天文学辞典 :ASJ glossary of astronomy | 天文、宇宙、天体に関する用語を3300語以上収録。随時追加・更新中!専門家がわかりやすく解説します。(すべて無料)

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S型星

ハーバード分類で化学組成の違いに対応する系列の低温度星。表面温度はR型星N型星よりも低くく、M型星に近い。炭素の多い星のうち、大気の炭素と酸素の組成比がC/O>1のとき炭素星、C/O<1のときS型星とされる。酸化ジルコニウム(ZrO)の分子の吸収帯が際立って強い。Zrの他に、ストロンチウムSr、イットリウムY、バリウムBaなど、s過程元素に富んでいる。漸近巨星分枝進化にあり、ヘリウム殻フラッシュ(熱パルス)で合成された元素が対流によって表面まで運ばれている。半減期の短い(2.1x105年)放射性s過程元素テクネチウムTcが見られるのがその証拠である。S型星の大部分が変光星である。1922年にメリル(P.W.Merrill)により導入された。

極短時間(数10フェムト秒程度)のパルス列からなるレーザー光源。スペクトルは一定の間隔で並んだ多数の輝線(モード)からなっていて、その様子が櫛(comb:コム)の歯に見えることからこの名前がついた。光コム、光周波数コムなどと呼ばれることもある。また「コム」は「コーム」と表記されることもある。
天文観測における高分散分光で多数の輝線を用いると天体のスペクトルの波長校正が極めて高精度化できる。太陽系外惑星探査のドップラー法では、星のスペクトル線のドップラー効果によるわずかなずれを長期間にわたって測定することが必要であり、光周波数コムの利用が広まっている。これはアストロコムあるいは天文コムと呼ばれることもある。
光周波数コムの生成機構には、モード同期ファイバーレーザーから出るパルス列を使うものなどいくつかがある。通常の光周波数コムの輝線の間隔(コム間隔)は250 MHz程度だが、天文で用いる分光器の解像度では波長密度が高すぎて分解できない。天文コムは分光器の解像度(10 GHz程度以上)にマッチしてかつ広い波長範囲にわたっていることが必要で、さらに長期間にわたって安定であることも要求される。このため天文コムに用いる光周波数コム自体の技術開発も行われている。
光周波数コムは、可視光領域の周波数(1015 Hz)を電気回路で測定できる周波数(1011 Hz 以下)に落とすことを可能にしたので、レーザーを使った精密分光の発展への基本技術となり、これまでのセシウム原子時計の精度を3桁以上凌駕する光格子時計の開発にも不可欠であった。2000年頃にこの技術を開発したジョン・ホール(John Hall)とテオドール・ヘンシュ(Theodor Hänsch)は2005年のノーベル物理学賞を受賞した。

陽子1個が持つ電荷(電気量)のこと。電子1個が持つ電荷の符号を変えた値に等しい。電気量の単位となる物理定数であり、一般に記号 $e$ で表される。素電荷とも呼ばれる。
2019年5月20日より施行された新しい定義に基づく国際単位系(SI)では、電気素量はその基礎となる4つの定義定数の1つとして
$e$ = 1.602176634×10-19  [C (=A s)] と定義された。
他の3つは、
プランク定数 $h$ = 6.62607015×10-34 [J s (=kg m2 s-1)]
ボルツマン定数 $k$ = 1.380649×10-23 [J K-1 (=kg m2 s-2 K-1)]
アボガドロ定数 $N_{\rm A}$ = 6.02214076×1023 [mol-1]
である。ちなみに真空中の光速度は以下である。
$c$ = 2.99792458×108 [m s-1]
ここでそれそれの単位記号は、J(ジュール)、s(秒)、kg(キログラム)、m(メートル)、C(クーロン)、K(ケルビン)、A(アンペア)、mol(モル)である。

これら定義定数の「定義値」は今後変わることがないが、それは決してそれらの物理定数を今後より高い精度で測定する努力を否定するものではない。物理量の高精度の測定は科学の進歩の基礎である。

