天文学辞典 :ASJ glossary of astronomy | 天文、宇宙、天体に関する用語を3300語以上収録。随時追加・更新中!専門家がわかりやすく解説します。(すべて無料)

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天頂儀

天頂付近を通過する星の子午線通過時刻と天頂距離を正確に計るため、天頂に向けて固定された望遠鏡。写真天頂筒も参照。

天の川銀河銀河系)の銀河面には星間物質が集中しているため、面に沿った方向では可視光で観測可能な奥行きに限界がある。特に、太陽系は天の川銀河の円盤部のほぼ中央面に位置するため、銀河面に沿った帯状の部分は可視光でほとんど観測不能な領域になる。この帯状の領域を不透視帯と呼ぶ。具体的な範囲は場合によって異なるが、典型的には銀河面から数度以内の天域を指すのが通例である。銀河の分布や宇宙の大規模構造を調べる上では、不透視帯を避けて観測するのが通例で、最終的なサーベイ結果でも円盤状に未観測領域ができる。赤外線X線による観測から、ここに銀河団超銀河団が隠れている例も見つかっている。また、天の川銀河に飲み込まれつつある矮小銀河のいくつかも不透視帯に位置する。

ガス粒子(原子・分子)がある励起状態から遷移して放射を出したり、逆に放射を吸収してより高い励起状態に遷移する際には、遷移前後のエネルギー差に対応する光子が出入りする。ところが、ガス粒子がある微視的状態に滞在する時間は有限のため、不確定性原理によりそのエネルギー値にはゆらぎが生じる。これに起因してスペクトル線に現れる周波数幅のことを自然幅あるいは減衰幅と呼ぶ。天体から発せられるスペクトル線の周波数幅は多くの場合、自然幅に比べドップラー幅圧力幅の寄与の方が圧倒的に大きい。減衰輪郭も参照。

金属量の低い星で、紫外線が相対的に強くなる現象。太陽程度の金属量をもつ種族Iの晩期型星(F-K型星)の紫外領域の光は、多数の原子スペクトル線の存在により幅広く吸収を受ける。金属量の低い種族IIの星ではこの効果が小さくなるため、紫外線が相対的に強くなる。この紫外超過は星の金属量の指標とされる。

乱流的対流についての古典的理論。恒星内部や恒星大気などでの対流を扱うのに用いられる。対流要素が生まれてから上昇し周りにエネルギーを与えて消えるまでに動く平均的な距離を混合距離というパラメータとし、これにより対流によって運ばれるエネルギー流束を計算する。混合距離は圧力のスケール距離(圧力が約2.7倍変わる距離)を単位として表されることが多く、一般的に1程度の大きさとなる。恒星大気モデルも参照。

星の光度の違いを区別するための分類。1940年代にヤーキス天文台モルガン(William Morgan)とキーナン(Phillip Keenan)によって導入された。
ローマ数字を用いて明るい方から、Ia, Iab, Ib(超巨星; supergiant star)、II(輝巨星; bright giant star)、III(巨星; giant star)、IV(準巨星; subgiant star)、V(主系列星; main sequence star、矮星; dwarf starともいう)、VI(準矮星; subdwarf star)、VII(白色矮星; white dwarf star)に分けられる(英語名称の最後の star は省略されることが多い)。VIIの代わりに英文字Dが用いられることも多い。光度階級の違いは、バルマー線などのスペクトル線の幅の違い(絶対等級効果)によって見分けられる。超巨星は恒星大気の密度が低いためにスペクトル線が一般に細いのに対し、主系列星では密度が高く、線幅が広がっている。準矮星は金属量の低い種族 IIの主系列星に対応し、こういった星では特に大気の密度が高く、光度は低くなる。

恒星大気の温度と圧力構造などを記述するモデル。いくつかの仮定をもとに第一原理から構築される。太陽型星をはじめとして最も多くの型の星について構築されているモデル(1次元静的モデル)は、局所熱力学的平衡(LTE)と静水圧平衡および放射平衡を仮定して計算され、さらに平行平面大気という簡素化が行われることが多い。この場合のモデルパラメータは有効温度、表面重力と化学組成となる。また、対流の取り扱いには混合距離理論が用いられる。より一般的な星の大気を記述するには、動的大気モデルが必要となる。

自然幅ともいう。減衰輪郭を参照。

雑音等価電力を参照。

複数の素子アンテナを組み合わせ、これらで検出した信号間の干渉を利用することで一台の電波望遠鏡を構成するものを、電波干渉計と呼ぶ。素子アンテナで検出した信号を相関器で処理することにより、一台のアンテナによって構成される単一鏡型望遠鏡では実現できない高い解像度や大集光力を実現しうる。歴史的にはさまざまな種類の電波干渉計が作られてきたが、現在活躍している電波干渉計のほとんどは、開口合成望遠鏡である。干渉計超合成電波干渉計超長基線電波干渉計も参照。
アルマ望遠鏡はミリ波・サブミリ波帯で世界最高性能を持つ電波干渉計である。

