天文学辞典 :ASJ glossary of astronomy | 天文、宇宙、天体に関する用語を3300語以上収録。随時追加・更新中!専門家がわかりやすく解説します。(すべて無料)

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ジーンズ質量

ジーンズ不安定性が起こる最短波長(ジーンズ波長)の摂動に対応する質量。

を参照。

ジーンズ波長を参照。

任意の無衝突ボルツマン方程式の定常解が、運動の積分を通してのみ位相空間座標に依存すること、および任意の運動の積分の関数は定常解を与えるという定理。この定理から、運動の積分(定数)I1, I2, ..., Imがあったとき、分布関数 f が定常であるための必要十分条件は、 f=f(I1, I2,..., Im) の形に書けることがわかる。

数100GPa以上の高圧下では水素は金属化すると考えられている。木星土星は水素を主成分とするガス惑星であるが、その中心の高圧部では水素が液体の金属状態になっている。金属水素内の対流が、木星や土星の強力な磁場の原因になっていると考えられる。

ヨウ化銀や臭化銀などの感光乳剤をガラス基板上に塗布し乾燥させたもので、露光後に暗室にて現像と定着処理を行うことで写真像を記録できる。量子効率が1-2%程度しかなく、現像定着の化学処理の再現性の低さや入射光量と写真像の黒さの関係が単純な比例関係でないことが欠点であるが、比較的安価で変形の少ないガラス基板を用いているため、天体の位置や明るさの定量的な測定が可能である。その保存性と視認性の良さから、1980年代まで天体観測に広く利用されてきた。CCDの出現で現在はほとんど利用されなくなっている。写真乳剤相反則不軌も参照。

ジーンズ不安定性を起こす摂動の最短波長。ジーンズ長ともいう。

天球上の星の並びを人、動物、物などに見立てて呼び名をつけたもの。古代メソポタミア文明が起源とされるが、さまざまな文明がさまざまな時代にそれぞれの星座を作り上げた。北天の多くの星座のルーツは古代ギリシャ文明にあるが、南天の星座は、16世紀の大航海時代以降に作られたものに由来する。
現代の星座の名称と境界の決め方(赤経と赤緯に沿った線で境界を引くこと)は1928年の国際天文学連合(IAU)の総会で、第3専門委員会(天体の名称や単位を扱う委員会)の提案に基づいて採択された。そしてこの新しい星座の境界を示す本の出版費用をIAUが負担することになった。これを受けて、提案者であったウクルにあるベルギー王立天文台のデルポルテ(E. Delporte)は新たな境界を引いた。境界変更により、従来から知られている変光星の名称が変わらないことなどをエール天文台が確認した。最終版はIAUからケンブリッジ大学出版会に送られ、1930年に『星座の科学的境界設定(Delimitation scientifique des constellations)』として出版された。これによって現在の88星座が確定した。
星座の一覧は本辞典の「有用な諸データの表」にもある。
https://astro-dic.jp/about/table/
星座の表
https://astro-dic.jp/constellations/

電離平衡と熱平衡を仮定した場合に、あるエネルギー準位をとる粒子の割合を表す式。電離段階$\alpha$でエネルギー準位iにある粒子の密度を$n_i^{\alpha}$、イオン化エネルギーを$I^{\alpha}$、励起エネルギーを$E_i^{\alpha}$とすると、以下の関係になる。

$$ n_i^{\alpha} =n_0^{\alpha + 1} \times N_{\rm e} \frac{g^{\alpha}_i}{g_0^{\alpha + 1}} CT^{-3/2} \times \exp\left[+\frac{(I^{\alpha} - E_i^{\alpha})}{k_{\rm B}T}\right] $$

ここでT は温度、Ne は電子密度、$g_i^{\alpha}$はこの準位の粒子の統計重率で、C=h3/2×(2$\pi$ mekB)3/2は定数である。ただし、hプランク定数meは電子の質量、kBボルツマン定数サハの電離式も参照。

一般相対性理論は座標の取り方に依らない理論である(一般共変性)。そのため、その基礎方程式であるアインシュタイン方程式は座標系に陽に依存しないテンソル式で表現され、任意の座標系で具体形を書き下すことができる。しかし、座標の取り方に自由度があるので、逆に、前もって座標基底を選ばなくてはならない。その座標自由度を決める条件が座標条件である。空間と時間を切り分ける3+1分解においては、各空間的超曲面の間の時間的距離を決める自由度である「ラプス関数」と、空間座標の張り方の自由度である「シフトベクトル」を決定する座標条件を与える必要がある。座標条件は、ゲージ条件とも呼ばれるが、宇宙論などで用いられる摂動のゲージ条件(摂動場と背景場の対応を決める自由度)とは異なることに注意が必要である。

混合距離理論を参照。

星の振動の観測を利用して星の内部を調べる研究。星の振動は、ガスの圧力を復元力とする音波モード(p-モード)と、浮力を復元力とする重力波モード(g-モード)に大別され、後者は非動径振動にのみ見られる。振動(特に非動径振動)は自転の速さ、磁場、および内部で起きている対流や物質拡散(一部の元素が内部に沈む効果)の影響を受けるため、測光観測や視線速度変化の観測による各振動モードの周期(周波数)測定からこれらの恒星内部の現象を調べることが可能となる。 近年、MOST, コローケプラー、BRITE,および テス衛星などによる大気圏外からの精密で長期間にわたる測光によって得られたデータの解析により、星震学が急激に発展している。