電気素量を参照。

グレートアトラクターを参照。

天の川銀河銀河系)の中心に近い方向(銀経307度、銀緯+9度)で後退速度4350±50 kms-1ハッブル定数を75 kms-1Mpc-1とすると距離約60 Mpc=2億光年)の位置にあり、局所超銀河団の銀河を引き寄せている巨大な高密度領域。巨大引力源とも呼ばれる。銀河の大集団と考えられる。1988年にリンデンベル(Lynden-Bell)達が全天の400個の銀河の特異速度の解析からその存在を指摘した。質量は太陽質量の5x1016倍と推定された。この方角は銀河系の強い吸収(不透視帯)によって可視光では銀河の分布を詳しく調べることができない。その後、吸収の影響が少ない近赤外線を含めて多くの銀河サーベイが行われ、確かにこの位置あたりに高密度領域があることが示唆されているが、その詳細は分かっていない。
近年ラニアケア超銀河団を発見したタリー(R. B. Tully)らの解析でも、銀河の特異運動の流線がこの領域に収束していることが示されており、高密度領域がこのあたりにあることは確実と思われる。

我々の天の川銀河銀河系)を含む広がり約5億光年の空間内にある銀河からなる超銀河団。従来から知られていた局所超銀河団を含む更に大きな超銀河団である。2014年にタリー(B. Tully)、クルトワ(H.Courtois)、ホフマン(Y. Hoffman)、ポマレデ(Pomarède)によって同定され名付けられた。ラニアケアはハワイ語で、'lani'は「天(heaven)」、'akea'は「広々とした、果てしない(spacious, immeasurable)」を意味する。
従来の銀河団や超銀河団、あるいはボイドといった宇宙の大規模構造は多くの場合、赤方偏移サーベイで得られた銀河の赤方偏移を距離の指標として、天球上の位置と距離、すなわち三次元空間内の銀河の位置に基づいて同定されてきた。赤方偏移zが1よりもずっと小さい所では、赤方偏移は視線速度(宇宙膨張による見かけの後退速度と銀河の特異速度の視線方向成分の和)に比例する。後退速度をハッブル定数で割ったものが距離である。後退速度は銀河までの距離に比例して大きくなるので、ある程度より遠方の銀河では、特異運動速度が後退速度に比べて小さくなるので、ハッブル定数の不確かさに影響されない形で銀河の空間分布を表すために座標軸の単位を視線速度にすることが一般に行われている。
一方、三次元空間内の銀河の位置だけでなくその運動も含めて大規模構造を同定する方法もある。銀河の距離が赤方偏移と独立に決定できれば、その銀河の場所でのハッブル流の速度が分かるので、視線速度からハッブル流の速度を差し引けば銀河の特異速度(の視線方向成分)を知ることができる。銀河の特異運動は物質(主にダークマター)の場所による濃淡に起因する。物質密度の高いところは周辺から銀河が落ち込み、低いところからは銀河が外向きに出て行くが、理論モデル(重力不安定性理論)を使えば密度の濃淡と特異運動の関係がわかる。このため、さまざまな位置にある多数の銀河の特異速度の観測から、理論モデルを介して密度の高低、すなわち重力ポテンシャルの高低のパターンを再構築できるのである(おとめ座銀河団への落ち込み運動を参照)。
タリー達は自らの観測結果も含めて、全天にある8000以上の銀河の赤方偏移(後退速度)と精度の高い距離をまとめたデータベース(Cosmicflows-2、以下「赤方偏移カタログ」と呼ぶ)を構築した。このカタログから得られた銀河の特異速度の解析からラニアケア超銀河団を同定したのである。密度分布を再構築する手法も、従来の手法よりノイズ(特異運動の誤差)の影響を受けにくいものを用いた。結果は図1-図3に示されている。重力ポテンシャルの谷で銀河が落ち込んでくる部分をタリー達は「盆地(basin)」と呼んでいる。
