天文学辞典 :ASJ glossary of astronomy | 天文、宇宙、天体に関する用語を3300語以上収録。随時追加・更新中!専門家がわかりやすく解説します。(すべて無料)

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分点

1 天の赤道黄道が交わる春分点秋分点のこと。太陽がこれらの点を通過する瞬間が春分と秋分である(二至二分も参照)。太陽が天の赤道上、すなわち地球の自転軸に垂直な方向に来るのも、概ね春秋分の瞬間と考えてよい。

2 天球座標系元期を表す年号。

春分点は、天球上の座標の原点として重要であるが、地球歳差運動により移動していく。したがってその座標系がいつの春分点に準拠しているのかを示す必要があり、たとえば2000年の春分点に準拠する場合、「2000年分点」と書く。赤道座標系も参照。

H𝛂線で観測される、太陽フレアから細く絞られたジェット状の形にガスが加速される現象。その発生から数分で500-1200 km s-1まで加速され、多くは太陽の脱出速度(約600 km s-1)を越え、より低速のサージと区別されて呼ばれている。より長い時間をかけて加速が進行する噴出型のプロミネンスと区別されていたが、観測例が増え、その発生過程が詳しく観測できるようになるとともに両者の境界が曖昧になってきている。

金星の自転は遅く(周期は243日)、赤道での自転速度は 1.6 m s-1であるが、上空の大気は100 m s-1で自転と同じ方向に運動していて4日で金星を一周する。これを「スーパーローテーション(超回転)」と呼ぶ。

1974年にアメリカ航空宇宙局(NASA)のマリナー10号が雲の撮像からスーパーローテーションを発見した。金星と同様に、土星の衛星タイタンでも、上空の大気は自転速度の10倍で運動していることが明らかになっている。自転の角運動量の輸送機構については、緯度方向に熱を輸送するハドレー循環と水平方向に伝搬する波の組み合わせ、太陽光による加熱による熱潮汐波の鉛直方向への伝搬、低高度で励起された大気重力波の伝搬などの説があるが、まだ解明されていない。また、木星や土星では赤道付近に自転を追い越す方向の強い西風が吹いていて(それぞれ 100 m s-1, 500 m s-1)、これもスーパーローテーションと呼ぶことがある。あかつき探査機の観測から金星にもこの赤道ジェットと呼ばれる流れがあることが明らかになっている。

ハレー(Edmond Halley;1656-1742)はイギリスの天文学者。しばしばハリーとも記される。豊かな商人の子としてロンドンで生まれ、オックスフォード大学で学んだ。南大西洋の孤島セントヘレナ島に渡り、フラムスティード(J. Flamsteed)の星表に対応する南天の星表を作成、これが高く評価されて王立協会会員となった。会員として実験科学で活躍し、1703年オックスフォード大学のサヴィル教授職(幾何学)に就く。ニュートンに『プリンキピア』の執筆を促し、その出版を援助、楕円の数学を記述したアポロニウス円錐曲線論を翻訳した。彗星の古記録から周期的に出現する彗星を知り、ニュートン力学を応用して軌道を決めて次回の出現を予言した。この彗星は予言通りに出現したので、今ではハレー彗星と呼ばれている。1天文単位の数値を知る方法として金星太陽面通過の観測を提唱した。また、自分の観測と古代ギリシャのヒッパルコス(Hipparchus)が作った星表を比べて、1718年に恒星固有運動を発見している。また、世界各地のデータから地磁気偏角図を作るなど、その活動は多彩である。1720年には初代グリニッジ王立天文台長フラムスティードを継ぎ、第2代の天文台長(王立天文官)となり、死ぬまでその職にあった。

瞬時の平均赤道平均春分点により定義された座標系における天体の位置。平均位置ともいう。
FK5カタログやヒッパルコスカタログ(ヒッパルコス衛星を参照)に掲載される恒星の位置はJ2000.0における赤道座標系国際天文準拠系にもとづいているから、いずれも平位である。平位から視位を求めるには元期からの歳差章動を考慮する必要がある。

