電荷を持たないレプトンに分類される素粒子で、電子ニュートリノ(
岩石を主成分とする隕石(石質隕石)の中で、ケイ酸塩の球粒組織であるコンドリュールを多く含み、溶融を経験せず、岩石質と金属質が分かれていないものの総称。難揮発性元素に富むCAI(高アルミニウムカルシウム含有物)、金属鉄、硫化鉄などを含む。粒子の間隙は数ミクロン以下の微粒子で埋められていて、マトリクスと呼ばれる。コンドライトは、組成から、エンスタタイトコンドライト、普通コンドライト、炭素質コンドライトに分類される。この順に鉄の総量に占める酸化鉄の割合が増えるため、還元的環境から酸化的環境までの違いを表していると考えられる。酸化鉄の量や酸素同位体比により、エンスタタイトコンドライトはさらに、EH, ELに分類され、普通コンドライトはH, L, LLに、炭素質コンドライトは、CI, CM, CO, CV, CR, CK, CHに分類される。いずれにもあてはまらない、Kコンドライト、Rコンドライトというグループも提唱されている。地球に落下する隕石の8割以上がコンドライトで、そのうち大部分が普通コンドライトである。そのため、地球型惑星の原材料物質として、平均的なコンドライト組成の物質を考えることが多い。
素粒子の標準理論ではニュートリノの質量はゼロであるが、有限の質量があり、その質量が種類(フレーバー)により異なる場合に、量子力学的な効果で飛行中にフレーバーが入れ替わる現象。ニュートリノと反ニュートリノの間の振動として1957年ポンテコルボ(B. Pontecorvo)が提唱し、1962年に牧二郎、中川昌美、および坂田昌一によって異種間の振動が考察された。ホームステイク実験による太陽ニュートリノの観測結果や、カミオカンデによる大気ニュートリノの観測結果は、ニュートリノ振動が起こっていること、すなわちニュートリノには小さな質量があることを示唆していた。その後、スーパーカミオカンデの大気ニュートリノ観測によって、ニュートリノ振動の存在は確立され(1998年)、梶田隆章東大教授のノーベル物理学賞受賞につながった。太陽ニュートリノ問題も参照。
日本の天文学者(1874-1943)。小惑星の平山族をみつけた。仙台に生まれ、東京帝国大学星学科を卒業して、位置天文学では極運動などを研究した。日露戦争後の樺太(サハリン)の北緯50度の国境線画定作業に日本側委員として参加した。このときに使用した子午儀は、現在は国立科学博物館に展示されている。1915-17年(第1次世界大戦中)にアメリカに留学し、エール大学のブラウン(E.W. Brown)の月運動論の完成を手伝った。ブラウンの示唆で小惑星の研究に着手、個々の小惑星軌道から木星による摂動効果を除くと、固有傾斜角と固有離心率がほぼ共通するグループをなすことを発見、「族」(family)と命名した。平山は五つの族を発見したが、現在では数10個の族が見つかっている。東洋暦学史にも詳しく、明治前の日本天文暦学書の目録を作成した。
ザイデル収差の一つ。光束の縦方向と横方向とで焦点位置が異なるために起こる収差。光学系のレンズや鏡の歪みなどの原因で発生しやすい収差である。円柱レンズなどを用いて補正することがある。
コンドライト隕石に含まれる、直径1mm弱のケイ酸塩鉱物を主成分とした球粒のこと。コンドリュールの多くは、カンラン石や輝石の結晶と、結晶の隙間を埋める微結晶もしくはガラス質の石基(メソスタシス)からなる。普通コンドライトでは、コンドリュールは体積の60-80%を占める。コンドリュールのような球状の結晶体は通常は地球の岩石では見られない。この形態から、コンドリュールは、初期の原始太陽系円盤の中で加熱されて溶融したケイ酸塩が速やかに冷却されて形成されたと考えられている。
われわれの住んでいる空間3次元の世界は、より高次元(バルク)に埋め込まれたブレーン上に実現されているとする宇宙論。膜宇宙論、ブレーンワールドなどとも呼ばれる。ブレーン(brane)は膜を意味する。
重力はバルクも伝搬することができるが、他の相互作用はブレーン上にしか伝播しないと考え、これにより大きな余剰次元も観測と矛盾することなく存在できるようになった。
カロライン・ハーシェル(Caroline Lucretia Herschel;1750-1848)は、ドイツ出身のイギリスの女性天文学者。ハノーバーからイギリスへ渡り、兄、ウィリアム・ハーシェルの観測助手を務めて天体観測を行い、自らもハーシェル・リゴレ彗星など、8個の彗星を発見した。またウィリアムの観測を整理して星雲カタログを発表した。この目録がのちにNGCカタログに発展する。兄の死後はドイツのハノーバーに戻り、星雲カタログづくり、自伝書きなどに努める。英王立協会ゴールドメダル(1828)、プロイセン科学ゴールドメダル受賞(1846)。
