惑星大気
よみ方
わくせいたいき
英 語
planetary atmosphere
説 明
惑星周囲に重力で引きつけられている気体を大気と呼ぶ。気体成分が存在しても、天体質量が小さく重力が小さい場合、もしくは高温の場合は大気の保持は難しい。地球型惑星では、金星、地球、火星に顕著な大気が存在する。
金星、火星の大気の主成分は二酸化炭素であるが、地球では二酸化炭素が地殻に炭酸塩鉱物として固定されたため、大気の主成分は窒素と光合成で生まれた酸素である。火星の大気圧は地球の百分の1以下、金星の1万分の1以下で、過去に存在した厚い大気の大部分は宇宙空間に散逸したと考えられる。大気の存在により、天体表面付近の温度は安定し、さらに温室効果により温暖になる。地球での液体の水が安定であるという生命存在環境は、大気により維持されている。現在の地球では、大気中の水蒸気、二酸化炭素が、それぞれ温室効果の1/2、1/4を引き起こしている。土星の衛星タイタンには窒素を主成分とする厚い大気が存在する。タイタンのほか、海王星の衛星トリトン、冥王星にも希薄な窒素大気が存在することが確認されている。
木星型惑星では水素とヘリウムを主成分とするガスが表面付近では主成分である。典型的には圧力が10バール(bar)(=106 Pa)よりも外側の領域を大気と呼んでいる。木星では、アンモニア(NH3)、硫化水素アンモニウム(NH4SH)、水の氷(H2O)の雲層がある。土星にもアンモニアの雲が確認されている。天王星、海王星にはメタン(CH4)の雲が存在する。木星型惑星の大気は縞状構造に沿って主に東西方向に運動している。自転より速い西風が卓越する緯度帯と、自転より遅い東風が卓越する緯度帯が交互に現れる。
水星や月では、非常に希薄なナトリウム、カリウムの大気が存在する。これは太陽風のスパッタリングや紫外線の照射により表面から放出された原子からなるものである。最近の探査機による観測から月では水分子も脱着を繰り返して移動していることが明らかになっている。同様に、氷衛星エウロパ、ガニメデ周囲にもスパッタリングで生成された非常に薄い酸素大気が存在する。
(表)惑星大気の天体重量に占める割合と主成分(木星型惑星では揮発性成分の量を示している)
生駒大洋「木星型惑星の形成」、シリーズ現代の天文学第9巻、渡部他編「太陽系と惑星」6.4節 表6.1(日本評論社)
2023年04月18日更新
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