銀河の化学進化に関する用語。最初はガスのみであった銀河の中で、次第に星ができるモデルで考える。ある時刻に起きた星生成で星の質量の増加分(dMs)に対する、重元素質量の増加分(dMm)の割合p を収率という。すなわち、dMm = p dMs である。ここで、大質量星については、生まれた瞬間に寿命を終えると近似し、残された中性子星やブラックホールのみが星の質量の増加分(dMs )に寄与すると仮定する。収率の値は星の初期質量関数に依存する。初めは重元素を含んでいなかったガスの系が星生成によって進化するとき、ガスがすべて星になった時点での星の平均の重元素量は収率の値に等しい。しかし系が閉じておらず、作られた重元素が系の外に逃げてしまったり、外から新たなガスが流入してくる場合は、星の重元素量の増加はそれだけ鈍る。イールドとも言う。イールドは生産や収獲、投資に依る収益、利回りという意味である。
カブリ数物連携宇宙研究機構を参照。
クリミア天体物理天文台参照。
中性水素原子が放射吸収する、波長が21 cm(すなわち、周波数1420 MHz)のスペクトル線。中性水素原子ガスをHIガスと呼ぶため、HI輝線・HI吸収線と呼ぶこともある。
中性水素原子を構成する陽子と電子は共にスピンと呼ばれる物理量を持ち、それぞれ2つの状態を示し、上向き・下向きと呼ぶ。陽子と電子のスピンの向きが一致している時と、逆向きの時とで水素原子全体が持つエネルギーが僅かに異なり、これが変わる際に放射または吸収されるスペクトル線が21 cm線である。
電波天文学の黎明期に注目され、オランダのファン・デ・フルスト(van de Hulst)が存在を指摘し、米国のユーイン(H.I.Ewen)とパーセル(E.M. Purcell)およびオランダのオールト(J. H. Oort)達の2グループが1951年に独立に検出に成功した。その後、オールトらは精力的に観測を進め、その天球上および視線速度の分布を調べることで、天の川銀河(銀河系)に渦巻腕に対応する構造が存在することを観測的に明らかとした。この解析の際に利用されたのが運動学的距離である。
NGCカタログのこと。
励起状態から2つの光子を放出してエネルギーの低い状態へ遷移すること、およびその結果として放出される電磁波のスペクトルのこと。
電離水素領域において、特に中性水素原子の準安定準位 22S から基底状態 12S への1光子を放出する遷移は強く禁止されているが、2光子放出は可能である。この場合、2つの光子のエネルギーの和が準位間のエネルギー差になれば良いので、連続光が放射される。この遷移確率は $A_{2^2{\rm S} \rightarrow 1^2{\rm S}}$ = 8.23 s-1 で、水素原子が光電離される確率 10-8-10-4 s-1 より十分に高い。この放射は波長 364.6 nm のバルマー端付近での寄与が大きい。
電波望遠鏡が一つの受信機で、同時に観測できる最高周波数と最低周波数の間の周波数域をいう。周波数帯域幅が広いほど連続波電波の場合は感度が高くなり、線スペクトルの場合はその帯域にある多くのスペクトル線を観測することができる。多くの受信機では、増幅器の周波数帯域または線スペクトルの観測では電波分光計の周波数帯域で決まる。
通常の分子からなる気体では、分子同士の衝突によって運動エネルギーが交換されることで、熱力学的に緩和し、熱平衡に近づいていく。粒子間相互作用がクーロン力であるプラズマや、重力である銀河、星団などの重力多体系においても、粒子同士のクーロン散乱や重力散乱によってエネルギーが交換され、熱平衡に向かって分布関数が進化していく。この緩和過程を2体緩和という。
重力の場合、散乱断面積が速度の4乗に反比例し、粒子の質量の2乗に比例する。このため、2体緩和のタイムスケールは、速度分散の小さい散開星団や球状星団では宇宙年齢より短いが、速度分散の大きい楕円銀河では宇宙年齢よりはるかに長くなる。
一般相対性理論では、一般共変性のため時間の方向が一意的に定義されない。重力理論の正準形式や初期値問題を考えるために、見かけ上一般共変性を破り、時空を時間と空間方向に分解する手法が3+1分解である。時空多様体は空間的超曲面(空間方向)の族に分割され、超曲面の3次元接ベクトルと1次独立な方向が時間方向となる。各超曲面には空間的な誘導計量が定義される。また、時空多様体上での埋め込まれ方を記述する量として、外的曲率が定義される。外的曲率は誘導計量の「速度」あるいは正準共役運動量に対応し、誘導計量と外的曲率に対する重力場の正準形式および初期値問題が構成される。
マゼラン銀河を参照。