力学平衡にあるような電磁流体で、磁気圧勾配力と、磁気張力による力とが圧倒的に強く、他の力を無視できる場合、見かけ上、ローレンツ力(磁気圧勾配力と磁気張力による力の和)がゼロとなる。そのような状態の磁場をフォースフリー磁場という。実際には、磁気圧勾配力と磁気張力による力とがつりあっている。

特定の結晶材料などを通した像が2重に見える現象で、光の偏光方向(電場の振動方向)によって材料の屈折率が異なっていると解釈される。方解石や水晶などの結晶材料や高分子材料に見られる。複屈折性を持つ材料には光学軸と呼ばれる特定の方向があり、この向きに進む光に対しては振動方向によらず屈折率は同一である。
しかし、光学軸からずれた方向に進む光に対しては、光の偏光方向により光学軸に進む光と屈折率が同じ光(常光線: 光学軸に垂直な偏光状態)と異なる光(異常光線: 光学軸に平行な偏光状態)がある。
この結果、両者は結晶に入射する光の屈折角が異なるために、2重の像が見られる。異常光線に対する屈折率が、常光線に対する屈折率より大きい材料と小さい材料があり、それぞれ、正号結晶(水晶)と負号結晶(方解石、サファイア)と呼ばれる。複屈折材料は、偏光を測定するための各種光学素子などに用いられる。波長板偏光子ウォラストンプリズムも参照。

銀河を見かけの形によって分類する形態分類の一つ。ヤーキス天文台のモルガン(W.W. Morgan)が提案した。光の中心集中度が第1のパラメータで、最も集中度の低い銀河(主に不規則銀河)をa、最も高い銀河(主に楕円銀河)をkなどとした。第2のパラメータは形で、渦巻(S)、棒渦巻(B)、楕円(E)、不規則(I)、回転対称 (D)ほか、などとした。第3のパラメータは扁平度で完全な円から最も扁平なものまで1から7までの整数で表した。たとえばアンドロメダ銀河(M31)はkS5となる。現在ではあまり使われていない。ただし、現在でも多用されるcD銀河やk+a銀河などの起源はヤーキス分類にある。ハッブル分類も参照。

太陽に最も近い内惑星。太陽からの平均距離は0.39天文単位。質量3.30x1023 kg、赤道半径 2440 km はそれぞれ地球の0.0553倍、0.383倍である。太陽に近く、金星よりも小さいため、日の出直前、日没後の短時間にしか肉眼で観察することはできない。太陽との最大離角は28度である。自転周期は58.7日で公転周期88.0日の3分の2であり共鳴関係にある。太陽日(水星表面から見た太陽の運動間隔)は176日で、水星表面では昼、夜が長時間継続する。

水星の密度は 5430 kg m-3 で、金星より高く地球の値に近い。金属核の割合が高く、天体質量の6割を占めている。金属核の半径は約1800 kmである。その外側に岩石質のマントル地殻が存在する。マリナー10号が、1974-75年にフライバイ観測を行い、表面の約4割の撮像を行うとともに、磁場を発見した。地球からのレーダー観測から流体核の存在が示唆されており、この磁場はダイナモによって維持されていると考えられる。水星表面は、衝突クレーターで覆われている。圧縮でできた、スカープ(scarp)と呼ばれる逆断層地形がある。初期の内部冷却に伴い、地殻が圧縮されたために形成されたと考えられる。

マリナー10号の観測の後、水星探査は空白の時代が続いたが、メッセンジャー探査機が、3回のフライバイ観測の後、2011年3月より水星周回軌道にはいり、2015年4月まで観測を行った。日欧共同のベッピコロンボ計画では、2機の探査機を2018年に打ち上げて、2024年より水星の観測を行う予定である。地球型惑星も参照。

