太陽の周りを回る地球の公転周期である太陽年(約365.24219日)を単位とした暦(れき)。季節を反映する。現在世界の多くの国で使われているグレゴリオ暦は太陽暦である。太陰暦、太陰太陽暦も参照。
巨視的状態が変化しない、時間的に変化しない宇宙のこと。静的宇宙はこれに含まれるが、膨張宇宙であっても、エネルギー保存則を破った物質生成が起これば、エネルギー密度を一定に保つことはできるので、定常宇宙は実現可能である。しかし、完全な定常宇宙は、熱力学の第2法則に矛盾するので、実現できない。定常宇宙論も参照。
非相対論的な自由荷電粒子による電磁波の弾性散乱のうち、可視光などの低周波の電磁波の散乱で、散乱前後で波長の変化を伴わないもの。
これに対して波長の変化を伴うX線やガンマ線など短波長の電磁波の散乱をコンプトン散乱という。電子に対するトムソン散乱の断面積は次のようになる。
$$\sigma_T=\frac{8\pi}{3} \left( \frac{\alpha \hbar}{m_{\rm e} c}\right)^2 \approx 6.65 \times 10^{-25}\,\, [{\rm cm}^2]$$
ここで $\alpha=e^2/(4\pi\varepsilon_0\hbar c)$ は微細構造定数。$\hbar$ は $h$ をプランク定数として $\hbar=h/2\pi$ 、$m_{\rm e}$ は電子の質量、$c$ は光速度、$\varepsilon_0$ は真空の誘電率。
トムソン散乱において入射電磁波の電場成分のうち散乱方向の成分は完全に消え、散乱方向に直交する成分だけが残るため、散乱波は直線偏光となる。このメカニズムは宇宙マイクロ波背景放射の偏光をつくる原因となる。
局所銀河群に属する銀河の1つで、銀河系(天の川銀河)の伴銀河の一つとされる。肉眼で見ると夜空に照らし出された白雲のように見えるため、大マゼラン雲と呼ぶこともある。可視光で見ると非対称で整った形がないため、不規則銀河に分類されるが、星間ガスの分布までみると渦巻銀河に似た特徴も示す。太陽系からの距離は49キロパーセク(49 kpc=16万光年)で、質量は2×1010 ${\rm M}_\odot$である。銀河としては太陽系からの距離が近いため、銀河内の天体を個々に分解することが昔から可能で、これらを天の川銀河内の同種の天体と比較研究するのに適している。恒星分布が棒状構造をなし、その東にはタランチュラ星雲の名で知られる電離水素領域があり、星形成が活発である。若い星からなる星団が多数発見されている。カミオカンデによる天体ニュートリノの検出で有名な超新星SN1987Aもこの銀河内で発生した。マゼラン銀河も参照。
宇宙には始まりも終わりもない、という宇宙論。古くは宇宙項を導入したアインシュタイン(A. Einstein)の静的宇宙があったが、これは摂動に対して不安定なので、実現不可能な解であった。ハッブル(E. Hubble)による宇宙膨張則発見以後も、エネルギー保存則を破った物質生成を仮定するホイル(F. Hoyle)の定常宇宙論が提唱されたが、宇宙マイクロ波背景放射や軽元素の起源を説明しがたいなどの問題点を持ち、何より熱力学の第2法則に矛盾するという理論的な困難を持つため今日ではすたれた理論である。ビッグバン宇宙論も参照。
局所銀河群に属する銀河の一つで、天の川銀河(銀河系)の伴銀河の一つ。夜空で肉眼で見ると地表の明かりなどで照らしだされた白雲のように見えるため、小マゼラン雲ともいう。可視光で見ると非対称で整った形がないため不規則銀河に分類される。規模が小さいため、矮小不規則銀河(矮小銀河を参照)に分類する人もいる。ただし、星間ガス分布までみると渦巻銀河に似た特徴も示す。太陽系からの距離は65キロパーセク(65 kpc=20万光年)で、質量は2×109$\,M_{\odot}$である。距離が近いため、この銀河内の天体を個々に分解することがかなり以前から可能であり、同程度の距離にある恒星群として、それらを比較研究するのに適している。例えば、セファイドの周期-光度関係は、小マゼラン銀河中のセファイドの観測によって発見された。マゼラン銀河も参照。
天の川銀河(銀河系)の属する銀河群。局部銀河群と呼ばれることもある。天の川銀河とアンドロメダ銀河を中心に、半径約1メガパーセク(1 Mpc=326万光年)以内にある少なくとも50-60個以上の銀河で構成されている。メンバー銀河の中では天の川銀河とアンドロメダ銀河が飛びぬけて大きく、残りの大部分は矮小銀河である。アンドロメダ銀河の周りには楕円銀河M32、渦巻銀河M33、矮小楕円銀河NGC147、NGC185、NGC205などが分布し、天の川銀河の周りには大マゼラン銀河や小マゼラン銀河などがある。局所銀河群の推定質量は1-2 兆太陽質量であり、その大半はアンドロメダ銀河と銀河系が担っている。局所銀河群は力学的に安定した状態にはない。たとえばアンドロメダ銀河と天の川銀河は互いに接近しており、将来合体して1つの楕円銀河になると予想されている。また、アンドロメダ銀河と天の川銀河は周囲の矮小銀河を飲み込んで成長してきたと考えられている。1994年に発見された「いて座矮小銀河」は、今まさに天の川銀河に飲み込まれつつある銀河である。天の川銀河を含む局所銀河群の銀河はわれわれからの距離が極めて近いため、個々の星に分解した詳細な観測ができる。こうした観測に基づいて天の川銀河やアンドロメダ銀河の歴史を探る学問を銀河考古学という。
