天文学辞典 :ASJ glossary of astronomy | 天文、宇宙、天体に関する用語を3300語以上収録。随時追加・更新中!専門家がわかりやすく解説します。(すべて無料)

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密度パラメータ

宇宙に存在する成分の全エネルギー密度 $\rho$臨界密度 $\rho_{\rm c}$ で割った値(無次元量)であり、記号$\Omega$ を用いて次式で示される。

$$\Omega\equiv\frac{\rho}{\rho_{\rm c}},\hspace{1cm}
\rho_{\rm c}\equiv\frac{3c^2H^2}{8\pi{G}}$$

ここで、$H$ハッブルパラメータ$c$光速度$G$万有引力定数である。宇宙の全エネルギー密度がちょうど臨界密度に等しい($\Omega=1$)時に宇宙は空間的に平坦になり、臨界密度より大きい($\Omega>1$)と空間曲率は正、小さい($0<\Omega<1$)と負になる。

近年、宇宙には普通の物質(バリオン)以外にダークマターダークエネルギーがあることが明らかになって、密度パラメータもそれぞれの成分に分けて以下のように表記することが多くなった。

$$\Omega_{\rm total}=\Omega_{\rm b}+\Omega_{\rm dm}+\Omega_{\rm \Lambda}$$

ここで、添え字 ${\rm b}$ はバリオン(baryon)、${\rm dm}$ はダークマター(dark matter)、$\Lambda$ はダークエネルギーを表す(放射の成分は宇宙の初期以外は小さいので無視している)。さらに、バリオンとダークマターを合わせて物質(matter)として、以下のように表すこともある。

$$\Omega_{\rm total}=\Omega_{\rm m}+\Omega_{\rm \Lambda}$$

プランク衛星による宇宙マイクロ波背景放射の観測などから宇宙は極めて平坦に近い($\Omega_{\rm total}\sim{1}$)ことが分かっている。標準モデルであるΛCDMモデルでは、$\Omega_{\rm total}=1$ と仮定されている。
密度パラメータは時間の関数であり、現在($t=t_0$)の値を示す時には、$\Omega_{{\rm total, 0}}$ のように添え字の0を付ける。

電波バースト(太陽の)を参照。

微細構造で生じる準位の間で起こる遷移によって生じるスペクトル線。原子でも分子でも起きるが、たとえばOH分子のエネルギー準位の基底状態のΛ2重項は微細構造で、その間の遷移によって波長18 cmの電波を発生する。微細構造定数も参照。

1960年代初めに米国のレイトン(R. Leighton)らは、ドップラー偏移を利用した測定法で太陽表面のプラズマの運動を調べていて、太陽が約5分の周期(振動数約3 mHz)で振動していることに気づいた。これを5分振動という。太陽では主に周期3-15分程度(振動数1-5 mHz程度)の多数の音波的な固有振動モード(pモード)が励起されており、その現れが5分振動である。5分振動を励起しているのは、対流層における乱流の音波放射だと考えられている。5分振動を詳しく調べることで、太陽の内部構造診断を行う日震学が生まれた。

赤道儀の一種。極軸の一方の端を巨大な馬蹄型の軸受けで支える方式で、大型望遠鏡に用いられる。パロマー天文台の5 mヘール望遠鏡で初めて採用された。その後馬蹄型軸受けを赤緯軸近くに持ってくるよう改良され、1970年代の4 m級望遠鏡の架台として広く用いられた。

電磁流体中で磁場 $B$ の時間発展を扱う式で、速度場 $v$ 、電流密度 $j$ と磁気拡散係数 $\eta$ を用いて、

$$\partial B/\partial t=\nabla\times(v\times B)-\nabla\times(\eta j)$$

と記述される。右辺第1項は磁力線が流体とともに運ばれることを、また第2項は磁場の拡散効果を表す。系の典型的な長さと速度をそれぞれ$L$、$V$とすると、右辺第1項と第2項の比は$VL/\eta$で表され、この比 を磁気レイノルズ数と呼ぶ。宇宙では、一般に系が大きいこと、また星の内部やコロナなどの高温プラズマでは磁気拡散係数の逆数に比例する電気伝導率が大きいことなどから、宇宙プラズマでは磁気レイノルズ数は1に比べて非常に大きい。

電波バースト(太陽の)を参照。

1852年から1859年にかけて、ドイツのボン天文台での観測に基づいてアルゲランダー(F. Argelander)が中心となって編纂した星表と星図。北天の9.5等より明るい星324,000個の位置と等級が記載されている。眼視観測による星表としては最も広汎なものであった。ここに掲載された星の表記法、 BD -16° 1591 などは現在でも使われている。 このボン掃天星表の完成以来、南天の星へと同じ様式の星表の拡張が進められた。1892年にはアルゼンチンのコルドバ天文台の観測から作られた「コルドバ星表」が、さらに1896年には南アフリカのケープタウン天文台での写真観測による「ケープ写真掃天星表」(1896)が作られた。この3つの星表を合わせて掃天星表ということもある。

