アーノ・A・ペンジアス(Arno A. Penzias; 1933-2024)はアメリカの天文学者、物理学者。宇宙マイクロ波背景放射の発見によってウィルソン(R.Wilson
ドイツのミュンヘンに生まれ、6歳の時にナチスによる迫害から逃
1964年、この高感度アンテナによる観測中に二人
参考:https://www.nobelprize.org/prizes/physics/1978/penzias/biographical/
プラネタリーバウンダリーを参照。
安定した環境を維持する地球で、人類が安全に活動できる範囲を科学的知見に基づいて定量化したもの。環境の変化に対して地球システムが持つ自然の回復力(レジリエンス)の限界にほぼ対応する。この限界内で人間活動が行われればそれは安全かつ持続的である。人間活動の影響がこの限界を超えると、地球は自然の回復力で元の状態には戻れず、不可逆的で壊滅的な変化が起きるとされている。英語のカタカナ読みが広く使われているが、日本語では「地球の限界」あるいは「惑星限界」が使われることもある。
プラネタリー・バウンダリーは、ストックホルム・レジリエンスセンターのロックストローム(Johan Rockström 1965 - ;現在はポツダム気候影響研究所所長)ら国際的に著名な28人の研究者による2009年の論文で提唱された概念である。論文はEcology & Society誌に掲載されたが要約はネイチャー(Nature)誌にも掲載され、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)の策定にも大きな影響を与えた。
ロックストロームらは2009年の論文で、生命維持に必要な地球環境を評価する9つのシステムを定義し、当時の科学的知見に基づいてそのうちの7システムについては以下のように限界値の定量化を行った。
(1) 気候変動
「大気中の二酸化炭素濃度が350 ppm以下」と「産業革命以来(1750年以降)の放射強制力(放射エネルギー収支)増加量が +1 W m-2以下」のどちらかあるいは両方。
(2) 海洋酸性化
地球全体の表層海水中のアラレ石(CaCO3)の飽和状態が産業革命以前の80%以上(酸性化が進むと値が低下する)。
(3) 成層圏のオゾン
全オゾン量の減少が産業革命以前の値(290ドブソン単位)の5%以内。
(4) 生物地球化学的循環
窒素(N)サイクルでは、工業と農業のための大気中の窒素固定を年間35(百万トン単位)以下。リン(P)サイクルでは、人工的な海洋への流入量が自然の風化によるレベルの10倍以下。
(5) 世界全体での淡水利用
年間4000 km3以下。
(6) 土地利用の変化
氷に覆われていない地表面積の農耕地への変換は15%以下。
(7) 生物多様性の損失速度
100万種あたりの年間絶滅種が10種以下。
残る以下の2システムについては定量的な限界値が求められなかった。
(8) 化学物質による汚染
(9) 大気中のエアロゾル
この論文は大きな反響を呼び、以後多くの研究が行われるようになった。プラネタリー・バウンダリーの概念と地球環境の現状を表したものが図1である。これ以外にも異なる時点のデータに基づくさまざまなバリエーションが存在する。ストックホルムのレジリエンス・センターが作成した2009年、2015年、2023年の図を並べたものが経年変化が見やすいのでそれを図2に示す。2009年では7つのシステムが評価され、3つのシステムで限界値がすでに越えられたと判定されたが、2015年にはそれが1つ増えて4つのシステムで限界値が越えられ、9つのシステム全てが評価された2023年には6つのシステムで限界値が越えられた。
過去100万年の間に地球では氷期と間氷期が約10万年周期で繰り返されてきた(ミランコビッチサイクルを参照)。現在は直近の氷期が終わった後、今から約1万2000年昔に始まった間氷期にある。この期間は暖かく比較的安定した気候で、地質時代としては完新世(Holocene)と呼ばれている(図3)。人類は完新世の中で繁栄を築いてきたが、地球温暖化に見られるようにその活動が地球環境に大きな影響を与えるまでになってきた。プラネタリー・バウンダリーの多くのシステムで限界値が越えられて不安定な領域から高リスク領域に進むと、地球環境に不可逆的な変化が短期間に起き、完新世の終わりにつながることになるかもしれない。
参考サイト
ストックホルム・レジリエンスセンター
https://www.stockholmresilience.org/
ポツダム気候影響研究所
https://www.pik-potsdam.de/en
