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ポインティング-ロバートソン効果

 

よみ方

ぽいんてぃんぐろばーとそんこうか

英 語

Poynting-Robertson effect

説 明

太陽の重力を受けて太陽の周りを公転する粒子は、重力のほかに、太陽からの放射を吸収または散乱して運動量を受け取る。これを放射圧または光圧と呼ぶ。重力は粒子の質量に比例するのに対して放射圧は表面積に比例するので、小さな粒子では放射圧が重力より重要になる。ミクロンサイズ以下の粒子では、放射圧が重力を上回り、太陽系にとどまることができなくなる。
太陽の周りを公転し続ける粒子に対して放射圧は抵抗として働く。これは光速が有限であるため、公転する粒子から見ると太陽からの放射を完全に動径方向ではなく、やや前方から受けるためである。この効果のことを、この効果に気づいて定式化を行った二人の研究者にちなんで、ポインティング-ロバートソン効果と呼ぶ。この効果により粒子は角運動量を失って軌道半径が徐々に減少し、やがて太陽に落ち込む。たとえば地球軌道にある10-100 μm サイズのダストは数千年から数十万年で太陽に落ち込む。
太陽からは放射に加えて太陽風も噴き出しているので、太陽風によるポインティング-ロバートソン効果も働く。半径0.1 μm以下の粒子では太陽風によるポインティング-ロバートソン効果も無視できないと考えられている。

2019年07月04日更新

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    いろいろな鉱物種からなる太陽系内の微粒子に対して、太陽から受ける放射圧と重力の比を粒子の半径の関数として表した図。粒子半径が0.1-1μm程度だと放射圧の影響が大きくなることが分かる。
    出典: 向井正 2006, J. Plasma Fusion Res., Vol. 82(No.2), 77-80