スノーラインを参照。
半径が2地球半径以下で1.25地球半径以上の小型の太陽系外惑星を指すことが多い。質量では、約10地球質量以下、約1地球質量以上に対応する。太陽系には存在しない種類の惑星であるが、地球型惑星の形成過程と惑星の軌道移動の関係の理解に繋がるとともに、惑星大気の有無や組成という観点から生命居住可能な惑星環境を議論する上でも重要な天体となっている。2021年現在で約980個のスーパーアースが報告されている。
太陽系外惑星、特に、直接観測で発見された巨大惑星の成因を説明するモデルの一つ。恒星や褐色矮星のように、超低質量コアが重力収縮し、孤立した超低質量天体を形成する場合に相当する。この場合、初期状態のエントロピーは高い。これは星周円盤において重力不安定性により一気に巨大惑星が形成されることに対応する(重力不安定性モデル)。これまで直接撮像法により発見された太陽系外惑星はホットスタートモデルに合致している。
太陽系外惑星、特に、直接観測で発見された巨大惑星の成因に関する議論に用いられるモデルの一つ。標準的な惑星形成理論では微惑星が先に形成され、ガス降着を経て巨大惑星が形成される。この、いわゆるコア集積モデルでは、初期状態のエントロピーは低く、ガス降着時の短い時間の間だけ光度が上昇する。そのため平均的な光度進化は平坦で、ホットスタートモデルのような比較的高い光度から減少してゆくという進化を示さず、コールドスタートモデルと呼ばれる。
太陽系の惑星は、その自転軸と公転軸がなす角度は約10 度以内で一致する。また、標準的な惑星形成モデルによれば、恒星の自転軸と惑星の公転軸は一致し、かつ、同じ向きを持つと考えられる。この角度を天球上に射影した角度は、ロシター-マクローリン効果によって測定できる。トランジット時(トランジット法を参照)には惑星が恒星の一部を隠すため、その部分の恒星の自転の効果がスペクトルに現れるからである。最初にロシターーマクローリン効果が観測されたHD209458の観測では、その惑星は順行していることが示された。しかし、HAT-P-7b については、2009年の成田憲保ほか、Joshua Winnほかによる独立な観測で、この角度が約180度、すなわち公転面が自転軸にほぼ垂直で、自転と逆向きに公転している(逆行している)太陽系外惑星であることが発見された。また、順行でも逆行でもない傾いた軌道を持つ惑星も多数発見されている。逆行惑星や傾いた惑星は、複数の惑星系同士の相互作用などによる軌道変化で形成されたと考えられている。
アメリカ航空宇宙局(NASA)のケプラー衛星が発見した太陽系外惑星のこと。一般に、トランジット法による太陽系外惑星の検出では偽陽性である場合も含まれるので、追加観測などによる確認が必要である。ケプラー衛星が発見した惑星候補は遠方にあるものが多い。そのため、確認済みケプラー惑星と惑星候補に分かれており、それぞれ約2700個と2100個(合計約4800個)が報告されている。
ガス吸収セルあるいはガス吸収フィルターとも呼ばれる。高分散分光器を用いたドップラー法による太陽系外惑星の検出では、波長を高精度で測定する必要がある。恒星のスペクトルと、同じ経路に置かれた特定のガスのスペクトルとを同時に比較することによって波長を校正し、波長シフトの測定精度を向上することができる。地球大気の吸収線を用いた波長校正よりも大気変動の影響は大きく抑えられる。また、大気揺らぎが分光器に及ぼす星像の形の変化なども抑えられる。
太陽系外惑星検出用のガスセルは、カナダのキャンベル(Bruce Campbell)とウォーカー(Gordon Walker)が開発したもので、これによってドップラー法の太陽系外惑星観測が初めて実用的なレベル(約13 m/s)に達した。彼らはフッ化水素 HF(Hydrogen Fluoride)を用いたが、これは有毒で扱いにくく、使用波長範囲や長い透過長が必要なことなど問題点が多かった。その欠点を補う形で使われたのがヨードセルである(ヨードはヨウ素 -元素記号I- の一般名称)。ヨードセルは室温で使え、10-20 cm の透過長でも十分な吸収線が見える。ヨウ素ガス(I2ガス)はセルを溶かさず、有害でもなく、圧力シフトも小さい。gasこれらの理由で、HF セルは現在では使われず、I2セルが可視光校正法のひとつの主流となっており、ガスセル法自体もヨードセル法と呼ばれることが多い。
