1976年にシェヒター(P.Schechter)によって提案された、銀河の光度関数を記述するための関数。 光度 (L, L+dL) にある銀河の数密度を$\phi(L)dL$ として、
$$ \phi(L)dL = \phi^\star\left(\frac{L}{L_\star}\right)^{\alpha} \exp\left(-\frac{L}{L_\star}\right)\frac{dL}{L_\star} $$
と表される。 ここで、$\phi^\star$は特徴的密度、$L_\star$は特徴的光度、$\alpha$は傾きと呼ばれる自由変数(パラメータ)であり、それらの値は、観測された光度関数を最もよく近似するように決める。 特徴的光度はシェヒター関数が屈曲する位置の光度に当たり、特徴的光度より明るい側では関数は指数関数的に減少し、暗い側ではべき関数的に増大する。 シェヒター関数は、階層的集団化モデルに登場するプレス-シェヒター理論の質量関数と似た関数形をしている。この事実は、階層的集団化モデルが本質において正しいことを示している。 全銀河の光度関数はシェヒター関数でかなりよく記述できるが、楕円銀河やレンズ状銀河の光度関数は釣鐘型をしているためシェヒター関数では表せない。
素粒子を点状の粒子(体積ゼロなので密度が発散する)としてではなく、大きさを持ったひもの振動の励起した状態であるととらえ、さらにボース粒子とフェルミ粒子の間の超対称性が成り立つとして構成された理論。超ひも理論とも呼ばれる。重力を含む相互作用の統一理論の最有力候補である。
一部の楕円銀河に見られる同心円状の貝殻のような構造で、リップル構造ともいう。その表面輝度は銀河本体よりもずっと低い。楕円銀河に矮小銀河が落ち込んで潮汐力によって壊され、細長く引き伸ばされてできたと考えられている。もしそうだとすれば、シェル構造を持つ楕円銀河はかつては相互作用銀河だったことになる。シェル構造を持つ楕円銀河は孤立した環境にあることが多い。周囲に大きな銀河があると、その銀河の潮汐力を受けてシェル構造が破壊されてしまうからかもしれない。特異銀河も参照。
宇宙の平均的な環境にある銀河。フィールド銀河ともいう。高密度環境にある銀河団銀河の対になる概念として用いられることが多い。しかし、銀河を取り巻く環境は連続的に変化するため、ある銀河が散在銀河かそうでないかを明確に区別することはできない。むしろ、研究の目的に応じて柔軟に定義されることが多い。
形状や光度は矮小楕円銀河に似ているが、表面輝度が飛びぬけて明るい銀河。
楕円銀河は暗くなるとともに中心表面輝度は明るくなるが、矮小楕円銀河および矮小楕円体銀河は、暗くなるとともに中心表面輝度も暗くなる。コンパクト楕円銀河M32は、楕円銀河の光度-中心表面輝度関係を光度の暗い側に延長したところに位置する。
直交座標系を用いた計算格子。デカルト座標系を用いたデカルト格子だけでなく、極座標系や円柱座標系などの直交曲線座標系を用いた計算格子も直交格子に分類される。天体物理学のシミュレーションでは、最も一般的な計算格子である。構造格子も参照。
単独で存在している銀河。明るい銀河に対して定義され、銀河からなる階層構造のうち最も小規模なものに位置づけられる。ただし、天の川銀河(銀河系)に大マゼラン銀河や小マゼラン銀河などが付随しているように、孤立銀河も矮小銀河を伴っている可能性が高い。その意味において、孤立銀河と連銀河の間に明確な境界はないと考えるべきである。
暦(カレンダー)と季節がずれないように、うるう(閏)と呼ばれる余分な日や月を挿入するための規則。太陰太陽暦では、13か月からなるうるう年を19年に7回置く章法が有名である。現在最も広く用いられているのは、グレゴリオ暦で採用された、366日からなるうるう年を置く置閏法である。