電波バースト(太陽の)を参照。

電波バースト(太陽の)を参照。

同一中心、同一平面内にある2つの円軌道間を遷移するときに、必要なエネルギーが最小となる遷移軌道のこと。たとえば、内側の円軌道から外側の円軌道に移る場合、内側のある地点で加速し、その地点からちょうど反対側で目的の軌道に接するようにして到達し、そこで再び加速を行う軌道がホーマン軌道である。つまり、内側の円軌道上に近点があり、外側の円軌道上に遠点があることになる。ドイツのホーマン(W. Hohmann)によって1925年に考えられた軌道である。惑星間の飛行や地球周回の人工衛星の軌道遷移などに使われている。

一般には、恒星を周回する天体のうち、内部の核融合反応によるエネルギー放出のない天体を惑星と呼ぶ。ここでは太陽系内の惑星について述べる。太陽以外の恒星の周りを回る惑星については太陽系外惑星を参照されたい。
天球上でお互いの位置を変えない恒星の間を動くように見える明るい星があることは古くから知られており、それらはギリシャ語では「迷う人」を意味するプラネーテスと呼ばれていた。これをもとに英語ではプラネット(planet)と呼ばれ、日本語では「惑星」と訳された(「遊星」と呼ばれたこともある)。コペルニクス(N. Copernicus)の地動説により、惑星は太陽を周回する天体であることが示された。古代から知られていた、水星金星地球火星木星土星の6惑星のほか、天王星が1781年に、海王星が1846年に、冥王星が1930年に発見された(海王星はガリレオ(G. Galilei)がすでに観測していた証拠があるが運動は確認しておらず、恒星と判断していたようである)。
観測技術の進歩により、20世紀終わり頃から海王星軌道の外側に小天体が多数発見され(太陽系外縁天体)、なかにはエリスのように冥王星より大きいことが確認されたものもあった。この状況を受けて、国際天文学連合(IAU)は2006年にプラハで開催された第26回総会で惑星の定義を採択した(それまで惑星には定義がなかった)。それによると、(太陽系の)惑星は、
1. 太陽を周回し、
2. 十分大きな質量を持つために自己重力が固体に働く種々の力よりも勝る結果、重力平衡形状(ほぼ球状)を持ち、
3. その軌道近くから(衝突合体や重力散乱により)他の天体を排除した天体である。
この条件のうち3.は満たさず衛星ではない天体を準惑星(dwarf planet)と呼ぶことになった。 2006年のこの定義により、冥王星は惑星ではなくなり準惑星となった(この惑星の定義は太陽系に限って適用されるものである)。したがって太陽系の惑星は、太陽に近いものから、水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星の8個となった。
この結果を受けて日本学術会議は「太陽系天体の名称等に関する検討小委員会」を発足させ新たに導入された用語の日本語名称を検討した。その結果、初等中等教育現場では「準惑星」の使用は奨励しないこと、冥王星を含む太陽系外縁天体の中の大きな天体の種族(太陽系外縁天体でありなおかつ準惑星)には冥王星にちなむ名称を与えることが望ましいとの見解を公表した。その後2008年にオスロで開催されたIAUの執行委員会でこの種族は冥王星型天体(Plutoid)と命名された。この件に関する参考資料は以下にある。
準惑星問題に関する日本学術会議の「対外報告」(2007年)
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-20-t35-1.pdf (第一報告)
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-20-t39-3.pdf (第二報告)
国立天文台のわかりやすい解説
http://www.nao.ac.jp/nao_topics/data/000304.html
http://www.nao.ac.jp/nao_topics/data/000387.html
https://www.nao.ac.jp/contents/naoj-news/data/nao_news_0159.pdf
「日本学術会議 太陽系天体の名称等に関する検討小委員会」編
「新太陽系図2007」リーフレット
「新太陽系図2007」ポスター


