フレア星を参照。
水素は、陽子1個からなる原子核の周囲をもつ原子に対応する元素であり、質量は1.67353×10-27 kgである。元素記号はH。中性状態では原子核1個に電子1個が結合しており、これを、電離した水素原子に対して、中性水素原子と呼ぶ。中性水素原子に13.6 eV以上のエネルギーを与えると、電子は原子から飛び出し電離する。このエネルギーが水素原子の電離エネルギーである。陽子と電子はともに 1/2 のスピン角運動量を持ち、中性水素原子では陽子と電子とのスピンの相対的な向きによって2つのエネルギー準位を持つ。両者の向きが同じ(平行)である状態の方がエネルギーが高く、これに対応して、水素原子の基底状態(1s)は僅かに異なる2つのエネルギー準位を持つ(→超微細構造)。この準位間の遷移で、波長21.106114 cm、すなわち、周波数1420.40575 MHzのスペクトル線を示す。そこで、これを、21cm線と呼ぶことが多い。
速い(rapid)中性子捕獲とそれに続くベータ崩壊により、核図表で中性子過剰領域にある鉄属より重い元素を形成する過程。rプロセスと呼ばれることも多い。一方、中性子捕獲のほうがベータ崩壊にくらべて遅く(slow)進行するものはs過程と呼ばれる。両者は核図表の上で異なった経路を取る。r過程で作られる元素の存在量は、質量数が80, 130, 165, 195付近の4つの元素群で極大値を示す。r過程は鉄属元素と高温(109 K 以上)の中性子が豊富な(数密度が1020 cm-3以上)領域でしか起こらない。そのような場所として重力崩壊型の超新星爆発と中性子星同士の合体で発生するキロノバが長らく有力視されてきたが、キロノバは2017年8月17日に近距離の銀河NGC4993で発生し、それが重力波と全ての波長の電磁波で観測された(GW170817)。この観測から、中性子星同士の合体で、鉄より重い金、プラチナ、ウランなどのr過程元素ができることが確認された。最近太平洋深海底の地殻から、ウランより重い質量数244のプルトニウム(半減期約8060万年、r-過程でできる)も検出された。マルチメッセンジャー天文学も参照。
超新星爆発時のr-過程において重元素ができる様子。
上智大学の和南城伸也氏らによる(以下のサイトより転載)。
http://www.ph.sophia.ac.jp/~shinya/research/research.html
天体画像から天体像を自動的に検出し、測光を行うソフトウェア。Source-Extractorの略。パリ天文台のベルタン(E. Bertin)とヨーロッパ南天天文台のアルノーツ(S. Arnouts)によって開発された。大規模な銀河サーベイデータの解析に最適化されているが、一般的な天体画像の解析にも用いられている。天体画像において、あるレベル以上の明るさをもった画素の連結性から天体の同定を行うことを基本アルゴリズムとしている。検出した天体候補については、さらに明るさのピークを検出していくつかの天体の重なりを分離する。
[AstrOmaticのSExtractorホームページ]
http://www.astromatic.net/software/sextractor
フランスのストラスブール天文台の天文学データセンター(CDS)で運用されている天体カタログおよび天体情報のデータベース。主に恒星を中心に整備されてきたデータベースだが、現在はほぼあらゆる種類の天体をカバーしている。天の川銀河(銀河系)内の天体に関してのデータベースとしては世界最大規模である。カリフォルニア工科大学が運用している銀河系外天体を対象とするNEDと同様、天体名、座標、天体のさまざまな特徴などから、該当する天体を検索でき、個々の天体について、その天球座標、種別、スペクトル、その天体に関する参考文献、さまざまなカタログでの名前の対照表などを得ることができる。データベース天文学も参照。
ホームページ:http://simbad.u-strasbg.fr/simbad/
