原子時計を参照。
1991年4月にアメリカ航空宇宙局(NASA)によって打ち上げられたガンマ線 衛星。EGRET検出器、COMPTEL検出器、OSSE検出器、BATSE検出器の4種類の検出器を搭載し、総重量が17トンに及ぶ巨大な衛星で、スペースシャトルにより軌道に投入されたグレートオブザーバトリーズ(Great Observatories)シリーズ4機のうちの一つである。数10 keVから10 GeV超に及ぶガンマ線の観測を行い、全天のガンマ線源カタログを作り、またガンマ線バーストが天球上で一様分布をしていることを示すなどの成果を上げた。2000年6月にその寿命を終えて大気に突入した。
ホームページ:
https://astrobiology.nasa.gov/missions/cgro/
https://heasarc.gsfc.nasa.gov/docs/cgro/
理論自体はある対称性を持っているが、実際に実現する状態はその対称性が保たれていない状態になることを自発的対称性の破れという。これを直観的に理解するには図のようなワイン瓶の底にぱちんこ玉を置くことを考えると良い。瓶は円い筒型なのでどの方向から見ても同じ形に見え、回転対称性を持つ。
底にぱちんこ玉を落としたとき、もし図(a)のように盛り上がった底の中心にぴたりと命中してそこに止まったとしたら、やはりどの方向から見てもぱちんこ玉は同じ場所に見え、回転対称性の保たれた状態が実現する。しかし、実際にはそうしたことは起こらず、底の中心は盛り上がっていて不安定なため、図(b)のように端の方に落ちる。こうしてぱちんこ玉が瓶の隅に落ちた後で、瓶の周りをぐるっと回ると、ぱちんこ玉が右に見えたり、奥に見えたり、左に見えたりする。これが対称性の破れた状態である。ぱちんこ玉を真ん中にそっと置こうと思っても勝手に滑り落ちてしまうので、これを自発的対称性の破れ、というのである。図(a)の状態よりも図(b)の状態の方がぱちんこ玉のエネルギーが低く、より安定な状態にあるから、ワインの瓶の中ではこのようなことが起こる。基礎物理学でも事情は同じで、ワインの瓶はヒッグス場のポテンシャル、パチンコ玉の位置は場の値を表すと考える。こうしてヒッグス場が値を持つことによって、物質場などに質量が与えられるのである。真空の相転移も参照。
一般相対性理論において予言される重力波を検出する検出器。重力波望遠鏡ということもある。特定の振動数の重力波を検出する共振型検出器と、レーザー光を直交する2方向に分けて往復させ、干渉を測るレーザー干渉計型がある。重力波の効果は極度に小さいため高度の技術が必要で、世界各地で大規模な干渉計が建設されてきた。2015年9月にLIGOにより初めてのブラックホールどうしの合体からの重力波信号が観測され、翌年報告された。Virgo干渉計、KAGRA大型低温重力波望遠鏡も参照。
レーザー干渉計による重力波検出の原理。
クレジット: LIGO/T. Pyle
https://www.youtube.com/embed/tQ_teIUb3tE
古典論における自転角運動量に相当する量子力学的な角運動量の概念。電子やクォークなどの素粒子や、それらから構成される複合粒子であるハドロン、原子核、原子などが持つ量子力学的な自由度の1つであり、単にスピンとも呼ばれる。
スピン角運動量は、軌道角運動量とともに、粒子の全角運動量に寄与する。スピン角運動量の大きさは通常、 ℏ(換算プランク定数)を単位としてスピン量子数 s で表す。電子や陽子などのフェルミ粒子では s は半整数を取り、光子のようなボース粒子では整数を取る。
電子や陽子では s =±1/2 であり、許される状態が正負の2つがあるのでそれぞれ上向きスピンと下向きスピンということがある。これによってエネルギー準位が2つに分裂して超微細構造が発生する。たとえば、水素原子の陽子と電子のスピンが同じ方向を向いている場合は反対の方向を向いている場合に比べてわずかにエネルギー準位が高いので、2つの準位間の遷移によって波長21 cmの電波の放出や吸収が起きる(21cm線)。これは超微細構造線の一つである。スピン-スピン相互作用も参照。
アメリカ合衆国アリゾナ大学の持つ天文台。ラビニア・スチュワード(L. Steward)の寄付により、1916年に設立された。マルチミラー望遠鏡、グレアム山国際天文台(大型双眼望遠鏡)を運用しており、ほかにもキットピーク国立天文台、レモン山天文台などに複数の可視赤外線望遠鏡および電波望遠鏡を持っている。本部はアリゾナ大学のキャンパス内にあり、同大学の天文学科と教育研究面において密接な連携を行っている。スチュワード天文台の内部には、鏡研究所、赤外線検出器研究所、天文補償光学センターなど複数の研究所がある。鏡研究所は、望遠鏡の大型反射鏡を研究開発しており、6.5 m主鏡(マルチミラー望遠鏡、マゼラン望遠鏡)、8.4 m主鏡(大型双眼望遠鏡)などを製作した。赤外線検出器研究所では、先進的な赤外線検出器の開発を行っており、スピッツアー宇宙望遠鏡の観測装置MIPSの製作などを行った。
