スリット分光を参照。
爆発的な核燃焼が衝撃波の伝播とともに超音速で広がっていく現象。Ⅰa型超新星における爆発的な燃焼波面の伝播として想定されるものの一つで、炭素フラッシュ後の中心核の膨張により、その外側で衝撃波が生じ、そこでも炭素燃焼の暴走および新たな衝撃波が生じる、という過程による燃焼波の超音速での伝播のことをいう。実際には、白色矮星の中心では高温になると光分解が進行し、発生する核エネルギーが衝撃波を生むほどの強い圧縮を起こさないとみられている。 ただし、亜音速の爆燃波が伝播の途中に音速近くに加速したり、激しい乱流状態になったりすると、低密度で爆轟波に転移する可能性もあり、遅延爆轟として研究されている。
太陽-月-地球がこの順にほぼ一直線に並び、月が太陽の前を横切るときに太陽を隠す(月の影が地表に落ちる)現象。太陽は月より約400倍大きいが、平均距離も約400倍遠いので、地球から見ると両者はほぼ同じ大きさに見える。特定の時刻における両者の距離は平均距離の周りにわずかに変化する。このわずかな距離の変化によって、月の見かけの大きさが太陽のそれより大きく太陽全面が月に隠される皆既日食と、その逆で、月の周囲に太陽が環状にはみ出して見える金環食(金環日食)が起こる。
皆既日食になるとあたりが急に暗くなり、気温も急に下がる。そして、普段は特殊な方法でしか見ることのできない太陽コロナやプロミネンスなど人々を魅了する太陽の姿が見られる。
地球に落ちる月の影は小さく地表を速い速度で西から東に移動するため、皆既日食が見られるのは狭い帯状の領域(皆既日食帯;幅600-1000 km程度)に限定される。皆既日食帯の中の特定の場所における皆既日食の継続時間は最長でも約7分30秒であり、3-4分以上続くことは珍しい。皆既日食帯の両側では太陽の一部が隠される部分日食が見られる。 地球上の特定の地域で皆既日食や金環食が見られるのは極めて希だが、場所を問わなければ、部分日食も含めると日食は1年に2-4回(ときには5回)起きている。
日食は新月のときにしか起こらないが、新月のときに必ず起きるわけではない。これは地球の公転面(黄道)と地球の周りの月の公転面(白道)が約5度傾いているためで、新月は通常、天球上で太陽の南か北を通過して太陽を隠すことはない。黄道と白道の交点近くで新月となる場合のみ日食が起きる。
太陽が一つの交点を通過して再び同じ交点を通過する周期は約346.62日でありこれを1食年という。一方、1朔望月は約29.5306日であり、223朔望月(6585.32日)が19食年(6585.78日)とほぼ等しくなる。これを反映して、約6585.32日(18年と11日、ただしうるう(閏)年が5回あれば10日)ごとに太陽-月-地球がほとんど同じ位置関係にある日食が起きる(月食についても同じことがいえる)。これはサロス周期と呼ばれて、紀元前600年頃にはすでに知られていた。ただし、サロス周期には年の端数(約11日)と日の端数(約0.32日)があるために、18年前の日食に比べて、日食の見える日にちは約10日遅くなり、位置は約120度西に移動する。
日本の気象衛星「ひまわり8号」が撮影した地球の全面画像を2015年12月21日から2016年12月21日までの1年分をつないで早送りで見せる動画が製作されている。『A Year Along the Geostationary Orbit(静止軌道から見た1年)』と名付けられた約15分のこの動画では、雲と台風の動きや白夜の起きている様子などがよく分かる。2016年3月9日の皆既日食(タイムコード4:48)も記録されている。地球全面画像だけでなく、オーストラリアと日本付近を中心にズームインした詳細な動画も見られる。アヌシー国際アニメーション映画祭2019のVimeo Staff Pick Awardを受賞したドイツのFelix Dierich氏による芸術作品であるが、宇宙から見た地球の1年がよく分かる科学映像としても高い価値がある。
ベイリーの数珠、ダイヤモンドリングも、日食限界も参照。
『A Year Along the Geostationary Orbit(静止軌道から見た1年)』
https://vimeo.com/342333493
2016年3月9日の皆既日食(タイムコード4:48)
エクリプス―日食とは
https://youtu.be/DRSMXKO78C4
反射望遠鏡の副鏡を支えるために、副鏡支持部から外側に放射状に望遠鏡筒部分(主に鏡筒先の筒頂環)に渡された梁構造。望遠鏡光路をできるだけ妨げないように、薄板かワイヤで構成される。スパイダーを構成する薄板やワイヤは、望遠鏡の向きに関わらず常に引張り力を受けるように十分な張力をかけておく。多くの望遠鏡では、4本のスパイダーで副鏡を支えているが、口径数10インチ程度の小型望遠鏡では3本スパイダーも使用される。ケック望遠鏡のように筒頂環の形が六角形の望遠鏡では、副鏡は6本スパイダーで支持される。星像に十字や6本の回折パターンが生じるのは副鏡スパイダーの回折による。
