太陽質量の約8倍以上の大質量星が進化の最後に起こす大爆発。超新星の分類ではⅡ型、Ⅰb型、Ⅰc型である。この中で親星の外層が剥ぎ取られた後で爆発したものは水素欠乏型超新星(stripped-envelope supernova)と呼ばれることもある。
天文単位を表す記号。以前は大文字 AU などが使われたが現在の正式表記は小文字の au である。
アルハゼンを参照。
Hα線を参照。
オットー・リュドビゴビッチ・シュトルーベ(Otto Lyudvigovich Struve;1897-1963)は、ウクライナ生まれで主にアメリカで活躍した天文学者。しばしばストルーベまたはシュトルーフェとも記される。グスタフ・ウイルヘルム・ルートビッヒ・シュトルーベの子としてハルキウに生まれた。1914年ハルキウ大学に入学するが、第一次大戦とロシア革命に翻弄されトルコに亡命、1921年にアメリカに渡った。1923年にシカゴ大学で学位を得て、1927年にアメリカに帰化した。シカゴ大学助教授を経てヤーキス天文台に入り、1932年に同天文台の台長となった。1939年にマクドナルド天文台長を兼任。1950年にカリフォルニア工科大学の主任教授になり、1952年から1955年にかけて国際天文学連合の第10代会長に就任、1959年にはアメリカ国立電波天文台 (NRAO) の初代台長に就任するなど天文学に関わる組織の要職を務めた。
恒星天文学の分野で多くの業績を挙げており、特異星、近接連星、恒星大気論など広範なテーマを扱い、恒星進化論の発展に大きな寄与をしている。また、アストロフィジカル・ジャーナル誌の編集長を15年間努めたり、一般向け雑誌のスカイ・アンド・テレスコープ誌に天体物理学の概念を分かりやすく解説した記事を書くなど、天文学の一般普及にも尽くした。
1944年に王立天文学会ゴールドメダル、1948年にブルースメダルを受賞。シュトルーベ家は、カッシーニ家、ハーシェル家とともに、偉大な天文家系のひとつに数えられている。
参照:https://www.nasonline.org/wp-content/uploads/2024/06/struve-otto.pdf
https://phys-astro.sonoma.edu/node/1482
IXPE衛星を参照。
(Imaging X-ray Polarimetry Explorer)
NASAとイタリア宇宙機関の協力により、2021年12月9日にケネディ宇宙センターからスペースX社のファルコン9ロケットで打ち上げられたX線 偏光観測衛星。重量337 ㎏の小型衛星で、軌道傾斜角0.2 度、高度540 kmの低地球軌道に投入された。
同一設計の3台のX線偏光望遠鏡を搭載しており、それぞれ直径30 cm・焦点距離4 mのX線反射鏡と、2-8 keVのX線の偏光をとらえるガスピクセル検出器の組で構成されている。視野は12.9分角、角度分解能は25秒角、有効面積は2.4 keVで166 cm2である。エネルギー分解能は2.7 keVで22%、6.4 keVで16%であり、偏光に対する感度を示す変調因子(modulation factor)は2.6 keVで0.29、4 keVで0.43、6.4 keVで0.55である。(X線望遠鏡も参照。)
2022年2月に超新星残骸カシオペアAの偏光度の画像を発表し、広い範囲で1.8%±0.3%の偏光度があり、これを高エネルギー電子が磁場中で放出するシンクロトロン放射として、磁場が放射方向を向いていることを示した。
ホームページ:https://ixpe.msfc.nasa.gov/about/index.html
1603年にドイツのバイエル(J. Bayer)によって出版された世界で初めての全天星図『ウラノメトリア』(バイエル星図とも呼ばれる)で用いられた恒星の名称(識別符号)。各星座の明るい星に、ギリシャ文字の小文字($\alpha, \beta, \gamma, \cdots$ )あるいはラテン文字アルファベット(A, b, c,…)とその後に星座名を3文字にした略号をつけて、例えば、$\alpha$ Ori(オリオン座 アルファ星)、$\beta$ Gem(ふたご座べーた星)、$\delta$ UMa(おおぐま座デルタ星)、$\epsilon$ Cas(カシオペヤ座イプシロン星)などのような形式で表す。これに習って天文学者らによってウラノメトリア以降に加えられたり、修正されたりしたものも含めてバイエル符号と呼ばれる。
各星座の中では、1等星や2等星など明るい星の方がより若いギリシャ小文字が当てられていることが多いが、同じくらいの明るさの星では天球上の位置順や、星座形状による順などがあり、文字割り当ての一般的な規則はないようである。バイエル符号は今日でも星の名称として広く用いられている。
フラムスティード番号も参照。