暦(れき)も参照。
超対称変換には、変換演算子の反交換関係に並進変換の生成演算子つまり四元運動量が現れる。したがって、超対称変換に時空点依存性を持たせて局所的な(ゲージ)変換に拡張すると、自然に一般座標変換を含むことになり、一般相対性理論(重力)を含む理論になる。このような理論を超重力理論と呼ぶ。重力子(グラビトン)の超対称パートナーはグラビティーノと呼ばれ、スピン3/2を持つ。超対称性理論も参照。
座標時を参照。
渦巻腕の発達の度合いと渦巻銀河の光度(絶対等級)に相関があることを利用して、渦巻腕の見え方に基づいて銀河を5段階の光度階級に分類したもの。ヴァンデンバーグ(S. van den Bergh)によって考案された。光度階級はローマ数字のIからVの5段階で表され(Iが最も明るい)形態を表す記号と組み合わせて、ScI、SbIIIなどと表記される。光度を直接測っているわけではないため、暗い銀河であっても明るい階級に分類されたり、明るい銀河であっても暗い階級に分類されることがある。銀河の見かけの形から光度を推定できるので、一時期、銀河の距離の推定に利用されたが、距離指標関係式などに比べて精度は劣る。
直交座標系を用いた計算格子の中で、構造格子ではない格子。通常、非構造格子として三角形の格子を用いることが多い。直交格子を用いた非構造格子の例としては、適合格子細分化法の項に示す図のように、格子点が座標軸に沿って並んでおらず、大きな格子と小さな格子が共存するものがあげられる。適合格子細分化法では、直交非構造格子を計算格子として採用することもある。
どの明るさの銀河がどれだけの頻度で存在するかを表す関数。 光度 L から L+dL の範囲にある銀河の単位体積当たりの数密度 φ(L)dL で定義される。 光度には、(観測者が指定する)あるバンドにおける光度(正確には単位周波数当たりの光度)が用いられ、体積には共動体積が用いられる。 銀河の光度関数は、宇宙の中で多数の銀河が進化してきた様子や、領域ごとの銀河集団の性質の違いを考察する際に用いられることからもわかるように、銀河を集団として扱うための最も基本的な統計量である。 光度関数を求めるには、赤方偏移サーベイなどによって多数の銀河の距離と明るさを測る必要がある。 銀河全体の光度関数はシェヒター関数と呼ばれる関数でよく近似できる。 しかし、形態別の光度関数は銀河全体の光度関数とは異なっており、とりわけ、楕円銀河や レンズ状銀河の光度関数はシェヒター関数のような単調な減少関数ではなく、ある光度で最大値を持つ釣鐘型をしている(図参照)。 光度関数は時間(赤方偏移)とともに変化することが知られている。これを光度関数の進化という。 光度関数はフィールドや銀河団などの環境にも依存する。 光度関数をそのまま光度について積分すると銀河の数密度が得られ、 光度を掛けて積分すると光度密度が得られる。 光度関数に似た統計量として、質量関数や星生成率関数などがある。
銀河の形態別の存在割合と銀河数密度の間に見られる相関。銀河を楕円銀河、レンズ状銀河、渦巻銀河+不規則銀河の3つの形態に分けて存在割合を調べると、銀河密度が高くなるにつれて、渦巻+不規則銀河の割合が減り、楕円銀河とレンズ状銀河の割合が増えることがわかる。銀河密度の低いフィールドと呼ばれる場所では渦巻+不規則銀河は8割に達するが、銀河密度の最も高い銀河団の中心部ではほとんどが楕円銀河とレンズ状銀河である。楕円銀河とレンズ状銀河の振る舞いは似ているが、レンズ状銀河は比較的密度の低い場所にも見られる一方で、楕円銀河はより高密度な場所を好む。形態-密度関係は、銀河数密度が0.01個 Mpc-3から10000個 Mpc-3までの6桁もの範囲で見られる。色や質量など、銀河の多くの性質は形態と相関するので、それらの性質も形態-密度関係を通して密度と相関する。矮小銀河の形態と密度の相関はまだ調べられていない。