環境省解説資料
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h30/pdf/1_1.pdf
放射性元素の放射性崩壊を利用して親元素と娘元素の比から岩石や化石などの年代を測定すること。この方法で測定した年代は放射年代と呼ばれる。
対象とする親元素がある測定対象に固定されて移動しなくなった出発時点(たとえば生物が死んだときや鉱物が結晶化したとき)から、親元素の娘元素に対する比は対象の中で減少し続ける。推定したい時間の長さに適した半減期を持つ放射性元素を利用して、出発点から現在までの経過時間を推定することができる。炭素(14C)から窒素(14N)への崩壊(半減期約5730年)やカリウム(40K)からアルゴン(40Ar)への崩壊(半減期約12.8億年)などがよく用いられる。前者は放射性炭素年代測定と呼ばれ、地層中から出土した有機物などに広く適用されている。
恒星内部での対流は、放射でエネルギーが運ばれるのに必要な温度勾配(放射温度勾配∇rad)が断熱温度勾配(∇ad)よりも大きい時(∇rad > ∇ad)に起こる。恒星内部構造のモデルを計算する際、対流-放射層境界を、∇rad = ∇ad の場所(球殻)に設定するのが最も単純であるが、∇rad = ∇ad の位置は、流れの加速度がゼロとなる地点で、流れが止まる場所ではないので、実際の対流層境界はそこからある程度放射層に入り込んだ場所であることが想像できる。この現象が対流オーバーシューティング(convective-overshooting)である。この距離を理論的に知ることは困難なので、その場所での圧力変化スケール長(pressure-scale-length)の~10%くらいの距離のオーバーシューティングがあることを仮定することが多い。実際には、オーバーシューティングは時間的にも場所的にも定常的ではない。例えば、対流核の境界では大きな対流渦の運動により境界が歪められ、その時間変化により内部重力波(IGW)が発生する。それは恒星表面まで伝播し振幅の非常に小さい不規則な変光を生じる。それらは、TESS衛星による精密な測光観測により、大質量主系列星で観測されている。
高い運動エネルギーを持つ粒子の流れと高エネルギー(数百keV以上)の電磁波の総称。「粒子の流れ」と「電磁波」という異なる種類のものが同じ放射線という名前で呼ばれていることに注意が必要である。
放射線は自然界に存在するので、大昔から人間は放射線に取りまかれた環境で生きてきた。しかし、特別な場合をのぞき放射線は人体で直接感じることができないため、放射線の存在は19世紀末まで人類に知られていなかった。20世紀になって急速に研究が進み、現在では人工的に発生させた放射線が社会のいろいろな場面で利用されるまでになった。放射線は物質を透過する力が強く、透過する際に物質中の原子と相互作用して原子を電離あるいは励起する。このため放射線は生物にとって有害である。放射線を浴びる量が多くなると人体にもさまざまな悪影響が生じ、多量に浴びると死に到る。
放射線は主に放射性元素の原子核から放射される。自然界にある元素の原子核は陽子と中性子(まとめて核子と呼ぶ)からできている。核子の総数は質量数と呼ばれる。原子核中の陽子の数(原子番号)が同じ(すなわち同じ元素)でも中性子数が異なる原子核がありそれを同位体(アイソトープ)あるいは同位元素と呼ぶ。同位体は同じ元素として周期表では同じ位置を占める。同位体の原子核を一つずつ区別する用語が核種である(核図表も参照)。原子核中の陽子と中性子の数のバランスが悪いと不安定になり、ある時間がたつと自発的に放射線を出して別の核種になるものがある。これが放射性元素である。そのような同位体を指すときは放射性同位体(ラジオアイソトープ)ともいう。原子核が放射線を出して別の核種に変わることを放射性崩壊(あるいは壊変)という。一般には、「放射性物質(放射性元素だけでなくそれを含む物質全体を指すこともある)から放射線が出る」と表現されることも多い。放射性元素が放射線を出す性質を放射能と呼ぶが、日常では、「放射線が出ている」ことを「放射能がある」と言うなど、「放射能」はいろいろな使われ方をしている(図1)。
粒子の流れである放射線(粒子線ともいう)には、アルファ($\alpha$)線、ベータ($\beta$)線、中性子線、陽子線、重粒子線などがある。アルファ線の粒子は陽子2個と中性子2個からなるヘリウムの原子核(アルファ粒子ともいう)で、ベータ線の粒子は電子である。中性子線と陽子線の粒子はその名の通り陽子と中性子である。重粒子線の粒子はヘリウムより重い(一般に炭素より重い)原子の原子核である。一方放射線に分類される電磁波は、エネルギーの高いガンマ($\gamma$)線とX線である(図2)。