軌道離心率が大きい太陽系外惑星。偏心軌道惑星ともいう。太陽系内の惑星は、水星を除きほぼ円軌道(離心率が0.1以下)をもつ。一方、太陽系外惑星の軌道の離心率は0.1以上のものも多数あり、最大のものは0.9以上にも達する。このように、軌道離心率の観点でも太陽系外惑星は多様で、太陽系内惑星で馴染み深い円軌道ではない「偏心した」軌道をもつ惑星は「風変りな」惑星に見えるため、両方の意味をかけてエキセントリックプラネットと呼ばれる。
トランジット時間変動のこと。
Transit Timing Variationsの略語で、ティー・ティー・ブイと呼ばれる。トランジットを起こす惑星系では周期的に主星の減光が見られるが、もしこの系に別の未検出の惑星がある場合、それらの惑星同士の重力相互作用によりトランジットの周期に変動が生じる。この効果がTTVであり、時間変化を利用して第2、第3など他の惑星を検出する手段としても使われている。トランジット法も参照。
すばる望遠鏡に搭載された高コントラストカメラHiCIAOと補償光学系AO188を用いた直接撮像法による太陽系外惑星および星周円盤の探査プロジェクトのこと。Strategic Explorations of Exoplanets and Disks with the Subaru Telescopeの略語で、シーズと呼ぶ。従来の太陽系外惑星の探査は、主星と惑星を分離して撮像しない間接法が主たる方法であった。一方、SEEDSでは直接撮像観測により巨大系外惑星や円盤を探査した。すばる望遠鏡第1回戦略枠プロジェクトとして2009ー2015年の期間に120夜の集中サーベイ観測を完了した。当時までの同種のサーベイの中でも最も野心的な観測である。
SEEDSでは、とりわけ年齢10億年未満の太陽型恒星とそれより重い恒星の探査に集中した。さらに、遠方惑星の形成原因となりうる円盤微細構造を描くために、円盤を伴うような非常に若い恒星も観測対象とした。近傍星(NS)、ムービンググループ(MG)、残骸円盤(DD)、星形成領域(YSO)、散開星団(OC)などのカテゴリに分かれており、それぞれのカテゴリで約100個の天体がリストされ、合計約500天体の惑星・円盤探査を行った。
SEEDSプロジェクトは、日本主導のプロジェクトであるが、プリンストン大学やマックスプランク天文学研究所など1/3は海外メンバーであり、広範な国際協力の下に推進された。メンバーは最大時には120名に達した。
SEEDSは4つの巨大惑星あるいはその候補の直接撮像に成功した(GJ504b、アンドロメダ座カッパ星b、GJ758b、HD100546b)。巨大惑星の統計について、10ー100 auに5ー70木星質量の天体がある確率は約2%と推定された。これ以外にも、プレアデス星団における褐色矮星の撮像、逆行惑星の原因となる伴星の直接撮像による発見、ドップラー法の長期トレンドの原因となる伴星の発見など数多くの結果が得られた。
さらに、30個程度の円盤の詳細構造を0.1秒角以下の高解像度で解明した。とりわけ、太陽系サイズの渦巻腕を伴う原始惑星系円盤を複数発見したこと(SAO206462、MWC758など)や、ギャップ構造を持つ多数の円盤を最初に撮像したこと(LkCa15、PDS70など)、残骸円盤の詳細構造を解明したこと(HR4796Aなど)は高く評価されている。
すばる望遠鏡のためのコロナグラフ超補償光学系。Subaru Coronagraphic Extreme Adaptive Opticsの略語で、スケックス・エーオーと呼ぶ。SCExAOは、口径8.2mのすばる望遠鏡と補償光学装置AO188により得られるシャープな星像をさらに改善し、星の光のほとんどを中心部分に集中させる。そのために、表面の形を変えることができる2000素子の鏡(可変形鏡)が、毎秒2000回もその形状を変えつつ光の波面の歪を補正する。さらに、整形された星像の中心の明るい部分のみをコロナグラフというマスクで隠し、惑星からの暗い光はそのまま保つ。最後に、近赤外線面分光器CHARISが惑星からの光をいくつかの波長に分けつつ同時に検出器に集める。