図1はラニアケア超銀河団を二つの方向から見た図である。図は超銀河座標系(単位は視線速度)で表されており、SGZ=0の位置でSGX軸とSGY軸が示されている。銀河系は原点(SGX=SGY=SGZ=0)にある。軸の目盛1000 km s-1が約13.3 Mpc(4300万光年)に相当する。薄青色の面は銀河系周辺で内向きに落ち込む局所的な特異運動が見られる盆地の境界を示す。特異速度の向きを示す流線は黒色で描かれ、「じょうぎ座(Norma)銀河団」の近くに収束して終わる。赤方偏移カタログにある個々の銀河は、ラニアケア超銀河団内での主要な構成要素が分かるよう色分けされている。緑色は以前から知られている「局所超銀河団」、オレンジ色は「グレートアトラクター(巨大引力源)」の領域、紫色は「くじら座-インディアン座(Pavo-Indus)フィラメント」、マゼンタ色は「ろ座-エリダヌス座(Fornax-Eridanus)雲」である。いくつかの主要要素には名前が書いてある。それらのうち「じょうぎ座銀河団」、「うみへび座(Hydra)銀河団」、「ケンタウルス座(Centaurus)銀河団」、「おとめ座(Virgo)銀河団」、「へびつかい座(Ophiuchus)銀河団」、および A2870、A3581、A3656の三つの銀河団は、ラニアケア超銀河団に含まれる個別の銀河団である。一方、「シャプレイ(Shapley)銀河団」、「ヘルクレス座(Hercules)銀河団」、「かみのけ座(Coma)銀河団」、および「ペルセウス座(Perseus)-うお座(Pisces)銀河団」はラニアケア超銀河団の外の集団である。外側の黒い円は、解析において、局所的な流れと、解析領域のスケールを超える大規模構造による流れを分けた境界を示す。二つの図は同じものを二つの方向から見たものである。
図2はラニアケア超銀河団を超銀河座標の(SGX, SGY)平面に投影した図である。色は銀河の密度に対応しており、赤から青へと密度が低くなる。赤方偏移カタログにある個々の銀河は白い点で表されている。ラニアケア盆地(Laniakea basin)に流入する流線は白色で描かれている。オレンジ色の等高線はこれらの流線の存在する領域の境界を示している。この領域は、後退速度にして約12,000 km s-1(約160 Mpc=5.2億光年)の広がりを持ち、太陽質量の約1017倍の質量を含んでいる。
図3は、ラニアケア超銀河団を含む16,000 km s-1 (約200 Mpc=6.5億光年)にわたる領域の大規模構造(=密度分布)を描いた図である。物質密度の等高面が三色で示されている。密度分布は観測データの多い中心部では細かな構造まで描かれているが、観測データの少ない外側に行くにつれて、一様な宇宙の平均密度に近づいてゆく。しかしながら、黒い細線で描かれている流線はかなり外側まで描かれている。すべての流れは結局シャプレイ銀河団に吸い込まれてゆく。ペルセウス座(Perseus)-うお座(Pisces)領域からの流れは十分なデータのないうさぎ座(Lepus)領域を通る円弧状のルートを経由している。
発見論文:https://www.nature.com/articles/nature13674 (open access)
タリー達のグループのプロジェクト'Cosmic Flows'のホームページ:
https://www.ip2i.in2p3.fr/projet/cosmicflows/