アルファ、ベータ、ガンマの名前はイギリスの物理学者ラザフォード(E. Rutherford, 1871-1937)による。彼は1898年にウランやトリウムなどから2種類の放射線が出ていることを発見し、それらをアルファ線、ベータ線と名付けた。1900年にはフランスの化学・物理学者ビラール(P.Villard,1860-1934)が透過力の高い3番目の放射線を発見し、これをラザフォードがガンマ線と名付けた。X線はそれらより前の1895年にドイツの物理学者レントゲン(W. Röntgen, 1845-1923)が発見し、正体不明だったのでX線と命名した。アルファ線、ベータ線、ガンマ線は放射線の主要なものである。
アルファ線を放射するアルファ崩壊(アルファ壊変)は、放射性元素のなかでもウランやラジウムなど、原子核中の核子の数が多い重い元素でおきる。陽子2個と中性子2個からなるアルファ粒子を放射するので、原子核は崩壊後に原子番号が2、質量数が4ほど小さな原子核に変化する(図3)。ベータ崩壊では、原子核中の中性子1個が陽子に変わりそのときに高速電子(ベータ線)とニュートリノが放射される。ベータ崩壊では、原子核の質量数は変わらず原子番号が1つ大きな原子核に変化する(陽子1個が陽電子を放射して中性子に変わるベータプラス崩壊では、原子番号が1つ小さな原子核になる)。ガンマ線は、アルファ崩壊やベータ崩壊直後に励起状態になった原子核が安定状態になるときに放射される(図3)。
放射線の透過力はさまざまである(図4)。主な放射線の中ではアルファ線が最も透過力が弱く、大気中で10 cm 程度(人体内で数10 μm程度)までしか進めない(物質中の原子核との相互作用でエネルギーを失う)。アルファ線は紙1枚で遮蔽することができる。ベータ線は大気中で数 m程度(体内で数mm程度)進むが、薄いアルミ板程度で遮蔽できる。ガンマ線は大気中で数10 m以上(体内で数cm以上)進むことができ、鉛や鉄の板でないと遮蔽できない。中性子線は電荷を持たないので物質との相互作用が他の放射線と異なり、鉛や鉄の板では遮蔽できない。遮蔽には水素を多く含む水やコンクリートが有効である。
放射線には私たちの身の回りに存在する自然放射線と人工的に作られる人工放射線がある。自然放射線には、宇宙から降り注ぐもの(宇宙線)、大地や岩石の中にある放射性元素から大気中に放射されるもの、食物の中に含まれる放射性元素から放射されるものなどがある。宇宙から地球大気に飛び込んでくる放射線(1次宇宙線)は主に陽子だが、それが地球大気の酸素や窒素の原子核と衝突して高エネルギーの原子核(重粒子)、ミューオン、電子、ガンマ線などの放射線(2次宇宙線)が発生する。大地に含まれるウラン(U)、トリウム(Th)などの放射性同位体からはガンマ線が出ている。図3のウラン系列中のラドン(Rn)は貴ガスとして大気中に存在する。土壌や食物に含まれるカリウム(K;原子番号19)には3種の放射性同位体(39K, 40K, 41K;左肩数字は質量数)がある。その割合は39Kが93%、40Kが0.012%、41Kが6.7%であるが、そのうち40Kのみが放射性同位体である。自然放射線を出す放射性元素は、呼吸や食物などを通じて人間の体に取り込まれる。カリウムは人間の体に欠かせない栄養素であり、体内に同位体3種全体で体重の0.2%程度含まれている。自然放射線の量は場所や地域によって異なる。
一方、人工放射線は人間が装置などによって人工的に作りだすもので、医療検診やCTなどで用いるX線、ガンマナイフ治療に用いるガンマ線、癌の治療に用いる重粒子線、研究用に加速器で作られるX線・陽子線・中性子線、原子炉から出る放射線などがある。これらは一般の環境に漏れ出ないように厳重な管理下で使用される。核実験を含む原子爆弾の爆発で発生する大量の放射線や、原子力発電所の事故で大気中に漏れ出す放射線も人工放射線である。1963年にアメリカ、イギリス、ソ連により部分的核実験禁止条約が締結されるまでは、大気中や海中での核実験が行われていた。大気中の核実験で発生した放射性元素は大気中に滞留して長期間放射線を出す。1963年以後も新たに核を保有した中国とフランスによる核実験が行われたが、大気中での核実験は1980年を最後になくなった。