ヨーロッパ宇宙機関(ESA)とアメリカ航空宇宙局(NASA)が共同で運用する太陽と太陽圏を観測するための宇宙機。1995年12月にアトラスII型ロケットによって打ち上げられた。名前はSOlar and Heliospheric Observatoryの頭文字に由来する。しばしば「衛星」といわれるが、地球から150万km離れた、太陽-地球間のラグランジュ点(L1)近傍に位置しており、地球をまわる衛星ではない。ESA/NASAではspacecraft(宇宙探査機)と呼んでいる。12個の観測機器が搭載されており、これらの主な観測装置の画像は毎日ホームページ(https://soho.nascom.nasa.gov/data/realtime-images.html)にアップされている。
眩しい太陽光によって、地上からは観測することができない太陽をかすめる彗星はサングレーザーと呼ばれるが、SOHOはLASCO(広角分光コロナグラフ)によって、このような彗星をおよそ30年間で5,000個以上も発見している。
ホームページ:http://sohowww.nascom.nasa.gov/
流体を粒子で表現するグリッドレス法の一つである。圧力項を大きさをもった粒子間の力として表現し、粒子は局所的な速度に従って運動するラグランジュ的計算法であり、密度のコントラストが大きい圧縮性流体の扱いに優れている。単純な取り扱いでは衝撃波面や接触不連続を含んだ流れの場合に問題があることが知られており、さまざまな改良が提案されている。
シュプリームカムを参照。
1920年4月26日にアメリカの現スミソニアン自然史博物館の建物で行われたアメリカ国立科学院の年会で, シャプレーとカーチスが宇宙の大きさに関して当時の二つの考え方を代表して行った公開討論会。 後にその記録が両者が書いた論文として出版されている。
議論の主要ポイントは「宇宙の大きさ」と「渦巻星雲の正体」であったが、両者の主張はかみ合わず問題は決着を見なかった。両者の主張はともに一部正しく、一部は間違っていた。シャプレーは、それ自体が宇宙全体と当時考えられていた銀河系(天の川銀河)の大きさは正しく推定したが、渦巻星雲(現在の呼称では渦巻銀河)の本質を正しく推定できず、宇宙の真の姿に到達できなかった。当時、ファン・マーネンが渦巻星雲 M101の回転によると見なせる固有運動を測定しており、それは渦巻き星雲が近距離にあることを意味していた。これは渦巻星雲を銀河系中のガス星雲と考える説にとって強力な証拠と考えられた。一方、カーチスは、カプタインのモデルに従って銀河系の大きさを小さく見積もりすぎたが、渦巻星雲が銀河系の外にある莫大な数の星の集団(当時は島宇宙でと呼ばれていた)であると正しく認識した。
後にハッブルが1924年にアンドロメダ星雲(M31)中のセファイドを発見し、リービットが発見したその周期-光度関係を利用して距離を求めた。その距離は、シャプレーとカーチスのどちらの説を採用したとしても銀河系の大きさを遥かに超えており、アンドロメダ星雲は銀河系の外にある天体であることを紛れもなく示していた。しかし、セファイドの周期-光度関係の目盛りに関しては研究者の議論が続いており、さらにファン・マーネンのM101以降の測定を含めた数個の渦巻星雲の固有運動の検出は近距離説の強力な証拠とされていた。このためこの大論争の最終結着は、ファン・マーネンが、「系統誤差に影響を避けるのはとても難しいので、(自分の測定したものも含む)固有運動の測定結果をあまり確かなものと見ない方が良い」という主旨の論文を公表する1935年まで持ち越された。
スイフト衛星を参照。
スブラマニアン・チャンドラセカール(Subrahmanyan Chandrasekhar;1910 - 95)はインド出身のアメリカ天体物理学者。
ラホール(パキスタン)で生れ、マドラス(現在のチェンナイ)で育った。マドラス大学プレジデンシーカレッジの学部在学中に書いた量子統計力学に関する論文を、イギリスケンブリッジ大学のラルフ・ファウラー(Ralph H. Fowler)教授に送ったところ、高い評価を得て、彼の推薦によりインド政府からケンブリッジ大学留学の奨学金を得た。1930年にマドラス大学を卒業してケンブリッジ大学に赴き、ファウラー教授に師事した。チャンドラセカール限界質量の着想はこのときのイギリスに行く船旅の間に着想したと言われている。