ラニアケア超銀河団の発見論文に附随している解説動画(英語;字幕なし)
Tully, R. B. et al., 2014, Nature, 513, 71 (open access)

https://youtu.be/rENyyRwxpHo


ラニアケア超銀河団の解説動画(英語解説字幕のみ)

https://youtu.be/Hbt9TF2Z-Kc

2030年前後の打ち上げを目指して、日本、ヨーロッパ各国、カナダ、アメリカなどが共同で開発を進めていた宇宙赤外線望遠鏡。Space Infrared Telescope for Cosmology and Astrophysics(宇宙論と天体物理学のための宇宙赤外線望遠鏡)の頭文字を取ってこの名前がついている。全体を絶対温度8 K(-265℃)に冷却した口径2.5 mの赤外線望遠鏡に中間赤外線から遠赤外線まで観測できる装置を搭載して、地球-太陽系のラグランジュ点L2(地球からの距離150万km)周辺の軌道に、日本のH3ロケットで投入される予定であった。

ESAJAXA/ISASによる国際共同ミッションとして、ESAがプロジェクト全体を取りまとめて望遠鏡やサービスモジュールを開発、日本ではISASを中心に、主にペイロードモジュール、冷凍機、中間赤外線観測装置を開発する予定で、日本は戦略的中型計画相当の300億円、ESAは「コスミック・ビジョン」中型ミッション相当の5億5千万ユーロを、それぞれ分担する見込みであった。しかし、2020年7月にESA側のコスト超過が発覚したことから計画全体の見直しが検討され、紆余曲折を経て同年10月、SPICAをESAの中型ミッション5号機選定候補から取り下げる、という決定が下された。

参考:https://www.isas.jaxa.jp/topics/002469.html

ホームページ:http://www.ir.isas.jaxa.jp/SPICA/SPICA_HP/index.html

 

ユークリッド衛星を参照。

ヨーロッパ宇宙機関(ESA)とユークリッド・コンソーシャムが共同で開発した広域サーベイ観測用の衛星。宇宙膨張の歴史と宇宙の大規模構造の形成過程を詳しく調べ、ダークマターダークエネルギーの性質を解明することを目的としている。広視野赤外線サーベイ望遠鏡であるローマン宇宙望遠鏡(旧称:WFIRST)と同じく、ラグランジュ点L2を周回するハロー軌道で観測を行う。

ユークリッド衛星は口径1.2 mの望遠鏡で、可視光(550-900 nm)と近赤外線(900-2000 nm)で全天の1/3以上にあたる約15000平方度を6年間でカバーし、赤方偏移 z~2(約100億光年昔)までの10億個以上の銀河を観測しその空間分布を描き出す(宇宙地図を作成する)。この広域サーベイ(Euclid Wide Survey:EWS)の限界等級は、可視光で26.2等、近赤外で約24.5等である。EWSに加えて、さらに暗い天体まで観測するユークリッド・ディープ・フィールド計画もある。

ユークリッド衛星の観測装置は二つである。可視光カメラ(visible-light camera:VIS)は0.7x0.7度の視野を36個の4kx4k CCD素子でカバーする。限られた時間でできるだけ暗い天体まで捉えるために、観測波長域550-900 nmを一つのバンドとした「白黒画像」を撮影する(限界等級25等)。空間分解能(解像度)が0.1秒と極めて高いので、弱い重力レンズ効果の観測にも威力を発揮する。EWSと連携する可視光の多波長でのサーベイ(白黒画像に色をつける)観測は、すばる望遠鏡を含む複数の地上望遠鏡で行われる。近赤外分光測光器(near-infrared spectrometer and photometer: NISP)は、VISとほぼ同じ視野を16個の2kx2k近赤外線素子でカバーする。観測波長帯を三つのバンド、Y (900-1192 nm)、J (1192-1544 nm)、H (1544-2000 nm)で撮像観測するほか、グリズムによる波長1100-2000 nmの低分散スペクトル(波長分解能 R=250)を取得することもできる。空間分解能は0.3秒である。

ユークリッド衛星は日本時間2023年7月2日(アメリカ時間7月1日)、アメリカのフロリダ州ケープカナベラル宇宙軍基地から米スペースX社の「ファルコン9」ロケットで打ち上げられた。
ホームページ: https://www.euclid-ec.org/
ESAのページ:https://sci.esa.int/web/euclid/-/42266-summary