通常の大型望遠鏡の観測装置と異なり、SCExAOはさまざまな装置と組み合わせることでその機能を向上できる設計で、CHARIS以外にも、VAMPIRESと呼ばれる可視光高解像度(0.01秒角)偏光装置、MKIDと呼ばれる撮像分光カメラ、MECと呼ばれる超伝導体共振器カメラ、光渦を利用したコロナグラフなどのハードウエアや、新しい制御アルゴリズムなどのソフトウエアが随時更新されている。実際の望遠鏡を用いた機能試験を伴う装置開発は重要であり、次世代超大型望遠鏡であるTMT(30m望遠鏡)のための太陽系外惑星撮像装置PSIという、さらに野心的な観測装置の開発に活かすことができる。
InfraRed Doppler instrumentの略語で、アイ・アール・ディーと呼ばれる。すばる望遠鏡用に開発された、恒星の視線速度を2メートル毎秒という非常に高い精度でドップラー効果を利用して測定し、地球型の軽い太陽系外惑星を発見することを目的とする観測装置。波長0.97ー1.75 μmの近赤外線波長で天体の光を約7万色に分解してスペクトルを測定できる。2048x2048素子のHgCdTe赤外線アレイ検出器を2基使用し、エシェル型回折格子で高分散された上記の波長帯のスペクトルを一度に取得できる(エシェル分光器も参照)。
図のように、すばる望遠鏡のナスミス焦点において、補償光学系で地球大気による乱れを取り除いたあと、星の光を光ファイバーに入射する。光ファイバーはクーデ室と呼ばれる望遠鏡ドームの地下室に設置された分光器に接続されている。天体の光と同時に、レーザー周波数コムと呼ばれる波長の基準となる光源のスペクトルも同時に測定し、恒星の視線速度を高精度に測定する。アストロバイオロジーセンター、国立天文台、東京大学、東京農工大学などを中心に開発された。2018年にすばる望遠鏡における試験観測に成功し、現在は赤色矮星まわりに地球型惑星を発見するための大規模サーベイ観測を行っているほか、一般共同利用に提供され、テス衛星による太陽系外惑星のフォローアップ観測など多彩なサイエンスに用いられている。
High Contrast Instrument for the Subaru next generation Adaptive Opticsの略語で、ハイチャオと呼ばれる。すばる望遠鏡用の2代目コロナグラフであり、同じく2代目補償光学系AO188に適合するように波長約 1 μmで最適化されている。2048x2048素子のHgCdTe赤外線アレイ検出器とASIC読み出し装置を備え、波長約0.85ー2.5 μmの近赤外線波長での様々な広帯域・狭帯域撮像の高解像度(約0.06秒角)観測の他、偏光観測も可能である。CIAOとの最大の違いは、異なる波長帯あるいは異なる偏光状態の同時撮像が可能であり、波長差分法あるいは偏光差分法を活かした観測ができる。また、天体の天球面上での視野回転に対し検出器上で瞳面が固定されるようにした角度差分法も利用できる。これらによって大気揺らぎに伴う星像の変化を最小限にし、明るい天体の影響によるノイズを低減して、中心天体のごく近傍の暗い天体を検出することが可能になった。国立天文台を中心に開発され、2008年に補償光学ありでファーストライトを迎えた。HiCIAOとAO188の組み合わせは、第一回すばる戦略枠プロジェクトSEEDSの主装置として約5年間120夜の観測をほぼ故障なしで遂行し、太陽系外惑星と原始惑星系円盤の直接撮像観測において数多くの先進的な科学的成果を挙げている(SEEDSの稿参照)。SEEDSプロジェクトの観測以外にも、すばる望遠鏡における共同利用観測装置として、M型星を回る太陽系外惑星の探査や超補償光学SCExAOの初期カメラとしても用いられた。
