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ニュートリノ天文学

天体から飛来するニュートリノを観測することにより天体現象の解明を行う天文学。1964年デイビス(R. Davis Jr.)らは太陽ニュートリノの検出に成功し(ホームステイク実験)、1987年小柴昌俊東大教授らはカミオカンデ実験装置を用いて大マゼラン銀河で起こった超新星爆発SN1987Aからのニュートリノバーストを観測した。これらニュートリノ天文学を開拓した業績により両者は2002年のノーベル物理学賞を受賞した。現在ではより大型のスーパーカミオカンデアイスキューブ実験などにより観測が行われている。

表面温度が低く、光度が高い恒星(英語名称の最後の star は省略されることが多い)。中心部で水素が枯渇すると、恒星は中心部の周りでの水素の核融合殻燃焼)で輝くようになる。この段階で恒星は大きく膨張し、表面は低温となり、光度は高くなる。HR図上では右上に位置し、球状星団のHR図ではきれいな系列(赤色巨星分枝)が現れる。光度階級はIIまたはIIIに相当する。質量が特に大きい星(太陽質量の約10倍以上)は赤色超巨星となる。おうし座のアルデバランは代表的な赤色巨星。

赤色巨星超巨星を参照。オリオン座のベテルギウスは太陽の約20倍の質量を持つ代表的な赤色超巨星で、脈動変光星の中の半規則型に分類されている。恒星の進化の最終段階にあり、寿命が終わるとⅡ型超新星爆発を起こすと考えられている。冬の大三角を構成するベテルギウスは1等星の中でも明るい目立つ星であったが、2019年秋より暗くなりはじめ2020年2月3日時点では約1.5等以下となり、1970年代以降では最も暗くなって冬の大三角も容易にそれと同定できない状況となった。しかし、2020年5月はじめには減光開始以前と同じ明るさに戻った。この現象が間もなく超新星爆発につながる兆候なのかどうかは分かっていない。

自由電子が正イオンに接近して双極子放射により光子を放出してエネルギーを失い、イオンの束縛エネルギー準位に束縛されること。イオンの再結合ともいう。このときに出る放射は自由-束縛放射と呼ばれる。

衛星レーザー測距(SLR)により地球のデータを収集するために作られた、球形の人工衛星。表面には数多くのコーナーキューブリフレクタが搭載されており、これで地上からのレーザー光を反射する。軌道や姿勢制御の機能がないので、衛星の寿命に限りがなく、長期にわたり純粋な軌道の進化を見ることができる。また、球形で姿勢依存性がないため、重心とレーザーパルスの反射点の距離はほぼ一定であり、高精度な測距が可能である。
日本でも1986年に測地衛星あじさいが打ち上げられており、海上保安庁による離島の経緯度観測に大きな役割を果たした。

自由-束縛遷移により放出される放射。自由電子の運動エネルギーと束縛準位のエネルギーの差に相当するエネルギーの光子が放射される。電離エネルギーに相当する振動数を起点として、高い振動数側に向かって強度が減少していく連続スペクトルとなる。ライマン連続光バルマー不連続も参照。

超巨星を参照。

こと座RR型変光星(RRLyr)のこと。セファイド不安定帯にある種族Ⅱ水平分枝星である。ほぼ決まった絶対等級を有するので、種族Ⅱの一次距離指標として、球状星団や銀河ハロー天体までの距離を決めるのに古くから使われている。年齢が古く、金属量の低い球状星団に数多く存在するので、星団型変光星という。この呼び方は最近はあまり用いられなくなっている。脈動変光星セファイドも参照。

水平分枝にある星。球状星団で顕著に見られる。金属量の高い星団では赤色巨星分枝近くに塊のように集まるので、クランプ星と呼ばれる。

回転対称な円盤渦巻腕を持たず、光の集中した中心核を明確に持たない銀河の総称。ハッブル分類ではIrrの記号で表される。大小マゼラン銀河は不規則銀河の一種(I型: Irr I)で、若い種族の星やガスからなっている。M82やNGC1275のように銀河同士の相互作用などによって、見かけの形状が特異になっているものも多数あり、これをII型(Irr II)と分類する。

化学特異星を参照。

水素吸収線が弱いことから水素が相対的に欠乏していると考えられる星。ウォルフ-ライエ (WR)星、PG1159型星、かんむり座R型星(R CrB型星)、また、二つの水素欠乏星からなる水素欠乏連星(υ Sgr型連星、AM CVn型連星)も知られている。PG1159型星は、漸近巨星分枝段階を経て、水素の多い外層を失って白色矮星へ移行する途中の後漸近巨星分枝(post-AGB)星である。スペクトルには水素吸収線が全く見られず、He、C、O等の線が強く見られる。かんむり座R型星(R CrB型星)はF-G型超巨星に似たスペクトルをもち、脈動変光に加え不規則な時点で急激な減光が起こることが知られている。スペクトルには水素吸収線がほとんど見えない代わりに、中性炭素やC2、CNなどの炭素系分子の吸収線が強く表れているので、水素欠乏炭素星と呼ばれる事もある。化学特異星も参照。

