恒星の有効温度と光度の分布を表すHR図にみられる恒星の系列。太陽近傍や多くの星団では、大半の恒星は中心部で水素が核融合を起こすことによって輝いている。この段階では質量の大きな星ほど有効温度が高く、光度も高くなるため、HR図ないし色-等級図で左上から右下に延びるはっきりした系列となる。これを主系列といい、この系列にのる星を主系列星という。
フィルターを参照。
連星系において、一方の星から他方の星に向けて起こる物質の移動。質量交換とも呼ばれ、新星や矮新星などを引き起こす原因である。近接連星系においては、星の進化に伴って一方の星が膨張し、(内部臨界)ロッシュローブを超えると、表面の物質が相手の星のロッシュローブに流れ込む。流れ込んだ物質は、相手の星がロッシュローブに比べてそれほど小さくなければガスは直接星の表面に衝突するが、星が小さい場合には星の周りに形成される降着円盤を経て星の表面に落下する。また、2つの星がある程度離れている場合には、進化した星からの星風によって放出された物質が他方の星に降着する。多くのバリウム星やCH星など、連星に特有の組成異常がみられるのはこのためである。ロッシュモデル、化学特異星も参照。
天体へ周辺のガスが降着する現象をいう。
原始星は周辺の星間分子雲ガスが質量降着することで進化し成長する。また高密度星の連星系では相手の恒星(伴星)の表面のガスが高密度星に質量降着することでその質量を増加させたり、位置エネルギーの解放や核融合エネルギーの解放で明るく輝く。巨大質量ブラックホールでは恒星そのものが、ばらばらにされて質量降着する場合もあると考えられている。
星の質量と光度の間に見られる関係。星の内部で発生したエネルギーが放射によって運ばれる場合には、光度L、質量M の間の関係は大ざっぱには L∝μ4M3/κ となる(μ はガスの平均分子量、κ は不透明度)。不透明度が電子散乱で支配される高温の領域ではκ が定数となるため、大質量星の光度は質量の3乗にほぼ比例する。ただし、光の放射圧が効いてくるほど大質量の星では、質量への依存は緩やかになる。 一方、不透明度がクラマース型となる中小質量星では質量依存性が強くなり、光度は質量の約5乗に比例する。クラマースの不透明度も参照。
星の表面から物質が星風として星間空間に放出される現象。太陽では、高温のコロナから太陽風として定常的な質量放出がみられ、彗星の尾の擾乱やオーロラ現象を引き起こしている。しかし質量放出率は1年に10-12太陽質量 (10-12
主系列後の星のヘリウム中心核で、静水圧平衡がなりたち重力収縮をとめることができる限界質量のこと。星の中心部の核融合で水素が枯渇するとヘリウム中心核が形成される。この段階ではヘリウム中心核は核融合反応によるエネルギー発生がないので、重力収縮が起こる。この収縮を止めるにはヘリウム中心核が密度勾配だけによる圧力勾配で支えられる必要があるが、これが可能なのはヘリウム中心核の質量が星全体の約10%よりも小さい場合である。この限界質量を超えるとヘリウム中心核の重力収縮が続き、すぐ外側の水素燃焼殻での核融合(殻燃焼)が活発になって星は膨張し、赤色巨星に進化していく。燃焼も参照。
殻燃焼を参照。
恒星の内部構造の時間変化のこと。天文学では通常「星の進化」と呼ばれている。恒星は自己重力と圧力勾配のつり合った静水圧平衡に近い状態にあるが、化学組成の変化や質量放出によって次第に内部構造が変化する。恒星は星間ガスが自己重力により集まることで誕生する。表面からのエネルギー放出のために重力収縮が進み、中心部の温度が1000万度程度になると水素の核融合が始まる(燃焼を参照)。このエネルギーの発生が表面からのエネルギーの放出とつり合うと安定的に恒星として輝く。この段階の恒星は主系列星と呼ばれ、太陽の場合は約100億年にわたって継続するが、質量の大きな天体ほどその期間は短くなる。