星座毎に、明るい星に対して西(赤経の小さい方)から番号をつけて、星座名とその番号を組み合わせた名称。フラムスティードは星の位置の観測データを赤経順にカタログしていた。しかし、番号は『天球図譜』の暫定版(ニュートンとハレーがフラムスティードの同意を得ずに勝手に出版したもの)にはあるが正式版にはなく、番号をつけるという命名法をフラムスティード自身が考案したのではないと考えられている。
100年以上前に導入された明るい星の名称であるバイエル符号は全天の星座を対象としているが、フラムスティード番号はイギリスから比較的観測しやすい星座のみを対象としている。ただし、バイエル符号より多く、2500個以上の星につけられている。バイエル符号とフラムスティード番号がともにある星についてはバイエル符号で呼ぶことが多い。フラムスティード番号の良い例は、最初に太陽系外惑星が発見されたペガスス座51番星(51 Peg)である。
英国の初代王室天文官フラムスティードの観測データをもとに1729年に出版された星図。出版に関してニュートン、ハレーとフラムスティードの間に問題が起き、古いデータに基づく暫定版をニュートンとハレーがフラムスティードの同意を得ずに勝手に出版し、裁判に敗れてその暫定版は処分されるといういきさつがあった。正式版はフラムスティードの死後に夫人たちによって出版された。
望遠鏡による観測から作られたはじめての星図で、グリニッジ王立文台から観測できる26星座の図が掲載されている。1603年出版の星図『ウラノメトリア』ではそれまでの慣例に従って星座絵を背面から見た状態で描いていたが、『天球図譜』では正面から見た絵に描かれた。星座絵はイギリスの有名な歴史画はジェームズ・ソーンヒル(Sir James Thornhill)によって描かれており、ロンドンで出版された初版は、縦24インチ×横20インチ(60cm×51cm)という大版だった。その後1776年に、フランスのパリで16cm×21cmの縮小版となった第2版がフォータン(J. Fortin)によって出版された。ラカイユやメシエの観測した星雲、星団が加えられ、ルモニエの南天星座図が追加されるなどの改良や、いくつかのイラスト(特にアンドロメダ座、おとめ座、みずがめ座)には美術的なレタッチが加えられた。1781年にはドイツのベルリン版が、1795年にパリ版の改訂版が出ている。
小惑星ディディモスとその衛星ディモルフォスを調べるための、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)のミッション。名称はギリシア神話の女神へーラー(ヘラ、ヘレとも表記)からとられた。アイーダ計画を構成する1つの探査機となっている。ディモルフォスには、アメリカ航空宇宙局(NASA)のダート探査機が2022年9月に衝突しており、その衝突の状況を詳しく調べることが目的である。2024年打ち上げ予定で、ディディモス-ディモルフォスへの到着は2027年の予定である。
ヘラは、総質量約1300 kgの探査機である。ヘラには、カメラ、分光計、距離計、赤外線カメラなどの機器が搭載されている。また、2機の小型の探査機を載しており、小惑星近傍で分離する計画である。
探査機を小惑星に衝突させることで、小惑星の軌道がどのくらい変化するのかを調べるアメリカ航空宇宙局(NASA)のミッション。英語のDouble Asteroid Redirection Test(二重小惑星軌道変化試験)の頭文字からついた名前。アイーダ計画を構成する1つの探査機となっている。
2021年11月24日に米国のヴァンデンバーグ空軍基地からファルコン9ロケットにより打ち上げられ、2022年9月26日に小惑星ディディモス(Didymos)の衛星であるディモルフォス(Dimorphos)に衝突した。探査機質量は約600 kgで、ディモルフォスへの衝突速度は秒速6 km/sほどであった。探査機は衝突すると破壊されてしまうが、搭載されたカメラによって探査機が衝突する瞬間まで撮影が行われた。また、衝突前にリシアキューブ(LICIACube)というイタリア宇宙機関が製作した小さな探査機を分離し、これによって衝突後の様子を撮影した。
ディディモスの大きさは約800 m、ディモルフォスは約160 mであると推定されている。ディモルフォスはディディモスの周りを周期約11時間55分で公転していたが、ダートの衝突後には11時間23分に変化した。
天体の地球衝突から人類を守ろうとする活動のこと。スペースガード(spaceguard)と呼ばれることもある。「地球防衛」という日本語が当てられることもある。
太陽系の約46億年にわたる歴史において天体の衝突は常に起こっていることではあるのだが、この天体衝突が人類にとって非常に大きな脅威になりうるということが広く認識されるようになったのは、恐竜絶滅が小天体の地球衝突によるという説が1980年にルイス・アルバレス(Luis Alvarez; 1911-1988)らによって発表されたことによる。1990年代になると、天体の地球衝突に具体的に対応していこうという活動がスペースガードという名称で開始された。1996年には、国際スペースガード財団や日本スペースガード協会が設立されている。1998年頃からは、地球接近天体(Near Earth Object: NEO)の発見が急速に増大しはじめた。また、2000年頃からは国連の中でも議論が始まり、名称もプラネタリーディフェンスと呼ばれるようになった。