太陽系から銀河系を飛び出しておとめ座銀河団まで行く仮想宇宙旅行の動画。M87に到達して終了する。途中で局所銀河群の銀河にも遭遇する。
(原作は、カリフォルニア大学サンディエゴ校マイケル・ノーマン(Michael Norman)教授による)
https://youtu.be/AXHPeX8hz8s
まとまった数の天体について統計的処理を施すことで、その天体までの距離を求める方法。異なった原理に基づく複数の方法のいずれも統計視差と呼ぶことがあるので注意が必要である。具体的には以下のいずれかの方法を指すことが多い。
(1) 何らかの方法で相対距離がわかっている多数の天体について、その視線速度と固有運動を測り、視線速度の分散と相対距離で補正した固有運動の分散とが一致するように相対距離の原点を求める方法。セファイドの周期-光度関係が小マゼラン銀河で発見された直後に、これを天の川銀河(銀河系)内の多数のセファイドに対して適用することで、周期-光度関係の絶対値を決定したのが有名な例。
(2) 星団のように、同一の距離にあると考えられる天体中にある多数の天体について、その視線速度と固有運動を測り、視線速度の分散と固有運動の分散とが一致する距離を求める方法。超長基線電波干渉計(VLBI)による晩期型星や原始星周囲のメーザー電波源の観測結果に対して使用例がある。
(3) 収束点法のこと。流星視差ともいう。1つの星団に属する多数の恒星の固有運動を測り、その収束点を見つけることで天球上での見かけの大きさの縮小率を求め、それが一定サイズの星団が後退するためと仮定して、それが観測される視線速度と一致する距離を求める方法。
(4) すべての天体の明るさの分布が天体集団ごとに同一であるとして、その見かけの明るさと数の関係から距離を求める方法。ハーシェル(W. Herschel、1738-1822)が1785年に宇宙全体の形状として、天の川銀河の全体像に相当する恒星分布形状を描いた際に用いた。ただし、実際は星間吸収により、天の川銀河の一部しか見えないため、天の川銀河としても正しい全体像を得ることはできなかった。
Ⅰa型超新星を引き起こす、白色矮星内での暴走的な炭素の核融合反応。連星系において、白色矮星に相手の星からガスが降り積もり、チャンドラセカール限界質量($\sim1.4\,M_{\odot}$)を超えると中心部の炭素の核融合が始まる。電子が強く縮退している高密度下では、膨張によって温度が下がることなく、炭素燃焼が暴走し、重い原子核の合成、さらには鉄の光分解へと至る。縮退圧、電子縮退も参照。
天の川銀河の中心付近に見える特異な構造の電波天体。過去には、いて座A*と一体の天体と見なされていたこともあったが、VLAによる高分解能観測の結果、複数のフィラメント状の構造がほぼ平行して並んでいることがわかった。その直後には、野辺山45 m電波望遠鏡やエッフェルスベルク100 m電波望遠鏡による偏波観測によって、フィラメントに沿った磁場があること、さらに高銀緯の部分にまで伸びた構造が偏波した電波の構造として続いていることがわかった。これらの結果から、電波アークはいて座A本体とは独立した、銀河面に垂直方向に伸びる磁場構造の一部だと考えられている。高銀緯にまで続く部分は、偏波プルームあるいは偏波ローブと呼ばれている。
銀河面に対して垂直方向に伸びる、電波で観測される構造。スパーは刺の意味。特に、電波連続波で観測されるものが有名で、一番目立つものは銀河面から北銀極に達する北極スパーである。立体的にも銀河面から垂直に伸びる構造と考えられているが、太陽系近傍の比較的小さな構造が大きく見えているとする説と、銀河中心付近など遠方にある巨大な構造が見えているとする説があり、未だに決着がついていない。
たたみ込みを参照。
銀河の楕円体成分を構成する星の種族のこと。古い星が多く、ランダム運動が卓越している。
恒星の3次元的な速度分散を表す。太陽系近傍の恒星の固有運動と距離、および視線速度を測定することにより、その恒星の3次元空間での運動 $(v_x, v_y, v_z)$ を知ることができる。個々の恒星はランダムな運動を示すが、その全体としての傾向は、天の川銀河(銀河系)の半径方向、回転方向、および銀河面に垂直な方向に対して異なる速度分散 $(\sigma_x,\sigma_y, \sigma_z)$ を持つガウス分布(正規分布)で概ね近似できることが知られている。この分布を速度空間での楕円体として表現したものを速度楕円体と呼ぶ。速度楕円体が非等方な原因の1つは銀河回転にあり、それだけが影響していると考えた場合には速度楕円体の軸比はオールト定数 $A, B$ と簡単な関係になり、半径方向の速度分散$\sigma_x$ に対する回転方向の速度分散$\sigma_y$ の比は、
