天文学辞典 :ASJ glossary of astronomy | 天文、宇宙、天体に関する用語を3300語以上収録。随時追加・更新中!専門家がわかりやすく解説します。(すべて無料)

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見かけの等級

地球から見たときの天体の明るさ(見かけの明るさ)を表す量。等級という単位で表す。等級は対数尺度で表され、明るさが100分の1になるごとに等級は5等ずつ増加する。すなわち、1等の違いは約2.5倍の比に相当する(ポグソンの式を参照)。等級の目盛りの原点(ゼロ点)の取り方(どの明るさを0等とするか)のことなるベガ等級AB等級の二つのシステムが使われている。天体の見かけの等級は測光標準星に対する天体の明るさの比を観測して得られる。

見かけの等級は天体までの距離に依存するので、天体の真の明るさを表すためには絶対等級が用いられる。天体の明るさは距離の2乗に反比例するため、見かけの等級が同じでも距離が10倍遠ければ、絶対等級は5等小さいということになる。
見かけの等級を $m$、絶対等級を $M$、距離を $r$ [pc] とすると、

$$m - M = 5\,{\rm log}_{10}\,r - 5$$

という関係がある。$m - M$距離指数と呼ぶ。

違う宇宙、あるいは一つの宇宙の別の事象を結ぶ時空の抜け道のこと。代表的な例としては極大シュバルツシルト解におけるアインシュタイン-ローゼンの橋がある。これは漸近的に平坦なアインシュタイン方程式の厳密解を極大に拡大した時空に現れるもので、2つの漸近的に平坦な時空を結ぶ構造となっている。ただしこの2つの漸近的に平坦な領域は空間的に隔たっており、行き来することはできない。2つの離れた事象を行き来できるようなワームホール時空をつくるには負のエネルギー密度をもった物質が必要であり、またいったんワームホールができたとしてもすぐにブラックホールに崩壊してしまうため現実の宇宙には存在しないと考えられている。ただしプランクスケールというミクロな時空では量子重力理論的な効果によってトポロジーが変化するため仮想的なワームホールは生まれたり消えたりしているという考えもある。クルスカル図も参照。

C2やCNなどの炭素を含んだ分子の吸収スペクトルを示す恒星。炭素星と呼ばれることが多い。比較的温度の高いR型と、低温のN型に分けられる。スペクトル型(星の)も参照。

ハーバード分類で化学組成の違いに対応する系列の低温度星。R型と共にC型(炭素型)と呼ばれる。CとOの原子数の比C/Oは太陽では∼0.5であるが、C型はC/O>1であるような低温の星である。C2、CN、CH分子による吸収が強く、特にこれらの炭素化合物は短波長側で光を良く吸収するために、C型星は非常に赤くなる。R型星よりも低温である。1868年にセッキ(A. Secchi)により発見された。スペクトル型(星の)も参照。

宇宙線を参照。

相関器を参照。

波長が0.01-1nm 程度である電磁波の名称。波長が0.2 nm程度より短いものを硬X線、それより長いものを軟X線ということがある。電磁波も参照。
1895年にドイツのレントゲン(W. R”ontgen)により発見された。太陽系外の天体からX線が届くことは、1962年アメリカで活躍したイタリア人ジャッコーニ(R. Giacconi)らが発見した。X線は、極めて高温度のガスや高エネルギー活動が起こっている領域から放射される。X線を放射する天体を一般にX線源という。

強いX線放射する天体の総称。おもにX線連星系激変星であるが、超新星残骸原始星ジェットX線パルサー活動銀河核銀河団など、さまざまな天体がX線を放射している。太陽もX線源である。

ある時突然X線で輝き始め、やがてまた暗く消えていく天体。X線連星系において、コンパクト星であるブラックホール中性子星へさまざまな機構により間欠的にガスが流入するために明るさが激しく変動する現象と考えられている。X線望遠鏡の感度が上がるにつれて、常時観測できるようになった天体もあり、X線新星と変動の激しいX線星にははっきりした境界はないため、最近ではX線突発天体(X-ray transient)と呼ばれることが多くなっている。

天体画像データから特定の種類の天体を自動検出するアルゴリズムの一つ。検出したい種類の天体のモデルに合致するパターンを天体として検出していく。たとえば、銀河であれば輝度分布をモデルとし、銀河団であれば、メンバー銀河の数密度分布をモデルとする。楕円銀河など、天体ごとの個性が少なくモデルとの合致度の良い種類の天体に関しては有効な検出法である。

特殊相対性理論において慣性系同士の座標変換はローレンツ変換であるが、相対速度 $v$ が大きいほどある系から見たとき別の系の時間の遅れや長さの縮みなどの相対論的効果が大きくなる。その目安を与えるのがローレンツ変換に現れるローレンツ因子、あるいはしばしばギリシャ文字のガンマを用いて表すのでガンマ因子ともいい、次のように与えられる。

$$\gamma=\frac{1}{\sqrt{1-(v/c)^2}}$$

ここで $c$光速度である。

メシエ(Charles Messier;1730-1817)はフランスの天文学者。星雲や星団の「メシエカタログ」をつくり、13個の彗星を発見した。
ロレーヌ地方のバドンビル生まれ。1751年、フランス海軍天文台の天文官ジョゼフ=ニコラ・ドリール(J.N. Delisle)の助手として、クリュニー僧院跡の観測所で彗星の探索を行った。1764年頃、彗星を探しやすくするために、彗星と見間違いやすい星雲や星団のリストを作り始めた。1771年までに、45個の星雲と星団を載せた予備的なリストを完成させ、それぞれに確認のためのナンバーをつけ、第1版(M1~M45)を1774年、最終版(M1~M103)を1781年に発表した。 1771年に海軍の天文技師に任命(前任のドリールは1765年引退)されるなど、数々の彗星の発見により、メシエの名声は高まり、フランス国王ルイ15世から「彗星の狩人(Ferret of Comets)」というニックネームを与えられた。1764年、ロンドン王立協会外国人会員、1770年にフランス科学アカデミーの会員となった。1806年には皇帝ナポレオン1世よりレジオンドヌール勲章を授与された。
より多数の天体を含むドライヤー(J. Dreyer)のNGCカタログが後に出たが、メシエカタログは今でも特にアマチュア天文家に愛用されている。