プラネタリーディフェンスとして行うべきことは、第一に地球に衝突するNEOを発見し、追跡観測を行って軌道を正確に求めることである。軌道が正確に分かれば、地球に衝突するかどうかを軌道計算によって確認することができる。第二には、地球に衝突するNEOが発見された場合に備えて、衝突回避方法の検討を行うことである。そのためには、NEOがそのような物理的性質を持っているのかも把握しておく必要がある。また、地球衝突回避ができない場合には、どのようにして被害を最小化するのかも重要な検討課題である。国際協力やそのための法整備、そして一般への情報発信の仕方の検討など、プラネタリーディフェンスの活動は多岐にわたる。
現在、NEOの発見個数は急速に増大しており、2022年半ばで約3万個発見されている。小惑星の物理的性質を調べる探査も進められており、探査機が接近したNEOは約10個にのぼる。一方で天体の地球衝突回避のために小惑星の軌道を変更する実験がアイーダ計画として行われている。アイーダ計画は米国のダート探査機と欧州のヘラ探査機で構成されている。ダート探査機は、2022年9月に小惑星ディディモス(Didymos)の衛星ディモルフォス(Dimorphos)に衝突し、その軌道を変更する実験を行った。2029年には大きさが300 m余りの小惑星アポフィス(Apophis)が地表から約3万kmの地点を通過することが予想されており、その観測も計画されている。
日本でプラネタリーディフェンスのための監視観測を行っている主要施設である美星スペースガードセンターでは、地球接近小惑星とともにスペースデブリの観測も行っている。この施設はJAXAが管理し、日本スペースガード協会と協力して運用している。
ホームページ
NASAのPlanetary Defense Coordination Office
https://www.nasa.gov/planetarydefense/
ESAのホームページ
https://www.esa.int/Space_Safety/Planetary_Defence
美星スペースガードセンター
https://www.jaxa.jp/about/centers/bsgc/index_j.html
小惑星の軌道を変更する実験を行う計画。英語のAsteroid Impact and Deflection Assessment(小惑星への衝突による軌道変化の評価)の頭文字からAIDAの名前がついた。米国のダート探査機によるミッションと欧州のヘラ探査機によるミッションからなる。ダートは2021年11月24日に打ち上げられ、2022年9月26日に小惑星ディディモス(Didymos)の衛星ディモルフォス(Dimorphos)に衝突した。ヘラは2024年に打ち上げ予定であり、2027年にディディモス-ディモルフォスに到着する予定である。ヘラはこれらの天体を詳細に観測し、衝突がこれらの天体にどのような影響を及ぼしたのかを調べることになる。
回折スパイクのこと。
日本の天文学者(1870-1943)。金沢生まれ、1892年
反射望遠鏡で撮影された明るい星の像から放射状に伸びる複数の線条のこと。反射望遠鏡の副鏡(シュミット望遠鏡では写真乾板ホルダーあるいはカメラ)を支える筋交い(スパイダーと通称されることが多い)により、入射する平行光線が回折されるために発生する。主鏡がモザイク主鏡で外周が円形でなく直線部分がある場合や、カメラの開口部(絞り)が円形でなく多角形型の場合にもそれらによる回折で発生する。線条は原因となる直線が1本に対して、それに垂直な方向の両側に2本伸びる。回折スパイクは点光源である星(入射光は平行光線)で発生するが、銀河など大きさを持つ天体では発生しない。回折スパイクは暗い星では次第に見えなくなる。
図1にさまざまなスパイダーのパターンによる回折スパイクの模式図を示す。図2左は東京大学木曽観測所の105 cmシュミット望遠鏡の焦点面、右はかつてこの焦点面に置かれた大型写真乾板で撮影された明るい星の回折スパイク(リングはハレーションによるもの)である。現在は焦点面には写真乾板でなく、左図に示す84台のCMOSセンサーを並べた「トモエゴゼン」カメラが置かれているが、スパイダーは変わっていない。図3はジェイムズウエッブ宇宙望遠鏡の近赤外カメラの画像に見られる回折スパイクで、モザイク主鏡の端の直線部による6本の明るく長い線条に、副鏡を支える3本の支柱による少し暗い3本の線条が重なった形をしている。
