ハーバード分類で表面温度の系列に属し、F型星よりも低温の星。表面温度は~6,000(K)。質量は太陽とほぼ同じ。水素のバルマー線は弱い。主な吸収線はカルシウムH、K線(CaII)、中性鉄線(FeI)、CH分子。例、太陽G2。
スペクトル型(星の)を参照。
ビーム半値幅を参照。
レーザーを光源に用いたマイケルソン干渉計。レーザーは位相が揃ったコヒーレントな光であるため、可干渉性に優れる。ごく微小な位相変化をとらえて重力波の検出に用いるには、干渉計の腕を波長に合わせ非常に長くとる必要があるため、光遅延線やファブリー-ペロー共振器を用いて短い腕で光の経路を伸ばす方法が用いられる。位相のゆらぎを抑えるためには強力なレーザーが必要であり、パワーリサイクリングの技術が開発されている。
弧度法における角度の単位。半径 r の円において長さ l の円弧を見込む中心角が θ であるとき、 θ=l/r と定義するのが弧度法で、この角度の単位がラジアンである。半円周の長さは l=πr なので、180度 =π ラジアンである。テーラー展開などで用いられる微小角近似、sinθ〜θ などを使うときは角度の単位はラジアンでなければならない。
一般に用いられている角度の単位は度、分、秒である。角度の分と秒は時間の分と秒と同じ文字を使うので、両者の混同を避けるために角度を表す場合には角度分(または分角)、角度秒(または秒角)と表記することがある。度、(角度)分、(角度)秒とラジアンの変換は以下のとおり。
1度 = π/180 ラジアン、
1(角度)分 = π/(180×60) ラジアン、
1(角度)秒 = π/(180×60×60) ラジアン、
1ラジアン=57.296...度 = 3438(角度)分 = 2.0626 × 105(角度)秒。
天文学においては、距離 r と天球上の見かけの大きさ θ から天体の真の大きさ l を l=rθ として求めるので、角度のラジアン表記は重要である。また、天文学でよく使う距離の単位1パーセク(pc)は、1天文単位(au)を見込む角度が1(角度)秒になる距離と定義されているので、1 pc = 2.0626 × 105 au となる。角度表示も参照。
恒星のスペクトル型と光度(絶対等級)の分布図。縦軸を絶対等級(上が明るい)、横軸をスペクトル型(右が低温)にとる。この図を考案したヘルツシュプルング(E.Hertzsprung)とラッセル(H. N. Russell)の名前をつけたヘルツシュプルング-ラッセル図が正式名称であるが、多くの場合略してHR図と呼ばれる。
図1が初めて公表されたHR図である。斜めの二本線の間に多くの星が分布しており、ここは主系列と呼ばれ、ここに分布する星は主系列星と呼ばれた。主系列の上のほぼ水平な領域に分布する星は巨星と呼ばれた。このHR図は恒星の誕生と進化を理解する上で極めて重要なツールとなった。HR図上での星の明るさの違いを表すためには光度階級が用いられる(図2)。スペクトル型は星の有効温度の系列なので、スペクトル型の代わりに有効温度を表す色指数を横軸にとっても同様の図が得られる。これは色-等級図(C-M図)と呼ばれる。これも含めてHR図という場合もある。近年の研究ではHR図よりも色-等級図が用いられることが多い。
恒星は誕生から死まで進化に伴いHR図の中で移動してゆく。星の進化の様子は星の質量によって大きく異なる。 星団のように同時期に生まれた恒星の集団のHR図上では、質量の違いによる恒星の進化段階に対応したいくつかの系列が見られる(図3参照)。 恒星が中心での水素の核融合によって輝く段階では、質量が大きいほど温度が高く、光度も高くなり、HR図上で左上から右下に延びる主系列の上に乗る。中心部で水素が枯渇すると星は主系列を離れてゆく。ここを転向点と呼ぶ。主系列を離れた後には、低温で光度の高い領域に多くの恒星が存在するようになり、赤色巨星分枝が現れる。このほか、さらに進化の進んだ赤色巨星に対応する漸近巨星分枝、金属量の低い星団などに見られる水平分枝がある。
理論的考察においては縦軸に絶対等級の代わりに光度を、横軸に有効温度の対数をとった図がよく用いられるが、表現している内容はHR図と同じである。
レーザーを高速でパルス状にしてターゲットとなるコーナーキューブに短時間照射し、測定された射出光と反射光パルスの時間差の半分に光速を掛けて距離とする測距方法。ターゲットまでの方位角と高度角も同時に測定することで3次元的な位置が計測できる。ほかに、光源の射出窓とターゲットの反射光での干渉を利用して、ターゲットを光源から遠ざけるあいだの反射光の位相変化を連続的に測定し、測定された波数の半分に光の波長を掛けて距離とする方式や、三角測量の原理を用いた方式などがある。
