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日食限界

 

よみ方

にっしょくげんかい

英 語

solar ecliptic limits

説 明

の軌道は太陽の軌道に対して約5.1°傾いているため、その交点付近で(新月)となるときにしか日食は起こらない。朔となるのが交点に近いほど、太陽と月の離角は小さくなり、日食の食分は大きくなる。逆に、交点から離れすぎると日食は起こらない(図1)。この日食が起こる限界となる角度を日食限界という。
単純に考えると朔における離角が太陽と月の視半径(視直径の半分で、ともにおよそ0.25°)の和に等しいときと思われるが、月の地心視差は約1°に達する、すなわち地球の中心から見るのと地球の端から見るのとでは月が丸2個分ほどもずれて見えるから、地心では重なって見えなくても、地球のどこかで重なって見えるということは十分にありうる(図2)。さらに、月や太陽の視半径が距離によって変化することなども影響する。
ざっと計算すると、部分日食が起こる限界は交点を中心として±約17°、皆既日食が起こる限界は±約11°である。太陽は1日約1°の速さで運動するから、合計34日ほどの間のどこかで朔となれば部分日食が起こることになる。朔望の周期は約29.5日とこれよりも短いから、日食限界付近で朔(日食)となった場合、すぐ次の朔でもふたたび日食になる。日食も参照。

2018年09月17日更新

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    日食の条件
    * 図1 太陽と月の軌道の交点付近で朔となると、日食が起こる(クレジット:国立天文台暦計算室)。
    https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/C6FCBFA92FBEF2B7EF.html
    日食限界
    * 図2 日食限界の概念図。 地心からは重なって見えなくても、地球の端からなら重なって見え、日食となる。
    岡村・家・犬塚・小山・千葉・富阪編『天文学辞典』、シリーズ現代の天文学別巻(日本評論社)p. 308