中心部の水素が枯渇すると、恒星は中心部をとりまく薄い殻状領域での水素の核融合(殻燃焼)によって重力を支えるようになる。このとき恒星は大きく膨張し、赤色巨星に進化する。太陽質量の約2倍以下の星では、電子縮退したヘリウム中心核が形成され、その成長とともに恒星の半径と光度が増加するが、やがてヘリウムフラッシュを起こし中心部でのヘリウム燃焼の段階に移行する。金属量の小さい星はヘルツシュプルング-ラッセル図(HR図)上では高温の星まで含む水平分枝を形成するが、金属量の高い星は低温側に集中するためクランプ星と呼ばれる。水平分枝がセファイド不安定帯に達すると、こと座RR型変光星と呼ばれる脈動変光星として観測される。太陽質量の約2倍以上の質量をもつ星でも水素殻燃焼段階で光度が増加するが、縮退した中心核は形成されず、やがて中心でヘリウム燃焼が始まる。中心核内のヘリウムが炭素と酸素に変わるにしたがって、光度はあまり変わらないまま温度が変化し、HR図上でループ(セファイドループ)を描く。ループがセファイド不安定帯を横切るところでは、セファイドとして観測される。
中心部でヘリウムが枯渇すると、電子縮退した炭素と酸素の中心核が形成され、星は再び殻燃焼段階に入り、膨張する。この段階の星は漸近巨星分枝星と呼ばれ、炭素と酸素とからなる中心核の周囲での不安定なヘリウム殻燃焼(ヘリウム殻フラッシュ)と、その周囲での水素殻燃焼によって輝く。表面からの質量放出も活発になり、やがて外層をすべて失って白色矮星へ進化する。その間にさまざまな変光現象を示す星や惑星状星雲などを経る。
太陽質量の約8倍以上の質量をもつ星では、中心部でヘリウムが枯渇するとヘリウム以降の重い元素の核融合が引き続いて起こる。8-10太陽質量程度の星は酸素、ネオン、マグネシウムからなる中心核を形成し、電子捕獲型の超新星爆発を起こすと考えられている。それ以上の質量をもつ星ではさらに核燃焼が続き、最後は中心核の鉄が光分解を起こし、重力崩壊に至る。ここでII型、Ib型あるいはIc型超新星爆発を起こし、中性子星やブラックホールを残す。
連星系では、星の間での質量移動により、進化はより複雑になる。連星間の距離が離れている場合でも、バリウム星やCH星のように星風によって伴星に化学組成の異常が観測されるものがある。近接連星系では、ロッシュローブを超えて質量移動が起こる場合があり、共生星となったり新星や矮新星などの爆発現象を示したりする。伴星からの質量降着により白色矮星がチャンドラセカール限界質量を超えると、Ⅰa型超新星爆発を起こす。同様に、二つの白色矮星が合体してこの限界質量を超えた場合にもIa型超新星となる。
恒星の表面から流れ出す物質(プラズマ)の流れ。恒星風と呼ばれることもある。太陽の場合は太陽風と呼ばれる。
ウォルフ-ライエ星に代表される進化の進んだ高温度(表面温度3-10万度)、大質量(太陽20倍程度以上)の恒星では速度が1000 km s-1 に達することもある激しい星風による質量放出が起きており、そのスペクトルにはP Cyg プロファイルが見られる。また、星風が生み出す衝撃波による加熱で高温になったガスから出ると考えられるX線放射も観測される。一方、赤色巨星のように低温度で表面重力の弱い低温度の恒星では、10 km s-1 程度の速度の星風によって定常的に質量放出が起きている。しかし惑星状星雲の多様な姿に見られるように、低温度星の進化の末期には間欠的な大規模質量放出も起きている。
ジョバンニ・カッシーニ(Giovanni Domenico Cassini;1625-1712)はイタリア出身のフランスの天文学者、数学者、測地学者。イタリアのイエズス会の学校で学び、天文学はグリマルディらから指導を受けた。1648〜1669年にパンザノ天文台で観測に従事し、1650年、ボローニャ大学教授になった。1652〜1653年および1664〜1665年に彗星の詳細な観測結果を発表した。水理学や機械にも関心を示し、ポー川の洪水対策などにも従事した。1669年、ルイ14世に招かれてフランスへ出てパリ天文台の建設に参画、1671年に台長となり、1673年にフランスに帰化した。1668年に木星の四大衛星の運行表を作成、土星の四衛星を最初に観測し(1671年イアぺトス、1672年レア、1684年テティスとディオーネ)、1675年には土星の環に隙間があることを発見した(カッシーニの間隙)。1672年の火星接近に際し、その視差測定に成功して地球‐太陽間の距離を1億4,000万kmと求めた。1680年には地球と太陽との相対運動に関連して、二つの焦点からの距離の積が一定になるような点の軌跡であるカッシーニの卵形線の研究を行なった。また、地球の子午線長の測定から極方向に卵型に伸びている縦長な地球の形状を支持した(1712年)が、24年後にモーペルテュイが扁平型という正しい結果を得ている。晩年は視力が衰え、1711年にはほぼ完全に失明した。