初期の宇宙では、光子バリオン(通常の物質)が相互作用(トムソン散乱)で強く結合しており一つの流体として振る舞う。この光子バリオン流体は圧力を持つため、空間的な密度ゆらぎ(粗密)があると、それは音波振動となって空間を伝わってゆく。これをバリオン音響振動という。この日本語名称は松原隆彦氏による。英語名称(Baryon Acoustic Oscillation)の頭文字を取ってBAO(ビーエーオーと発音)と呼ばれることが多い。以下では簡単のためにBAOと表記する。ダークマターには圧力が働かないのでBAOは発生しない。

最初にバリオンの密度が高かったところでは光子バリオン流体の圧力が高く、そこから外向きの音波が発生して四方八方に広がる。二次元で例えれば、静かな水面に水滴を一つ落とした時に円形に波が広がるのに似ている(図1左)。この振動は宇宙の晴れ上がり時点までしか伝わることができない。宇宙の晴れ上がりが起きると光子とバリオンの相互作用が切れる(光子が脱結合する)ので振動はそのときの状態のまま止まる(凍結するともいう)。以後光子は空間を真っ直ぐに進む。最初に密度の高いところから放射された音波が宇宙の晴れ上がりまでに進んだ距離を音波の地平線(sound horizon;以下 rd)と呼ぶ(図1左の円周部)。初期の高密度部分を中心とする半径 rd の球殻状の空間は、晴れ上がり時点でバリオンと光子の密度が少し高くなっている。これ以後は、バリオンのゆらぎとダークマターのゆらぎは重力不安定性によって成長し銀河などの天体ができる(図2)。晴れ上がり時点で出た光が真っ直ぐに宇宙空間を進んで我々に届いたものが宇宙マイクロ波背景放射である(図3)。

晴れ上がり時点の半径 rd の球殻は宇宙膨張と共に引き延ばされ、後にできる銀河の分布(宇宙の大規模構造)にもこのパターンが刻み込まれる。実際の初期宇宙にはバリオンの高密度領域はさまざまな場所にさまざまな密度で存在するので、それぞれの場所から出る音波が重なり合って空間内に複雑なパターンを作り出す(図1 右)。このために特徴的なスケール rd(BAOピークもいう)を宇宙大規模構造のなかに目視で見つけることはできない。しかし、2点相関関数パワースペクトルを精密に観測すればそれを検出し、その大きさを測定することができる(添付動画を参照)。

宇宙モデルを仮定すれば音波の地平線サイズ rd は計算できる。このサイズは宇宙膨張と共に引き延ばされるが共動座標ではその長さは変わらない。したがって、これは宇宙における距離測定の「標準ものさし(standard ruler)」となる。大きさ一定の見えない球が宇宙空間のあちこちに浮かんでいると想像すると理解しやすい(図4)。

視線に垂直方向で(見かけの角度の)2点相関関数からBAOピークを測定すれば、それらの銀河までの角径距離DA(z)=rdΔθ;図4参照 )。また視線方向(赤方偏移)の2点相関関数からBAOピークを測定すれば、宇宙の膨張率を表すハッブルパラメータH(z)として、図4より H(z)=0.5c(z2z1)/rd=0.5cΔz/rdc光速度)となるので、Δz の観測から銀河までのハッブル距離( DH(z)=c/H(z)が求まる。宇宙膨張の影響で、過去にさかのぼると両者は異なっており、さまざまな赤方偏移に対してこの観測をすれば、両者の赤方偏移依存性から宇宙膨張の歴史が分かる(図5,図6)。標準ものさしの長さは、ΛCDMモデルでは H070 [km s-1 Mpc-1]なら共動座標で rd150メガパーセク(Mpc)(約5億光年)である。


バリオン音響振動と銀河分布の関係を示す動画(CAASTRO, the new Centre of Excellence for All-sky Astrophysics)

https://www.youtube.com/embed/jpXuYc-wzk4?si=MVJBj-AXE4pKVHB3"

ガス粒子(原子や分子)からの放射や吸収によるスペクトル線の形状(線輪郭)は、古典的には外部電場による電子の強制振動子モデルにより表される。このとき、放出・吸収される光子の反作用による減衰効果によりスペクトル線には幅が生じ、ローレンツ関数で表される形状となる。この形状は減衰輪郭と呼ばれ、その半値幅減衰幅という。
量子論では不確定性原理に基づいて減衰輪郭が説明され,その幅を自然幅という。また、比較的高密度なガスに起因するスペクトル線にみられる広がりも減衰輪郭で表され、その幅を圧力幅という。ドップラー幅フォークト輪郭も参照。