天文学で恒星の内部で起きる核融合反応(熱核融合反応)のことを指す言葉。核燃焼ともいう。核融合反応に対応する英語はnuclear fusion reactionだが、恒星の内部で起きる核融合反応に対しては天文学分野では慣例的にHydrogen burning、Helium burning、Lithium burning、shell burning などなどの英語が用いられてきた。この'burning'が日本語では「燃焼」と訳されて天文学分野で用いられている。
この「燃焼」は、地上で起きる通常の燃焼(可燃物が空気中または酸素中で光や熱などの発生を伴って、激しく酸素と結合する酸化反応=化学反応)とは異なる天文学特有の用語であることに注意する。
ヘリウム燃焼、殻燃焼も参照。
ユージン・パーカー(Eugene Newman Parker;1927-2022)はアメリカの理論宇宙物理学者。カリフォルニア工科大学で1951年に学位を取得したあと、ユタ大学を経て1955年以後はシカゴ大学で研究した。太陽・太陽圏・宇宙プラズマ物理学の数多くの分野で理論的基礎を形作った。京都賞(2003年)、クラフォード賞(2020年)などを多数受賞。主要業績は、輻射冷却不安定による低温ガス雲形成理論(1953年、フィールドの輻射冷却熱不安定へとつながる)、太陽内部からの磁束浮上と黒点形成理論(1955年年)、ダイナモ機構の基礎理論(1955年、α効果)、太陽フレアに関連した磁気リコネクション基礎理論(1957、1963年、スウィート・パーカーモデル)、太陽風の理論的予言(1958年、パーカー風、惑星間空間磁場構造のパーカースパイラル)、太陽圏の宇宙線輸送理論(1965年)、星間ガス中での磁気浮力不安定(1966年、パーカー不安定)、銀河磁場観測に基づく磁気単極子存在量上限値の制限(1970年)、太陽コロナ加熱ナノフレア仮説の提唱(1988年)、などである。2018年打上げのNASA太陽圏宇宙探査機は、彼の業績を記念してパーカー・ソーラー・プローブ(Parker Solar Probe)と名付けられた。
科学衛星「ひので」プロジェクトの追悼ページ
https://hinode.nao.ac.jp/news/topics/obituary-DrParker/index.html
カリフォルニア工科大学の追悼記事
https://www.caltech.edu/about/news/caltech-remembers-eugene-parker-19272022
シカゴ大学の追悼記事
https://news.uchicago.edu/story/eugene-parker-legendary-figure-solar-science-and-namesake-parker-solar-probe-1927-2022
アメリカのDEC社、アップル社、サンマイクロシステムズ社、グーグル社など多くのコンピュータ関連の企業に関わってきた技術者のウェイン・ロジング(Wayne Rosing)氏が2005年に創設した非営利法人が運用する天文台。2021年現在、アメリカの全米科学財団(NSF)、イギリスのセントアンドリュース大学に加え、いくつかの財団が運営を支援している。本部はアメリカのカリフォルニア州ゴレタ(Goleta)にあり、英国本部がイギリスのチェスター(Chester)にある。ラスカンブレス天文台と表記されることもある。Las Cumbres Observatoryの頭文字からLCOと省略されるが、ラスカンパナス天文台と同じ略号であることに注意。
ラス・クンブレス天文台(LCO)は、世界各地にある遠隔自動制御可能な中小口径の望遠鏡を結んで、24時間観測可能な一つの装置であるかのように運用するネットワーク型天文台である。2021年時点で2台の口径2 m望遠鏡、13台の1 m望遠鏡、さらに主に教育目的の10台の40 cm望遠鏡を6つの天文台サイトで運用している。科学研究と教育によって人類の宇宙の理解に貢献することを目的としている。地球の経度方向に、ある間隔で複数の望遠鏡を置き、北天も南天も観測できることがこの天文台のユニークな特長であるため、即座の対応が必要な突発天体の観測や、時刻が決定的に重要な太陽系外惑星のトランジット、長時間の連続モニター観測のような種類の観測を主要な科学目標に掲げている(時間領域天文学も参照)。NSFの支援によりアメリカの研究者には一定の観測時間が割り当てられるほか、提携している国内外の研究機関からは観測提案も募集している。
科学研究と共に教育(市民科学も含む)もLCOの活動の柱である。LCOの望遠鏡やそれで得られたデータなどを使って、特に発展途上国の若者や科学に触れる機会の少ない人々に教育を提供するプログラム「グローバル・スカイ・パートナー・プロジェクトを運用している。
ホームページ
ラス・クンブレス天文台 https://lco.global/
グローバル・スカイパートナー・プロジェクト https://lco.global/education/partners/
ハレアカラ天文台にあるラスカンブレス天文台の口径2 m望遠鏡(Faulkes Telescope North)
https://www.youtube.com/embed/Z2mWxs3L1gk