ジョバンニ・カッシーニを初代とする一族は、四代にわたってパリ天文台長を務めている。(ジョヴァンニ・カッシーニ/ジャック・カッシーニ “Jacques Cassini”:1677-1756/セザール・カッシーニ “César-François Cassini de Thury”:1714-1784/ジャン=ドミニク・カッシーニ “Jean-Dominique Cassini”:1748–1845)
1997年に打ち上げたNASAとESAが共同で開発した土星探査機は、ジョバンニにちなんでカッシーニと名付けられた。
参考:https://mathshistory.st-andrews.ac.uk/Biographies/Cassini/
高電子移動度トランジスタ(HEMT)は、シリコンをベースとした一般的な電界効果トランジスタ(FET)に比べて、電子の移動速度が速い化合物半導体を用いたトランジスタである。1979年に富士通研究所の三村高志によって発明された。 高速応答性にすぐれるため、低雑音の高周波増幅器に適しており、50 GHz 以下の電波観測装置の初段の低雑音増幅器やSISミクサの後段増幅器として使われている。試験的には500 GHz程度まで動作することが報告されている。半導体材料としては、ガリウム・ヒ素(GaAs)やインジウム・リン(InP)、シリコン・ゲルマニウム(SiGe)が使われている。ヘテロ接合をもつことからHFETと呼ばれることもある。
恒星の中心核周辺で、殻状の層で起こる核融合反応(燃焼も参照)。主系列段階で中心部の水素を使い果たした小質量星ではヘリウム中心核の周辺の殻(シェル)状の領域で水素の核融合が起こり、赤色巨星に進化する。また、漸近巨星分枝段階では、炭素と酸素から成る中心核の周囲で(熱的に不安定な)ヘリウム殻フラッシュないしはさらにその外側で水素殻燃焼が起こる。
電子増倍機能によって高い感度を達成した光検出器。真空ガラス管内部に光電面と各種電極を納めた構造をしている。光電面の光電効果により入射した光子当たり1つ(実際は量子効率が掛かるので、平均的には1つ以下)の光電子が発生する。この電子は電場によって加速された後に電極に衝突して多数の二次電子を発生させる。この電子増倍機能を複数段通過して最終的に百万個レベルの電子(または1個のパルス)に変換されて電流として検出される。これにより、ノイズに強い高感度の検出器となるが、検出器の量子効率が1を超えているわけではない。量子効率は光電面の変換効率によって決まり半導体検出器ほどは高くない。
ヘリウム殻フラッシュを参照。
星の自転によるスペクトル線幅の拡大。星が自転していると、観測者に近づく成分と遠ざかる成分が存在し、ドップラー効果によりスペクトル線の幅が広がる。回転拡幅関数は一般に、一様回転する球対称の星を仮定し、周辺減光(観測者から見通せる星の大気は、星の中央から縁にかけて浅くなることにより、周辺部が暗く見えること)の効果をとりいれて計算されるが、より正確には、差動回転や非球対称性、重力減光なども考慮する必要がある。実際に観測されるスペクトル線は、スペクトル線本来の輪郭と回転拡幅関数がたたみ込みで合わさったものとなる。線幅拡大、線輪郭も参照。
ユリウス日を参照。
自己重力系に対する熱力学。通常の熱力学とは違う性質が現れる。たとえば自己重力系では熱を放出すると、収縮し重力が強くなってさらに収縮が進み、そのため温度が上がる。すなわち見かけ上、比熱が負となる。断熱壁に囲まれた自己重力ガス系やN 体系は、重力の影響が強くなると熱平衡状態は不安定になる。これを重力熱力学的不安定という。重力系ではブラックホールも考慮の対象になるが、ブラックホールはホーキング放射として(シュバルツシルトブラックホールの場合)その質量に反比例した温度の黒体放射を放出し、莫大なエントロピーを持っていることが知られている。
こうしてブラックホールも熱力学的対象となり、ブラックホールの熱力学を議論することができる。
電磁流体力学を参照。