単位表面積あたりの光度(表面輝度)が一定のところを結んだ線のこと。天体の表面輝度分布を等輝度線で表した図を等輝度線図、あるいはアイソフォトという。

高温で水素とヘリウムが完全電離した状態の気体における不透明度の近似法。不透明度は 、水素とヘリウム束縛-自由遷移によって数万度で極大をとり、より高温側では温度の上昇につれて減少する。この近似ではこれが温度の-3.5乗に比例し、密度に比例する形として与えられる。ロスランド平均不透明度も参照。

銀河ガス星雲などの広がりを持つ天体の光度を測る方法の一つで、一定の等輝度線に含まれる部分の光量を積分して測定する方法。開口測光も参照。

天体の明るさを測る単位で、「級」を省いて単に1等、2.3等、-0.4等などともいう。
古代ギリシアのヒッパルコスは、1000個あまりの恒星を記載したヒッパルコス星表で、星を明るさに従って6つの光度階級に分類した。最も明るい星を1等、肉眼でやっと見える星を6等としたこの光度階級が現在の星の等級の起源となった。18世紀末のイギリスの天文学者ウィリアム・ハーシェルは星の明るさと等級の関係を調べ、彼の息子のジョン・ハーシェルは1等星は6等星のほぼ100倍の明るさであることを発見した。1856年にイギリスのポグソン(N. Pogson)がポグソンの式により等級差の定量的な定義を定めたが、最も明るい星を1等星、肉眼で見える最も暗い星を6等星とした伝統的な尺度を踏襲した。

こと座のベガ(織女星)を等級の標準星とするベガ等級ではベガは定義によって0等星である(厳密な定義はベガ等級の項目を参照)。天体の明るさ(単位面積あたりに入射する光の強度)を I とするとき、その等級 m は、

m=mVega2.5log10(I/IVega)

で表される。ここで、 mVega=0 はベガの等級, IVega はベガの明るさである。等級の定義が対数尺度でかつ、対数の前の係数が-2.5なので、明るい天体ほど等級の値は小さくなる。明るさの比が、10倍、100倍、1000倍となるにつれ、等級は2.5等、5等、7.5等と変化する(1等級の違いは明るさの比で1001/5 = 約2.512倍)。ベガの100分の1の明るさの天体は5等、10倍の明るさの天体は、-2.5等となる。天体の明るさは波長により変わるので、実際には、どの波長帯(バンド)で測った等級であるかを、mBmR などのようにバンドを表す記号を付けて明示する。ベガはどのバンドでも0等級である。

最近では、ベガを基準にした上記のベガ等級の他に新しい定義によるAB等級が使われることも多い。一般的な見かけの等級は天体の見かけの明るさを基にして測るが、天体の真の明るさを測るためには絶対等級が使われる。

1996年2月17日に打ち上げられたアメリカ航空宇宙局(NASA)の小惑星探査機。NEARはNear Earth Asteroid Rendezvousの略で、文字通り地球接近小惑星エロスをターゲットにした探査機である。エロスはS型のスペクトルを有する小惑星で、アモールグループに属し地球接近小惑星の中では2番目に大きい。打ち上げの後、1997年6月にメインベルト小惑星でC型のマチルデにフライバイをして観測を行った。1999年1月のエロスへの軌道投入は延期され、2000年2月にランデブーに成功した。表面から数kmから数10 kmの軌道を周回して、カメラ、分光計、高度計などでさまざまなデータを取得して、細粒のレゴリスに覆われた小天体エロスの姿を明らかにした。最後に、エロス表面に着陸を試みた。着陸は成功して、ガンマ線分光計がエロス表面の組成のデータを取得し送信した。ミッション終了後に、計画を主導したがエロス到着前に亡くなったシューメーカー博士をしのび、ニアーシューメーカーと改名された。

地球が太陽の周りを公転することによって起きる1年を周期とする天体の見かけの動き。一般には、太陽が星座の中を黄道に沿って1年で天球上を西から東へ1周すること(太陽の年周運動)、およびそれを反映して、真夜中に南中する星座が東から西に移り変わって1年でもとに戻ることを指す。日周運動と比べると曖昧に定義されており、年周運動の一種とも考えられる年周視差年周光行差には固有の名前が付けられている。

エネルギー準位を参照。

地球の公転による光行差。年周光行差は20.5"程度である。