規分布)となる主ビームとその周囲に現れるサイドローブ、および、かなり広い全体にほぼ一様に広がるエラービームからなる。この場合、かなりの程度は、主ビーム半値幅(HPBW)、アンテナ開口能率、主ビーム能率、サイドローブの高さなどの数値で表現できる。同じ光学系で電波を放射する場合には、その放射電波強度の角度依存性(放射パターン)と同一になるため、受信の場合でも放射を想定した表現が使われることが多い。例えば、ビームパターンはアンテナ主鏡上での電場の強度(工学系では電界強度という)分布で決まるが、これを照射パターンという。主鏡面の各部からの反射を一様な感度で検出(主鏡を一様に照射)すれば光軸方向の感度は最大となるが、サイドローブが大きくなるため、通常は主鏡周辺部からの反射に対する感度を意図的に低下させたパターンを持つ給電系と組み合わせる。
セレスと表記されることもある。1801年にイタリアのピアッツィ(G. Piazzi)によって発見された最初の小惑星。ただし、2006年の国際天文学連合(IAU)総会の決議によって現在では準惑星にも分類されている。小惑星帯にある最大の天体で直径は約950 km。
平均密度は2.2 g cm-3で、岩石と氷の混合物からできていることを示している。内部構造は、岩石コアと氷と岩石が混合したマントルに分化している。表面には、液体の水と岩石の反応でできる含水鉱物や炭酸塩の他に、岩石の20%にもなる大量の有機物が存在する。これらのことは、ケレスにかつて全球的な地下海が存在したことの証拠と考えられている。
宇宙の振る舞いを記述する宇宙モデルの一つで、1922年にロシアのフリードマン(A. Friedmann)が、アインシュタイン(A. Einstein)の一般相対性理論の方程式を宇宙全体に適用して発見した。フリードマンモデル、フリードマン解などとも呼ばれる。アインシュタインは、宇宙を静止させることができるように1917年にすでに方程式に宇宙項(宇宙定数)を付け加えていたが、フリードマンの解は宇宙定数がなくても宇宙は膨張したり収縮したりすることを示していた。1927年には、ベルギーのルメートル(G. Lemaitre)もフリードマンとは独立に、一般相対性理論の方程式から膨張したり収縮したりする宇宙モデル(ルメートル宇宙)を導き出していた。
宇宙定数 Λ=0 の場合、フリードマンモデルでは、宇宙は静止しているのではなく、時間とともに膨張あるいは膨張の後収縮する。そのどちらになるかは、宇宙にある物質密度によって決まる。宇宙の物質密度を臨界密度を単位として表したΩ0 を密度パラメータと呼ぶ。物質のない空っぽの宇宙(Ω0 =0)では、膨張は減速することなく一定の割合で宇宙が膨張する。密度が臨界密度より大きい(Ω0 が1より大きい)と、重力が強いので膨張がある時期に収縮に転じる。物質密度が臨界密度に等しい場合は、膨張は減速し続けるが止まることはなく、宇宙は無限の未来に静止する。宇宙のスケール因子を縦軸に、時間を横軸に取った図でこれらのモデル曲線の、現在における接線の傾きがハッブル定数(H0)で、その逆数であるハッブル時間は宇宙年齢の目安となる。
この解の発見当時は宇宙は静止していると考えられていたので、アインシュタインすらフリードマンやルメートルの計算間違いを疑うほどであった。計算が正しいことがわかってもフリードマンの宇宙モデルは数学的には意味があるが現実の宇宙とは関わりないとして重要視されなかった。1929年にハッブル(E. Hubble)により宇宙の膨張が観測的に確認され、アインシュタインは宇宙項を導入したことを大変後悔した。近年になって宇宙の加速膨張が確認され、宇宙項を含めた宇宙モデルが復活した(宇宙項の導入でアインシュタインが目指した宇宙定数Λが0でない静止宇宙は、実は安定ではなく、わずかなゆらぎによって膨張あるいは収縮する)。
ビッグバン、ビッグクランチ、ビッグリップ、ビッグフリーズも参照。
約46億年前、まだ原始星段階にあった太陽のこと。中心部の温度は水素の核融合反応を起こすには足りず、収縮によって重力エネルギーを解放することで輝いていた。
ロバートソン-ウォーカー計量でアインシュタイン方程式を書いたときの00成分に
相当する式で、スケール因子 $a(t)$ に対する方程式と見なすことができ、
$$\left( \frac{\dot{a}}{a}\right)^2=\frac{8\pi G}{3}\rho
-\frac{Kc^2}{a^2}+\frac{\Lambda{c}^2}{3}$$
という形をしている。ただし、$\rho(t)$ は物質のエネルギー密度、$\Lambda$ は宇宙定数、$K$ は時空の曲率で、+1, 0, -1の値を取る。また $G$ は万有引力定数、$c$ は光速度を表す。ちなみに左辺の $(\dot{a}/{a})$はハッブルパラメータ $H$ である。
ロバート・トランプラー(Robert Julius Trumpler; 1886-1956)は、スイス系のアメリカ天文学者。チューリッヒ大学を卒業後ゲッチンゲン大学で学位を得て、1915年米国に移住した。リック天文台に入り、1939年からカリフォルニア大学教授。主要な研究分野は散開星団で、1925年には星団によって構成する星の種類が異なることを示し、星の進化の研究に重要な手掛りを与えた。散開星団の距離を、星の分布する広がりの直径(星間吸収の影響を受けない)から推定した場合と、メンバー星の分光視差(星間吸収の影響を受ける)から推定した場合とで、系統的に後者の距離が大きくなることを示し、星間空間が透明ではなく、吸収を引き起こす星間物質が存在することを初めて観測的に実証した。
太平洋天文学会誌の追悼記事
https://articles.adsabs.harvard.edu//full/1957PASP...69..304W/0000304I001.html
日本の宇宙科学研究所が1998年に打ち上げた火星探査機。旧ソ連のフォボス2探査機が発見した火星大気の散逸を直接に観測して、火星大気の進化を研究することが主目的で、宇宙空間プラズマの観測機器や紫外分光器、カメラ、ダスト計測器など、14の観測機器が搭載された。火星の周囲を逆行長楕円軌道で2年間以上にわたり観測を行う計画であった。1998年末の地球スイングバイ時のトラブルにより、火星周回軌道投入を1999年から2004年に延期した。最終的には2002年4月に発生した電気回路のトラブルが復旧しなかったため、火星周回観測を諦めることになった。火星投入には失敗したが、紫外線による地球大気ヘリウムのイメージングや、宇宙空間ダストの検出などの成果を挙げている。のぞみがターゲットにしていた火星大気散逸の観測は、アメリカ航空宇宙局(NASA)が2013年に打ち上げるメイブン探査機に引き継がれて行われた。