惑星の自転 (@physicsJ 日本語版)

https://youtu.be/T1MrJvcllpY


惑星・準惑星の大きさと自転速度の比較 (@physicsJ 日本語版)

https://youtu.be/xSrSDMGwHa0

太陽系の惑星間にある空間のこと。太陽風の勢力圏である太陽圏内の空間を意味する。

太陽フレアコロナ質量放出(CME)が発生する際に惑星間空間中に生じる擾乱。この擾乱は太陽コロナから放出されたプラズマ塊であるCMEが惑星間空間内を高速で移動していくもので、惑星間を伝播する過程で太陽風と相互作用して衝撃波を形成する。このため、ICME(interplanetary CME)とも呼ばれる。ICME中のプラズマ塊と、その前方に形成される衝撃波とで挟まれた領域は、圧縮されて高温高密度になっている。このプラズマ塊中では、ヘリウムの比率が通常の太陽風よりも高い。また、プラズマ塊の磁場はフォースフリー磁場状態となっており、らせん状の磁気ループ形状をしている。太陽近傍で観測されるCMEの放出速度は30-3000 km s-1と広い範囲にわたっているのに対し、地球の公転軌道半径である1天文単位の距離でICMEの速度は300-800 km s-1と周囲の太陽風の速度範囲に入っていることから、ICMEはその伝播過程で太陽風と相互作用して加速減速されていると考えられている。

惑星間ダストを参照。

ASTRONが運用している電波望遠鏡。低周波電波干渉計を意味するLow Frequency Arrayの略で、10~80 MHzを観測するLBAと呼ばれるアンテナと120~240 MHzを観測するHBAと呼ばれるアンテナとがある。どちらのアンテナも廉価なものを非常に多数並べて電波干渉計とすることで、この周波数帯での従来の電波望遠鏡に対して角分解能と感度を大幅に向上した。こうしたアンテナを密集して配置したものを1つの局とし、これを離散的に配置した構成になっている。大部分の局はオランダ国内にあり、配置の中心はアムステルダムから東北東に100 kmほど離れたドレンテ州エクローにある。現在は、これに加えてドイツ、英国、フランス、スウェーデンにも新たな局が配置され、最大基線長1000 kmの望遠鏡となっており、さらに拡張する計画もある。天文学的な主要研究テーマとしては、宇宙の再電離期の観測、遠方銀河の探索、突発現象の検出、超高エネルギー宇宙線の観測、太陽物理学と宇宙天気、宇宙磁場の研究などが挙げられている。
ホームページ:http://www.lofar.org/

太陽系空間には、さまざまな大きさのダスト(塵)粒子が存在していて、総称して惑星間ダスト(惑星間塵)と呼ぶ。主な起源は小惑星彗星であり、地球大気に突入した大きな粒子は流星として観測され、分光観測から構成成分が議論できる。さらに、高層大気や深海底、南極氷床などで採取したダストには地球外起源の惑星間ダストが含まれている。
惑星間ダストはさまざまな方法で観測される。光学的に観測されるのは黄道光である。赤外線天文衛星IRASの観測から、小惑星の族に対応するダストバンドや、彗星の軌道に対応するダストトレイルが、黄道光に存在することが明らかになった。ダスト検出器による直接測定からは太陽系外起源のダストも観測されており、星間起源ダストと呼ばれている。1 μm を越える大きさの粒子は、ポインティング-ロバートソン効果によって徐々に軌道長半径が小さくなり太陽方向へ落下する。太陽系外縁天体を起源として内側へ落下してきたダストも太陽系には存在すると考えられる。

国際天文学連合のF1委員会による流星天文学の用語の定義と解説:
https://www.iau.org/static/science/scientific_bodies/commissions/f1/meteordefinitions_approved.pdf

日の出時(もしくは日没時)に太陽が地平線もしくは水平線から昇ってくるとき(もしくは沈んでいくとき)に短時間だけ見られる現象で、太陽の上方の弧付近が短時間だけ緑色に輝くこと。英語のままグリーンフラッシュと呼ばれることも多い。地球大気による太陽光の屈折により生じる現象。大気の屈折率は赤色よりも短波長側の緑色のほうが大きい。このため、観察者に短波長側だけが届く時間が存在し、その間だけ緑色に輝くように見える。

遠方クェーサーのスペクトルに、視線方向の手前にある中性水素の雲(ガスの塊)によるライマン𝛂線の吸収線が多数見られる。これをライマン𝛂の森と呼ぶが、このライマン𝛂の森を作っている1本1本の吸収線のもとになっている中性水素の雲のことをライマン𝛂雲と呼ぶ。ライマン系列およびクェーサー吸収線系も参照。

太陽フレアの後期に発生し、H𝛂線で観測されるループ状のプロミネンスであり、ポストフレアループとも呼ばれる。1000万度のフレアループが彩層温度まで冷却することにより見られる構造で、冷えたプラズマは重力により磁気ループに沿ってコロナレインとして流れ落ちている。このようなフレアでは、ループの足の間隔は徐々に広がり、より背の高いループが数km s-1から数10 km s-1の上昇速度で形成される。冷却後に流れ落ちる速度は数10 km s-1から100 km s-1に達する。