波の伝播の様子を説明する原理。波の位相の一定面、すなわち波面の各点から球面波(素元波あるいは2次波という)が放出され、それらが重ね合わされて、素元波の包絡面が新たな波面を作り、波が伝播するという説明。
この原理はオランダの物理学者ホイヘンス(C. Huygens)が1678年に発見したが、1836年、フランスの物理学者フレネル(O. J. Fresnel)が素元波の重ね合わせの重要性を指摘したことで、ホイヘンス-フレネルの原理とも呼ばれる。
太陽フレアから細く絞られたジェット状の形にガスが加速される現象で、H𝛂線で観測される。その速度は数10-数100 km s-1で、太陽の脱出速度を超えるスプレイと区別されて呼ばれている。噴出型のプロミネンスに分類される。
光(電磁波)の電場成分の複素振幅の開口面(射出瞳)における分布。複素振幅は実部が電場の振幅で虚部が波面収差に相当する。瞳関数で記述される電磁波面が収束して焦点面における電磁波強度の分布(点像分布関数)を形作る。瞳関数をフーリエ積分することにより焦点面における電場成分の複素振幅(点像分布関数を含む)を求めることができる。円形開口で波面収差がない場合 (エアリーパターン(右図))の点像分布関数(中段)は、理想的な望遠鏡が星(点光源)に対して結ぶ像となる。矩形開口の場合(中央図)は、開口の長い方向 (図では水平方向)に細い点像分布関数となる。 また、2つの円形開口がある場合(右図)はヤングの干渉実験(2つのスリット) に近い条件となり類似の点像分布関数パターンとなる。
波長の長い(0.2-1 nm 程度)X線の名称。電磁波も参照。
バーデ(Walter Baade;1893-1960)はドイツ生れのアメリカの天文学者。星に2種類の種族があることを発見した。ドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州、シュレッティングハウゼン生まれ。ゲッチンゲン大学で学び、ハンブルク天文台の助手となり、1931年に渡米してウィルソン山天文台員となり、ハンブルグ天文台のシュミットカメラをアメリカに伝えた。
第2次世界大戦中に、アンドロメダ銀河の中心部や矮小楕円銀河が赤色写真で星に分解されることを見いだした。この新知見はウィルソン山天文台の100インチ望遠鏡でなされたが、戦時中の灯火管制でパサデナの街の灯が暗かったこと、ドイツ国籍で戦時動員をまぬがれたことなどが幸いした。その結果、恒星は種族Ⅰと種族Ⅱに分かれ、それぞれに属する脈動変光星は変光周期が同じでも絶対等級は異なることがわかった。この新たな周期-光度関係を用いて銀河の距離を決めなおしたところ、宇宙の大きさは従来知られていたより2倍も大きいことがわかった。
また超新星の概念を確立し、爆発後その中心に中性子星が残ることをツビッキー(F. Zwicky)と共に示したり、はくちょう座AやカシオペアAといった当時発見されたばかりの電波源を光学同定している。小惑星も10個発見した。1959年にドイツに戻り、1960年にゲッティンゲンで没した。1954年王立天文学会ゴールドメダル、1955年ブルース・メダル受賞。
ホールトン・アープによるバーデの追悼記事
https://articles.adsabs.harvard.edu//full/1961JRASC..55..113A/0000113.000.html
2007年に打ち上げられ、火星の北極平原に着陸したアメリカ航空宇宙局(NASA)の火星探査機。アリゾナ大学月惑星研究所が開発の中心となった。マーズオデッセイ探査機の観測で氷の存在が期待できる場所に2008年5月25日着陸した。ロボットアームで周囲の土壌を掘削して、顕微鏡や化学分析装置により解析を行った。その中には、土壌を水に溶かしこみイオンを測定する湿式分析装置や加熱で発生するガスを分析する熱-発生気体分析装置がある。着陸船のカメラの画像と土壌分析により、水の氷の存在が確認された。そのほか、炭酸塩鉱物、過塩素酸などを土壌中に確認した。有機物の存在は確認されていない。電源が太陽電池のみであったため、日照が弱くなった11月2日に活動を終えた。