太陽系の内側でガスやダスト(塵)を放出する氷天体。ほうき星とも呼ばれる。観測では、中心部から明るく拡散的に広がったコマの部分と、コマから反太陽側に線状に流れるように広がるの部分に分けられる。コマの中心部には、ガスやダストを供給する氷とダストからなる彗星核がある。ホイップル(F. Whipple)は、彗星核をH2Oを主成分とする氷とダスト粒子が均質に混合したものと考え、汚れた雪玉モデルを提唱した。コマを構成するガス成分の観測から、彗星核の揮発性成分の組成が求められる。主成分は水の氷であり、一酸化炭素、二酸化炭素が次いで多い。そのほかに、H2CO, CH3OH, CH4, NH3, HCN, H2S, OCSなどが観測されている。H20を100とした彗星核の典型的な化学組成を末尾の表に掲載している。

彗星の多くは、突然出現して太陽に近づくにつれて輝きを増す。軌道傾斜角が大きなものや逆行するものも多く、計算される公転周期は長く遠日点が数万天文単位のものまである。公転周期が200年より短いものを、短周期彗星あるいは周期彗星と呼び、200年以上のものを長周期彗星と呼ぶ。観測で求められる離心率が1以上で、放物線、双曲線軌道を取るものは非周期彗星と呼ばれる。
彗星は太陽系外縁部に由来をもつ天体であり、太陽系形成の初期の記憶を留めている天体である。太陽系の外側で形成された氷微惑星や成長した原始惑星のうち、ガス惑星に取り込まれなかったものが、惑星の散乱を受けてオールトの雲やエッジワース-カイパーベルトとなった。エッジワース-カイパーベルト天体の一部は、ガス惑星の重力により軌道が内側へ進化して、最後は木星の重力により太陽系の内側に運ばれることが軌道計算により明らかになっている。一方で、軌道離心率や傾斜角が非常に大きい彗星については、たまたま太陽近くを通過した恒星の摂動などでオールトの雲から太陽系内部に到達する軌道へと直接運ばれた可能性がある。

小惑星と異なり、彗星の名前は基本的には発見者の名前が3名までつけられる。ハレー彗星(ハレーは軌道決定者で彗星そのものは昔から知られていた)などは例外である。しかし、同じ観測者が多数の彗星を発見する場合もあるため、C/1995 O1 Hale-Boppという形で正確には命名する。これは、1995年の7月後半に最初に報告された彗星で、発見者がHale, Boppの2人であることを示している。IとZを除く24個のアルファベットが各月の前半と後半を表す(1月前半がA、後半がB)。周期彗星ではC/のかわりにP/を使い、先頭に通し番号がつけられる。太陽系外縁天体も参照。

彗星の表

原子同士の相互作用に基づいて原子の運動を直接時間積分して求めることで、さまざまな物質の物性を調べる手法。原子間相互作用を経験的モデルであるレナードジョーンズポテンシャルや原子間結合として近似的に表現し、原子の運動自体は古典力学に従うものとして計算する古典分子動力学と、原子間の相互作用自体を電子の分布関数を解くことで量子力学的に求める量子分子動力学があり、その混合的手法も用いられる。

国立天文台が運用している超長基線電波干渉計専用の電波望遠鏡およびそれを用いた観測プロジェクトのこと。名前は VLBI Exploration of Radio Astrometry に由来する。広域精測望遠鏡ともいう。鹿児島大学も運用に協力している。2003年より本格観測を開始した。水沢(岩手県奥州市)、入来(鹿児島県薩摩川内市)、小笠原(東京都小笠原村)、石垣島(沖縄県石垣市)の4局に設置された、口径20 m のアンテナ4基からなり、周波数 2 GHz、8 GHz、22 GHz、43 GHzで観測できる。

VERAは10マイクロ秒角という高い精度で電波天体の方向を精密に測り、年周視差固有運動を測定することで、対象天体の位置と運動を調べる。水分子が放つ22GHz のメーザー輝線が主に用られており、これを放つ星形成領域晩期型星が観測対象である。これによって、天の川銀河銀河系)の立体構造と3次元運動を求めることが主たる科学目標である。地球大気の影響を除去するため、運動が観測される恐れがないクェーサー天球上の位置基準とする観測手法を採用しており、クェーサーとメーザー源とを同時に観測するために、天球上で0.3度~2.2度離れた2天体を同時に受信できる特殊な光学系を持つ。