$$\frac{\sigma_y}{\sigma_x}=\sqrt{-\frac{B}{A-B}}$$
で表される。
1つ以上の素子アンテナを人工衛星に搭載して実現する超長基線電波干渉計のこと。地球上に設置されたアンテナだけで構成する超長基線電波干渉計(VLBI)では、最大基線長を地球直径以上に離すことができないため、観測周波数を指定すると角分解能に限界が生じてしまうが、人工衛星ならば地球から遠く離した場所にアンテナを運ぶことができるので、この限界を打ち破ることができる。また、地上に固定されていないアンテナがあるため、衛星軌道をうまく利用すれば、さまざまな方向でいろいろな基線長とすることができ、より多くの (u, v) 成分を測定できるという利点もある。1986~87年に「TDRS衛星」を用いて国立天文台、宇宙科学研究所、NASAが共同で行った実験が初めてのスペースVLBI実験とされており、それ以降で本格的なスペースVLBI観測を実現したのは、日本の宇宙科学研究所が1997年に打ち上げ2005年まで運用した電波天文衛星「はるか衛星」と、ロシアが2011年に打ち上げ2019年まで運用した「ラジオアストロン」とがある。
1つの天体の各部が示す速度の散らばりの度合いを示す量。内部運動の激しさを示す指標となる。分散とはいうものの、各部の速度から全体の平均値を引いた値の標準偏差で表す。通例、部分ごとの質量あるいは明るさで重みを付ける。また、天文学では直接観測できる速度が視線速度に限られることが多いため、視線速度のみを対象とする場合がほとんどである。観測の角分解能に比べて該当天体が小さく、その空間的な広がりを画像としてとらえられない場合には、そのスペクトルの線幅から速度分散を得ることができる。速度分散からは力学質量を得ることができ、他の方法で得た質量と比較することで該当する天体が重力的に束縛されているかを判断することが多い。
1.一般には、ある力学条件の下で物体が定常状態に達した際に示す速度。速度に応じた摩擦が働く系で一定の力を受ける物体の運動の場合、十分に長い時間が経つと終端速度に達する。
2.天の川銀河の円盤部にある星間ガスが発する輝線スペクトルを見ると、銀河中心側半分の銀経範囲では、それぞれ異なるある視線速度を境にして、それより速い成分が存在しない。この速度を終端速度という。銀経ごとの終端速度は比較的滑らかに変化する。終端速度は、天の川銀河の円盤部がほぼ一定の回転速度、すなわち、内側ほど角速度の大きな回転運動をしていることで生じる。この終端速度に対応する位置は、(ガスが円運動をしていると)視線方向と銀河回転の方向が一致するところ、すなわち、銀河中心から等距離の円と太陽系からの視線が接するところに当たると考えられている。銀経ごとの終端速度の変化から、銀河中心からの距離に対する回転速度の変化を知ることができ、これによって太陽系より内側の天の川銀河の回転曲線を描くことができる。
太陽系から観測される天の川銀河の中性水素原子ガス雲は、ほとんどが、円盤部が示す回転運動にしたがっているが、それから大きく外れた視線速度を示すものがある。これを高速度雲という。便宜上、銀河回転からの視線速度の差が50-90 km s-1程度以上のものを指す。最も古くから知られている高速度雲にマゼラン雲流があり、これは大マゼラン銀河と小マゼラン銀河が天の川銀河の周囲を巡る際に潮汐力で引き出されたものとされている。それ以外の高速度雲の実体については長い間論争が続いていたが、近年の研究によって、天の川銀河に落下しつつある天体であると考えられるようになった。
太陽近傍の恒星で視線速度が65 km s-1以上のものを指す。天の川銀河(銀河系)の円盤に属する星は太陽と同じく円盤内で銀河中心を回るほぼ揃った運動をしているので、太陽との相対速度はそれほど大きくない。高速度星はたまたま現在太陽の近くにあるが、円盤の回転とは異なった運動をするハローに属する星である。視線速度は小さくても固有運動の大きな星はハローに属する星の可能性が高い。明るい高速度星としては、うしかい座の1等星アルクトゥールスが有名。
通常の宇宙論的なガンマ線バーストと異なり、短時間に繰り返し軟ガンマ線(エネルギーの低いガンマ線)を放射する強磁場の中性子星(マグネター)。Soft Gamma-ray Repeater を略してSGRとも書く。最も強力なバーストは Giant Flare (巨大フレア)と呼ばれ、放出エネルギーは宇宙論的なガンマ線バーストよりも小さいものの、銀河系内で発生した際には見かけ上非常に明るく、衛星に搭載したほとんどの検出器をまひさせてしまったこともある。
