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ホームステイク実験

 

よみ方

ほーむすてーくじっけん

英 語

Homestake experiment

説 明

デービス(R. Davis)らがアメリカのホームステイク(Homestake)鉱山(ペンシルバニア州)の地下において1960年代に開始した実験で、世界で初めての太陽ニュートリノ観測実験である。
この実験は、615 tのテトラクロロエチレン({\rm C}_2{\rm Cl}_4)を用い、ニュートリノと ^{37}{\rm Cl} の反応により生まれる^{37}{\rm Ar} を約80日ごとに回収し、^{37}{\rm Ar} の崩壊数を低バックグラウンド比例計数管によって計測した。こうした実験手法は放射化学法と呼ばれ、あるエネルギー閾値以上のニュートリノの積分量を測定することになる。ニュートリノと ^{37}{\rm Cl} との反応のエネルギー閾値は0.814 MeVであり、^{37}{\rm Ar} の生成率に寄与するのは主として太陽ppチェインのうち不安定な^8{\rm B}が崩壊するときに放出される^8{\rm B} ニュートリノである(約76%が ^8{\rm B} ニュートリノ、15%が^7{\rm Be}電子を捕獲して^7{\rm Li} とニュートリノになる反応で生成される ^7{\rm Be} ニュートリノ、他は pep三体反応によるものと CNOニュートリノなど)。ホームステイク実験が観測した ^{37}{\rm Ar}の生成率は約0.5個/日であり、標準太陽モデルの予想値約1.4個/日に比べて1/3しかなく、これを「太陽ニュートリノ問題」として提起した。ニュートリノ天文学も参照。

2019年05月11日更新

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    関連画像

    ホームステイク鉱山地下に設置された太陽ニュートリノ観測実験装置 (Courtesy Brookhaven National Laboratory)