写真乳剤の感度を使用直前の処理によって高める操作。弱い光をわずかに当てる前露光、水素やアンモニアなどのガスにさらす方法、水や何らかの物質の水溶液に浸す方法などがある。天文観測の精度を上げるために微粒子の写真乳剤が用いられるようになってから超増感の必要性が高まった。露光する前に写真乾板をフォーミングガス(窒素中に数%の水素を混入したガス)を封入した容器に入れて50℃程度で数時間保つベーキング法と、主に赤い光に感度を持つ乾板に対して行われた、約1万倍に薄めた硝酸銀水溶液に3分程度浸して手早く乾燥させる硝酸銀水浴法が広く行われた。

希薄なプラズマは衝撃波などにより加熱されても、電子とイオンの温度の緩和はゆっくりと進む。そのため、互いの温度が異なる状態が長く続き、また電子による電離も平衡状態にならない。この状態を(電離)非平衡プラズマと呼ぶ。
若い超新星残骸などがその典型例である。非熱的プラズマも同じ意味で用いられる。

化学特異星を参照。

星が突然明るくなり、数か月から数年かけてゆっくり暗くなっていく現象。白色矮星晩期型星からなる連星において、ロッシュローブを満たす晩期型星から白色矮星にガスが降り積もり、ある質量や温度に達したときに起こる水素の熱核暴走反応による爆発現象である。増光幅は8等から15等以上にもなる。爆発の際に白色矮星の表面部分が吹き飛ばされることにより新星シェルが形成される。新星爆発は、すべての激変星において、質量降着率と主星の質量に応じて1000年から数100万年程度の時間尺度で繰り返されると考えられており、数10年ごとに新星爆発を繰り返すものは再帰新星(回帰新星)と呼ばれる。

電波干渉計のうち、100 kmを越えるような、地理的に遠く離れているアンテナ同士を結合して基線を構成するものをいう。結合型の電波干渉計では、1つの標準周波数源からの基準信号を使って素子アンテナで受信した信号を、常設の専用線によって伝送し実時間で相互相関を調べるのに対し、超長基線干渉計では各アンテナ設置場所で受信信号波形を記録し、記録を1ヶ所に集めた後に再生して相関器で相互相関を調べる。全素子アンテナに共通する標準周波数源を参照することができないので、各アンテナ局に水素メーザー原子時計など周波数安定度が十分に高い周波数基準を用意し、アンテナが受信する電場信号を時刻情報とともに媒体に記録することで、素子アンテナ間の可干渉性を維持する。媒体には永らく磁気テープが用いられていたが、近年では固定ディスクに記録するシステムも実用化されている。予め協定を結んだ電波望遠鏡を必要に応じて組織化して超長基線干渉計とすることが多いが、VERAVLBAなどのように超長基線干渉計専用のアンテナ群もある。信号を記録する部分で、媒体へのデータ書き込み速度などの制限により、観測帯域幅が大きく制限されることが多い。これを乗り越えるために、高速光ファイバー網を用いて遠隔地同士を直接結合し、事実上、結合型電波望遠鏡にしてしまう試みもなされた。スペースVLBIも参照。

食現象による変光を示す星。光度曲線に二度の減光が現れる。地球から観測して、伴星主星の手前を通過して起こる減光を主極小、主星が伴星を隠して起こる減光を副極小という。食連星を参照。

共通重心の周りを回る2つの星(連星)が、互いを隠し合う(食現象)ことによって明るさが周期的に変わる変光星。公転軌道面が視線に極めて近い場合にだけ食現象は起こり、近接連星であることが多い。星の明るさ(光度)の変化を、周期変化の解析から得られた公転の位相ごとにプロットしたものは連星の光度曲線または変光曲線と呼ばれる。食連星は通常、分光連星でもあり、光度曲線と視線速度曲線の解析から質量や半径など、恒星の基本的諸量が得られる。

超伝導体を検出素子としてもちいたヘテロダイン受信機。電波天文学では、アンテナで集めた天体からの信号を受信する装置として、カセグレン焦点ナスミス焦点に設置される。超伝導素子は、転移温度以下に冷却してつかわれるため、クライオスタットに納められている。超伝導受信機は、超伝導ミキサー、受信光学系、ホーン、低雑音増幅器、冷却装置、局部発振器などが組み合わさったものを指す。