 

メシエカタログに掲載された天体の一覧は本辞典の「有用な諸データの表」にある。
https://astro-dic.jp/about/table/

多変数確率分布において、任意の2つの変数値に対する相関のこと。天文学では 銀河の偏在(密集)の度合いを定量化するのに使うことが多い。
ここでは例として銀河の空間分布について考える。この場合は2点相関関数というより2体相関関数と呼ぶことが多い。ある距離$r$ 離れた微小体積 $dV_1$ および $dV_2$ に同時に銀河が見つかる確率 $dP$

$$dP = n^2 \,[1 + \xi(r)]\, dV_1 dV_2$$

と書く。ここで $n$ は銀河の平均個数密度である。この $\xi(r)$ を2体相関関数と呼び、平均確率 $n^2dV_1dV_2$ からの超過分に対応していることがわかる。したがって、$\xi(r)$$r$ によらず 0 のときは銀河が一様分布していることを表し、$\xi(r)$ > 0 であれば、その距離スケール $r$ で銀河が群れていること、$\xi(r)$ < 0 であれば、その距離スケール $r$ を銀河が避けていることを意味する。

ローレンツ変換に対する不変性のこと。ローレンツ変換は、任意の2つの世界点 $(t_1,x_1),(t_2,x_2)$ 間の世界間隔

$$L^2=-c^2(t_1-t_2)^2+(x_1- x_2)^2$$

を不変に保つような時空座標変換である。
特殊相対性理論はローレンツ不変性を保つように作られている。

X線源のなかで星に対応する天体、おもにX線連星系激変星、活動星などである。

宇宙からのX線を観測することにより天体や現象を調べる天文学の分野。超高温天体や超高温ガスなどから放出される波長が0.01-10 nm 程度(光子のエネルギーとして0.1-100 keV程度)の光をX線と呼ぶが、X線は大気に吸収されて地上には届かないため、観測ロケット人工衛星に検出器を搭載して観測する必要がある。ジャッコーニ(R. Giacconi)らによるロケット実験で、1962年に最初の太陽系外のX線天体の観測が行われた。X線源X線望遠鏡も参照。

特殊相対性理論における慣性系間の座標変換。 どの慣性系でも微小座標間隔に対する次の組み合わせを不変に保つような座標変換として求めることができる。

$$ds^2= -c^2 dt^2 +dx^2 +dy^2 +dz^2$$

この組み合わせを4次元線素という。たとえば、相対速度 $v$$x$ 方向に移動する2つの慣性系の間の $x$ 方向のローレンツ変換は次のように書ける。

$$
t'=\frac{1}{\sqrt{1-(v/c)^2}} \left( t- \frac{v x}{c^2} \right) = \gamma\,(t- \frac{v x}{c^2})$$

$$
 x'=\frac{1}{\sqrt{1-(v/c)^2}}\left( x- vt \right) = \gamma\, (x- vt)
$$

ここで $\gamma$ローレンツ因子

$$\gamma = \frac{1}{\sqrt{1- (v/c)^2}}$$

である。
この変換を、 $x$ 方向のローレンツブーストという。
ローレンツ変換の全体は群をなし、ローレンツ群と呼ばれる。ローレンツ群は、3軸方向のブースト変換の速度と3軸周りの回転角に対応する合計6個のパラメータをもつ。

X線バーストを参照。

水晶や方解石などの複屈折結晶の性質を利用した狭帯域フィルターで、フランスのリオ(B. Lyot)が1930年代に開発した。偏光板-複屈折結晶-偏光板の基本要素を何段か組み合わせて構成される。結晶厚を1倍、2倍、4倍、8倍とした基本要素は、透過率が最大となる共通波長をもちながら透過率最大値をもつ波長間隔が1, 1/2, 1/4, 1/8というように厚さに反比例して狭くなり、これらを一つのフィルターとして直列につなげると、共通して透過率が最大となる波長だけを透過する狭帯域フィルターとなる。このフィルターを単色の狭帯域フィルターとして使うときには、このフィルターの前方部に特定の波長にあるピークだけを透過するような広帯域フィルターをおいて使用する波長を選択する。多くの偏光板を使用することから、他の狭帯域フィルターと比べて透過率は高くないが、広い視野にわたって透過波長を一定に保つことができるという特徴がある。このフィルターを製作する上で良質の方解石結晶の入手が難しいことが難点である。

X線放射するパルサー。多くは連星系をなしており、通常の恒星から強い磁場を持つ中性子星の周囲にガスが質量降着することにより、ガスの重力エネルギーが解放されてX線を放射する。この際角運動量を中性子星に与えて、パルサーの回転周期が短くなることもある。X線源も参照。X線で非常に明るいことから、X線パルサーは上記の連星系を形成している中性子星を指すことが多いが、単独の中性子星も星表面からの熱放射磁気圏の加速された荷電粒子からの放射としてX線パルスを放射しており、X線パルサーに含む場合もある。特異X線パルサーも参照。