イギリスのケンブリッジ大学が、4素子の電波干渉計を用いて赤緯が-22度から+71度の領域にあって周波数159 MHzにおいて8ジャンスキー(Jy)以上の放射エネルギー流束(フラックス)密度を持つ471個の電波源を収録したカタログ。1959年に発表された。ケンブリッジ大学が3番目に発表した電波源カタログなのでこのように命名されており、天体名の最初に3Cが付く(たとえば3C273)。その後、1962年には、赤緯が-5度より北側の領域において178 MHzで9 Jy以上の328個の電波源のカタログが追加された(3CRカタログとも呼ばれる)。電波銀河やクェーサーなどを含んでおり、連続波電波の電波源の代表的なカタログである。なお、このあとも4Cカタログ、5Cカタログなど多くのカタログが追加出版されている。
電子のスピンと電子の軌道角運動量の間のスピン-軌道相互作用によってエネルギー準位が分裂すること。または、そのようなエネルギー準位の構造。微細構造線、超微細構造も参照。
大マゼラン雲(大マゼラン銀河)と小マゼラン雲(小マゼラン銀河)をまとめた呼び名。地球から肉眼で夜空を見た際の印象に基づいて、“雲”と呼んでいるが、実際は銀河である。マゼラン銀河も参照。
天体の位置、大きさや形状、および明るさを調べることを主な目標として天体の画像を取得する観測。サーベイ観測は一般に撮像観測である。通常、様々なフィルターを通して撮像観測が行われる。
可視光でCCDのような二次元の電子的光検出器が登場する以前は、撮像観測と言えば写真乾板による撮像観測を指していた。写真では天体の明るさを精度良く測れなかったので、天体の明るさを測定するための測光観測は、光電子増倍管など画像が撮影できない1チャンネルの電子的光検出器を用いて行われていた。このため、撮像観測と測光観測は互いに相補い合う観測と位置づけられていた。
CCDなどの二次元の電子的光検出器では、画像の取得と天体の明るさの測定がともに可能であるため、それによる観測は初期には「撮像測光観測」とも呼ばれていた。しかし、写真乾板が天体観測に用いられなくなってからは、撮像観測で撮像と測光ができるのは当然のこととなったので、「測光」をつけずに単に撮像観測と呼ばれるようになった。複数のフィルターでの測光値から天体のエネルギースペクトルの概要を把握することができるので、天体の性質や場合によっては距離の目安(測光赤方偏移)を得ることもできる。
結合器のこと。
多変数確率分布において、任意の3つの変数値に対する相関のこと。とくに2点相関関数では表すことのできない相関の情報を3点相関関数として定義することが多い。平均値がゼロになるような3つの確率変数x1, x2, x3 があったとき、その3点相関関数はこれら3つの量の積の平均値 < x1 x2 x3 >で定義される。一般に多変数ガウス統計に従い各平均値がゼロになる変数の分布では、3点相関関数は必ずゼロになる。銀河分布の解析においては、空間に3つの点を考えて、それらの点においた微小体積に銀河が含まれる確率により3点相関関数が定義される。3点相関関数はパワースペクトルとは独立な情報を含んでいる。
小マゼラン銀河を参照。
低温の一酸化炭素(CO)分子が放射する回転遷移による強い輝線。12COだけでなく13COやC18O等の同位体を含む分子などからの輝線も観測される。一酸化炭素分子の最低エネルギー準位は回転量子数J=0の状態であり、最低励起状態はJ=1である。そのため、最も基本的な回転遷移がJ=1からJ=0の遷移であり、波長3 mmの電波領域の電磁波に対応している。一酸化炭素は星間分子雲において水素分子に次いで最も多く存在すると考えられている分子であり、J=1のエネルギー状態は分子雲の典型的な温度10 Kにおいても励起されるため、12CO(J=1-0)輝線は分子雲から放出される最も観測しやすい電磁放射である。巨大分子雲も参照。
繰り返し使用できる電磁波検出装置を2次元的に多数並べることで、一度に画像を撮影できるようにした観測装置。望遠鏡の焦点面や分光器のスペクトル撮影装置として用いる。これに対して、一度に1ヶ所の強度しか測定できない検出器を単一画素検出器と呼ぶことがある。2次元アレイ型検出器には単一画素検出器を小型化して並べて作ったものと、半導体の製造法等を応用して撮像素子として作ったものとがある。前者の例としては、電波天文学で用いるヘテロダイン受信機を集めたものがあり、マルチビーム受信機とも呼ばれる。後者の例は、電波天文学でも用いられるボロメータを集積したもののほか、赤外線からX線まで種々の波長域に感度がある2次元アレイ型検出器が実用化されている。単一画素検出器に比べて、天球上の広い領域を一度に観測することができ、時間効率だけでなく、観測精度も向上できる。可視光や紫外線では写真が画像撮影用に用いていたが、感度や再現性に問題があり、十分に画素数の多い2次元アレイ型検出器(CCDはその代表例)が実用化されると、これに取って代わられた。
ドップラー効果により、観測される波長が(従って周波数も)発信源における値からずれる現象およびずれの量の双方を指して用いられる。電磁波の場合には、波長の長い方へのずれを赤方偏移、波長の短い方へのずれを青方偏移と呼ぶ。