すばる望遠鏡の第一期共同利用観測装置のひとつ。Coronagraphic Imager with Adaptive Opticsの略語で、チャオと呼ばれる。すばる望遠鏡用の初代コロナグラフであり、8m級望遠鏡用の専用コロナグラフとしては最初のものである。惑星や円盤のような、明るい天体のすぐ近くにある暗い天体の観測に特化した観測装置(解析技術まで含む)をコロナグラフと呼ぶ(ステラーコロナグラフも参照)。すばる望遠鏡用の初代補償光学系AO36に適合するように波長約2 μmで最適化された。赤外線カメラに微小な遮光マスクやリオストップなどのコロナグラフ光学系が組み込まれており、コロナグラフ有り無しの観測が選択できる。1024x1024素子のInSb赤外線アレイ検出器を備え、波長約1ー5 μmの近赤外線波長での様々な広帯域・狭帯域撮像の高解像度(約0.1秒角弱)観測の他、偏光観測も可能である。国立天文台を中心に開発され、2000年に補償光学なしで、2001年に補償光学ありでファーストライトを迎えた。代表的な成果としては、ぎょしゃ座AB星の大きな渦巻腕を持つ円盤の発見、おうし座DH星の超低質量伴星の発見、がか座ベータ星の補償光学を用いたコロナグラフ偏光撮像の初観測などがある。
Coronagraphic High Angular Resolution Imaging Spectrographの略語で、カリスと呼ばれる。主に太陽系外惑星の撮像・分光のために開発された、すばる望遠鏡用の赤外線分光器。地球大気による星像の乱れを高次まで補正する超補償光学系(SCExAO)と共に用い、2秒角四方の視野面の約130x130点を同時に分光することができる面分光器である。2048x2048素子のHgCdTe赤外線アレイ検出器を備え、波長は約1.15 μmから2.37 μmをカバーし、波長分解能は約70と約18の2つのモードがある。プリンストン大学、国立天文台などが開発した。2016年にすばる望遠鏡に搭載され、ファーストライトを迎えた。初期成果および装置画像についてはSCExAOの稿を参照。
宇宙がどのような状態になって終わるかという理論的可能性の一つ。宇宙の加速膨張の度合が強い場合、やがては銀河も星もバラバラになり、原子も素粒子も引き裂かれ、時空自体が引き裂かれてしまうビッグリップが訪れて宇宙は死にいたる。
現在の観測データからは、ビッグクランチではなく、ビッグフリーズかビッグリップで宇宙が終わる可能性が高いと考えられている。フリードマン宇宙も参照。
宇宙がどのような状態になって終わるかという理論的可能性の一つ。ビッグチル(big chill)ということもある。現在のまま宇宙は永遠に加速膨張を続け、すべての銀河が孤立し、やがて星は燃え尽き、温度も物質密度も極限まで低下して宇宙は「熱的な死」に向かう。最後には、宇宙では新たな反応が起こらなくなり、冷たく真っ暗で何もない空間がただただ広がる死(ビッグフリーズ)を迎える。
現在の観測データからは、ビッグクランチではなく、ビッグフリーズかビッグリップで宇宙が終わる可能性が高いと考えられている。フリードマン宇宙も参照。
宇宙がどのような状態になって終わるかという理論的可能性の一つ。
宇宙は現在加速膨張しているが、やがて加速膨張の原因であるダークエネルギーより重力の効果がより強くなって加速膨張が終わり、宇宙は収縮に転じて最終的にビッグバンと同じ高密度状態に逆戻りする。これをビッグクランチと言う。
現在の観測データからは、宇宙がビッグクランチで終わる可能性はほとんどなく、ビッグフリーズかビッグリップのどちらかで終わる可能性が高いと考えられている。フリードマン宇宙も参照。
天王星と海王星を指す言葉。内惑星である水星、金星と地球、火星は地球型惑星、外惑星である木星、土星、天王星、海王星は木星型惑星と呼ばれている。太陽系探査が進むと、木星型惑星のうち、水素やヘリウムを主体としガス成分が多い木星と土星に対して、ガス成分が少なく水やメタンを含む天王星と海王星を天王星型惑星あるいは海王星型惑星として区別するようになった。水やメタンの氷があることからこれらは巨大氷惑星とも呼ばれる。冥王星は氷惑星と呼ばれていたが、2006年の国際天文学連合の「惑星の定義」決議により惑星ではなくなったので、性質の類似した氷衛星などを指す氷天体に含まれる。
