アナログ的に変化する位置情報を読み取り、デジタル化して出力する機器のこと。望遠鏡においては、駆動軸の回転量を検出するエンコーダが重要となる。エンコーダの基本構造は、位置計測対象物に取り付けた精密な目盛(スケール)と、目盛を読み取る機構からなる。一般的によく用いられる光学的エンコーダでは、規則正しい間隔で光を透過もしくは反射する面で目盛が構成されており、その面に光を照射する発光装置と光検出器が読み取り機構となっている。相対的な位置情報しか得られないエンコーダをインクリメンタルエンコーダ、絶対的な位置情報が得られるものをアブソリュートエンコーダと呼ぶ。インクリメンタルエンコーダは構造が簡単で、かつ、相対的な読み取り位置精度の高いものが作りやすく安価である。絶対位置情報は、参照位置への復帰動作(原点復帰と呼ぶ)を行うことによって得る。インクリメンタルエンコーダでは、電源再投入時にはその都度、原点復帰が必要となる。一方、アブソリュートエンコーダは構造が複雑で、位置精度の高いものは非常に高価であるが、常に絶対位置を保持しているため、原点復帰の必要がない。望遠鏡駆動軸など、常に絶対位置を保持しておきたい個所にはアブソリュートエンコーダが用いられる。
マイケルソン(Albert Michelson;1852-1931)はアメリカの物理学者。ポーランド(当時はプロイセン王国)のストシェルノに生まれ、2歳のときに両親とともに渡米、1873年にアナポリスのアメリカ海軍兵学校を卒業した。1875年から母校の教師を務め、1879年に海軍天文台員となりヨーロッパへ留学。1882年ケース工科大学(ここでモーリー(E.W. Morley)と出会う)、1889年クラーク大学を経て、1893年から1929年までシカゴ大学物理学教授を務めた。1920年からはウィルソン山天文台とカリフォルニア工科大学で研究を続けた。
光速度の測定を、海軍兵学校の教師時代の回転鏡使用の実験から、ウィルソン山天文台での基線5マイルの実験まで行い、より正確な値を得ようとした。1883年に 299,853±60 km/s、1926年には299,796±4 km/sの値を発表している。
ケース工科大学にいた当時は、光を伝搬させる媒質としてエーテルが想定されていた。モーリーと共同で干渉計を使い、地球の運動方向とそれに直交する方向とで光速度を高精度に測定し、差がないことを証明した(1887年、マイケルソン-モーリーの実験)。その結果、エーテルは存在しないこと、および、特殊相対性理論の基礎になったローレンツ変換が提案された。
1920年には、ピース(F.G. Pease)とともに、ウィルソン山天文台100インチ反射望遠鏡で2枚の鏡を用いてオリオン座のべテルギウスの光を干渉させ、その直径を測っている。「干渉計の考案とそれによる分光学およびメートル原器の研究」により1907年、アメリカ人初のノーベル物理学賞を受賞した。
流体の流れの様子の指標となる無次元量で、流体に働く慣性力の大きさと粘性力の大きさの比で表す。レイノルズ数は、流体の代表的な速度を $U$、代表的な長さを $L$、粘性率を $\nu$、密度を $\rho$ とすると、
$$Re = \rho UL/\nu$$
と表される。流体の運動方程式の中で慣性力は非線形項であり、粘性項は線形項であるので、レイノルズ数が大きいほど、流体の運動の非線形性が強くなる。レイノルズ数が $Re\sim 1$ の場合、一般に流れは層流であるが、レイノルズ数が大きくなるにつれて、流れの中に乱れが生じ、流れは層流から乱流へと遷移する。一般にレイノルズ数が1000程度を超えると乱流が発達する。宇宙に存在する流体のレイノルズ数はしばしば1000を超えるため、宇宙で起こる流体現象には乱流が関係する場合が多い。
波長が0.1-100 mm程度の範囲の電波の名称。その中で波長の短い順にサブミリ波、ミリ波、センチ波と細分されることがある。電磁波、電波、宇宙マイクロ波背景放射も参照。
ケープタウン郊外にある南アフリカの国立天文台。サザーランドに南アフリカ大型望遠鏡を建設した。2011年、国際天文学連合(IAU)の Office of Astronomy for Development(OAD: 社会発展のための天文学推進室)が設置された。
ホームページ:http://www.saao.ac.za/
局所高温バブルを参照。
光の波長よりもはるかに小さいサイズの粒子による光の散乱現象のこと。英国のレイリー卿ストラット(J. Strutt)にちなんでこう呼ばれる。原子や分子による可視光の散乱はレイリー散乱である。散乱される光の波長に対する散乱する粒子の大きさの比の4乗に比例して散乱の効率は大きくなる。