スペインのカナリー諸島のラパルマ島、標高約2400 mのカルデラ火山の山頂にある天文台。カナリー天体物理学研究所が所有し運用する。正式名称はスペイン語だが、ラパルマ天文台と通称されることもある。スペイン、イギリスなど欧州4か国の共同事業として建設されたが、2010年時点で参加国は11か国となっている。発端は1979年のグリニッジ王立天文台のアイザックニュートン望遠鏡(口径2.5 m)の移設であるが、天文台としての開所式は1985年に行われた。イギリスのウィリアムハーシェル望遠鏡(4.2 m)、北欧諸国のノルディック望遠鏡(2.6 m)、イタリアのガリレオ国立望遠鏡(3.6 m)、スウェーデンとオランダの太陽望遠鏡などがあり、2009年にはスペイン、メキシコ、アメリカ(フロリダ大学)が共同で建設したカナリー大型望遠鏡(10.4 m)が完成した。また、山頂から少し下ったところに、ガンマ線望遠鏡MAGICがある。
ホームページ: http://www.iac.es/eno.php?op1=2&lang=en
リービット(レビット)(Henrietta Swan Leavitt;1868-1921)はアメリカの女性天文学者。セファイドの周期-光度関係を発見した。マサチューセッツ州ランカスターで牧師の長女として生まれ、1892年ラドクリフ大学を卒業、その後重い病気にかかり聴力に障害を残したが、ハーバード大学天文台のピッカリング台長の元で、大量の写真乾板を測定し結果を計算して整理する女性グループ(計算担当であったことからハーバードのコンピューターと呼ばれた)の無給助手として仕事を始めた。
1902年にはハーバード大学天文台の助手となり、ペルーのアレキパにあったハーバード大学の観測所(ボイデン天文台)で撮影された大小マゼラン雲の多数の写真乾板から変光星を探す仕事を与えられた。小マゼラン雲中の16個の変光星(セファイド)の周期を求め、明るい変光星は周期が長いことに気づき、1912年には25個の変光星を用いて、明るさとその周期の関係式を求めた。その後ヘルツシュプルングとシャプレーは、この周期‐光度関係に注目し、銀河系(天の川銀河)中のセファイドで等級目盛りを校正して、セファイドの絶対等級を求めることができるようにした。リービットの発見により、セファイドを見つければ周期-光度関係を利用して銀河系内の星団や近距離にある銀河の距離が決められるようになり、宇宙の大きさを測る宇宙論的な研究が進展した。
その後リービットは、のちに国際基準の等級の原点となる北極星周辺の96個の星の等級を詳しく調べたが、1921年に胃がんが見つかり死亡、53歳であった。生涯で2400個にのぼる変光星と4個の新星を発見している。
ハッブル宇宙望遠鏡を参照。
水素原子が放射するバルマー線(バルマー系列を参照)のうち、主量子数n=3とn=2のエネルギー準位のあいだを電子が遷移するときのスペクトル線である(n=3からn=2への遷移では輝線、n=2からn=3の遷移では吸収線)。可視光で電離水素領域(HII領域)を観測する場合に最も顕著に見えるスペクトル線。波長は656.3nmで可視光の赤に当たる。再結合線、ガス星雲も参照。
収差を参照。
リオ(Bernard Ferdinand Lyot;1897-1952)はフランスの天文学者。しばしばリヨとも記される。コロナグラフをはじめ光学機械の設計と製作を行なった。1897年にパリに生まれ、高等電気学校を卒業後エコールポリテクニクの技術員をしながらパリ大学で学び、ムードン天文台に勤めた。偏光器の設計による月や惑星からの反射光の研究を行ない、1924年に月は火星の灰の層で覆われていること、火星の表面では終始塵の嵐が起きていることを報告した。また1930年、コロナグラフを発明し、ピレネー山脈のピクデュミディ天文台で観測した。さらに1933年、単色光フィルターを発明し(リオフィルター)、コロナグラフの観測からさらに情報を得ることを可能にした。1939年、王立天文協会ゴールドメダルを受賞し、フランス科学アカデミー会員になり、1947年にブルース・メダル、1951年にヘンリードレイパー・メダルも受賞している。
参考:https://phys-astro.sonoma.edu/node/1406
光学系によって物体の像を結ばせるとき、物体の高さYと像の高さY’との比(=Y’/Y)。単に倍率といった場合には横倍率を指す。これに対して、 光軸方向に物体を微小量移動させたときに、光軸方向の像の位置(焦点位置)の移動量(Z’)と物体の移動量(Z)の比(=Z’/Z)を縦倍率といい、横倍率の2乗で近似できる。
アングロオーストラリア天文台を参照。