大質量の恒星の進化の最終段階にみられる、鉄のコア(中心核)の急激な収縮。超新星爆発を起こす直前の星の中心部では、鉄のコアが成長し密度と温度が上昇する。その結果、電子捕獲反応と鉄の光分解によってコアが不安定になり、重力崩壊が始まる。すると密度、温度ともさらに上昇するため、電子捕獲反応も鉄の光分解も促進され、崩壊がいっそう進み、超新星爆発を引き起こすことになる。
天球座標系のうち、赤道面を基準面として定義した座標系。この座標系における経度を赤経(通常
赤道面や春分点は歳差と章動により変動するため、赤道座標系で天体の位置を表すためには「J2000.0の平均春分点および平均赤道にもとづく」とか「瞬時の真春分点および真赤道にもとづく」などのように元期と章動の扱いを明示する必要がある。とくにJ2000.0の平均春分点および平均赤道にもとづく座標系は、FK5カタログや国際天文準拠系をはじめ、あらゆる理論の基準となる座標系となっている。天の極、黄道座標系も参照。
月の軌道は太陽の軌道に対して約5.1°傾いているため、その交点付近で朔(新月)となるときにしか日食は起こらない。朔となるのが交点に近いほど、太陽と月の離角は小さくなり、日食の食分は大きくなる。逆に、交点から離れすぎると日食は起こらない(図1)。この日食が起こる限界となる角度を日食限界という。
単純に考えると朔における離角が太陽と月の視半径(視直径の半分で、ともにおよそ0.25°)の和に等しいときと思われるが、月の地心視差は約1°に達する、すなわち地球の中心から見るのと地球の端から見るのとでは月が丸2個分ほどもずれて見えるから、地心では重なって見えなくても、地球のどこかで重なって見えるということは十分にありうる(図2)。さらに、月や太陽の視半径が距離によって変化することなども影響する。
ざっと計算すると、部分日食が起こる限界は交点を中心として±約17°、皆既日食が起こる限界は±約11°である。太陽は1日約1°の速さで運動するから、合計34日ほどの間のどこかで朔となれば部分日食が起こることになる。朔望の周期は約29.5日とこれよりも短いから、日食限界付近で朔(日食)となった場合、すぐ次の朔でもふたたび日食になる。日食も参照。
爆発的な核燃焼が熱伝導や対流により亜音速で広がっていく現象。Ⅰa型超新星における爆発的な燃焼波面の伝播として想定されるものの一つで、炭素フラッシュによって高温になった部分が膨張により軽くなり、対流によって周りのガスと混合し、新たな炭素フラッシュを引き起こす。白色矮星が膨張しながら核反応が進むため、星の中間部分ではケイ素までしか核融合反応が進まず、より内部での鉄合成と合わせると、標準的なⅠa型超新星によるスペクトルがよく再現される。爆轟波も参照。
事象の地平線で覆い隠されていない特異点のこと。
冨松-佐藤解のような回転するブラックホールを表す解には裸の特異点が存在するものがあるが、裸の特異点が自然界において実現し得るかどうかについては、長い間論争があった。しかし、裸の特異点を生成するような現実的シミュレーションも報告されるようになり、今日では原理的には自然界に裸の特異点は生成し得るものと考えられている。宇宙検閲官仮説も参照。
制御理論において、制御系の入力に対する出力の関係を周波数空間で記述したもので、入出力の振幅比(実部)と位相遅れ(虚部)からなる複素関数。横軸を周波数にとり、縦軸に振幅の入出力比と位相遅れを図示したものをボード線図と呼ぶ。
極超新星を参照。
SN1987Aを参照。
円盤に対する完全直交関数系としてツェルニケ(F. Zernike)が導入した円形多項式。任意の光学系の波面収差(波面誤差を参照)を、ティルト、球面収差、非点収差、コマ収差、三角収差などの基本成分の重ね合わせとして、記述するのに利用されている。
中央標準時を参照。
超新星爆発の後に残された星雲状の天体。英語名から作った略語のSNRと表記されることもある。爆発時に吹き飛ばされた恒星の外層は高速で膨張して、周囲の星間物質(星間ガス)との間に衝撃波を形成し、ガスが高温に加熱されて、数万年にわたり光り輝き続ける。球殻状の表面のみが光るシェル型、内側も光る中心充満型(超新星爆発の後に残された中性子星がパルサーとしてエネルギー源となっているものをパルサー星雲あるいはプレリオン(plerion)と呼ぶ)、および複合型に分けられる。
電波から(ときには)ガンマ線まで、広い波長で熱放射および非熱的放射を行っている。衝撃波加速により粒子が高エネルギーまで加速されているためとされ、宇宙線の起源となる天体として有力な候補である。超新星残骸として有名な「かに星雲」はパルサー星雲でもある。