ユークリッド衛星の最初の観測成果の紹介

https://www.youtube.com/embed/86ZCsUfgLRQ?si=83gYDSgCKBaQ2pKZ"

decadal surveyを参照。

アメリカ航空宇宙局(NASA)が2027年までに打ち上げを予定している次世代の広視野赤外線望遠鏡。2010年のディケイダルサーベイ(decadal survey)で大型衛星計画では第1位に位置づけられた。NASAは2020年5月に、NASAの初代主任天文学者であるナンシー・グレース・ローマン(Nancy Grace Roman: 1925-2018)を記念して、この望遠鏡をナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡(略称 ローマン宇宙望遠鏡)と名付けると発表した。それまでは、Wide Field Infrared Survey Telescopeの頭文字を取ってWFIRSTと略称されていた。

主鏡の口径はハッブル宇宙望遠鏡と同じ2.4 mであり、月軌道の外側で地球から月の裏側約150万kmの距離にあるラグランジュ点L2から可視光近赤外線(波長0.48-2μm)で宇宙の広域サーベイ観測を行う。主要研究分野は、ダークエネルギー太陽系外惑星であるが、観測時間の25%は公募観測に当てられる。ダークエネルギーの研究では、バリオン音響振動測定、弱い重力レンズ効果測定、Ia型超新星赤方偏移空間の歪みの観測から宇宙の加速膨張の歴史、構造形成史を調べ、その原因がダークエネルギーなのかそれとも一般相対性理論の修正が必要になるのかを明らかにする。太陽系外惑星は重力マイクロレンズ法直接撮像法で検出する。

主力となる観測装置は広視野カメラ(Wide Field Instrument: WFI)で、焦点面にH4RG-10(4kx4k 画素, 10μm/画素の赤外線撮像素子)を18素子並べて、ハッブル宇宙望遠鏡とほぼ同じ分解能で約100倍広い0.28平方度の空をカバーする。グリズムによる低分散分光機能も有している。計画されている2000平方度の深い近赤外サーベイからは、赤方偏移zが8を超える宇宙初期の銀河が多数発見されると期待されている。もう一つの装置は、太陽系外惑星の直接観測に必須のステラーコロナグラフである。

日本グループは、ステラーコロナグラフ装置のコンポーネント提供、地上局支援、すばる望遠鏡および地上近赤外線マイクロレンズ探査専用望遠鏡による連携観測などを基に、技術面と科学面からローマン宇宙望遠鏡プロジェクトに参加・貢献を行っている。
ホームページ:
https://www.nasa.gov/content/goddard/nancy-grace-roman-space-telescope
NASAのプレスリリース
https://www.nasa.gov/press-release/nasa-telescope-named-for-mother-of-hubble-nancy-grace-roman


ローマン宇宙望遠鏡の組み立ての様子(2024年)。

https://www.youtube.com/embed/HZ_knAEx9xg?si=L38hVu3FNCfDfHSr"


ローマン宇宙望遠鏡のステラーコロナグラフの解説動画。

https://www.youtube.com/embed/_1zfz-OEKH8?si=0PSSqFlBfp19ajHT"


ローマン宇宙望遠鏡とその観測装置などを紹介する動画(2022年)

https://www.youtube.com/embed/W805TLOhVVE?si=8_iR0h-D687Jl9_v"

