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アンテナ開口能率

 

よみ方

あんてなかいこうのうりつ

英 語

aperture efficiency

説 明

アンテナの物理的な面積 $A_{\rm{p}}$ に対する、電波を受信するのに有効に使われる面積 $A_{\rm{e}}$ の比($\eta_{\rm A}=\frac{A_{\rm{e}}}{A_{\rm{p}}}$)。当然ながら、$0\le \eta_{\rm A}\le 1$ である。略して、開口能率という場合もある。

開口能率が1にならない理由は、主に3つある。1つは、主焦点に設置された機器または副鏡とそれを支える支柱(ステイ)によるブロッキングによる。第2には主鏡などの鏡面誤差(理想的な鏡面形状からのずれ)および主鏡の反射率が1以下であることによる。そして、第3には給電系照射パターンを主鏡の端で意図的に減らすことによる。3番目の要因は一様な照射パターンに近づけるほどアンテナ開口能率を上げることができるが、その場合はサイドローブが大きく強くなるため、どちらをどの程度まで重視するかの判断が必要である。一般に、通信用アンテナは開口能率を重視して設計し、電波望遠鏡はサイドローブの低下を重視して設計される。観測波長が $\lambda$ の場合、有効開口面積 $A_{\mathrm{e}}$ とアンテナの全ビーム立体角 $\Omega_{\mathrm{A}}$ との間には $A_{\mathrm{e}} \Omega_{\mathrm{A}}=\lambda^2$ の関係が成り立つ。開口能率の測定には、電波強度が既知の点状電波源を実際に測定して求めるのが最も直接的であるが、ビームパターンが軸対称ガウス関数に近ければ、近似的に主ビームの半値全幅から推定した主ビーム立体角主ビーム能率から全ビーム立体角を推定し、先の式を用いて求めることもできる。

2023年04月18日更新

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    アンテナ開口能率
    *アンテナの鏡面誤差ε(観測波長λで割ったもの)(横軸)とそれによるアンテナ開口能率の劣化(縦軸)の関係
    坪井昌人「光学系」、シリーズ現代の天文学第16巻、中井・坪井・福井編『宇宙の観測II』4.3節 図4.18 (日本評論社)