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HiCIAO

 

よみ方

はいちゃお

英 語

HiCIAO

説 明

High Contrast Instrument for the Subaru next generation Adaptive Opticsの略語で、ハイチャオと呼ばれる。すばる望遠鏡用の2代目コロナグラフであり、同じく2代目補償光学系AO188に適合するように波長約 1 μmで最適化されている。2048×2048素子のHgCdTe赤外線アレイ検出器とASIC読み出し装置を備え、波長約0.85ー2.5 μmの近赤外線波長での様々な広帯域・狭帯域撮像の高解像度(約0.06秒角)観測の他、偏光観測も可能である。CIAOとの最大の違いは、異なる波長帯あるいは異なる偏光状態の同時撮像が可能であり、波長差分法あるいは偏光差分法を活かした観測ができる。また、天体の天球面上での視野回転に対し検出器上で瞳面が固定されるようにした角度差分法も利用できる。これらによって大気揺らぎに伴う星像の変化を最小限にし、明るい天体の影響によるノイズを低減して、中心天体のごく近傍の暗い天体を検出することが可能になった。国立天文台を中心に開発され、2008年に補償光学ありでファーストライトを迎えた。HiCIAOとAO188の組み合わせは、第一回すばる戦略枠プロジェクトSEEDSの主装置として約5年間120夜の観測をほぼ故障なしで遂行し、太陽系外惑星原始惑星系円盤の直接撮像観測において数多くの先進的な科学的成果を挙げている(SEEDSの稿参照)。SEEDSプロジェクトの観測以外にも、すばる望遠鏡における共同利用観測装置として、M型星を回る太陽系外惑星の探査や超補償光学SCExAOの初期カメラとしても用いられた。

2022年01月23日更新

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    関連画像

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    すばる望遠鏡の赤外ナスミス焦点に設置されたHiCIAO。左が補償光学系AO188、紫色の部分が常温光学系、青色の真空冷却槽の中に低温光学系と赤外線検出器が内蔵されている。
    (画像提供:国立天文台・アストロバイオロジーセンター)