ケンブリッジ大学在学中には1年間、コペンハーゲンの理論物理学研究所でニールス・ボーア(Niels Bohr)の指導を受けた。また、ディラック(Paul Dirac)やエディントン(Arthur Eddington)らと親交を結んだ。1933年に学位を取得後、トリニティ・カレッジの特別研究員となった。1936年に一時帰国し妻ラリサと結婚、ケンブリッジに戻るが、1937年には招聘されてシカゴ大学に移り、1985年に名誉教授になるまで同大学で天体物理学の研究と教育を行なった。主要な研究業績は、白色矮星における臨界質量(チャンドラセカール限界質量)を求めた研究に代表される恒星内部構造論、恒星天文学、放射輸送理論、流体力学、ブラックホールなど広範にわたる。1952-71年、『アストロフィジカル・ジャーナル』誌の編集長を務めた。1983年にウィリアム・ファウラーとともに、星の内部構造と進化に関してノーベル物理学賞を受賞した。
遅い(slow)中性子捕獲とそれに続くベータ崩壊によって鉄族より重い元素をつくる過程。sプロセスと呼ばれることも多い。核図表で安定線上の原子核が形成される。中性子捕獲が速い(rapid)r過程とは核図表の上で異なった経路を取る。
s過程は、漸近巨星分枝星(AGB星)や超新星など中性子が豊富に存在する場所でおこる。AGB星で生成されたs過程元素は、ヘリウム殻フラッシュによる汲み上げにより外層へと運ばれ、星間物質へと還元される。s過程で捕獲される中性子は 13C(α, N)16O などの反応により供給される。 中性子捕獲元素も参照。
(Chandra X-ray Observatory) 1999年7月にアメリカ航空宇宙局(NASA)が打ち上げたX線天文学 衛星で、スペースシャトルにより軌道に投入されたグレートオブザーバトリーズ(Great Observatories)シリーズ4機のうち一つである。高精度のX線望遠鏡を搭載し、0.5秒角というX線衛星史上最高の角分解能と、回折格子を用いた波長分解能40-2000の分光性能を持ち、2017年11月現在も観測を続けている。チャンドラの名は天体物理学者チャンドラセカール(S. Chandrasekhar)に由来する。
ホームページ:https://www.nasa.gov/mission_pages/chandra/main/index.html
アメリカ航空宇宙局(NASA)が太陽遷移層とコロナの高解像度画像観測のために打ち上げた小型衛星である。この衛星は航空機上から切り離されたペガサスロケットで1998年4月2日に打ち上げられた。長期間の連続観測を可能とするために、TRACEは地球の昼と夜の境目近くを周回する太陽同期極軌道に投入されている。搭載された望遠鏡は口径30cmのカセグレン式であり、一つの望遠鏡で可視光、紫外線、極端紫外線領域の観測波長を切り替えながら光球、遷移層、コロナの観測をすることができる。TRACE衛星は宇宙空間から行われた太陽コロナの画像観測の中で最高の解像度を達成し、遷移層とコロナの微細構造の存在を明らかにした。そして、TRACEの観測からコロナループの加熱が場所によらず一様というよりは、足元付近に集中していると考えることで観測をうまく説明できるという提案がなされた。2010年2月にNASAが打ち上げたSDO(Solar Dynamic Observatory)衛星に、より感度が高くTRACEと同等の解像度で太陽全面を観測する望遠鏡が搭載されたため、TRACE衛星はその役目を終えて2010年6月21日に観測を終了した。
ホームページ:
https://web.archive.org/web/20120726082944/http://sunland.gsfc.nasa.gov/smex/trace/
文部科学省の世界トップレベル研究拠点プログラム (WPI) によって2007年に東京大学に設立された研究機構。2011年には東京大学国際高等研究所の傘下となり、WPIプログラム完了後の2022年度からは東京大学によって運営されている。東京大学柏キャンパスに主たる研究棟があるほか、岐阜県飛騨市神岡に神岡分室がある。数学、物理学、天文学などの連携・融合により宇宙の起源、進化、未来など宇宙に関する根源的な疑問を解決することを目的としている。2012年には米国カブリ財団の寄附による基金が創設され、研究機構名称にカブリを冠するようになり、Kavli IPMU と略称される。カブリ財団の名前を付けている「カブリ研究所」は2025年現在、宇宙物理学、神経科学、ナノサイエンス、理論物理学分野で世界に20研究所あるが、Kavli IPMUは日本に存在する唯一のものである。2007年10月の創立時からカリフォルニア大学バークレー校の村山斉教授が機構長を勤めたが、2018年10月にカリフォルニア工科大学の大栗博司教授に交代し、2023年11月からは東京大学大学院理学系研究科附属ビッグバン宇宙国際研究センターの横山順一教授が機構長を務めている。