したがって、光の波長が短くなればなるほどよく散乱されることになる。太陽光が大気で散乱されて、空が青くみえるのはレイリー散乱によるためである。散乱される光の波長が散乱する粒子のサイズと同程度の場合はミー散乱と呼ばれ、ミー理論によって記述される。
アメリカ航空宇宙局(NASA)が、1962年から1973年の間に打ち上げた惑星探査機。この期間のNASAの主ターゲットは月探査であるが、火星、金星、水星探査がマリナー計画で行われた。金星をめざしたのが1, 2, 5号で、火星をターゲットとしたのが3, 4, 6, 7, 8, 9号である。とくに1971年に打ち上げられたマリナー9号は、火星の全域に近い画像を取得して、火山や大洪水地形の存在を明らかにした。1973年に打ち上げられたマリナー10号は、金星のスイングバイを経て、1974年から1975年にかけて、3度水星のフライバイを行い、衝突クレーターに覆われた表面を観察するとともに、磁場の存在を明らかにした。
太陽の周りを公転している惑星などの天体は、一般的に楕円形に近い軌道上を運動しているが、その軌道上で太陽から最も遠くなる点のこと。放物線や双曲線軌道の場合には、遠日点を定義することはできない。遠日点と太陽の距離を遠日点距離という。遠点、近日点も参照。
マリナー計画を参照。
マクスウェル(James Clerk Maxwell;1831-79)はイギリスの物理学者。しばしばマックスウェルと記される。電磁気学の基礎を確立し、光が電磁波であることを明らかにした。エディンバラに生まれ、エディンバラ大学、ケンブリッジ大学で学び、ケンブリッジ大学フェローを経て1856年にアバディーンのマリシャル・カレッジの自然哲学教授になった。1860年キングズ・カレッジの自然哲学と天文学の教授、1871年にはケンブリッジ大学実験物理学の初代教授となり、キャベンディッシュ研究所の設立に尽力した。
学生時代に土星の環の力学理論に取り組み、環が多数の小粒子からなることを論じ、これは後に、気体分子の速度分布則をはじめとする分子運動論、統計力学への貢献となった。ファラデー(M. Faraday)の見解を基礎にして、近接作用の立場で電磁気学を研究し、マクスウェル方程式を基本方程式とする動力学的な電磁気学理論を1864年までに作り上げた。特に、媒質の力学的状態としての場の概念、媒質のゆがみとしての変位電流概念、光の電磁波説の導入で有名である。これらは主著『電気と磁気についての試論』(A Treatise on Electricity and Magnetism:1873)の中にまとめられた。色彩論では3原色理論をつくって実験した。
黒体放射のエネルギー分布であるプランク分布 $B_{\nu}(T)$ や $B_{\lambda}(T)$ を温度 $T$ に比べて低い周波数 ${\nu}$ で近似した式。数学的には、$h\nu \ll k_{\rm B}T$ で1次近似したもの。ここで,$h$ はプランク定数、$k_{\rm B}$ はボルツマン定数である。単位周波数あたりの放射強度のレイリー-ジーンズの近似式は
$$B_\nu = \frac{2\nu^2}{c^2} k_{\rm B}T$$
となり、単位波長あたりの放射強度は
$$B_\lambda=\frac{2c}{\lambda^4} k_{\rm B}T$$
と近似される。これらの式にはプランク定数 $h$ が出てこないことに注目。レイリー-ジーンズの近似式は,エネルギーの量子化が重要でない領域に対応し、歴史的には熱放射に関して、古典統計力学を適用することにより導かれていた。ウィーンの近似式も参照。
局所高温バブルを参照。
ボース粒子のこと。ボゾン、ボーズなどと呼ばれることもある。
重力中で静水圧平衡にある流体に対して、密度の大きな流体が小さな流体の上側に位置していると、境界面の微小変動が成長し波打ち始める不安定をレイリー-テーラー不安定と呼ぶ。たとえば、油の上に水を載せた平衡状態は不安定な平衡であり、またたく間に水と油は上下に運動し始めるが、これはレイリー-テーラー不安定の結果である。宇宙物理においても、超新星爆発のような星の内部の物質混合などでも重要な不安定である。
赤外線の中で、波長の長い(40-400 μm)ものの名称。電磁波を参照。
X線連星系を参照。
ガリレオ衛星を参照。
二重中性子星連星のこと。
熱力学関数の一つで、内部エネルギーに圧力と体積の積を加えたもの。値は記号 H で表されることが多い。圧力を一定に保ったときのエンタルピーの変化は、系に加えられた熱量に等しい。エントロピーも参照。