放射性元素は核種毎に「寿命」がある。1つの原子に着目すると、その崩壊がいつ起きるかを予測することはできないが、莫大な数の原子全体に注目すれば、崩壊がどのように起きるかを統計的に調べることができる。例として放射性元素である窒素-16(16N)の原子100万個を考えよう(図5)。これから出る放射線(ベータ線)を測定すると約7秒でその量が半分になる。つまり、7秒で半分の50万個の16N原子が崩壊して安定な酸素-16(16O)原子に変わったことが分かる。さらに7秒経過すると、16N原子はさらに半分の25万個になる。このように、多数の放射性元素が次第に崩壊して元の数の半分に減る時間のことを半減期という。
半減期は放射性元素の種類によって決まっている。窒素-16の半減期は約7秒と短いが、ウラン-234(234U)は245,000年など、短いものから長いものまでさまざまである。2011年の東日本大震災による原子力発電所の事故に関連する放射性元素の半減期を図6に示す。ここで述べた半減期は図6では物理的半減期と記載されている。福島原発の汚染水処理で大きな問題となったトリチウム(三重水素;T)の半減期は12.3年である。半減期の長い放射性元素は、地球の歴史を知るための放射年代測定に用いられる。
放射線量を測定する主な単位はベクレルとシーベルトである(図7)。ベクレルは放射性元素の量を測る単位で、1秒間に1個原子核が放射性崩壊する量を1ベクレル(Bq)とする。人が放射線を浴びることを被曝(ひばく)とよぶ。被曝には、呼吸や飲食物によって体内に取り込んだ放射性元素による内部被曝と体外の放射線を直接浴びる外部被曝がある。シーベルト(Sv)は、被曝した放射線量を人体に対する影響として測る単位である。さまざまな放射線を浴びた場合は、浴びた線量に、それぞれの放射線の人体に対する影響を考慮した係数を掛けて積算して求める。
恒星内部では、放射によるエネルギー輸送に必要な温度勾配(放射温度勾配; ∇rad)が断熱的温度勾配(∇ad)よりも大きくなった時、静水圧平衡にある放射層が不安定となり、対流が起こる。対流はエネルギー輸送だけでなく、ガス混合も効率よく行うため、対流領域のほとんどの領域で元素組成が均一に保たれる。しかし、∇rad がガスの不透明度(opacity) $\kappa$ に比例し、$\kappa$ がガスの元素組成に依存することから、対流層内部と放射層との間で元素組成が異なる場合、単純な境界には物理的矛盾が生じることがある。その場合には、放射層と対流層の間に半対流(semiconvection)層が挟まれていると仮定される。半対流層内では混合が核融合のタイムスケールで非常にゆっくり起こり、∇rad = ∇ad となるように元素組成に勾配が形成されている考える。このような半対流は大質量主系列星の対流中心核、および中小質量星のヘリウム燃焼中心核(セファイドループ星、クランプ星、水平分枝星)の境界などで現れる。特に、ヘリウム燃焼核の場合は半対流によって、その外側のヘリウムが対流核内に取り込れて核燃焼に使われるので進化のタイムスケールが長くなる。
ELTを参照。
量子力学において、粒子が持つ固有のスピン角運動量の大きさを決定する量子数。フェルミ粒子では半整数(1/2, 3/2, …)、ボース粒子では整数(0, 1, …)である。スピン量子数は通常は記号 $s$ で表され、単にスピンの大きさという場合もある。換算プランク定数をかけると角運動量の次元になる。
磁気変光星とも呼ばれ、表面に1 kGから40 kG程度(kG=キロガウス=0.1テスラ)の強い磁場を持つ変光星である。磁場は、それらの星の進化のごく早い時期に形成された化石磁場と考えられているが、その形成過程はよく理解されていない。磁場は主に双極磁場で、その極軸は自転軸と傾いているため、観測される磁場の強さは自転周期で変化する。また、強い磁場の存在により、外層の乱流が抑えられるため、放射圧による元素の拡散が磁力線の影響のもとで起こる。そのため、ヘリウム(He)、ケイ素(Si)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、希土類元素、などが集積する層および表面領域ができ、化学特異星として観測される。そのような不均一な元素分布によって光の透過が均一でなくなるため、見える半球面で明るさが異なり、自転の周期で変光が観測される。自転周期は2日弱から10年以上の場合まである。そのような長周期の変光のほかに、比較的温度の低いA型星には、短周期(数分-20分)の変光が観測されるものもある。この短周期変動はpモード非動径振動に起因するもので、このような変光を示すA型特異星は roAp星(高速振動A型特異星)と呼ばれる。
プランク定数 $h$ を $2\pi$ で割った値を持つ物理定数($\pi$ は円周率)。記号 $\hbar$ (エイチバーと発音)で表す。すなわち、