ホームページ: https://www.as.arizona.edu/
電子のスピン角運動量と電子の軌道角運動量の相互作用のこと。本質的には量子力学的な効果で生じるが、定性的には古典論からの類推として以下のように説明することも可能である。電子は、そのスピンに対応して磁気モーメントを持つ。これが、原子核とそれを取り囲む他の電子群が作る電場の中を運動すると、電子の位置での電場が変動することに対応して磁場が発生し、これと電子の磁気モーメントが相互作用すると、両者の向きによって僅かに異なるエネルギー準位を示すことになる。この準位間での遷移によって微細構造線が生じる。
二十四節気を参照。
前主系列星であるTタウリ型星の中心では水素の核融合反応はまだ始まっておらず、表面からの放射によりエネルギーを失うことで星全体がゆっくり収縮している。この収縮のことを前主系列収縮と呼ぶ。つまり、Tタウリ型星はこの重力収縮に伴う重力エネルギーを解放することで輝いている。星全体がほぼ対流状態にあるTタウリ型星は収縮によって光度を下げ、HR図の林トラックに沿って上から下に移動する。ケルビン-ヘルムホルツ時間も参照。
宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の温度ゆらぎの解析においては、天球面上のゆらぎを球面調和関数 Yml(θ, φ) で展開する多重極展開が有用である。展開係数の振幅の2乗はパワースペクトルと呼ばれ、これを調べることが基本的な解析方法の一つである。このとき、l=2 に対応するモードの振幅が、宇宙マイクロ波背景放射の四重極子モーメントである。l=1 に対応するモードの振幅は双極子モーメントである。双極子モーメントに対応するモードの温度ゆらぎは観測者の運動に起因するドップラー効果によるものが支配的なので、そこには宇宙論的な情報が含まれない。四重極子モーメントには、最も大角度スケールに対応した宇宙論的温度ゆらぎの情報が含まれている。また、宇宙の晴れ上がり時において電子と光子が最終散乱したとき、その電子の周りに四重極子モーメントを持つ密度ゆらぎがあると、散乱光に偏光が生じる。これは宇宙マイクロ波背景放射の偏光となって実際に観測されている。
時間方向に無限の未来まで行っても見えない時空の閉じた領域がある場合、その境界面を事象の地平線または事象の地平面という。イベントホライズンという英語名がそのまま用いられることも多い。
事象の地平線は未来方向に終点をもたない光の世界線でつくられる。事象の地平線が閉じた集合である場合,その内部はブラックホールとなり, 事象の地平線はその表面となる。中心から事象の地平線までの距離がシュバルツシルト半径である。
しかしこの定義からわかるように事象の地平線はブラックホール時空だけにあるものではない。たとえば時間的に有限な宇宙にも存在する。このとき一つ一つの時間的世界線に対して事象の地平線が存在する。また重力がなく平坦なミンコフスキー空間でも、一様な加速度運動をしている観測者に対して、3次元的速度が漸近的に光速度となるため事象の地平面が現れる。
2019年4月10日にイベントホライズンテレスコープが、おとめ座銀河団にある巨大楕円銀河M87の中心にあるブラックホールのシャドウ(視直径はシュバルツシルト半径の5倍程度と考えられている)を観測したと発表した。
ブラックホールに突入するカメラが見る映像。銀河系中心にあるのとほぼ同じ、太陽質量の430万倍の回転していないブラックホールに落ち込んでゆく様子をアメリカ航空宇宙局(NASA)がスーパーコンピュータを5日間動かして制作した。タイムスタンプ1:36-2:23では、画面右下に光子リングと事象の地平面に対するカメラの位置が示されている(字幕は英語)。
https://www.youtube.com/embed/chhcwk4-esM?si=zRFqTArSXtEI9x5T"
特定のアプリケーションに特化したハードウェアを持つ計算機のこと。これに対して、特定のアプリケーションに特化した特別なハードウェアを持たず、Fortran などの高級言語で書いたプログラムを実行できる計算機を汎用計算機という。
重力多体問題シミュレーション用の専用計算機としては GRAPE がよく知られている。国立天文台では電波干渉計の観測データ処理のために野辺山FX相関器に始まる一連の専用計算機システムの開発が続けられており、これがGRAPE 開発のきっかけとなった。
自発放射を参照。