正式名称は、The astronomy and astrophysics decadal survey(天文学・天体物理学の10年毎調査:ディケイダル・サーベイと略称される)である。全米アカデミーズの物理学・天文学部会(Board of Physics and Astronomy)と宇宙科学部会(Space Studies Board)が協力してほぼ10年に一度行う大規模な調査研究である。その目的は、この研究分野の過去と現状を踏まえて、次の10年間にこの分野が向かうべき方向について研究者間で合意された勧告を出すことである。委員会は、研究者コミュニテイからの意見を聞いて、全米科学アカデミー、NASA、アメリカ国立科学財団(NSF)、およびアメリカ合衆国エネルギー省(DOE)の間で合意された業務指示書に従って勧告を作成する。勧告では次の10年間に行うべき大規模計画の選定と順位付けが行われる。勧告は大部の報告書にまとめられ印刷して広く周知される。
1964年の第1回サーベイ以来これまでに6回のサーベイとその執行が行われ、2021年10月にはAstro2020の結果が公表された。資金提供組織と研究者コミュニテイの間で作成されるこの勧告の持つ影響力は大きく、優先順位でトップクラスに位置づけられた計画のほとんどが実現している。
Astro2020のホームページ: https://sites.nationalacademies.org/DEPS/astro2020/index.htm
Astro2020:https://www.nationalacademies.org/our-work/decadal-survey-on-astronomy-and-astrophysics-2020-astro2020
Astro2010:https://science.nasa.gov/astrophysics/special-events/astro2010-astronomy-and-astrophysics-decadal-survey
過去の情報:https://en.wikipedia.org/wiki/Astronomy_and_Astrophysics_Decadal_Survey

 

オールトの雲と同じ。

木星軌道の内側で、小惑星帯(メインベルト)の外側部分にあって、木星と2:3の軌道共鳴状態にある小惑星。このため、ヒルダ群の天体は、太陽を挟んで木星の反対側(木星-太陽-ヒルダ群の角度が180度)か、木星より約60度前か後(木星-太陽-ヒルダ群の角度が±60度)のいずれかの位置で遠日点を通過する。2019年までに約4000個が見つかっている。名前は小惑星ヒルダ(153) Hildaに由来する。

中心天体の周りを公転する二つの天体が互いに重力を及ぼし合う結果、両者の軌道が変化すること。軌道共鳴により軌道は安定化する場合もあるが不安定になる場合もある。
公転周期の時間スケールで影響する平均運動共鳴と、それよりも遥かに長い時間スケールで影響する永年共鳴がある。

持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)を参照。

持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)を参照。

2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されている、持続可能な世界を実現するための国際目標。国連加盟193か国が2016年-2030年の15年間で達成することを目指している。英語の頭文字をとってSDGs(エスディージーズ)と呼ばれることが多い。
アジェンダの「前文」は次のように始まる。「このアジェンダは、人類、地球そして繁栄のための行動計画である。これはまた、より大きな自由の下で世界がより平和になることを追求するものである。極端なものは言うまでもなくあらゆる形態と規模の貧困を撲滅することが、世界最大の課題でありかつ持続可能な開発のための不可欠な必要条件であると我々は認識する。」続いて、キーワードとして、人間(People)、地球(Planet)、繁栄(Prosperity)、平和(Peace)、連帯(Partnership)の「5つのP」が掲げられている。さらに解説に続いて掲げられる、地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)持続可能な世界を実現するための17のゴールとそれらの下にある169のターゲットがSDGsである。SDGsは人類の生活のすべての分野に関わっている。国と民間を問わず社会のあらゆる組織と個人が、関連する分野のSDGsをそれぞれのレベルで実現することが強く求められている。
国際天文学連合(IAU)が2018年のウィーン総会で採択した「戦略計画2020-2030」でもその実現に向けた目標が設定されている。この戦略計画では5つの目標の下に8つの活動分野を設けているが、その活動分野の一つが「天文学の利用による世界の発展の促進」である。そこでは、SDGsの少なくとも半分のターゲットに対して相当な貢献をすることが謳われている。
SDGsを掲載している外務省ウエッブサイト:
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/000101401.pdf (英文本文)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/000101402.pdf (日本語仮訳)
IAU戦略計画2020-2030:
https://www.iau.org/administration/about/strategic_plan/ (英文原版:日本語版)
https://tenkyo.net/activity/iau-publications/iau_strategic_2019_jp/(日本語版)

アングロオーストラリア望遠鏡を参照。