$$\hbar\equiv\frac{h}{2\pi}=1.05457182....\times10^{-34}\,\,\, {\rm J・s}$$
換算プランク定数はディラック定数と呼ばれることもある。
OGLE(Optical Gravitational Lensing Experiment)は大マゼラン銀河、および、我々の銀河バルジの多くの星を長期間頻繁に測光することにより、中性子星、矮星、および太陽系外惑星によって起こされる重力レンズ現象を見つけるとともに、脈動、(惑)星食などで起こる変光を観測するプロゼクトである。1992年から現在まで、チリのラスカンパナスに設置されているワルシャワ大学の1.3m望遠鏡で観測が続けられている。
これまでに、数多くの太陽系外惑星、矮新星、脈動変光星、食連星が観測されるとともに、新しいタイプの脈動変光星グループである青色大振幅型変光星(BLAP;Blue Large Amplitude Pulsators)の存在を明らかにした。
ホームページ: https://ogle.astrouw.edu.pl
ルイス・ラザファード(Lewis Morris Rutherfurd;1816–1892)は、アメリカ合衆国の法律家・天文学者。ニューヨークに生まれ、マサチューセッツ州のウィリアムズ大学を卒業し、法律家としてニューヨークで開業した。1849年には弁護士をやめ、科学(特に天文学)の研究に転じ、分光研究と天文写真の分野の先駆者となった。研究のための装置、写真の測定につかうマイクロメーターや回折格子を刻む機械、写真観測に適した設計の望遠鏡などを開発した。
これらの装置をつかって、太陽や月や惑星や5等星までの恒星や星雲の質の高い天体写真を撮影した。1862年から分光観測を始め、恒星のスペクトルを使った分類法に注目、これらはセッキ(P. A. Secchi)らによって発展させられることになった。1863年に創立されたアメリカ芸術科学アカデミーの創立会員の一人であり、1873年ランフォード賞を受賞している。
トーマス・ライト(Thomas Wright;1711-1786)は、イギリスの天文学者、数学者。造園デザイナーでもあった。ダラム州バイアーズ・グリーンに生まれ、幼い頃言語に障害があったたため、自宅で教育を受けた。その後、ゲーツヘッドで数学と航海術を学び、1730年にサンダーランドに学校を設立した。海軍の有力者の知己を得てロンドンで、有力者の家の家庭教師や建築、造園の設計者として働いた。後に故郷に戻り、ウェスタートンに小さい天文観測所(Wright's observatory)を建設した。
1750年に出版した『宇宙の新理論 新仮説』(An original theory or new hypothesis of the universe)で、天の川は、恒星の多く集まっている平面の部分を中から見ていると述べている。星雲にも興味を持ち、別の銀河の存在を示唆した。後に星雲論を唱えるカント(I. Kant)に影響を与えた。
レイリー卿を参照。
レイリー卿、第3代レイリー男爵ジョン・ウィリアム・ストラット(John William Strutt, 3rd Baron Rayleigh;1842-1919)は、イギリスの物理学者。しばしばレイリー卿ストラットまたはレーリー卿とも記される。エセックス州のラングロード・グローブで生まれたが、幼少期は病弱で、勉学はたびたび中断された。ケンブリッジ大学のトリニティ・カレッジで数学を学んだ後、エセックス州の自邸、ターリング・プレイスで研究を始めた。1879年にケンブリッジ大学キャヴェンディッシュ研究所長、1887年に王立研究所教授、1905年王立協会会長となった。
古典物理学の広範な分野に業績があり、1871年に波長より十分小さい粒子による光の散乱を表す式を導いた(レイリー散乱)。回折格子にも興味を持ち、分解能に精密な定義(レイリーの解像限界)を与えて分光器の発展に貢献した。また1885年には表面を伝わる弾性波の一種であるレイリー波を発見、1892年大気分析の過程で未知の気体に気づき、1894年にウィリアム・ラムゼー(W. Ramsay)と共にその正体がアルゴンであることを突き止めた。1900年には黒体放射のエネルギーを与える式を古典物理学から導いたが、後年ジーンズ(J. Jeans)によって定数の誤りが訂正されたのでレイリー-ジーンズの法則と呼ばれている。この他にも流体力学(レイリー数)や流体界面での現象(レイリー-テイラー不安定)、毛細管現象の研究などがある。「気体の密度に関する研究、およびこの研究により成されたアルゴンの発見」により、1904年のノーベル物理学賞を受賞した。