ホームページ:https://www.miz.nao.ac.jp/veraserver/index-J.html

VERAプロジェクトの紹介動画
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2枚の相対する平行平面ミラー間の干渉を利用して分光する ファブリー-ペローエタロンの性能指標の 一つ。平行平面ミラー間の有効反射回数に相当し、 平面ミラーの反射率が高いほど大きな値となる。 もう一つの重要な指標は、平行平面ミラーの間隔を光の波長で割った 数 n (次数と呼び整数)である。ファブリー-ペローエタロンの透過率は、 この整数条件を満たす(ほぼ)周期的な波長でピークを示す(図参照)。 隣り合った次数の透過率のピークの間をフリースペクトル範囲 と呼ぶ。透過プロファイルの半値全幅Δλ として、フリースペクトル範囲 l との比、l/Δλ をフィネスと呼ぶ。平行平面ミラーの間隔が一定の 条件でフィネスが大きくなると、透過率ピークの分布(間隔)は 一定のまま透過率ピークの形状が細くなる。逆にフィネスが一定で 平行平面ミラーの間隔を広げていくと、図の透過率プロファイル を横方向に圧縮した形状となる。いずれの場合も、透過プロファイルの 半値幅 Δλ が小さくなり、波長分解能 R=λ/Δλ は大きくなる。

太陽の周りを公転する天体のうち、惑星準惑星およびそれらの衛星を除いた小天体を太陽系小天体と呼び、それらのうちおもに木星の軌道周辺より内側にあるものを小惑星と呼ぶ。小惑星は軌道長半径によって、小惑星帯(メインベルト)の小惑星(メインベルト小惑星と呼ばれることが多い)、トロヤ群小惑星、および地球接近小惑星に大別される。他にも木星に対して2:3の軌道共鳴状態にあるヒルダ群小惑星などさまざまな分類型もある。ただし、小惑星帯において最大の天体であるケレスは小惑星にも準惑星にも分類されている。
メインベルト小惑星は、太陽系形成後期の木星形成後、木星からの重力作用を受けて軌道が大きく乱された微惑星がそれ以上の合体成長を妨げられたもの、あるいは軌道を乱された結果、高速衝突と破壊を経験して形成されたものと考えられている。
トロヤ群小惑星は、木星と同じ軌道上で太陽から見て木星より60度前方あるいは後方にあるラグランジュ点と呼ばれる力学的平衡点近傍に存在する小惑星である。すばる望遠鏡などで得られた小惑星の大きさ分布をまとめた最近の研究から、トロヤ群やヒルダ群にはもともと太陽系外縁天体であったものも含まれていることが示唆され、ニースモデルと整合する結果が得られている。
地球接近小惑星の多くは、メインベルト小惑星が、木星や土星との共鳴関係などの力学的な効果によって軌道の離心率が大きくなり、近日点距離が1.3 au(au は天文単位)以下になったものである。
小惑星のなかには似通った軌道要素をもつグループに分類できるものがあり、これを小惑星のという。同じ族に属する小惑星は、共通の母天体の衝突破壊によって形成された破片群であると考えられている。小惑星の中には衛星をもつものも見つかっている。近年、複数の探査機による小惑星探査が行われ、密度や組成、表面状態に関する詳しいデータが得られている。大部分の小惑星は惑星のような熱進化を経験していないと考えられるため、太陽系形成初期に関する貴重な情報源である。
はやぶさ探査機はやぶさ2探査機も参照。


小惑星の衝突と形状の進化のシミュレーション [クレジット] シミュレーション:杉浦圭祐 可視化:長谷川鋭 国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト

https://www.youtube.com/embed/tkB0uAj77cM?si=5sJ6qXHKlSfdbMSF"