Kavli IPMUでは平日は毎日午後3時に、訪問研究者も含めて誰でも参加できるティータイムがあり、コーヒーや茶菓子を片手に会話がはずむ。至る所にある黒板を使っての議論も自然に始まり、その場での会話がきっかけとなった世界トップレベルの研究成果も多数生まれている。このティータイムは、機構創立期から続いていて、Kavli IPMU における研究分野融合の取り組みの象徴とも言える。新型コロナウイルス感染症の流行期にはオンラインでの交流を続けた。このティータイムへの参加と毎年1−3ヶ月の海外研究機関での研究活動が所属研究者の二つの義務とされるが、教授会等の業務はなく、研究に専念できる体制を取っている。外部資金獲得の支援や生活情報支援など、外国人研究者には英語で対応する手厚い事務体制を敷くことで、研究者が着任後ただちに研究に専念できることも特徴である。
2025年時点で常勤研究者は約90名おり、60%以上が外国人研究者という非常に国際的な研究機構で、国内外の連携研究者も含めると250名を超える規模である。また、活発にセミナーやコロキウム、国際研究集会が行われており、国内外からの訪問研究者が年間1000名を超えている。
天文学分野の研究においては、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ (HSC)のデータを用いた物理解析を主導する機関の一つとして、宇宙論の検証や原始ブラックホールの探索など観測的宇宙論研究で数多くの成果をあげている。また、2025年2月より本格観測を開始したすばる超広視野多天体分光器 (PFS) プロジェクトの主導機関の一つである。
ホームページ:https://www.ipmu.jp/ja
Kavli IPMUの紹介動画_2(2024年)
https://www.youtube.com/embed/P-4727_5gac?si=WAKV-DBnz-fWl7J-"
Kavli IPMUの紹介動画_1(2015年)
https://www.youtube.com/embed/T0DrNuLHQGk?si=fekmBFyLSs8XG1Ab"
可視光でも観測される若い星のことであり、前主系列星の一種。
スペクトルにHα線などの輝線が見られる。原始星が進化して、周りのガスが少なくなった状態の星であり、内部構造において対流が卓越していると考えられる。HR図の林トラック上にある。中心での水素の核融合反応はまだ始まっておらず、重力収縮に伴う重力エネルギーを解放することで輝いている。光学ジェットにより励起されたハービッグ-ハロー天体などを伴って観測される場合がある。1945年にウィルソン山天文台のジョイ(A. Joy)により新しいタイプの変光星として発表された星の典型がおうし座のT星であったため、Tタウリ型星と名付けられた。
Uバンド(紫外線)、Bバンド(青)、Vバンド(緑)の3色を用いた測光観測で、これらのバンドに基づくU-BやB-Vの色指数が恒星の表面温度の違いに敏感なので、星のスペクトル型を推定するのに適している。測光システムも参照。
アメリカ航空宇宙局(NASA)のSAS(Small Astronomy Satellite)1号機として、1970年12月にケニア沖合のインド洋上にあるサンマルコ発射基地から打ち上げられた世界最初のX線天文衛星。ケニアとの友好の証としてスワヒリ語で「自由」を意味するUhuruと名付けられた。2-20KeVのエネルギー領域で全天掃査を行い、339個のX線天体を含むカタログを作るなどの成果を挙げ、1973年3月まで観測を続けた。
ホームページ:https://heasarc.gsfc.nasa.gov/docs/uhuru/uhuru.html
コーニング社が開発した超低膨張チタニウムケイ酸ガラス。常温での熱膨張率が ±30 ppb/K 以下とほぼゼロであり、ショット社のゼロデュアとともに、天体望遠鏡の鏡材や測長スケール材として用いられる。主成分はSiO2とTiO2で、比重は2.21、融点は 1490°C、NaD線での屈折率1.4828。直径8.2 mのすばる望遠鏡の主鏡鏡材としても採用された。
フレア星を参照。