アメリカ航空宇宙局(NASA)、ヨーロッパ宇宙機関(ESA), 英国のSRCの国際共同で打ち上げられた口径45cmの紫外線観測衛星。以前の観測衛星よりも暗い天体まで、高精度なスペクトル観測ができた。1978年1月26日、NASAのデルタロケットによって打ち上げられ、1996年まで稼動した。アメリカ合衆国とヨーロッパの地上局にいる天文学者によってリアルタイムで管理された初の観測衛星。
18年間という長い運用期間の間に、115-320nmの紫外線領域をカバーする二台のエシェル分光器により9000天体に対して104000観測が実施された。代表的な観測成果としては、木星のオーロラ検出、星風の測定、SN1987Aの母天体の特定と爆発後の周囲のリングの検出、活動銀河核の時間変動、彗星の核中の硫黄分子の発見などがあげられる。
ホームページ:http://sci.esa.int/iue/
異なる場所における太陽の南中時刻は基準とする地点からの経度差分だけずれる。たとえば、地点Aより経度15°だけ西の地点BではAよりも1時間遅く、経度30°だけ西の地点Cでは2時間遅く太陽が南中し、したがって各地で定めた地方時も経度差分だけずれることになる。逆に言えば、特定の子午線を基準とした太陽時をもとに各地の経度差を補正すれば、地方時を定めることも可能というわけだ。この、世界的に共通した基準となる時刻系を世界時と呼ぶ。経度の基準は、1884年の万国子午線会議においてイギリスのグリニッジ王立天文台を通る子午線が採用された。また、太陽の南中時刻は均時差による変動があるので、この子午線における平均太陽時が用いられることになった。
ただし、世界時はグリニッジ王立天文台で定められているというわけではない。南中という現象は地球の自転にもとづくものであるから、世界各地の天文台において、かつては恒星の子午線通過、現在では超長基線電波干渉計(VLBI)などの観測をすることで維持している。世界時はさらに、観測により直接得られるUT0、UT0から極運動による経度変化の量を除いたUT1、UT1から年周および半年周の周期変動を除いたUT2に細分される。このうち、地球の自転量を最も忠実に表しているのはUT1であり、協定世界時の基準となっている。
初代星を参照。
自らの重力で形状を保っている系。惑星、恒星、惑星系、連星、球状星団、銀河、銀河団などが挙げられる。銀河団は宇宙で最大の自己重力系である。系の全エネルギーは負であり、運動エネルギーと重力ポテンシャルエネルギーの間にはビリアル平衡が成り立っている。球状星団や銀河は、非常に多くの恒星でできていることに注目して、自己重力多体系と呼ぶこともある。
地上約400 kmの地球周回軌道(一周約90分)上で建設が行われている巨大な有人宇宙ステーション。サッカー場ほどの大きさ(108.5 m × 72 m)で、重量は約420 t。アメリカ、ロシア、日本、カナダおよびヨーロッパ宇宙機関(ESA)加盟国の計15か国が協力して行っている。1998年に最初のモジュールが打ち上げられ、1999年から軌道上での建設が始まった。スペースシャトルとソユーズ宇宙船を主な輸送機として、建設機材と補給物品を輸送していたが、2003年のスペースシャトルの事故により当初計画から変更を余儀なくされている。ISS全体の建設は2010年に完成した。日本はISSの一部である実験棟「きぼう」を建設した。「きぼう」は船内実験室と船外実験プラットフォームからなる。ISSは地球や宇宙の観測および宇宙環境を利用したさまざまな実験と研究などに利用されている。ISSへの人間の長期滞在は2000年から開始された。2009年に若田光一宇宙飛行士が約4か月半の日本人初の長期滞在をして以降、2019年までに7名の日本人宇宙飛行士が3ヶ月を超える長期滞在をした。2013年11月から2014年5月にかけての第39次長期滞在では、若田光一宇宙飛行士が日本人初のISS船長として滞在期間中の指揮をとった。ISSは当初2015年まで運用の予定であったが、2024年まで延長されることとなった。
ホームページ:http://iss.jaxa.jp/
オーストラリアのキャンベラ郊外にあるオーストラリア国立大学(ANU)所属の天文台。1924年に太陽観測のための天文台として開設され、1957年にANUの所属となった。ここには、1868年にアイルランドのダブリンで建造され、メルボルン天文台で使われていた74インチ(188 cm)望遠鏡(Great Melbourne Telescope(GMT))が1955年に移設された。2003年1月の森林火災で、GMTを含む5つの望遠鏡と工場、本部棟などほぼすべての施設が焼失した。ANUはただちに天文台の復興を進めた。旧工場に代わって、先端装置開発技術センター(AITC)が設立された。
ホームページ:https://rsaa.anu.edu.au/observatories/mount-stromlo-observatory
初代星を参照。