渦巻銀河渦巻腕に位置する天体が常に渦巻腕に留まるならば、銀河差動回転の結果、時間が経過するに従い渦巻腕の間隔はどんどん狭くなり、百億年程度でピッチ角0.3度というような何重にも腕が巻き込んだ銀河となるはずで、そのような形態の渦巻銀河が宇宙で多数派を占めなければいけない。しかしながら、実際にはそのような銀河はほとんど存在しない。この状況を「巻き込みの困難」と呼ぶ。この問題は、「渦巻腕に位置する天体は常に入れ替わっており、渦巻腕は現在の天体の粗密パターンに過ぎない」という考え方を基本とする密度波理論によって解消された。

光(電磁波)の波長ごとのエネルギー分布であるスペクトルを得る分光器の一種。分析する光をビームスプリッター(半透鏡)により反射光と透過光に分け、それぞれのビームを平面反射鏡でもとの光路に戻して、ビームスプリッターで重ね合わせて干渉させる。この際、平面反射鏡の片方を固定し他方を光軸方向に移動させることにより、2つのビームの光路差を変化させて時間の関数として干渉強度変化(インターフェログラム)を得る。単色光を考えると干渉光強度の時間変化はその波長に応じた周期の三角関数となるので、ある波長幅を持った光に対しては異なる周期の三角関数の重ね合わせとなる。つまり、スペクトルをフーリエ変換したものがインターフェログラムである。それを逆フーリエ変換してスペクトルを得る方式の分光器をフーリエ分光器と呼ぶ。

放射すなわち大量の光子の存在自体によって、光源の周辺の空間には放射場のエネルギーが存在する。エネルギーは質量と等価で慣性をもつので、放射場の中を運動する粒子は、速度ベクトルと反対方向に、ほぼ速度の大きさに比例する抵抗を受ける。この作用を放射抵抗と呼ぶ。放射圧も参照。

強い紫外線連続光を出している銀河を、対物プリズム観測によって選び出したもの。紫外線の源は、活動銀河核からのものと、スターバーストからのものとがある。旧ソ連の天文学者マルカリアン(B. Markarian)が1960年代にビュラカン天文台シュミット望遠鏡によるサーベイ観測でこの種の銀河を最初に発見した。セイファート銀河も参照。

2007年から観測を開始したイタリアとフランスを中心にした全世界的重力波検出プロジェクト。Virgoをバーゴと英語読みする人もいるが、イタリア語・フランス語ではビルゴと読む。イタリア・ピサのカシーナに設置されている、直交する基線長3 kmの巨大なレーザー干渉計を用いた重力波検出器である。反射鏡によって実効長 120 km を実現している。
周波数レンジは10 Hz-10 kHzで、天の川銀河内およびおとめ座銀河団までの距離にある銀河で起きる超新星中性子星の合体で発生する重力波をとらえることができる。
高感度を実現するために、超安定レーザー、高反射率の鏡、地面の振動からの分離、超高真空、高精度アラインメント制御などで高い技術を実現している。2017年8月にLIGOとともに史上4例目の重力波の検出を報告した。KAGRA大型低温重力波望遠鏡も参照。

ホームページ:http://www.virgo-gw.eu/

火星木星の軌道の間で多くの小惑星が存在する領域のことを小惑星帯と呼ぶ。小惑星にはこの領域以外に、地球軌道近傍の軌道をもつ地球接近小惑星、木星と同じ軌道にあるトロヤ群小惑星があるため、これらと区別するため、小惑星帯にある小惑星のことをメインベルト小惑星と呼ぶことも多い。小惑星帯における小惑星の数の分布は、木星との平均運動共鳴あるいは木星や土星との永年共鳴の位置では極端に数が少なくなっている。このうち平均運動共鳴の位置における数の減少は、発見者にちなんでカークウッドの間隙と呼ばれる。一方、同じ平均運動共鳴でも木星と小惑星の公転周期が3:2となる位置には小惑星が集まっており、チルダ群と呼ぶ。これは共鳴関係のために木星に近づかない軌道になっているからである。小惑星帯は、太陽系形成後期の木星形成後、木星からの重力作用を受けて軌道が大きく乱された微惑星がそれ以上の合体成長を妨げられたもの、あるいは軌道を乱された結果、高速衝突・破壊を経験して形成されたものと考えられている。