X線源、ガンマ線源も参照。
超新星を参照。
地平座標系を参照。
大質量星や中質量の近接連星が起こす大爆発により突然明るく輝きだす天体。夜空でそれまで星の見えなかった所に突然明るく輝く星は新星と呼ばれているが、新星のなかで特別に明るいものが「超新星」と分類されるようになった。その後の研究で超新星は恒星全体が爆発する現象であることがわかった。爆発後に残される星雲は超新星残骸と呼ばれる。超新星の発生頻度は、1銀河あたり50年に1個程度という稀な現象であるが、21世紀に入ると自動観測や大望遠鏡でのサーベイ観測などで発見数は年間500程度に達する。「超新星」という語は、超新星そのものと超新星の爆発現象の両方に用いられることが多い。厳密に区別したい場合には後者に「爆発」をつけて「超新星爆発」と呼ぶ。
超新星は分光観測により分類が行われる。まず、最も明るくなる極大期に水素線が現れないものがⅠ型、水素の吸収線が現れるものがⅡ型と分類された。典型的なI型超新星ではケイ素の吸収線が顕著であるが、これの弱いものも相次いで見つかるようになり、ケイ素が強いものはⅠa型、そうでないもののうちヘリウムの吸収線が見えるものはⅠb型、それも見えないものはⅠc型と分類されるようになった。このうち、Ⅰa型超新星は近接連星系に属する白色矮星が伴星からの質量降着をうけて爆発したものであり、それ以外のⅡ, Ⅰb, Ⅰc型は大質量星の重力崩壊に伴って爆発したものであると考えられている。Ⅰb, Ⅰc型は、星風などによってそれぞれ水素外層、ヘリウム層を失った大質量星が起こす爆発とみられている。Ⅰa型超新星は爆発後約20日で光度が極大に達し、絶対等級で-19等ほどになる。その後の減光も含め、超新星ごとの個性は小さい。
一方、大質量星の爆発であるⅠb, Ⅰc, Ⅱ型超新星の極大絶対等級は-17等程度であるが、明るさは天体によって大きく異なる。Ⅱ型超新星には、極大後100日程度一定の光度を保つⅡ-P型や等級が直線的に落ちるⅡ-L型がある。この違いは水素外層の多少によると考えられる。超新星の熱源は、爆発時に合成された放射性元素 56Ni が 56Co、さらに 56Feに壊変する際に放出されるガンマ線であり、超新星の明るさは合成されて放出される鉄の量を反映する。
Ⅰa型超新星爆発のメカニズムには二つのシナリオがある。第一のシナリオでは、連星系を構成している白色矮星に相手の星から質量が降着し、白色矮星の質量がチャンドラセカール限界質量近くにまで増加すると爆発する。第二のシナリオでは、連星系の二つの星が白色矮星となり、重力波を放出しつつ公転移動を狭め合体する。合体した白色矮星の質量がチャンドラセカール限界質量を超えると、第一のシナリオと同様に爆発する。中心で起こる炭素フラッシュの後、爆発的な燃焼波面は爆燃波として外側に伝播する。その過程で鉄族元素が大量に合成される。
大質量星が起こす重力崩壊型の超新星の爆発機構は十分に解明されていないが、理論的には光分解型超新星と電子捕獲型超新星が存在すると考えられている。前者は太陽質量の10倍以上の星が起こすもので、高温になった鉄の中心核で高エネルギーのガンマ線によって鉄が分解され、爆縮の後に中性子星やブラックホールが形成される。後者は太陽質量の8-10倍の星が起こすもので、酸素、ネオン、およびマグネシウムからなる中心核において電子捕獲が起こり、圧力が低下して収縮し、最後に中性子星が生まれる。中性子星生成の際に生じた衝撃波が外部コアと外層を吹き飛ばすという爆発機構が考えられるが、詳細なシミュレーションでは衝撃波の伝播は不十分であり、ニュートリノ加熱や星の自転の効果などをとり入れた研究が行われている。また、140太陽質量を超える星では電子-陽電子対生成による重力崩壊の際に核燃焼の暴走により爆発(電子対生成型超新星)が起こると考えられている。
超新星爆発からは、大質量星内部や爆発時に合成されたさまざまな元素が放出され、宇宙の化学進化に大きな影響を与える。また、Ia型超新星はその明るさがほぼ等しく、極大後の減光率の違いをもとにした補正を加えるとその極大時の絶対等級を精度よく見積もることができるため、距離測定に用いることができる。遠方のⅠa型超新星の観測は、宇宙の加速膨張に対する観測的証拠を与えている。
通常より爆発エネルギーがはるかに大きい超新星(supernova)をいう。ハイパーノバ(hypernova)ともいう。
大質量星の進化の最終段階として、恒星質量ブラックホールが誕生するときに生じる現象と考えられる。Ic型超新星爆発の一つとも考えられる。ある種のガンマ線バーストは極超新星爆発にともなう現象であることがわかっている。通常より大質量になりうる星として、重元素を含まない宇宙初期の初代星(種族III)が考えられ、ガンマ線バーストはこのような宇宙初期に最初にできた大質量星の爆発によるという説もある。