半規則的変光星(semiregular variables)は長周期(数十〜数千日)の赤色巨星または赤色超巨星の脈動変光星で、それらの周期と光度曲線は不規則な変化を示す。半規則的変光星はさらに細分化されており、赤色巨星で、周期は安定しているが脈動振幅が周期ごとに大きく変化するSRa型、逆に周期が大きく変化するSRb型、赤色超巨星のSRc型(ベテルギウスなど)、さらに比較的温度の高いスペクトル型K,G,Fの超巨星変光星SRd型などに細分されている。
MACHO, OGLE(Optical Gravitational Lensing Experiment) の重力レンズ現象探査プロゼクトによる長期間の測光観測により、大マゼラン銀河(LMC)に多数の半規則的変光星が観測された。それらはA,B,C',C,D系列などと呼ばれる比較的幅の広い周期光度関係を持つことが知られている。このうちC系列は赤色(超)巨星の基本動径脈動系列で、ミラ型変光星に対応している。それよりも周期の長いD系列はLSP(long secondary periods)系列とも呼ばれ、基本脈動よりも長い周期の原因はよくわかっていない。
ヴィクトール・フランツ・ヘス(Victor Franz Hess;1883-1964)はオーストリア出身の物理学者。宇宙線の発見によってノーベル物理学賞を受賞した。
シュタイヤーマルク州ペガウ近郊で生まれ、1910年にグラーツ大学で学位を得た。ウィーン大学などで放射線の研究を行い、1912年に気球に乗って高度と放射線の強さの関係を測定、上空に行くほど放射線強度が増加することを見出して、放射線が宇宙起源であることを示した。この功績で1936年のノーベル物理学賞を受賞した。ちなみに、宇宙起源の放射線を「宇宙線」と名づけたのはロバート・ミリカン(Robert A. Millikan)である。
1925年にグラーツ大学の教授に、1931年にはインスブルック大学教授に任命され、新設された放射線学研究所の所長となったが、ナチスの台頭を嫌い、1938年にアメリカへ渡ってニューヨークのフォーダム大学の教授となった。1944年にアメリカの市民権を得(英語名はヴィクター・フランシス・ヘス;Victor Francis Hess)、1964年にニューヨークで没した。
デカルト(Rene Descartes;1596-1650)は近世哲学の祖といわれるフランスの哲学者、自然科学者。「近代哲学の父」とも称せられる。フランスの貴族の家に生まれ、1606年にイエズス会の学院に入りスコラ学を学んだ。一方で、啓蒙主義思想の影響を受け、数学を通じて合理的思想を育てた。1618年に学院を出て、三十年戦争に旧教派として従軍、その後ヨーロッパ各地を遍歴しながら自らの哲学を構築した。主にオランダで活動していたが、1650年にスウェーデン女王クリスティナに招かれて当地に赴き、そこで亡くなった。
デカルトは、哲学にも数学と同様な確実に証明できる原理があるべきだと考え、先入観を除いて思考を進めようとした。徹底的な懐疑から出発した結果、自己の存在は疑う余地がないとの結論に達し、「我思う故に我あり(cogito, ergo sum)」という有名な命題を得た。さらに、自然と人間精神を峻別し、自然現象を機械論的に対象化する二元論の立場をとった。真空を廃し、すべての空間には連続でいくらでも細かく分割できる微細物質が詰まっているとして、遠隔操作としての力を否定し、物体の運動の原理を、空間における渦動にあるとした。ロバート・フックはこの考え方を受け継ぎ、デカルトの宇宙に満ちている微細物質をエーテル(aether, ether)と呼び、光とはエーテルの中を伝わる振動であるとした。この運動論は後に否定されたが、彼の解析幾何を手法とする自然現象の探究と、二元論的な認識法は、近代科学の指導的原理となった。著書に『世界論』(宇宙論)Le Monde、『方法序説』Discours de la méthode、『情念論』Les passions de l'ameなどがある。
なお、デカルトのラテン語名はレナトゥス・カルテシウス (Renatus Cartesius) であり、デカルト格子(Cartesian grid)など、デカルトの名がついたものにカルテシアン(Cartesian)という表現が用いられる。
オリオン星雲のこと。天球上で大きく明るく見えるため、「大」星雲と呼んでいるが、これは太陽系からの距離が近いためで、この種の天体として特別に巨大というわけではない。