非動径振動は、一つの恒星で同時に数多くの周期(周波数)観測され、それらの値の範囲および規則的分布から恒星内部についての種々の情報が得られ、星震学にとって重要である。太陽のように表面対流層をもつ星では、太陽の5分振動と同じく、対流層で発生した音波が共鳴して多数の高調波音波モードが励起されているとみられ、実際にいくつかの星でそれが検出されている。また、A型特異星には周期10分程度の音波振動を示すものが知られており、roAp星(rapidly oscillating Ap star)と呼ばれる。これは自転軸に対して傾いた磁軸に軸対称な双極子型非動径振動の高調波音波モードと同定されている。一方、g-モード振動は、主系列星の低速脈動B型星(SPB星)およびγDor型星などで観測され、さらに、白色矮星への進化の前段階で表面温度が約十万度の前期白色矮星(GWVir型変光星)、白色矮星などに観測される。それらの振動周波数から自転周波数を知ることができる。また、GWVir型星、白色矮星のgモード周波数には永年変化を示すものがあり、それらから前期白色矮星および白色矮星の進化速度を知ることができる。

光子が連続したコンプトン散乱を受ける場合、ある媒質を通過するまでに光子のエネルギーが大きく変するかどうかを判定する無次元パラメータyを指す。yは1回の散乱で平均として光子が受け取るエネルギーの変化率と、媒質を通過する間に光子が受ける衝突の回数を掛けたものであり、y>1 であれば大きなエネルギー変化を受けたという目安になる。

月による星の掩蔽、すなわち月が星の前を横切り、星を隠す現象のこと。星が月の縁ぎりぎりをかすめていくような場合をとくに接食と呼ぶ。

光子が静止した電子散乱してエネルギーを与え、もとより高いエネルギーの電子が放出される過程。1923年にこの現象を説明したコンプトン(A.H. Compton)の名を冠して呼ばれる。1929年仁科芳雄とクライン(O. Klein)によって相対論的量子力学を用いてコンプトン散乱の微分断面積が計算され、クライン-仁科の公式と呼ばれている。逆コンプトン散乱も参照。

アインシュタイン(A. Einstein)の特殊相対性理論によれば、ニュートン力学のような絶対的な時間は存在せず、時間と空間を一緒にして4次元の時空間として考えなければならない。
慣性系に対して運動する物体の時刻はその物体が静止して見えるような座標系における座標時として表現すればよい。この場合、常にx1=x2y1=y2z1=z2 が成立するから、ミンコフスキー空間における世界距離はs122=-c2(t2 - t1)2=-c2$\tau$122 となる。この$\tau_{12}$を固有時と呼ぶ。固有時$\tau$と慣性系における時間の進み方の間には、 慣性系における時刻をt、物体の速度を$V$とすると、$ \frac{d\tau}{dt}=\sqrt{1-(V/c)^2} $ のような関係がある。つまり、運動している物体の時刻は慣性系の時刻よりも進みが遅く観測される。

入射する電磁波をすべての波長にわたって完全に吸収し、また自らも電磁波を放射できる仮想的な物体。黒体が放射する黒体放射のエネルギー分布は黒体の温度だけで決まり、プランクの法則で表される。黒体は高温になるほど波長の短い電磁波を多く放射する。

黒体からの熱放射のことをいう。黒体から単位面積を通して単位時間、単位立体角、単位周波数あたり放射されるエネルギー密度は、黒体の温度だけで決まり、プランク分布で記述される(プランクの法則を参照)。黒体の温度が高くなるほどエネルギーが最大となる波長が短波長側に移動し(ウィーンの変位則)、波長の短い電磁波を多く放射する。恒星の出す放射は黒体放射にかなり似ていて、実際には黒体放射で近似されることが多い。宇宙マイクロ波背景放射は黒体放射である。
黒体放射のエネルギー分布(プランク分布)のグラフ表示では、一般に縦軸は放射強度輝度と呼ぶこともある)であるが、横軸は波長に取る場合と周波数に取る場合がある。また軸が線形目盛の場合と対数目盛の場合がある。それぞれの場合にグラフの見え方が大きく異なるので注意が必要である。

宇宙膨張による銀河赤方偏移(宇宙論的赤方偏移)を後退速度として解釈したときの、距離と後退速度の間の関係。近距離にある銀河では比例関係となることを1927年にルメートル(G. Lemaitre)が、また1929年にハッブル(E.Hubble)が発見した。このため一般には、ハッブル-ルメートルの法則と呼ばれる。

航行中の船の前方(艦首、bow)側に立つ弧状の波のように、前方へ突き出た曲率のある波面を持った衝撃波のこと。地球磁気圏の外側には、吹きつけて来る太陽風によって弧状衝撃波が見られるし、太陽圏の外側にも存在している。また、銀河団が衝突する際にも見られる。