シュプリームカムの後継機として開発されたすばる望遠鏡の主焦点広視野カメラ。主焦点補正光学系で確保される直径1.5度角(実寸約50 cm)にわたる高画質の広視野を、116枚の大型CCDで撮影する。略称はHSC。 2012年夏に試験観測を行い、2014年から運用されている。国立天文台とカブリ数物連携宇宙研究機構を中心とする日本の研究機関、台湾の中央研究院天文及天文物理研究所(ASIAA)、及びプリンストン大学の国際協力で開発された。
2014年から、広帯域5枚(g, r, i, z, y)、狭帯域4枚(NB387, NB816, NB921, NB101)のフィルターを用いた「HSCすばる戦略枠プログラム」としてサーベイ観測(HSCサーベイ)を行った。この観測には330 夜というハワイ観測所史上最大の夜数が投入され、2022年1月に観測を完了した。データはこれまでに3回(2017.2,2019.5,2021.8)公開され、天文学のレガシーとして世界の注目を集めており、それを用いて天文学のほぼすべての分野にわたって大きな成果が挙がっている。公開されたデータは、世界中誰でも使うことができる。また、このデータを手軽に使える一般向け「HSCビューワ」も公開されている。
2017年5月にシュプリームカムが退役してからは、 ハイパーシュプリームカムが、世界最高性能のすばる望遠鏡の広視野撮像観測を一手に担っている。
国立天文台のHSCのサイト:https://hsc.mtk.nao.ac.jp/ssp/instrument_jp/
HSCサーベイ観測のサイト:http://hsc.mtk.nao.ac.jp/ssp/
HSCビューワ:http://hscmap.mtk.nao.ac.jp/
宇宙論的な構造形成論に則り、ある時期に形成される天体(ダークマターハロー)の質量関数を解析的に記述する理論。プレス(W.H. Press)とシェヒター(R. Schechter)によって1974年に発表された。
宇宙の初期密度ゆらぎがガウス分布(正規分布)に従うと仮定し、そのゆらぎが時間とともに線形に成長していき、ある時点である質量スケール M のゆらぎが、宇宙膨張に打ち勝って崩壊し天体を形成するのに十分な値(閾値)に達したときに、その質量 M の天体が生まれると考える。この閾値は球対称なゆらぎの線形成長解によって求められている一定値を使う。このような近似的な扱いによって、天体の形成率とその質量分布を初めて解析的に導出した理論で、その後天体の質量発展が追えるようにも拡張され、構造形成論の基本モデルとして広く用いられている。スーパーコンピュータを用いたN体シミュレーションによって計算されるダークマターハローの質量関数ともよい一致を示すことが確認されている。
電磁場のエネルギーの流れの密度を表すベクトル。電場
電磁波で直接観測が可能な恒星の大気のうち、コロナは100万度を越える高温の外層大気である。太陽の場合、皆既日食時に明るい光球や彩層が月に隠されることで淡いコロナの様子を肉眼で見ることができる。太陽大気の温度は、太陽中心核から光球の温度最低層まで減少を続け、彩層で上昇に転じ、短い距離の遷移層を経て約6000度である光球表面の約2000 km上空で100万度以上の温度をもつ。この領域がコロナである。その高温のため、コロナ中の原子のほとんどは電離したプラズマ状態にあり、そこにあるイオンからプラズマの温度に特有の輝線が放射される。このようにコロナが高温であるのは、下層から伝達されたエネルギーがコロナで解放されて大気が加熱されているからである。その加熱機構として諸説提案されてはいるが、現在までのところ完全な理解には至っていない(コロナ加熱を参照)。
皆既日食の際に可視光で見られるコロナのうち、比較的太陽表面に近いところは光球からの光がコロナ中の電子に散乱されて観測者に届く連続光成分(Kコロナ)である。この可視光コロナの分光スペクトルを見ると、ある狭い波長に局在した輝線成分(Eコロナ)がイオンからの放射として観測でき、このうち可視光域で最も明るいのが5302.8Åにある13階電離した鉄イオンからの輝線放射である。太陽半径の数倍の高さになると、黄道面に浮遊するダストによる太陽光の散乱光が最も明るい成分となる。これは高温のコロナではないが、コロナ域からの放射でスペクトル中にフラウンホーファー線が観測されることから慣習でFコロナと呼ばれる。
半導体光検出器の一つで、光子の入射により半導体の抵抗値が変化する現象を利用して光を検出する。半導体のバンドギャップよりもエネルギーの大きい光子が入射すると、価電子帯の電子が伝導帯に遷移することにより伝導電子(キャリア)が生成される。半導体素子の電極間にかけるバイアス電圧によって電極に到達するキャリアによる電流あるいは電荷を検出する。フォトダイオードも参照。