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測光赤方偏移

 

よみ方

そっこうせきほうへんい

英 語

photometric redshift

説 明

測光データから推定する赤方偏移。いつくかの測光バンドで測定した等級から、対象銀河のスペクトルエネルギー分布(SED)を求める。次にそれに既知のいろいろなタイプの銀河のSEDを赤方偏移を変えながら当てはめて、最もよく当てはまるSEDの赤方偏移をその銀河の赤方偏移と見なすという方法である。この方法が機能する理由は、銀河のSEDにはライマンブレイクや4000AAブレイクをはじめとした特徴的な段差や折れ曲がりがあることによる。分光による通常の赤方偏移の測定に用いられる輝線吸収線は測光観測では検出できないので、次善の策としてSEDの形に注目する。より広い波長域をより多くのバンドで観測するほど、測光赤方偏移の精度は上がる。分光赤方偏移より誤差が大きいこと、SEDの特徴を取り違えてしまう致命的な誤りが完全にはなくならないことなどの欠点はあるが、分光できないほど暗い銀河を含む多数の銀河の赤方偏移を一挙に推定できるので、特に遠方銀河の研究で威力を発揮する。3個のバンドパスを使って特定の赤方偏移の範囲の銀河を選び出すライマンブレイク法は、最も簡素な測光赤方偏移法である。この方法で選び出された銀河をライマンブレイク銀河という。

2018年08月20日更新

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    銀河の測光値(黒印)と銀河進化モデルのスペクトルエネルギー分布モデルを比較して、銀河の測光赤方偏移を求める。ただし、ここでは測光値もモデル計算による模擬値を使っている。
    (Hayward & Smith, 2015, MNRAS 446, 1512より引用)。
    測光赤方偏移(縦軸)と分光赤方偏移(横軸)との比較。銀河のスペクトルエネルギー分布の特徴を見誤って著しく間違った赤方偏移を与えることがある。(Mortlock et al. 2013, MNRAS 433, 1185より引用)