形態-密度関係の起源については、各形態の銀河が誕生する割合が宇宙環境に依存するとする先天説と、誕生後に受けたさまざまな環境効果によってできあがったとする後天説があるが、まだ決着はついていない。先天的効果と後天的効果の両方が効いている可能性もある。
銀河円盤内の非軸対称重力ポテンシャルによって星間ガスに生じる衝撃波のこと。特に、渦巻腕や棒状バルジに関連した衝撃波を指すことが多い。銀河円盤内に密度波理論で生じるような恒星の密度波が生じると、それによるポテンシャルで星間ガスの運動も影響を受ける。その強さは典型的には星間ガスの音速や星間ガス雲の速度分散を上回るため、不連続があるとそれに応じて衝撃波が生じる。銀河衝撃波によって星間ガスが圧縮されると、そこで星形成が盛んになり、その指標となるような天体である、高密度の星間分子雲、電離水素領域、早期型主系列星などが集中するはずである。多数の銀河の渦巻腕が、そのような特徴を示すことから、実際にこうした現象が発生しているとして、1968年に藤本光昭が提唱したのが銀河衝撃波モデルである。渦状衝撃波ともいう。
銀河の中心にある極めて高密度な質量源。 天の川銀河(銀河系)を含むいくつかの近傍銀河については、中心核のごく近くにある星やガスの運動が高角分解能で観測されており、高密度な質量源の正体は超大質量ブラックホールであると推定されている。 超大質量ブラックホールに降着円盤ができると活動銀河核になり、あらゆる波長で明るく輝く。 銀河系の中心にはわれわれから最も近い銀河中心核がある。星間減光が極めて大きいため可視光では見えず、 電波、赤外線、X線などで調べられている。 銀河系の中心核はいて座A*(Sgr A*)と呼ばれる点状(0.1秒角以下)の電波源である。そこには太陽の質量の 約400万倍のブラックホールがあると推定されているが、降着円盤を持たないので活動銀河核ではない。 矮小銀河などの小質量銀河を除けなほぼすべての銀河の中心に大質量ブラックホールがあると考えられている。いて座Aも参照。
渦巻銀河とレンズ状銀河の中心部にある楕円体成分。単にバルジともいう。古い星で構成されており、早期型の銀河ほど大きい傾向がある。少数の例外を除けば、星生成はほとんど見られない。ほぼ純粋な回転運動をしている銀河円盤とは異なり、バルジの星は回転速度に加えて大きなランダム速度も持っている。バルジは、測光的性質においても運動学的性質においても、同程度の光度の楕円銀河に似ているといえる。しかし、巨大楕円銀河はバルジとは異なる運動学性質を示す(回転運動がランダム運動に比べて極めて小さい)。多くのバルジの中心部には非常に重いブラックホールが(間接的方法によってではあるが)見つかっている。活動銀河核を持つものもある。
渦巻銀河の円盤を包みこむように丸く分布している星の成分。単にハローともいう。バルジや銀河円盤に比べて密度が圧倒的に低いため、観測が難しい。天の川銀河(銀河系)はハローが詳細に観測されている数少ない銀河の一つである。銀河系のハローの星は、年齢が古く、重元素量が低い。その運動は、離心率の高いランダム運動が主である。銀河ハローの星の分布は一様ではなく、さまざまな副構造を持っていることがわかってきている。ハローには球状星団が多数存在しているほか、ガスも広く分布している。飲み込まれつつある矮小銀河が見つかることもある。
銀河円盤の回転曲線や球状星団の運動の観測から、ハローには星やガスをはるかに上回る質量のダークマターが存在していることがわかっている。これをダークマターハローという。ダークマターハローは銀河全体を包み込み、星やガスの分布の何倍もの領域に拡がっている。
三重アルファ反応を参照。