液体シンチレーション検出器を参照。
エシェル分光器によって得られるスペクトル、もしくはそのような配置をしたスペクトルのこと。エシェル分光器では、エシェル回折格子によって分散された高次回折光のスペクトルを、そのスペクトルの分散方向と垂直方向に、垂直分散素子(クロスディスパーザ)によって分解する。その結果、いくつもの帯状の高分散スペクトルが分散方向と垂直方向に並ぶようなスペクトル画像を得ることができ、高い波長分解能で広い波長域のスペクトルを得ることができる。エシェルスペクトルでは、各次数のスペクトルの両端部分は隣り合う次数のスペクトルの端部分と一部が重なって映っている。
ライル(Martin Ryle;1918-1984)はイギリスの電波天文学者。ブライトンに生まれ、オックスフォード大学で学位を得、第二次世界大戦中はマルバーンの電気通信研究所でレーダーの開発に携わった。戦後はケンブリッジ大学で電波天文学を発展させた。
位相切換法を発明し、干渉計方式の電波望遠鏡の能力を向上させた。また開口合成法を考案し、地球回転を利用して長い基線で電波源の像を得ることに成功し、これは超合成電波干渉計へと進展した。電波干渉計を開発して宇宙電波源のケンブリッジカタログ『3Cカタログ』を作り、電波源を計数して宇宙膨張の証拠をかためた。また、干渉計方式の「1マイル望遠鏡」、さらに「5km望遠鏡」の建設に指導的役割を演じた。
1964年王立天文協会ゴールドメダル受賞、1972年に王室天文官に就任、1974年には「電波天文学における先駆的研究」により、ヒューイッシュ(Antony Hewish)と共にノーベル物理学賞を受賞した。これは天文学分野における最初のノーベル賞である。
参考:https://phys-astro.sonoma.edu/node/1462
アンテナの物理的な面積 Ap のうち、電波を受信するのに有効に使われる面積 Ae をいう。 Ap に対する Ae の比はアンテナ開口能率と呼ばれる。有効アンテナ開口面積が物理的な面積より小さい理由は、副鏡やそれを支える支柱(ステイ)によるブロッキング、アンテナのサイドローブを減らすために主鏡外周部に対する受信感度を減らすこと、主鏡などに鏡面誤差(凹凸)があること、主鏡の反射率が1より小さいことなどによる。アンテナの全ビーム立体角 ΩA および観測波長 λ との間には、 Ae ΩA= λ2 の関係がある。アンテナ開口能率も参照。
自然界に知られる四つの力(相互作用)の一つ。電磁気力に比べて「弱い」ことからその名を冠する。弱い相互作用ともいう。弱い力に起因する典型的な現象として、原子核のベータ崩壊が挙げられる。物質を構成する既知のすべての素粒子の間には弱い力が働く。特に、標準模型においては、ニュートリノには弱い力のみが働く。弱い力は、高エネルギー領域において、ワインバーグ-サラム理論によって電磁相互作用と統一的に記述される。弱い力は電荷を持つWボソンと中性のZボソンによって媒介される。電磁気力を媒介する光子の質量がゼロであるのに対し、これらのボース粒子はヒッグス場の自発的対称性の破れによって80-98 GeVという大きな質量を持つ。これをヒッグス機構という。その結果、力の到達距離は短い。強い力も参照。
ラグランジュ(Joseph-Louis Lagrange;1736-1813)はサルディーニャ王国(現イタリア)生まれのフランスの物理学者、数学者、天文学者。イタリアのトリノで生まれ、18歳頃から数学の才能を発揮し、王立陸軍砲兵学校で教えた。後に認められてベルリン科学アカデミー会員(1766)、フランス科学アカデミー会員(1787)となる。フランス大革命の後、メートル法委員会委員、経度局設立委員、エコールポリテクニク教授となり、解析学を講義した。
微分積分学を物理学へ適用し、特に力学の発展に貢献した。後に、力学をさらに一般化して、最小作用の原理を導き、解析力学(ラグランジュ力学)を創出した。イギリスのニュートンの力学は、大陸ではモーぺルチョイ(P. Maupertuis)やオイラー(E. Euler)によって微積分学を用いて整備されたが、ラグランジュは変分法を確立してこれを書き直した。主著『解析力学』(Mécanique analytique:1788)中の天体力学に関するテーマには、木星衛星の運動、ポテンシャルの導入、月が同一面を地球に向ける理由、惑星軌道の永年変化と周期変化、三体問題におけるラグランジュ点の特殊解などがある。ラグランジュの研究は後世に圧倒的な影響をあたえた。
参考:https://mathshistory.st-andrews.ac.uk/Biographies/Lagrange/